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12月号 結果

第20回

神無一族の氾濫
担当 神無七郎

@神無三郎「B面の夏」

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34角、25桂、同角、27玉、16角、同玉、25桂、17角、同香、27玉、
38角、18玉、29角、27玉、38角、17玉、29桂、18玉、27角、29玉、
38角、18玉、29角、27玉、28歩、16玉、38角、27香、同角、同歩成、
18香、17角、同香、同と、38角、26玉、27歩、16玉、26歩、27香、
同角、同玉、29香、28角、同香、16玉、38角、27桂、同角、26玉、
38桂、同桂成、同角、27歩、同香、16玉、26香、同玉、27歩、16玉、
26歩、27香、同角、同玉、29香、28角、同香、16玉、27角、26玉、
38桂迄71手。

須川卓二―幕開けには軽い長編ばか詰がいい感じです。気持ちよく手順が進む。

☆ 難解作の多い「氾濫」において、常に一服の清涼剤の役目を果たしてくれるのが、三郎氏のばか詰。適度な難度と繊細な手順で、今回も多くの解答を集めました。

作者―玉方に駒を渡すというのがテーマ。中盤面倒ですが、客寄せになるかな? タイトルは『B面の夏』。知っている人は知っていると思いますが、黛まどかさんの俳句からです。

名越健将―角の利きを生かした歩の裏側香合(特に2回目)が盲点でした。

kz―詰み形がわかりにくかったです。17とは消す必要なかったんですね。

川並洋太―角と香がどんどん入れ替わって楽しいです。また、36手目〜39手目の歩をどかす手順がうまいと思います。

☆ 狭い場所での細やかなやりとりから一転、中盤以降には持駒変換風の手順が現れます。普通詰将棋ならば、と金はがし等と組み合わせて何回も繰り返すのでしょうが、本作では桂1枚はがしてすぐ収束します。これは手順の完全限定を重視するフェアリー特有の表現です。余韻がないと感じる人もいるでしょうが、慣れればむしろ冗長でないことに好感が持てるようになると思います。

A神無六郎

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59香、58角、同香、26伍、53角、52伍、62角成迄7手。

【伍(Five-Leaper)】距離5の位置(<0,±5>, <±5,0>, <±3, ±4>, <±4, ±3>)に跳ぶ。

作者―私の好みは、サプライズエンディング。この作も、5リーパーの斜めの利きと、角の利きとのずれを利用した収束3手が狙いです。

☆ 本作のハイライトはやはり5手目の53角でしょう。自らの香の利きを遮るための限定打!

北村太路―一度香の利きを遮る角打ちが良い。

宮谷保可楽―Leaperって角の方が捕まえやすそう(飛より)。ラスト3手はアクロバティック。

駒井信久―往復して還元玉はエレガント。

☆ 心配したのは「伍」の利きの確認作業に追われて、収束の面白さを味わえないのではないかということ。実際、苦心の跡を物語る短評が集まりました。

高橋耕之介―自玉(伍)のききにしるしをつけて指でたどって詰ました。

須川卓二―効きがごちゃごちゃになるので、効きの場所に駒を立てて置いて考えました。

歩詰香平―「伍」の動きを図に書き込んだらすぐに解くことができました。最終手成生限定もすごいと思います。

☆ 宮谷氏の評にもある通り、足の長いリーパーは、詰める時には飛よりも角の方が強力な武器になります。その種の駒が出てきたら、まず角や馬での詰上りを考えてみてください。

B神無大九郎

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33角、73Q、55角、84Q、73角、85Q、86歩、45Q、46歩、44Q、
45歩、33Q、55角、24Q、33角、46Q、24角、47Q、48銀、65Q、
66歩、64Q、65歩、73Q、46角、84Q、57角、66角、85歩、51Q、
24角、73Q、51角、46Q、57銀、47Q、56銀、87Q、78銀、88Q、
67銀上、48角迄42手。

【Q(クイーン)】飛および角を併せた動きをする。

【全取禁】詰手順中、攻方・受方共に駒を取る手があってはならない。詰みの概念も取禁を前提としており、駒を取る以外詰みを回避できない局面は詰みとみなす。

【成禁】詰手順中駒を成る手があってはならない。

☆ 大九郎氏の実戦初形シリーズの一作。4年前にできていた作品ですが、難解なためストックしていました。では正解者3名の評から。

駒井信久―この種の問題で非限定なしはすばらしい。

市村道生―57角66角85歩の3手が解図の鍵だが、前後の手順の整理・選択が大変。傑作。

大和敏雄―3手目で間違い(51角)手間取ってしまった。6筋の歩を後で動かすのがポイント。秀作。

☆ 自玉が強力なQであるため、受方のQを8段目に誘導し、角を66から48に活用する詰上りは理詰めで想定することができますが、そこに至る手順には紛れが多く、正解への到達は困難です。例えば大和氏の短評にあるように3手目51角としても46手で詰ますことができますし、8手目65Qとして6筋の歩を先に突いても46手で詰みます。初形を46歩型にして、この紛れ筋を生かしても42手の完全作になりますが、本図との優劣は微妙なところでしょう。

☆ 実戦初形からの条件付ばか詰やばか自殺詰はかなり昔から試みられていますが、本作では玉をQにするというアイデアで見事に完全限定を達成しています。実戦初形から歩以外は絶対動かさないというこだわりも作品価値を高めています。

C神無七郎

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29金、17G、28金、39G、29金、37G、28金、59G、69金、57G、
68金、79G、69金、77G、68金、99G、98金、同と、89金、97G、
98金、79G、69金、77G、68金、59G、69金、57G、68金、39G、
29金、37G、28金、19G、29金、17G、16と、35G、36歩、37G、
28金、19G、29金迄43手。

【G(グラスホッパー)】クイーン方向に駒を1つ飛び越えその直後の位置に止まる。

☆ 筆者がこの駒と出会ったときに最初に思いついた趣向。無難にまとまったので、G入門編として出題しました。

歩詰香平―グラスホッパー王の動きを楽しめました。

永遠旅人―ルールさえ把握できれば、本当に易しい。

佐藤宣多―16とを実現するために金の上下運動、ご苦労様でした。

須川卓二―すらすら進むのだが、収束でちょっと小考?36歩37王がちょっと盲点。

☆ 本作には1番と同数の解答(15通)が集まりました。少しでもGという駒の面白さが伝われば幸いです。

D神無七郎

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57歩、17G、56歩、57銀、18歩、37G、38歩、67G、68歩、45G、
46歩、18G、19歩、36G、37歩、56G、59G、66銀生、26G、76G、
45歩、36角、46G、77銀生、79G、26G、76G、66角、56G、58角生、
59G、76G、26G、36角生、46G、22角、79G、26G、76G、21G、
26G、71G、21G、78G、71G、73桂、74G、34G、44歩、37G、
34G、82G、37G、12G、82G、32G、43歩成、54G、53と迄59手。

☆ 詰将棋の主役は作者でしょうか、それとも詰将棋それ自体でしょうか?

☆ 詰将棋、特に長編詰将棋では、先に構想があって、それを実現するために配置を考えるというのが一般的な創作法です。しかしフェアリー詰将棋を作っていると、時に底の見えない深淵に遭遇することがあります。そこは制御不能の領域であり、ちょっとした初期配置の違いが局面の展開を大きく変え、予測しない結果をもたらします。そこでは従来のような、作意に従って配置を決める創作法は取れません。逆に、詰将棋それ自体に潜む自然の性質に作者が従う必要があります。

☆ その意味で今回出題した4番と5番はまったく対照的な作品です。前者は趣向手順に還元玉、最初と最後を同じ手で統一した構成など、完全に作者の意思が支配した作品です。それに対し後者においては、作者は手順をほとんど制御していません。わずかに61歩の配置が36手目を22角に限定する意図をもって置かれていますが、それ以外には何の加工もしていないのです。

駒井信久―駒取りを目指して失敗。盤上を大きく飛び回ってと金を作るのが正解だった。

市村道生―待望の一局。期待どうり、G特有の華麗な捌きで詰後感は最高。秀作。

☆ 一族の中で正解者0の予想もあったこの難問に正解を入れた両氏には感嘆の他ありません。なお、本作品の36手目に登場する角の大移動をもう一枚の角にもやらせようとして失敗したのが、第18回氾濫の5番でした。直感が通用しない上に、余詰が出ても修正できないのがこの種の作品の難点です。

【総評等】

歩詰香平―自分で解けるものだけしか解答することはできませんが、楽しんで解けました。

☆ 今回はフェアリー駒特集ということで、皆さん苦労されたようです。解けるものだけで結構ですので、解答をよろしくお願いします。


【全題正解】 駒井信久、市村道生
【3題】 宮谷保可楽、kz、歩詰香平、須川卓二、川並洋太、大和敏雄、高橋耕之介
【2題】 永遠旅人、佐藤宣多、半裸一族、北村太路
【1題】 天六辰年、名越健将、マーブルス、今川健一、天津包子、森美憲、原岡望
【0題】 井上道宣

 (太字5名当選)

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