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神無一族の氾濫再録

「神無一族の氾濫」は1993年9月、詰将棋パラダイス450号記念に特別懸賞として神無一族の作品を大量出題したのが始まりです。以来、半年に一度のペースで「神無一族の氾濫」と称した特別懸賞出題を行ってきました。
現在では神無一族以外から作品を公募するなど、当初とは性格が異なってきていますが、「半年に一度のフェアリー版力試し」的な位置づけで継続的に定期開催を行っています。
ここでは、詰将棋パラダイス誌に了承していただき、過去の「神無一族の氾濫」の原稿を再録しています。

第1回 幻の氾濫 第2回 第3回 第4回 番外 第5回 第6回 第7回 第8回 祝賀詰 第9回 第10回
第11回 第12回 第13回 第14回 第15回 第16回 第17回 第18回 第19回 第20回
第21回 第22回 第23回 第24回 第25回 第26回 第27回 第28回 第29回 第30回
第31回 第32回 第33回 第34回 第35回 第36回 第37回 第38回 第39回 第40回
第41回 第42回 第43回 第44回 第45回 第46回 第47回 第48回 第49回 第50回
第51回 第52回 第53回 第54回 第55回
第1回
出題 1993.09
結果発表 1993.12
担当 太郎
発表作品
  1. a)ばか詰 5手 神無七郎
    b)天竺ばか詰 5手 神無七郎
  2. ばか詰 5手 神無太郎
  3. ばか詰 7手 神無太郎
  4. ばか詰(持駒制限) 9手 神無六郎
  5. ばか自殺詰 6手 神無七郎
  6. 禁欲ばか詰 11手 神無六郎
  7. 強欲ばか詰 7手 神無六郎
  8. 安南ばか詰 5手 神無太郎
  9. 安南打歩ばか詰 7手 神無六郎
  10. 安南打歩ばか詰 7手 神無六郎
  11. 安北ばか自殺詰 6手 神無次郎
  12. 安北ばか自殺詰 8手 神無次郎
  13. 対面ばか詰 5手 神無太郎
  14. 対面ばか詰 21手 神無七郎
  15. 対面ばか詰 ∞手 神無太郎+三郎
  16. 対面ばか自殺詰 8手 神無三郎
  17. 対面ばか自殺詰 8手 神無六郎
  18. 対面ばか自殺詰 8手 神無七郎
  19. 対面ばか自殺詰 10手 神無六郎
  20. 対面ばか自殺詰 18手 神無七郎
  21. 対面ばか自殺詰 70手 神無七郎
  22. 背面ばか詰 7手 神無八級
  23. 背面打歩ばか詰 11手 神無三郎
  24. 背面ばか自殺詰 6手 神無三郎
  25. 背面ばか自殺詰 6手 神無三郎
  26. 背面ばか自殺詰 6手 神無三郎
  27. 背面ばか自殺詰 6手 神無太郎+三郎
  28. 天竺ばか自殺詰 8手 神無三郎
  29. ナイト玉ばか詰 8手 神無八級
  30. 打歩ナイト玉ばか詰 8手 神無太郎


記念すべき第1回の「氾濫」である。
当初はこれが半定期化するとは思いもよらなかったが、 自分の作品がどのように扱われるかわからないフェアリーランドに投稿するよりも、 自分達で出題形式をコントロールできるこの特別出題の形式がすっかり気に入ってしまい、 この後一族の作品は主にこの「氾濫」を舞台とすることになる。
(余談だが、この自由を確保するために懸賞費用を自分達で負担していることは 書いておいてもいいだろう。すべてに美味い話はないのだ。)

 
幻の氾濫
未発表 (1993.11 作稿)
担当 太郎
発表作品
  1. ばか詰 5手 神無太郎
  2. ばか詰 5手 神無太郎
  3. ばか詰 5手 5解 神無三郎
  4. ばか詰 9手 2解 神無六郎
  5. 対面ばか自殺詰 6手 神無七郎
  6. a)対面ばか自殺詰 10手 神無七郎
    b)対面ばか自殺詰 10手 神無七郎
  7. 背面ばか自殺詰 6手 神無太郎
  8. 背面ばか自殺詰 6手 神無三郎
  9. 対面ばか自殺詰 12手 神無七郎
  10. 対面ばか自殺詰 16手 神無七郎
  11. 背面ばか自殺詰 12手 神無三郎
  12. 背面ばか自殺詰 12手 神無三郎
  13. ばか自殺詰 36手 『星姫』 神無三郎
  14. 安南打歩ばか詰 7手 太郎六郎
  15. 安北ばか詰 13手 神無六郎
  16. 安北ばか自殺詰 14手 太郎三郎
  17. 対面ばか詰 73手 神無七郎
  18. 背面打歩ばか詰 19手 神無三郎
  19. マドラシばか詰 9手 神無六郎
  20. マドラシばか詰 9手 神無太郎


第1回の氾濫に引続いて大量出題を目論んだが、 詰パラのフェアリー詰将棋に対する「総量規制」を理由に ボツになった原稿である。
挑発的な選題文で一族の主張をかなり明確に押し出しており、 「読みごたえのある」出題稿になっていると思う。

(2005.1.10)解答を追加

 
第2回
出題 1994.06
結果発表 1994.09
担当 七郎
発表作品
  1. マドラシばか詰 9手 神無六郎
  2. マドラシばか詰 9手 神無太郎
  3. ばか自殺詰 36手 『星姫』 神無三郎
  4. 対面ばか詰 73手 神無七郎
  5. ばか詰 117手 神無十郎


上記のような経緯もあり、路線修正したのがこの原稿。 担当もここから七郎に替わった。 これには普通詰将棋で実績のある七郎に担当をさせれば、 詰パラに原稿を載せやすいだろうという、多分に政治的(?)な意図もある。
出題量は当初の原稿より大幅に縮小したが、密度は濃い選題になっている。 私見では第8回までの氾濫の中で最高レベルの選題と思う。
特に、5番の神無十郎作のばか詰117手を選題できたことが担当者としては嬉しかった。

 
第3回
出題 1994.12
結果発表 1995.03
担当 七郎
発表作品
  1. 入れ替えパズル 74手 TETSU
  2. キルケばか詰 5手 神無太郎+次郎
  3. キルケばか詰 5手 神無太郎+次郎
  4. キルケばか詰 9手 神無六郎
  5. キルケばか詰 9手 神無六郎
  6. キルケばか詰 109手 神無七郎
  7. 対面ばか自殺詰 16手 『百万石』 神無太郎


選題の自由が利く「氾濫」の特性を活かして、キルケ特集を組んでみた。
キルケ以外にもTETSU氏の入れ替えパズルのような気の利いた問題や、 神無太郎氏『百万石』という傑作を送り出すことができ、 自分としては会心の選題ができたと思っていた。
(それは概ね間違っていなかったが、 入れ替えパズルの「もっとよい出題の仕方」があることが出題後に見つかって、 少し悔しい思いをした。)

 
第4回
出題 1995.06
結果発表 1995.09
担当 七郎
発表作品
  1. マドラシばか詰 5手 神無太郎
  2. 駒(飛)ばか詰 7手 2解 神無六郎
  3. ばか自殺詰 20手 神無七郎
  4. 攻方取禁ばか詰 23手 神無六郎
  5. 天竺ばか詰 25手 神無金四郎
  6. ばか詰 29手 「時姫」 神無三郎
  7. 打歩ばか詰 33手 「白雪姫」 神無三郎
  8. ばか詰 65手(条件付) 神無十郎


半年に1回の「氾濫」とはいえ、 限られたメンバーではさすがに作品を揃えるのが苦しくなる。
かといって、出題作のレベルを極端に落とす訳にも行かず、 前回のような特集形式の出題は断念した。
そしてこれ以降は、 このように全題ルールが異なることが普通になってしまうのである。
ルールの多様性があだになったか、中篇主体の選題にもかかわらず、 白旗組が続出した。
なお、この時にはじめてコンピュータによる自動創作の作品を出題に混ぜた。
コンピュータによる創作である事を伏せると、 その作品はそこそこの好評を得られることが結果稿から見て取れる。

 
番外 神無金四郎個展
出題解答 1995.12
担当 七郎
発表作品
  1. ばか詰 11手
  2. ばか詰 13手
  3. ばか詰 13手
  4. ばか詰 15手
  5. ばか詰 17手
  6. ばか詰 19手
  7. ばか詰 19手
  8. ばか詰 27手
  9. 駒(金)ばか詰 27手
  10. 駒(金)ばか詰 45手
  11. 駒(金)ばか詰 61手


ここになぜ「番外」が来るのか?
実はこのときも「幻の第5回神無一族の氾濫」が発生したのである。
ほぼ同時期に他の作家によるフェアリーの特別懸賞出題があったため、 例の「総量規制」に引っ掛かってしまったのだ。
そのため泣く泣く原稿を書き直したのがこれ。
金四郎の正体が「電脳」であることをばらした回でもある。

 
第5回
出題 1996.06
結果発表 1996.09
担当 七郎
発表作品
  1. ばか自殺詰 10手 神無太郎
  2. ばか自殺詰 14手 「謎姫」 神無三郎
  3. 麒麟ばか詰 39手 神無金四郎
  4. ばか千日手 48手 森 茂
  5. 駱駝ばか詰 77手 神無七郎/金四郎
  6. 取禁ばか詰 77手 詰位置[51] 小林/花沢/橋本


前回から1年空いたため、再び凝った選題が可能になったのがこの回である。
神無三郎氏の傑作「謎姫」の出題のほか、 森・花沢両氏のゲスト出演、正解者ゼロとなった超難解駱駝ばか詰の出題等、 話題には事欠かなかった。
氾濫初の不完全作(6番)というオマケがついたのは余計だったが...

 
第6回
出題 1996.12
結果発表 1997.03
担当 大九郎
発表作品
  1. ばか詰 11手 神無太郎
  2. ばか詰 125手 神無七郎
  3. 対面ばか自殺詰 6手 神無六郎
  4. 対面ばか自殺詰 6手 神無大九郎
  5. a) ばか詰 13手 神無七郎
    b) クィーン玉ばか詰 13手 神無七郎
  6. ゼブラ玉ばか詰 25手 神無三郎
  7. グラスホッパー玉ばか自殺詰 26手 神無太郎
  8. a) ばか千日手(条件付) 44手 神無大九郎
    b) ばか千日手(条件付) 44手 神無大九郎


ここからマンネリ気味の七郎に替わって、大九郎氏の選題である。
氾濫候補作を自薦させると、みんな好き勝手なルールの作を出して来るので、 若い大九郎氏は苦労したと思う。 (こういうとき“年寄り”だと、傲慢に自分の主張を通すんだが...)
なお、大九郎氏が担当したこの回から、 「氾濫」でもフェアリーランドと同様なロイヤル駒表記や 6点制による採点制度を導入している。

 
第7回
出題 1997.06
結果発表 1997.09
担当 大九郎/七郎
発表作品
  1. ばか詰 79手 「龍姫」 神無三郎
  2. 対面ばか自殺詰 6手 神無大九郎
  3. 背面ばか自殺詰 10手 神無太郎
  4. 安南ばか自殺詰 18手 神無七郎
  5. 安北ばか自殺詰 38手 神無七郎
  6. キルケばか自殺詰 6手 神無太郎
  7. ナイトばか自殺詰 8手 神無右京


この回は、大九郎氏が多忙なため、大九郎氏が選題を、 七郎が結果稿を担当するという変則的な形態を取っている。
選題の方は例によって、すべて異なるルール。 作品としては右京氏の初登場作が注目される回である。

 
第8回
出題 1997.12
結果発表 1998.03
担当 右京
発表作品
  1. ばか詰 63手 「能姫」 神無三郎
  2. 背面キルケばか自殺詰 4手 神無三郎
  3. ナイトライダー玉ばか詰 7手 神無右京
  4. 打歩ばか自殺詰 10手 神無太郎
  5. 打歩きりん玉ばか詰(条件付) 35手 神無大九郎
  6. 打駒詰 41手 神無十郎
  7. 背面ばか詰 201手 神無七郎


この回から、右京氏に担当が交代。
一族の作品のクセの強さを逆用して、 「作者当て」の趣向を選題に盛込んだのは、うまいアイデアだと感心させられる。
そこで、上の発表作品一覧でも作者名のところを白字にしてみた。 この回の氾濫を見ていない方は、出題稿を読んで作者当てに挑戦してみていただきたい。

 
赤木誉幸氏結婚祝賀詰
出題 1998.05
結果発表 1998.07
担当 右京
発表作品
  1. かしこ詰 39手 神無七郎 「カ」
  2. ばか詰 15手 神無三郎 「オ」
  3. ナイト玉ばか詰 9手 神無右京 「ル」
  4. 天竺ばか詰 13手 神無太郎 (ハート)


大九郎(赤木誉幸)氏の結婚を祝って、一族で祝賀詰を贈ることにした。
いつもの「氾濫」とは違って、じっくり作品を作る時間がなかった割には、粒が揃ったと思う。偶然とは言え、すべての作品に桂合(敬愛)が入って、内容的な統一性もとれた(ルールは相変わらずバラバラだけど (^_^;)。

 
第9回
出題 1998.06
結果発表 1998.09
担当 七郎
発表作品
  1. ばか自殺詰 106手「なりなり12」 神無大九郎
  2. ばか自殺詰 106手「なりなり10」 神無大九郎
  3. ばか自殺詰 170手 神無小五郎
  4. 打歩ばか詰 173手「輪姫」 神無三郎
  5. ばか詰 4649手 神無十郎


第9回は「史上最大の氾濫」と銘打ち自信作ばかりを出題した。
残念なことに十郎氏の作品に早詰を生じたが、解答者には十分満足いただけたと思う。
ただ、間違えたのは結果稿のページ数。今回だけ特別に2ページ増やしてもらったのだが、いざ結果稿を作成してみると全然足りない。こんなことならあと1ページ貰っておくんだったと後悔した。
そういうわけで、結果稿がやや舌足らずになった分、ここに補足資料を掲載することにした。より詳しい情報として参照して戴きたい。

補足資料1
氾濫9出題作の略記なしの全詰手順。fmviewで鑑賞可能。
補足資料2
駒井信久氏による神無十郎作の早詰解。
補足資料3
中村剣氏による神無十郎作の早詰解。
 
第10回
出題 1998.12
結果発表 1999.03
担当 三郎
発表作品 Aコース
  1. ばか自殺詰 10手(持駒制限) 神無三郎
  2. 安北ばか自殺詰 8手 神無次郎
  3. 背面ばか自殺詰 8手 神無太郎

Bコース

  1. ばか自殺詰 14手(持駒制限) 神無三郎
  2. 背面ばか自殺詰 8手 神無太郎
  3. マドラシばか自殺詰 22手 神無七郎
  4. 鳳凰ばか千日手 76手 「Spiral」 神無大九郎


第10回は趣向を凝らしてAコースとBコースに分割した。
これは易しいコースと難しいコースの2つを設けることで、解答者増とマニアを満足させることの両方を狙った物である。
狙い通り解答者は増えたが、これは主にAコース1番の功績。後は出題者が思ったほど易しくはなかったようだ。
また、この回で再び採点制度を廃している。

補足資料
氾濫10結果稿ノーカット版
ページ数の制約をまったく気にせずに作った原稿なので、パラに載った解説よりも面白いと思います。
 
第11回
出題 1999.06
結果発表 1999.09
担当 七郎
発表作品
  1. 5五詰 35手 神無ガイ
  2. 打歩ばか詰 51手「青姫」 神無三郎
  3. 対面ばか自殺詰 12手 神無次郎、神無大九郎
  4. キルケばか詰 9手 神無大九郎
  5. キルケばか詰 11手(2解) 神無太郎
  6. キルケばか自殺詰 80手 神無七郎


第11回の初登場は神無ガイ氏。普通詰将棋では実績のある彼も、フェアリーではこれが初登場である。ルールはなんと昔懐かしい5五詰。普通詰将棋に近い感覚で解けるので、解答増に貢献してくれた。3の対面ばか自殺詰はここでようやく日の目を見ることになった傑作である。
後半はキルケ特集にしてみたが、6の余詰でいまいち冴えない結末となってしまった。
なお、ここに収録した結果発表の原稿は、ページ調整のカットを入れる前の原稿である。パラに載った原稿と少し違うのでチェックしてみて欲しい。

 
第12回
出題 1999.12
結果発表 2000.03
担当 七郎
発表作品
  1. ばか詰 77手『飛行船』 神無三郎
  2. ばか詰 89手『真夏の夜の夢』 神無三郎
  3. Kマドラシばか自殺詰 36手『飛行艇』 神無太郎
  4. Kマドラシばか自殺詰 12手 神無右京
  5. 攻方取禁ばか詰 37手『龍踊り』 神無太郎(六郎原案)
  6. ばか自殺詰 100手『なりなり14』 神無大九郎


1〜3はほぼ同一のテーマ「7連合×2」である。ミニ特集のつもりで意識的に前半に揃えてみた。フェアリー系で、このテーマはかなり解答者の意表を突いたようだ。難度も適当で、この前半部分だけの解答もかなりあった。
後半はバラエティだが、かなりレベルの高い選題ができたと思っている。反面、解答者は極端に減り、後半の解答者数はたった3名になってしまった。良い作品群だけにもっと多くの人に解いて欲しかった。

 
第13回
出題 2000.06
結果発表 2000.09
担当 七郎
発表作品
  1. 安南ばか自殺詰 8手 神無右京
  2. ゼブラ王ばか自殺詰 10手 神無右京
  3. ばか自殺詰 14手 神無太郎
  4. 全取禁ばか自殺詰 44手 神無大九郎
  5. ばか詰 145手『かごめかごめ』 神無三郎
  6. ばか詰 249手 神無十郎


ちょうどこの氾濫の時期に「神詰大全」が完成。その「神詰大全」を懸賞にして解答を募集した。解答者数はそこそこであったが、みんな5番の解答ばかり。他の問題を解答した人が非常に少なく、淋しい思いを感じた回でもある。
出題の方は特に趣向はなく、バラエティである。非限定を含む作品(4と6)を出題したが、これについては出題時に説明しておいたせいか批判的な評はなく、選題者としてはほっとしている。

 
第14回
出題 2000.12
結果発表 2001.03
担当 七郎
発表作品
  1. ばか自殺詰 16手 神無七郎
  2. ばか自殺詰 42手(ツイン) 神無太郎
  3. 安南ばか自殺詰 52手 神無太郎
  4. 全取禁成禁ばか自殺詰 64手 神無大九郎
  5. ばか詰 73手『進化』 神無三郎


世紀末最後のフェアリー出題となるこの回、懸賞もCD−ROMによる世紀末作品集「無神都市」(このときはまだ命名は未定)であった。予定では1月末に余裕で完成しているはずのこの作品集であったが、実際には完成が3月までずれこみ大慌てするはめになった。
出題の方は、難解なのは4くらいで、残りはそれほど難しくないつもりであったが、非常に解答が少なく、また解答しても1問か2問だけという淋しさであった。「神無一族の作品=難解」の図式が完全に解答者に定着してしまったのであろうか。

 
第15回
出題 2001.06
結果発表 2001.09
担当 七郎
発表作品
  1. 安騎ばか詰 7手 神無大九郎
  2. ナイト王成禁ばか詰 53手 神無六郎
  3. ナイト王成禁ばか詰 91手 神無七郎
  4. ばか自殺詰 140手 神無太郎
  5. ばか詰 183手『サーカスの夜』 神無三郎


新世紀最初の氾濫は奇しくもナイト絡みの作品が3つ入った小特集のような形になった。特に最初の「安騎」は作例が殆どないため、出題時に例題を付けたり、 このHPで同ルールの作品を出題したりして、充分に下準備をしての出題だった。その甲斐あってか、ルールのために混乱した人もなく、多くの解答が集まっ た。
その他の作品も超難解な3を除いて全般的に易しかったようで、解答者数が回復したのは嬉しかった。
六郎氏の久々の復活も注目される回である。

 
第16回
出題 2001.12
結果発表 2002.03
担当 七郎
発表作品
  1. 安南キルケばか詰 7手 神無大九郎
  2. 安南ばか自殺詰 36手 神無太郎
  3. 角王ばか詰 41手 神無六郎
  4. 鳳凰王ばか詰 67手 神無七郎
  5. ばか詰 399手『佐保姫U』after橋本哲 神無三郎


前回、解答者数自体は回復したのだが、総解答数はあまり増えていなかった。これは、解答があっても特定の1題とか2題に集中して、まんべんなく解答が集ま らないという現象で、あまり良い傾向ではない。そういう状態がここ何回も続いていたが、この回は全解者数が7名も出て、総解答数も一気に盛り返した。
もちろんその要因としては「作品の難度の低さ」が挙げられるのだが、その割には作品の質は落ちていないので、まずは成功した回と言ってもいいだろう。
もっとも作品の質を落とさずに、解答を集めるのは容易なことではないのだが…。

 
第17回
出題 2002.06
結果発表 2002.09
担当 七郎
発表作品
  1. ばか詰 17手 神無太郎
  2. ばか詰 73手「親指姫」 神無三郎
  3. キルケばか自殺ステイルメイト 16手 神無太郎
  4. キルケばか自殺詰 72手「ポエニクス」 神無太郎+神無八級
  5. キルケ打歩ばか詰 87手 もず


今回は新進気鋭の作家もず氏をゲストとして招き、ルールとしてキルケ絡みの作品3題を揃えて、小特集を組んでみた。
内容的にも優れた作品が多く、充実した選題となった。特に、神無太郎氏と神無八級氏の合作になる「ポエニクス」は、この回の目玉となる傑作である。もず氏の作品も将来の古典となるべき新機軸の名作と言える。
登場作家を見ると、5作のうち3作に神無太郎氏の名前があり、作者の分布はやや偏っているが、「氾濫」は内容重視なので、たまにはこういうことも起こってしまう。まあ、それだけこの期は太郎氏が充実していたと言えるだろう。

 
第18回
出題 2002.12
結果発表 2003.03
担当 七郎
発表作品
  1. 安騎ばか詰 5手 神無大九郎
  2. ばか詰 77手「木霊」 神無三郎
  3. キルケばか自殺ステイルメイト 12手 神無太郎
  4. キルケばか自殺ステイルメイト 12手 神無六郎
  5. グラスホッパー王ばか詰 81手 神無七郎


この回の氾濫はとことんツイていなかった。まずは5番に27手の早詰。これで、この回の大きな目玉作品が消えてしまった。fmにグラスホッパー関係の読み 抜けがあることがもう少し早く分かっていたら防げたのだが、後の祭りである。もうひとつは、4番の誤植。これも目玉作品だっただけに痛かった。詰パラホー ムページで告知があったものの、これで正解者が減ったことは間違いない。1月号での誤植の報を見て解答を送ってくれた駒井氏のおかげで、正解者0を免れた のが唯一の救いであった。

 
第19回
出題 2003.06
結果発表 2003.09
担当 七郎
発表作品
  1. ばか詰 11手 神無太郎
  2. ばか詰 17手 神無太郎
  3. ばか詰 53手 神無三郎・七郎
  4. ばか詰 141手「螢狩」 神無三郎
  5. ばか詰 205手「霧姫」 神無三郎
  6. ばか詰 437手 神無七郎


第19回の氾濫が載るパラ567号は「ばか詰」が提唱されてからちょうど500号の記念号にあたり、かねてから企画していた「ばか詰特集」をやってみた。企画の提案は神無太郎氏である。
さすがにばか詰特集だけあって、解答者の集まりも良く、最終的に43名という氾濫史上空前の大盛況となった。ただ、その解答は前半3題に集中しており、 後半3題のうち一題でも解答してきたのはわずか5名という有様だった。昔に比べフェアリーの解答者層の質が低下しているのではないかと心配される。
作品面からは傑作「霧姫」を送り出せたことが何よりの収穫である。なおここに収録した結果稿では「霧姫」解説について最小限の補足をしてある。

 
第20回
出題 2003.12
結果発表 2004.03
担当 七郎
発表作品
  1. ばか詰 71手 神無三郎「B面の夏」
  2. Five-Leaper王ばか詰 7手 神無六郎
  3. クィーン王全取禁成禁ばか自殺詰 42手 神無大九郎
  4. グラスホッパー王ばか詰 43手 神無七郎
  5. グラスホッパー王ばか詰 59手 神無七郎


第20回の氾濫は解答者数減少を覚悟してフェアリー駒詰特集をやってみた。
結果的には解答者約20名ということで、まずまずだったうえ、3や5といった難問に関しても、ちゃんと正解者が出たので良かったと思う。
3は4年前の作だが、難解なためストックしていたもの。作者には待たせて申し訳なかったが、正解者からは高い評価を貰ったので、我慢が報われたと思う。

 
第21回
出題 2004.06
結果発表 2004.09
担当 七郎
発表作品
  1. ばか詰 103手 神無三郎「櫻狩」
  2. ばか自殺ステイルメイト 14手 神無六郎
  3. キルケばか自殺ステイルメイト 32手 神無七郎
  4. Kマドラシばか自殺ステイルメイト 86手 神無太郎
  5. Kマドラシばか自殺ステイルメイト 314手 神無太郎


今回の解答結果は、フェアリーの「二極化傾向」がはっきり現れたものだった。全題正解者の3名は森茂氏の「龍の顎」でも正解を入れた駒井、市村、kzの3 氏。ところが、それ以外は2題以下の正解しかなかった。つまり、実力者と入門者がはっきり分かれ「中間層」が存在しないのである。
この傾向は解答者だけでなく作家の方にも現れているように思える。フェアリー界は「マニア」と「ファン」の間で分裂してしまうのだろうか?
この回の作品群の目玉はやはり4だろう。他の発表作品もかなり充実していて、内容的には悪くない回だったと思う。

 
第22回
出題 2004.12
結果発表 2005.03
担当 七郎
発表作品
  1. ばか詰 103手 神無三郎「兎狩」
  2. 背面ばか自殺ステイルメイト 14手 神無太郎
  3. 異王(歩/騎)成禁ばか詰 33手 神無六郎
  4. 打歩グラスホッパー王ばか詰 69手 神無七郎
  5. 打歩グラスホッパー王ばか詰 79手 神無七郎


ついにこの回は1題以上の正解者がわずか4名、全題正解者なしという結果になった。
従来の「氾濫」であれば、神無三郎氏のばか詰で解答数を稼ぐのが定跡だったが、その三郎氏も「霧姫」あたりから、繊細で緻密な本格的なパズル志向の作品 を発表し始めた。そのため、入門者にとってだけでなく常連解答者にとっても、最近の「氾濫」は敷居が高くなってしまったらしい。
出題の形式は第20回の「氾濫」に良く似ている。同じルールで傾向のまったく異なる4と5の対比や、違うルールで共通のテーマを扱う3と4の対比など は、結構意識的な選題なのだが、そこまで出題意図を汲み取って貰うには、ちょっと作品がヘビー過ぎたかもしれない。

 
第23回
出題 2005.06
結果発表 2005.09
担当 七郎
発表作品
  1. 打歩ばか詰 55手 神無太郎
  2. 全取禁ばか自殺ステイルメイト 134手 神無七郎 「純度95.1」
  3. ばか詰 87手 神無三郎「鶯狩」
  4. マドラシばか自殺ステイルメイト 20手 神無太郎
  5. グラスホッパー王ばか自殺詰 44手 神無七郎


今回は「持駒」を意識した選題。前半が攻方の持駒が主役の作、後半が受方の持駒が主役の作、真ん中の「鶯狩」が前半と後半で受方・攻方の持駒の主役が交代する作である。
「氾濫」は最初からテーマ設定をし、それに則った作品を集めることもあるが、逆に「とりあえず作品を集めてみて、そこからテーマを設定し、作品の差し替えや変更を行う」という場合もある。今回の選題は正にそのパターンだった。
解答者数はやや回復し、少し胸をなでおろした回だった。

 
第24回
出題 2005.12
結果発表 2006.03
担当 七郎
発表作品
  1. アンチキルケばか詰 11手 神無太郎 「七色星団の戦い」
  2. アンチキルケばか詰 25手 神無七郎
  3. アンチキルケばか自殺詰 8手 神無三郎
  4. アンチキルケばか自殺詰 8手 北村太路
  5. アンチキルケばか自殺詰 12手 神無六郎
  6. アンチキルケばか自殺詰 12手 もず
  7. アンチキルケばか自殺詰 14手 たくぼん
  8. アンチキルケばか自殺詰 14手 若林


第24回の「氾濫」は結果稿が詰パラ600号の記念号に載るということで、凝った選題となった。ルールを「アンチキルケ」一色にすること、多数のゲストに 参加してもらうこと、そして増ページで出題数を増やすことの3つがその特徴である。若林氏が提唱した「アンチキルケ」の大ブームと重なったのはとても幸運 だったし、参加を呼びかけた作家の方々から優れた作品を寄せて貰ったことにも感謝の他はない。おかげでとても充実した特集になったと思う。今後も新興ルー ルで特集を組むかどうかは分からないが、ゲスト参加枠は今後も常に設けていきたい。
なお、ここに収録した原稿は、前回までのようなHTML版ではなくPDF版である。理由は簡単。HTML版は作るのが割と面倒なので、詰パラに提出した PDF版をそのまま収録して手間を省くことにしたというわけ。結果稿に誤解説が一箇所ある(5番の誤解答の手順を「両王手」としているが、実際は「復活王 手」)が、これもそのままである。実際に詰パラ誌面に出た原稿と比べて異同を比較すると、原稿が編集部でどう加工や添削されるかが分かるので、これから何 かの原稿を詰パラに出す人には参考になるかもしれない。

 
第25回
出題 2006.06
結果発表 2006.09
担当 七郎
発表作品
  1. ばか詰 5手 神無七郎
  2. ばか詰 59手 神無三郎「胡蝶」
  3. ばか詰 75手 荻絵香木
  4. アンチキルケばか自殺詰 12手 神無太郎
  5. アンチキルケばか自殺詰 230手 神無七郎
  6. ばか詰 1965手 森茂


第25回の「氾濫」はばか詰4題(うち1題は5手詰)の効果もあってか、解答者38名の大盛況だった。前回の路線を踏襲し、2名のゲストを招いており、そ のおかげもあってか質的にも高い作品群を提供できたと思う。新人ながら斜め7連打2回という離れ技を披露してくれた荻絵香木氏、自ら「会心作」と認める 1965手の傑作を投稿してくれた森茂氏には、本当に感謝したい。
ただ、この結果稿が誌上に載る前に、森茂氏が逝去されてしまったことは残念でならない。この作品が解答者の方々から暖かく迎えられたことが天国に届くよう、祈るばかりである。

 
第26回(詰四会の氾濫)
出題 2006.12
結果発表 2007.03
担当 たくぼん
発表作品
  1. ばか詰 5手 くるぼん
  2. ばか詰 5手 斉藤・久保
  3. ばか詰 5手 たくぼん
  4. ばか詰 7手 赤土陽一
  5. ばか詰 9手 小峰耕希
  6. ばか詰 11手 若林
  7. ばか詰 11手 神無太郎
  8. ばか詰 13手 小林看空「プレアデスU」


この年、四国の詰将棋の会合「詰四会」が発足。その「詰四会」の フェアリー界での初仕事が、第26回の「氾濫」の担当であった。従って、これは「神無一族の氾濫」ではなく「詰四会の氾濫」である。神無七郎が多忙なため の苦肉の策であったが、結果は解答者数57名という、氾濫史上最高の数字を出した記録に残る回となった。作者も新人を多く起用し、今回の企画は一定の成功 を収めたと言えるだろう。無理なお願を引き受けてくれた上にこの実績は、正にたくぼんさんのお手柄である。
なお、ここに掲載した結果稿は元原稿をPDF化したもので、レイアウトがパラ掲載のものと異なるが、内容自体は同じものである。

(2007.4.8追加)第26回氾濫結果稿ノーカット版
解答者の全短評や、内幕話なども知ることができるノーカット版。
総ページ数は詰パラ掲載版の約3倍! 内容的にも圧倒的に面白い原稿です。

 
第27回
出題 2007.12
結果発表 2008.03
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか詰 91手 神無三郎「狐狩」
  2. PWCばか自殺ステイルメイト 12手 神無太郎
  3. PWCばか詰 13手 たくぼん
  4. PWC成禁ばか詰 33手 たくぼん
  5. PWC取禁ばか詰 77手 神無七郎
  6. PWCばか千日手 498手 北村太路


この回はルールを「PWC」と指定して作品の公募を行った。公募制にしたのは、今までのように作者に直接依頼してゲスト参加してもらう方式より、ルールを指定した特集がやりやすいためである。 また、ゲスト参加者が互いの作品を知らないことにより、解答者としても参加できるというメリットもあった。 その反面、公募制だと集まる作品数や総手数がなかなか確定しないとか、内容によっては投稿して貰った作品を返送しなければいけない(この回はそういうことは生じなかった)というデメリットもあり、運営上難しい面もある。
例によって結果稿は通常の4ページを大幅に超過し、7ページになってしまったが、これを快く掲載してくれた詰パラ編集部には感謝したい。もちろん、作品内容はそのページ数に見合うものになっていると確信している。


 
第28回
出題 2008.06
結果発表 2008.09
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか詰 4手 神無三郎
  2. ばか詰 6手 神無太郎
  3. 詰将棋 34手 神無八級
  4. 最悪詰 44手 北村太路
  5. ばか詰 66手 神無七郎


この回のお題は「受先形式」。
ルールというよりは出題形式の変更に近いので、割と普通の感覚で解ける作品が揃ったと思う。解答者44名という氾濫史上稀な大盛況も、受先形式の親しみ易さを表すものだと思う。
今回も前回と同じく公募だったのだが、結局採用は1作のみで、いつもの「神無一族の氾濫」のような感じになってしまった。ただ、その1作は北村氏の伏線入り順列7種合という傑作で、今回の目玉となっている。
担当者個人の反省点は、検討不足で八級氏の作品が変長になってしまったこと。詰棋校でも通用しそうな作品をわざわざ受先形式にして投稿してもらったのに、残念な結果になってしまいました。

第28回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

 
第29回
出題 2008.12
結果発表 2009.03
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか詰 75手 神無三郎
  2. PWCばか自殺詰 7手 上谷直希
  3. キルケばか自殺詰 12手 橘圭伍
  4. 取禁ばか詰 159手 たくぼん
  5. キルケ最悪自殺詰 47手 金子清志


この回のお題は「駒取りに関するフェアリー作品」。
この設定に一番忠実なのは4番の「取禁ばか詰」で、結果的にはむしろキルケ特集のようになった。5番は「キルケ最悪自殺詰」という大変珍しいルール設定だが、決して奇を衒うものではなく、作品の狙いが自然にルール設定に反映したものと言える。「ばか詰枠」としての登場の1番も、「と金を全部取らずに1枚残す」という手順が今回のお題にマッチしており、全体としての統一感は結構あると思う。
作品内容はどれも充実しており、担当としては「会心の選題」だった回なのだが、こういうときは得てして解答が少なくなるもの。実際、解答者数は前回の44から一気に10に激減した。しかも、内2名は白旗解答でコメントのみ参加なので実質の解答者数は8名。当選者数が5なので「1題でも解答すると当選しない方が難しい」という珍現象が起きてしまった。
この解答者減の原因の一端は「キルケ最悪自殺詰」のルール説明用の図の誤植を版下チェックの段階で見落とした担当者の大ポカがにあることは疑いない。新ルール・珍ルールの作を出すときはいつも以上に出題稿に気を遣う必要があることを肝に銘じねばならない(いつも似たような反省をしてるような……)

第29回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

 
第30回
出題 2009.06
結果発表 2009.09
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか詰 73手 神無三郎 「鬼ごっこ」
  2. Isardamばか詰 9手 花井秀隆
  3. Isardamばか自殺詰 8手 増田智彬
  4. 取禁ばか詰 61手 たくぼん
  5. 強欲ばか詰 79手 たくぼん

この回のお題は「着手に制約のあるフェアリー作品」。ただしIsardamはタイプAなので、純粋な着手の制限ではなく、独自の拡張も生じている。ここでの2作もIsardam独特の手筋を縦横に駆使したものである。
第4番のたくぼん氏作が超弩級な難解作なため、ある程度の解答減は覚悟していたのだが、他の作品も難問揃いで解答者わずか11名。1題以上正解もわずか7名という結果になった。
更に担当のミスで第4番を誤図で出題してしまうという大失態があったが、不詰となるような誤植でなかったのが不幸中の幸い。市村氏がほぼ作意に近い解答を寄せてくれたのも救いだった。

第30回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

 
第31回
出題 2009.12
結果発表 2010.03
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか詰 65手 神無三郎 「野苺」
  2. アンチキルケばか自殺詰 12手 神無七郎
  3. PWCばか自殺ステイルメイト 18手 神無太郎
  4. ばか自殺詰 34手 増田智彬
  5. 強欲ばか詰 47手 たくぼん

この回のお題は「非標準駒数のフェアリー作品」。「ばか詰枠」で出題の1番を除いてはすべて中編以下という手数にもかかわらず、解答者はわずか12名。しかも1題以上の正解者が9名(一桁!)しかいないという惨状だった。 やはり盤に並べられないと難度も倍増するということだろうか。作品自体はすべて狙いが明確で、非標準駒数である意味が納得できるものばかりだったと思う。
この超マニア向け選題の中で、意外な形で脚光を浴びたのが第5番のたくぼん氏作。先崎学八段が「週刊文春」に掲載しているコラムの中で、この作のことを取り上げたのだ。プロ棋士がマニア向けの作品に対し、これを敬遠するどころか、極めて真剣に解図に取り組んでくれていた……普段は誌面に出ない読者の中にも、潜在的な解答者がいるということを再認識させられる出来事だった。

第31回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)
(※棋譜再生の都合上「持駒無制限」を便宜上駒数99枚で表しています)

 
第32回
出題 2010.06
結果発表 2010.09
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか詰 89手 神無三郎 「走馬燈」 (正解者11名)
  2. キルケばか自殺詰 8手 増田智彬 (正解者10名)
  3. アンチキルケばか千日手 12手 金子清志 (正解者12名)
  4. アンチキルケばか自殺詰 12手 上谷直希 (正解者3名)
  5. Messignyばか詰 23手 神無太郎 (正解者11名)
  6. Messignyばか詰 155手 洞江元太 (正解者5名)

 この回のお題は「駒が自分の利きがない場所に動くことがある作品」。出題作6題のうち4題が投稿作品で、「氾濫」が神無一族のグループ作品展から、投稿作品主体の「企画作品展」へ移行する過程が着実に進んでるようだ。特に今回は若手の3氏(増田、上谷、洞江)の存在が光っていた。美麗な双裸玉で鮮やかな手際を見せる増田氏作、本作品展随一の難解作だった上谷氏作、言葉で形容しがたい摩訶不思議な趣向の洞江氏作。いずれもその実力を垣間見せてくれており、頼もしく思う。

 なお、各題の正解者数を上記一覧に添えてみた。今回の「氾濫」はいつもより易しめで、それが正解者数にも表れている。多くの解答者の楽しんでもらえたという意味で素直に良かった思う。

第32回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

 
第33回
出題 2010.12
結果発表 2011.03
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか詰 77手 神無三郎 「橙」 (正解者5名)
  2. Isardamばか自殺ステイルメイト 8手 花井秀隆 (正解者3名)
  3. 安南ばか自殺ステイルメイト 12手 神無太郎 (正解者8名)
  4. ばか自殺ステイルメイト 14手 吉田直嗣 (正解者9名)
  5. ばか自殺ステイルメイト 22手 神無三郎 (正解者9名)
  6. ばか自殺ステイルメイト 30手 吉田直嗣 (正解者2名)
  7. 対面ばか自殺ステイルメイト(受先、非標準駒数) 33手 もず (正解者2名)
  8. ばか自殺ステイルメイト(手余り可) 54手 金子清志 (正解者4名)

この回のお題は「攻駒が残るばか自殺ステイルメイト」。
好作が多く投稿され、出題作を絞り込めなかったため、編集部にお願いして増ページをして貰った。そのおかげで出題枠を8題に増やせ、例題を付けることもできた。特にIsardamのように浸透度の低いルールの作を出題するときには、例題が付けられるかどうかは解答数に大きく影響する。今回、それでも第2番の正解者数が伸び悩んだが、それは作品自体の高度さによるものだろう。ステイルメイト特集ということで、吉田氏の参加を戴けたのも嬉しいことだった。

 痛恨だったのは、第8番金子氏作の余詰。作意に惚れ込みすぎて他の筋を考えなくなってしまうのは、作者だけでなく担当者も同じ。fmで検討困難な作を投稿する際は、担当者の検討力は当てにしない方が良い。

第33回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

 
第34回
出題 2011.06
結果発表 2011.09
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか詰 47手 神無三郎 (正解者16名)
  2. 安南ばか詰 11手 神無太郎 (正解者20名)
  3. 安騎ばか千日手 12手 北村太路 (正解者6名)
  4. 安騎ばか自殺詰 56手 神無七郎 (正解者6名)
  5. 対面キルケばか自殺詰 14手 たくぼん (正解者3名)
  6. Isardamばか自殺詰 8手 花井秀隆 (正解者4名)

この回のお題は「玉が動いて王手するフェアリー作品」。
この年は「新約・神詰大全」刊行の年。解答の賞品も「新約・神詰大全」である。
事前に3つほどテーマを考えたが、作品募集時のテーマもそれにちなむもの…ということで、「動く王」を選んだ。これは「新約・神詰大全」の中のもず氏の作品集「不動玉」にちなむもので、この回は「不動玉」の逆、次の回は「不動玉」をやろうという、2回セットの企画だった。

 大量出題かつ難物揃いの前回から比べると易しく、解答者総数も26に回復した。上記の解答数からも分かるように、特に1・2番の集客効果が高い。後半はいつも通りの解答数だが、ルールだけで敬遠されるかと思った「安騎」の正解者が6名もあったのは、正直予想以上だった。やはり詰パラにはツワモノが多い。

第34回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

 
第35回
出題 2011.12
結果発表 2012.03
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか詰 71手 神無七郎 (正解者12名)
  2. キルケばか自殺詰 8手 藤原勝博 (正解者11名)
  3. 対面取禁ばか自殺詰 8手 神無七郎 (a:正解者9名 b:正解者7名)
  4. アンチキルケ打歩ばか詰 9手 神無太郎 (正解者12名)
  5. 打歩ばか詰 43手 神無三郎 (正解者6名)
  6. ばか自殺ステイルメイト 92手 北村太路 (正解者8名)

この回のお題は前回と対照的な「不動玉」。
「不動玉」は難条件というほどの条件ではないものの、作家にとっては大きな足枷になる条件に違いはなく、なかなか投稿作が集まらないという事態になってしまった。担当者の作を2つ入れざるを得なかったのも作品数不足だったからだ。

 逆に、解答者にとっては「不動玉」が大きなヒントになるため、全題正解者が6名という「氾濫」にしては珍しい好成績が記録された。いつもは「フェアリー版・期末試験」として難解作一色に染まる「氾濫」だが、たまにはこういうのも良いだろう。

第35回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

 
第36回
出題 2012.06
結果発表 2012.09
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか詰 89手 神無三郎 「野遊び」(正解者2名)
  2. マドラシばか詰 5手 神無太郎 (正解者13名)
  3. 安南ばか詰 5手 変寝夢 (正解者20名)
  4. 安南ばか詰 11手 神無太郎 (正解者15名)
  5. 安南ばか自殺詰 10手 神無太郎 (正解者8名)
  6. 対面取禁ばか自殺詰 62手 神無七郎 (正解者1名)

この回のお題は「多重王手」。
内訳は両王手と三重王手が3題ずつ。募集時は突飛なルールで多重度を上げた作品が投稿されることを予想していたが、割と常識的なルールの作品が集まった。

 解図の難度は最初と最後の作品が突出して高い。このため、解答者が23名と(「氾濫」にしては)多かったにも関わらず、全題正解者はゼロとなってしまった。特に1番はルールが通常の協力詰(ばか詰)なので、正解者わずか2名という結果は残念だ。フェアリーで出題されるルールが多様化し、解答者が多様なルールへの適応力を高めた一方、難しい問題を粘り強く解く能力はむしろ後退したのかもしれない。

第36回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

 
第37回
出題 2012.12
結果発表 2013.03
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか詰 93手 神無七郎 (正解者2名)
  2. ばか自殺詰 150手 たくぼん (正解者3名)
  3. 背面ばか自殺ステイルメイト 8手 神無三郎 (正解者6名)
  4. アンチキルケマドラシばか自殺詰 8手 上谷直希 (正解者4名)
  5. 背面ばか自殺ステイルメイト 12手 神無太郎 (正解者5名)
  6. 安南ばか自殺ステイルメイト 16手 神無太郎 (正解者1名)

この回のお題は「利きのない駒」。
性能変化系のルールが多くなることは予想していたが、後半4題は正にその通り。2番は不可侵領域を使用しているが、これは利きがなく、取れない駒とも解釈できるのでOK。問題は「ばか詰枠」をどうするかだったが、「行き所のない駒」の品切れを主題とする1番を用意して解決。

ただ、この1番が難解過ぎて正解者がわずか2名。全体の解答数も大きく落ち込むことになった。更に悪いことは重なるもので、2番(たくぼん氏作)に余詰発生。修正は簡単で、担当も検討に関与していただけに、一層悔しい余詰だった。
今回の出題は難解作揃いだが、手順を見て貰えれば、どれも難解さのための難解さではなく、構想自体から生じる自然な難解さであることが分かると思う。中でも最も難しい6番(神無太郎氏作)を解いた市村氏はお見事で、ただ一人の全題正解者となった。

第37回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

 
第38回
出題 2013.06
結果発表 2013.09
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか詰 5手(※2解) 神無三郎 (2解正解者36名、1解正解者32名)
  2. クイーン王ばか詰 11手 上谷直希 (正解者8名)
  3. 対面打歩ばか詰 35手 神無太郎 (正解者16名)
  4. 限定ばか詰 39手 神無七郎 (正解者8名)
  5. キルケばか自殺詰 182手 橘圭伍 (正解者8名)

この回のお題は「攻方が損をする作品」。
「攻方が損をする」という言葉は解釈が難しいかな…と思っていたら、案の定作品の集まりは良くなかった。予備作として取っておいた自作が出題に混じっているのは、そんな事情の反映である。

反面、作品の難度は低く、「氾濫」には珍しく38名という大量の解答が集まった。いつもは「力試し」色が強すぎて敷居が高い「氾濫」だが、今回は珍しくフェアリー入門者にも優しかったのではないかと思う。

第38回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

 
第39回
出題 2013.12
結果発表 2014.03
担当 神無七郎
発表作品
  1. Isardamばか自殺ステイルメイト 10手 花井秀隆 (正解者3名)
  2. 安東西ばか自殺ステイルメイト 16手 神無太郎 (正解者3名)
  3. 強欲ばか詰 83手 たくぼん (正解者7名)
  4. キルケばか自殺詰 174手 橘圭伍 (正解者7名)
  5. ばか詰 327手 荻絵香木 (正解者7名)

この回は「氾濫」の原点と変質を同時に示すものだった。
原点に帰った点は自由出品だったこと。元々「氾濫」は課題設定も何もなく、作者各人が好き勝手な作を持ち寄る作品展だった。 難易度もバラバラで、易しい作も難解作も、自信作も微妙な作も、何でも自由に出品できる―それが「氾濫」だったのだ。
もっとも、本当に自由出品が可能だったのは初回の「氾濫」のみで、その後はページ数の制約により、出題数を制限している。そこで最近はテーマを与えて作品を絞るという形式を取っており、名目上「自由出品」の今回も実質は「自由投稿+選抜」だ。
もうひとつ変質した点は、神無一族からの参加者が神無太郎氏のみだったこと。本企画が「神無一族の」作品展から、「神無一族主催の」作品展に変わったことを象徴的に示している。
こうして並んだ作品はルールもバラバラで解答者にとっては辛い回だったと思う。これは解答総数14という数字にはっきり表れている。特に短編が難解である(むしろ長編の方が易しい)ことが、解答数の減少に繋がってしまったと思う。

第39回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

 
第40回
出題 2014.06
結果発表 2014.09
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか詰 89手 神無三郎 (正解者14名)
  2. 26(√40)跳王ばか詰 13手 変寝夢 (正解者12名)
  3. 強欲ばか詰 77手 橘圭伍 (正解者14名)
  4. 強欲ばか詰 85手 たくぼん (正解者10名)
  5. 強欲ばか詰 153手 神無七郎 (正解者5名)

40と言えば将棋の駒の枚数。つまりこの回は将棋にちなんだ数字を持つ記念回ということになる。
お題を「双玉全駒作品」とすることも考えたが、それでは作品が集まらないだろうということで、「40にちなんだ作品」と条件を緩めて募集した。 できれば「ばか詰枠」の第1番にも何か40に絡む意味付けがないか、いろいろ考えてみたものの、挫折。
作品自体は変寝夢氏の個性的なフェアリー駒作品や、橘・たくぼん両氏の双玉煙など解いて楽しめる作品が揃っており、4題で正解者二桁を達成した。
易しくて内容も豊富というのか、こういう記念回に望まれるあり方だが、今回はそれに近い作品展になったと思う。

第40回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

 
第41回
出題 2014.12
結果発表 2015.03
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか詰 219手 神無三郎 「小車輪」(正解者14名)
  2. 禁欲打歩ばか詰 11手 上谷直希 (正解者9名)
  3. 禁欲ばか詰 201手 たくぼん (正解者11名)
  4. ばか自殺詰 8手(※Q包使用) 変寝夢 (正解者7名)
  5. トーラス盤強欲成禁ばか詰 99手 神無太郎 「回帰軌道」(正解者1名)

この回は「相手の駒で詰める」がお題。
念頭にあったのはAndernachのような頻繁に駒の所属が変わるルールだったが、集まったのは「禁欲」のように駒の所属が変わりにくいルールや、駒の所属云々とはあまり関係ない作品ばかり。
「お題」の条件は満たしても、それに縛られないのは、さすが詰棋人というところ。
そんな中、変寝夢氏の作品が「玉以外すべての駒の所属が反転する」という「お題」を拡張したテーマを見せてくれたのが目立っていた。
今回は全体的に難度は高め。「ばか詰枠」として出題した第1番「小車輪」から既に難しく、最後の「回帰軌道」は正解者わずか1名。
この出題で無解を除いて16名の解答があったのは、むしろ大健闘だろう。

第41回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

 
第42回
出題 2015.06
結果発表 2015.09
担当 神無七郎
発表作品
  1. 打歩ばか詰 29手 神無三郎 「白雪姫II」(正解者9名)
  2. 最善自殺ステイルメイト 28手 神無七郎 (正解者9名)
  3. 背面ばか自殺ステイルメイト 12手 上谷直希 (正解者8名)
  4. 安南ばか自殺ステイルメイト 16手 神無太郎 (正解者12名)
  5. 安南ばか自殺ステイルメイト 32手 神無太郎 「白虹」(正解者9名)

「詰」以外の目的を達成するルールの特集…のはずが、実際にはステイルメイト特集になってしまった回。
特に「ばか千日手」の作品が寄せられなかったのは不思議。
普段なら「ばか詰枠」として、お題とは無関係な「ばか詰」を一題入れるのだが、諸般の事情で「打歩ばか詰」で代替。
そのせいか解答も低調で、正解二桁は4番のみという寂しい結果だった。
作品の難度は通常の「氾濫」と同程度で、質も決して低くないと思うのだが、やはり「詰」を目指してこその「詰将棋」ということだろうか。

第42回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

 
第43回
出題 2015.12
結果発表 2016.03
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか詰 111手 神無七郎(正解者8名)
  2. ばか詰 7手(※Amazon使用) 変寝夢 (正解者16名)
  3. ばか自殺ステイルメイト 12手(※Grasshopper使用) 神無太郎 (正解者7名)
  4. 打歩ばか詰 33手(※NightRider使用) 神無三郎 (正解者4名)
  5. ばか詰 52883手(※10跳王使用) もず(正解者3名)

解答数減覚悟で、第20回以来の「フェアリー駒特集」を組んだ回。
フェアリー駒が使われる機会は増えており、今ならそれほど抵抗感なく受け入れられるという見込みもあった。
結果は解答者22名で、まずまず。「ばか詰枠」として出題した1番がもっと易しければ更に解答者は多かっただろう。
5番はもず氏が2003年に原図を作られていた作品で、ここでようやく正式発表を迎えられた。
作家が作品発表を急ぐ必要がなく、じっくり作品を練れるのは良いことだと思う。

第43回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

第44回
出題 2016.06
結果発表 2016.09
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか詰 35手 神無三郎 (正解者26名)
  2. 強欲詰 11手 上谷直希 (正解者9名)
  3. Isardamばか自殺ステイルメイト 9手 神無太郎 (正解者4名)
  4. 強欲ばか自殺詰 18手 たくぼん (正解者11名)
  5. ばか自殺詰 98手 神無三郎 「剣の舞」 (正解者1名)

今回は「逆王手」の特集回。
逆王手はフェアリーに特有な概念ではないが、逆王手を含みにした余詰防止や、最低1回は逆王手が入るルールなど、
普通詰将棋以上にフェアリーでは逆王手の重要性は高い。
マニアックなルールが少なかったのと、1番が易しかったおかげか解答者数は31名と盛況。
神無三郎氏が易しい1番で最多正解数、難しい5番で最少正解数。両極端の作品で最初と最後を締めた回だった。

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第45回
出題 2016.12
結果発表 2017.03
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか千日手 14手 北村太路 (正解者8名)
  2. 限定ばか千日手 10手 ※2解 青木裕一 (正解者a)13名、b)16名)
  3. ナイト王ばか千日手 28手 神無太郎 (正解者5名)
  4. ばか千日手 32手(Grasshopper使用) 変寝夢 (正解者3名)
  5. ばか詰 169手 神無七郎 (正解者4名)

今回は「無限」の特集回。
詰将棋で「無限」はあまり意識されない概念なので、例として
・駒数や盤の大きさが無限のルール
・「千日手」をルールに含むもの
・間接的に無限と関連する構想(例:「金が無限にあっても詰まない」)
・無限軌道(例:知恵の輪、馬鋸)を含む趣向作
・「∞」形の曲詰。
の5つを挙げたが、投稿があったのは「千日手」と「∞」の曲詰だけだった。
というわけで、持駒歩∞の自作を追加して出題した。
唯一の「ばか詰」だった5.が難解だったせいで解答者数は伸び悩んだが、駒数や盤の大きさが無限のフェアリー作品も、いずれ珍しいものではなくなると思う。

第45回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

第46回
出題 2017.06
結果発表 2017.09
担当 神無七郎
発表作品
  1. 詰将棋 24手 ※受先 志賀友哉 (正解者20名)
  2. ばか詰 10手 ※受先 青木裕一 (正解者22名)
  3. ばか自殺詰 13手 (Grasshopper使用 ※受先) 神無太郎 (正解者8名)
  4. PWC連続詰 12手(Nightrider使用) 変寝夢 (正解者3名)
  5. 成禁非王手可天使詰 1133手 一乗谷酔象 「時は金なり」(正解者2名)

今回のお題は「手番」。
指将棋では大変重視されるのに詰将棋では無視されがちな「手番」の概念にスポットライトを当てようという趣旨だ。
集まったのは「受先」「連続詰」「天使詰(最長ばか詰)」の3種。
比較的易しい問題から、かなりの難問まで難易度のバランスも良かったと思う。
特筆すべきは市村道生氏による第5番「時は金なり」への余詰指摘。
この年の末に亡くなられる直前だったにもかかわらず、その頭脳には些かの陰りもなく、偉大な解答者であったことを改めて認識させられる。

第46回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)
市村氏による第5番「時は金なり」への余詰指摘(fmo形式)
第5番「時は金なり」の修正図(1111手、fmo形式)
 

第47回
出題 2017.12
結果発表 2018.03
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか詰 149手 神無七郎 (正解者9名)
  2. Andernachばか詰 9手 青木裕一 (正解者14名)
  3. Andernachばか自殺詰 8手(包使用) 変寝夢 (正解者9名)
  4. ばか詰 5手(中立駒使用) 神無太郎 (正解者11名)
  5. ばか詰 7手(中立駒使用) 神無太郎 (正解者8名)

今回のお題は「駒の所属」。
普通の詰将棋で駒の所属が変わるのは駒が取られたときだが、フェアリーではそれ以外の状況でも所属が変わることがある。
また、どちらにも所属しない駒や、独自のカテゴリーに属する駒も使われる。
今回出題することになったのは、駒を取るとその場で相手の駒になる「Andernach」と、盤上にいる時はどちらからも動かせる「中立駒」。
特に中立駒は詰パラでは実質初登場になる(むかし登場した時とはルール設定が変わっている)ため、出題稿の増ページの許可を貰い、詳細なルール説明と例題を用いた解説を行った。
これで充分にルールを理解して貰えたかどうか分からないが、正解者数を見ると最低限の内容は伝わったと思う。
何事も初めの一歩を踏み出すことが重要だ。

第47回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

第48回
出題 2018.06
結果発表 2018.09
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか詰 9手(中立駒使用) 神無太郎 (正解者11名)
  2. ばか詰 11手(中立駒使用、駒余り可) 神無太郎 (正解者2名)
  3. 背面打歩ばか自殺詰 16手 神無三郎 (正解者4名)
  4. 最善自殺詰 22手 神無七郎 (正解者8名)
  5. 成禁ばか詰 61手(Sparrow使用) 神無七郎 (正解者2名)

今回のお題は「古典詰将棋」。
古典詰将棋に含まれる様々な要素や主題を抽出し、フェアリーとして再解釈した作品を募集した。
しかし、募集意図が全然伝わらなかったらしく、投稿が集まらなかった。
そのため、登場作家が神無一族だけになり、自作を2つも出題することになってしまった。
各作品には関連する古典作品が示されていたが、これもあまりヒントにならなかったようで、解答成績も今ひとつ。
ただ、結果稿を読めば古典作品をフェアリー視点から再解釈することの意味が分かると思うので、ご一読いただきたい。

第48回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

第49回
出題 2018.12
結果発表 2019.03
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか詰 115手 神無三郎 (正解者14名)
  2. PWC多玉ばか自殺ステイルメイト 14手 神無太郎 (正解者9名)
  3. 強欲ばか詰 73手 たくぼん (正解者11名)
  4. 打歩ばか詰 89手 神無七郎 (正解者12名)
  5. 天使詰 785手 一乗谷酔象 「Newton's cradle」 (正解者8名)

今回のお題は「理論上の上限・下限」。
詰将棋には盤駒やルールから自然に生まれる限界値があるので、それを主題とした作品を募集した。
前回に続き、募集意図が伝わりにくく、記録作や条件作と混同されてしまったようだ。
集まった作品の難度がそれほど高くなく、普段より解答成績が良かったのがせめてもの救い。
出題稿でも書いたように、今までスポットライトが当たって来なかった「上限・下限」に着目し、それをテーマとした作品を作ることは重要だと思う。

第49回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

第50回
出題 2019.06
結果発表 2019.09
担当 神無七郎
発表作品
  1. ばか詰 107手 たくぼん (正解者5名)
  2. キルケばか詰 5手(2解) 青木裕一 (正解者a)16名、b)13名)
  3. 点鏡ばか詰 5手 神無太郎 (正解者8名)
  4. 点鏡ばか自殺詰 4手(2解) 占魚亭 (正解者a)14名、b)10名)
  5. ばか自殺詰 40手 たくぼん (正解者5名)

今回のお題は「対称性」。
対称性、あるいは非対称性にスポットを当てた作品の特集だった。
このお題にした理由は言葉の遊び。「50は100の半分」→「折り返し」→「左右対称」→「対称性」という連想。
「氾濫」を後50回もやれるとは思えないのだが、お題を決めるためだけなら問題ないだろう。
この回には点対称を利用したルールである「点鏡」の出題が2作あり、詰パラにおける点鏡ルールのお披露目にもなっている。
出題作は最初と最後がやや難解。前回と比べ解答総数は増えたのに、全題正解者は減るという皮肉な結果となった。

第50回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

第51回
出題 2019.12
結果発表 2020.03
担当 神無七郎
発表作品
  1. 協力詰 71手 神無三郎 (正解者5名)
  2. All-in-Shogi協力自玉詰 6手 青木裕一 (正解者10名)
  3. AntiAndernach協力詰 39手 神無七郎 (正解者5名)
  4. 協力自玉詰 42手 神無三郎 (正解者8名)
  5. 協力自玉詰 70手 たくぼん (正解者5名)

今回のお題は「局面の局所的な変化」。
小さな変化やその積み重ねを主題とした作品の特集だった。
このお題に想定以上に忠実だったのはAの青木裕一氏の作品。
「局面」の見えない部分(直前の着手)の変化に焦点を当てた作品は、この5作中最も異彩を放っている
なお、この回からルール名称に「ばか詰」「ばか自殺詰」ではなく、「協力詰」「協力自玉詰」を用いている。
フェアリーも歴史が長くなり、「一部の変わり者の詰棋人の趣味」から「詰棋人の教養の一つ」に位置付けが変わってきた。
「氾濫」も節目の50回を過ぎ、ふさわしい名称を用いるには、ちょうど良い頃合いだったと思う。
失敗だったのは、この回に詰パラ初登場となるルールを2つも入れたこと。
例題や説明の不足はいかんともしがたく、解答者数減の要因になってしまった。
やはり新ルールの導入は一回に一つに絞るべきだった。

第51回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

第52回
出題 2020.06
結果発表 2020.09
担当 神無七郎
発表作品
  1. 協力詰 227手 神無七郎 (正解者15名)
  2. Isardam協力詰 9手 神無太郎 (正解者18名)
  3. 協力自玉ステイルメイト 25手(受先) 上谷直希 (正解者11名)
  4. Andernach協力詰 33手 神無七郎 (正解者15名)
  5. 強欲協力詰 107手 たくぼん (正解者6名)

今回のお題は「ルールの回避」。
ルール独自の着手を防ぐ狙いを含む作品の特集だった。
このお題には、純粋な回避だけでなく、「ルールの特性の回避のために、ルールの特性を活用する」逆説的な構成を堪能して貰おうという意図もあった。
出題作は「Isardam特有の受けの回避」「受先で得た1手の放棄」「所属変更の回避」「強欲応手の回避」を狙いに含んでおり、今回の募集意図に相応しいものだった。
前回よりも解答者数が増え、企画として成功した回だったと思う。

第52回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

第53回
出題 2020.12
結果発表 2021.03
担当 神無七郎
発表作品
  1. 協力詰 21手 神無七郎 (正解者26名)
  2. キルケ協力自玉詰 14手 青木裕一 (正解者16名)
  3. 協力詰 7手 神無太郎 (正解者13名)
  4. 打歩協力自玉詰 14手 神無三郎 (正解者15名)
  5. 天使詰 77手 一乗谷酔象 (正解者5名)
  6. 最悪詰 51手 真T (正解者2名)

詰パラ通巻777号記念。「7」にちなんだ作品の特集。
この回の最大の目玉は真T氏の最悪詰。7種連合という驚くべき作品で、当然のごとくこの年度の妖精賞を受賞した。
作者によると、この作品が誕生したきっかけは第109回WFP作品展の青木裕一氏作(WFP109-6 最善詰 11手)とのこと。
これが7種連合に繋がるとは……普通の作家なら逆王手を利用する3種連合くらいで満足してしまうはず。
何か着想を得たとき、それを掘り下げ、より深遠な構想に高める創作姿勢と、構想を現実の図に結実させる創作力の双方が揃わねば、このような作品は生まれない。
ページ数の関係でこの「裏話」は割愛したが、ルールの垣根を超えて得た着想を、究極の姿にまで高めた傑作だと思う。

第53回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

第54回
出題 2021.06
結果発表 2021.09
担当 神無七郎
発表作品
  1. 協力詰 9手(持駒桂の枚数と詰手順を答えよ) 青木裕一 ※三桂あって詰まぬことなし(正解者18名)
  2. 協力自玉詰 12手 神無太郎 ※下段の香に力あり(正解者9名)
  3. 協力詰 79手 神無三郎 「朧車」 ※桂頭の玉、寄せにくし(正解者10名)
  4. 協力自玉詰 46手 神無三郎 ※遠見の角に好手あり(正解者7名)
  5. PWC打歩協力詰 193手 たくぼん ※一歩千金(正解者1名)

今回のお題は「将棋の格言」。
格言には様々なものがあるので、創作の制約になることはほとんどなく、むしろ着想の源泉になることを期待してのテーマ設定だった。
格言がヒントとなることで、解答者にとっても難解作揃いの「氾濫」に挑み易くなるという利点もある。
一作だけ格言を伏せて出題したが(青木裕一氏作)、解答者ほぼ全員格言を正答。「三桂あって詰まぬことなし」が「四桂だと詰まない」の意味になるユニークな作品だった。
D(たくぼん氏作)は難解過ぎて正解は作者自身のみとなったが、格言がヒントとなったおかげで、難解作が多い割には良く解答が集まったと思う。

第54回の募集要項

第54回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

第55回
出題 2021.12
結果発表 2022.03
担当 神無七郎
発表作品
  1. 協力詰 45手 神無七郎(正解者15名)
  2. Koko協力詰 7手 青木裕一(正解者12名)
  3. 打歩協力詰 17手(Grasshopper使用) 神無太郎(正解者4名)
  4. 打歩協力詰 193手 たくぼん(正解者8名)
  5. PWC協力詰 307手 神無七郎(正解者2名)

今回のお題は「歩の特殊性」。
歩には他の駒にない特殊な禁則が適用されることに焦点を当てた作品を募集した。
従って「打歩詰」「二歩」「行き所のない駒」の3大禁則はすべて登場している。
また、歩には「枚数が多い」という特殊性もあるので、自作から歩の枚数を制限した作と、無限枚に拡張したのと同等の作を出題した。
難易度は前回とほぼ同程度で、解答者数もほぼ同じ。「半期に一度の力試し」としては、この位が適切なのかもしれない。

第55回の募集要項

第55回出題作品の棋譜ファイル(fmo形式)

 


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