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12月号 結果

第16回

神無一族の氾濫
担当 神無七郎

藤沢英紀―「全体を通しての共通のテーマ」とは、「歩の活躍」ですか?

☆ 正解です。テーマが分からなかったという人は、難しく考えすぎたのかも。

@神無大九郎

59香、58歩、同香、55歩、54歩、同玉/57歩、55歩/53歩迄7手。

【安南】味方の駒が上下に連なったとき上の駒の利きが下の駒の本来の利きになる。

【キルケ】取られた駒が最も近い指し始めの位置に戻される。戻せない場合は持駒になる。

☆ 初手は当然香打ですが、これに対する合駒が問題。歩以外では、キルケルールによって盤上に再生してしまい、持駒となりません。

☆ 歩なんか入手して何の役に立つのかと一瞬思いますが、安南ルールを活かして玉を歩に変えれば、歩で玉を仕留めることができるではありませんか!

筒井浩実―安南キルケというルールが先後両方の指し手に活かされているのが好感。

岩本修―鮮やかな突歩詰。

24―合駒をする位置が鍵。

今泉桂華―キルケらしく、位置の絶対性が高いのがいい。

☆ 試しにこの条件(安南キルケ裸玉持駒1枚)で全検したところ、本作(とそれを横にひとつ移動させた図)以外には「作品」らしくなっているものはありませんでした。作者も全検でこれを見つけたのでしょうか。

佐藤善起―詰将棋の安南とチェスプロブレムのキルケとの合体とは驚いた。

☆ 日本でのキルケルールの浸透度はまだまだのようで、本作でも、取った駒を盤面に戻さない誤解とか、受方の駒を攻方の駒として戻したりする誤解がありました。フェアリーランドでもこのルールを扱ってくれたらいいのに、と思います。

A神無太郎

24歩、同玉、16王、23玉、24歩、33玉、25王、43玉、
44歩、同玉、36王、43玉、44歩、53玉、45王、63玉、
64歩、同玉、56王、63玉、64歩、73玉、65王、83玉、
84歩、同玉、76王、83玉、84歩、73玉、85王、82玉、
94王、81玉、83王、72玉迄36手。

市村道生―王が千鳥に追う順は、リズム感があり十分楽しめました。好作。

駒井信久―ふた筋ごとの反復が珍しい。

24―楽しい、楽しい趣向作。コメント通り。(←珍しい?)

☆ ご覧の通り8手一組の趣向作。歩が王に変身したり、また歩に戻ったりしながら、玉を追っていくのが安南らしくて良い所です。

宮谷保可楽―「収束も基本に忠実」とあると、どうしても桂頭王を思い浮かべてしまう。趣向も基本的ではあるが楽しい。

☆ 確かに桂頭王も基本なのですが、歩頭王も良く出てくる形なので、憶えておいて下さい。

作者―誰も信じないと思うが、山田嘉則氏の安南ば自30手(44王+歩4、32玉)が創作の起点。趣向サイクルをギリギリまで伸ばし、あっさり収束させるところに腐心。91歩の配置は残念だが仕方なし。

☆ 作者の見識が表れているコメントです。特に91歩配置へのこだわりなどは、いかにもこの作者らしい潔癖さだと思います。

B神無六郎

(成玉を「宝」と表す)
15歩、58玉成、59歩、57宝、58歩、13宝、14歩、22宝、
13歩成、32宝、23と、42宝、33と、53宝、43と、54宝、
44と、55宝、45と、56宝、57歩、47宝、46と、37宝、
36と、55宝、56歩、54宝、55歩、53宝、54歩、42宝、
53歩成、32宝、43と、22宝、33と、13宝、23と、14宝、
25と迄41手。

【角王】王(玉)の利きが通常の玉の利きでなく、角の利きとなる。敵陣で成ることもでき、この場合は馬の利きになる。

二股桂馬―奇跡的な詰上りに感動! 狙って作図されたのなら驚嘆!! 今回の中でピカイチ!!!

筒井浩実―序盤と終盤に上辺で対称的な手順が出現するのが面白い。

鎌谷輝裕―91で詰むのかと思ったが、43手かかってしまう。ではどこで・・・・・・。な〜んだ・・・・・。盲点でした。

☆ 持駒の歩2枚をと金に変えて詰めるのはすぐ判りますが、鎌谷氏のコメントにもあるように91で詰まそうとすると、手数不足になり、攻方王の周りを成玉が往復する不思議な手順が成立します。詰上りはダイヤモンド型の還元玉。作者は双裸玉のばか詰をいろいろ研究しているようで、これからもその成果に期待したいと思います。

作者―虫の良い願いがそのまま実現した希有な例。角王詰は11で詰む余詰筋との戦いに終始します。15玉で駄目なのも、そのためです。

C神無七郎

59歩、36鳳、37歩、35鳳、36歩、17鳳、18歩、27鳳、
28歩、26鳳、27歩、25鳳、26歩、47鳳、48歩、46鳳、
47歩、45鳳、46歩、67鳳、68歩、57鳳、58歩、56鳳、
57歩、55鳳、56歩、54鳳、55歩、76鳳、77歩、66鳳、
67歩、65鳳、66歩、87鳳、88歩、97鳳、98歩、96鳳、
97歩、95鳳、96歩、94鳳、95歩、93鳳、94歩、75鳳、
76歩、74鳳、75歩、64鳳、65歩、82鳳、93歩成、81鳳、
92と、71鳳、81と、72鳳、71と、82鳳、72と、92鳳、
93歩、91鳳、82と迄67手。

【鳳凰王】王(玉)の利きが通常の玉の利きでなく、中将棋の鳳凰の利きとなる。ただしこの鳳凰は成らない。


(鳳凰の利き)

今泉桂華―リーパー物と似た雰囲気で楽しめる。まず収束をある程度絞り、後は逆算でじきに解けた。

☆ 本作は典型的なルート決定問題。94歩・82鳳の形を実現するために、1筋まで鳳凰が迂回する所が見所です。

藤沢英紀―「歩は戻れない」ということを痛感。

市村道生―93歩成から逆算で解く。鳳凰王の華麗な動きが印象に残る。

駒井信久―全筋で歩が動くので一応満足できる。

佐藤善起―収束を先に発見した。今回最も難解。

☆ 鳳凰というのはある意味扱いにくい駒です。というのも、下手な作り方をすると、鳳凰独特の斜めのジャンプが出現せず、まるで金を追っているような地味な手順になってしまいます。

筒井浩実―93歩成からの逆算が一本道なので意外に易しかった。斜めの動きのない地味な収束に些か拍子抜け。

☆ 収束はこれでご勘弁を。

D神無三郎「佐保姫U」after橋本哲

(歩またはと金で追う手順を・・・で略記します)
99歩・・・18と、29玉、28と、19玉、18と、同玉、
19歩・・・98と、89玉、88と、99玉、98と、同玉、
99歩・・・17と、28玉、27と、18玉、17と、同玉、
18歩・・・97と、88玉、87と、98玉、97と、同玉、
98歩・・・16と、27玉、26と、17玉、16と、同玉、
17歩・・・96と、87玉、86と、97玉、96と、同玉、
97歩・・・15と、26玉、25と、16玉、26と、同と、
17歩・・・95と、86玉、85と、96玉、95と、同玉、
96歩・・・14と、25玉、15と、35玉、25と、45玉、
35と、55玉、45と、同と、
56歩・・・16と、27玉、26と、17玉、16と、同玉、
17歩・・・43と、54玉、44と、63玉、54と、73玉、
64と、83玉、74と、同玉、75金、63玉、64金迄399手。

☆ 「after ○○」は「○○に倣って」の意味。チェスプロブレムで改作物の出題時に使われる表記です。本作は橋本哲氏の作品を小駒図式にアレンジした作品です。

今泉桂華―目新しいところや難しいところがある訳ではないが、感心させられる。配置に全く無駄がなく、この完成度の高さは素晴らしい。

☆ この短評にもあるように、この作品はオリジナリティではなく、作図技巧と作品の完成度が見所。筆者の記憶が確かなら、この作品は小駒図式のばか詰の最長手数というだけでなく、非限定を一切含まないばか詰の最長手数作です。

藤沢英紀―左辺のと金がなくなるとアウトなのでその前にひと仕事せねばと思い、焦りました。26と(277手目)がギリギリで局面を打開するうまい手ですね。

橋本哲―そういえばこういうの作りましたねえ。パラ入会が1975年8月だから、ばか詰というのを知っていきなり作ってみた、といったところだったでしょうか。そんな初心者の作を記憶していて貰えたのはうれしいことです。

☆ 左がその橋本氏作。未見の方はぜひ解いて下さい。

橋本哲(1976年11月)
ばか詰 477手

持駒 歩

追記(2005.9.2)― 小駒図式の最長手数

鮎川哲朗氏より、神無三郎氏の改作案を上回る長手数の小駒図式が送られてきました。
「75と」をはがす構成から、粘りある収束に繋げ、約40手も記録を更新しています。
鮎川氏は歩による回転型の追い回しで905手もの長手数作を実現した実績があり(
ばか詰中長編 検討結果報告(2)参照)、本図でもその実力の一端を示したと言えるでしょう。

橋本哲作の改案(神無三郎、鮎川哲朗による)

→動く盤面で鑑賞する(IE専用、JavaScript/CSS使用)

 

【総評など】

二股桂馬―今回はコメントによるヒントが助かりました。難問ばかりが良問にあらず、です。

☆ 解答者数は前回とほぼ同じですが、今回は全題正解者が7名も! 難解でない良問をお届け出来たと思っていいでしょうか。


【全題正解】橋本 哲、今泉桂華、藤沢英紀、駒井信久、佐藤善起、筒井浩実、宮谷保可楽
【4題】市村道生、二股桂馬、半裸一族
【3題】佐藤宣多、24
【2題】鎌谷輝裕
【1題】太田啓好、加賀孝志、岩本 修、原岡 望
【0題】天津包子、林八江子、
(太字5名当選)

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