■ 神無一族の氾濫 [問題][前回][次回][目次]／[トップページ]
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①神無三郎「兎狩」
69歩、78玉、67角、69玉、58角、78玉、69角、89玉、78角、98玉、
87角、89玉、98角、78玉、87角、67玉、78角、57玉、58歩、同玉、
69角、49玉、58角、38玉、49角、29玉、38角、18玉、27角、29玉、
18角、38玉、29角、49玉、38角、58玉、59香、67玉、49角、58歩、
同角、57玉、49角、58歩、同香、67玉、57香、同玉、58歩、67玉、
57歩、58香、同角、78玉、67角、同玉、69香、68角、同香、57玉、
39角、48歩、同角、68玉、69歩、77玉、59角、68香、同角、88玉、
79角、77玉、88角、同と、79香、78角、同香、同と、59角、68香、
同角、88玉、79角、77玉、88角、67玉、68歩、同玉、77角、57玉、
68角、同と、59香、58角、同香、同と、39角、48香、同角、68玉、
57角、同と、69歩、77玉、79香、78角、同香、67玉、49角、58歩、
同角、78玉、67角、69玉、78角、58玉、69角、49玉、58角、38玉、
49角、29玉、38角、18玉、27角、29玉、18角、38玉、29角、49玉、
38角、58玉、59歩、67玉、49角、58香、同角、78玉、69角、89玉、
78角、98玉、87角、89玉、98角、78玉、79香、68玉、69歩、67玉、
89角迄151手。
〝一揆塚野をほうほうと兎狩〟 （中 拓夫）
市村道生―近いと金の移動ばかり考えて、随分てこ摺る。心理的な名局。
☆ 57の地点をと金で埋めて、７筋に歩を打てないことを利用して角の睨みで詰上げる――この仕組みを見破るのは容易ではありません。５・６筋に攻方の歩が置かれていないことや、７筋だけに受方の歩が置かれていることがヒントになりますが、それに気付くには相当の解図力が必要でしょう。しかも57を埋めるのは79ではなく、97のと金なのです。更に、手順中にある陥穽が、この作を更に難解にしています。
駒井信久―ＡではなくＢで69香として一歩稼ぐ153手の紛れにハマった。
☆ 駒井氏の評にあるＡは37手目59香、Ｂは89手目77角のことを指します。作意とほとんど違わないこの種の紛れに陥ると、抜け出すのは非常に困難です。
作者―『狩』シリーズ第三弾。前二作は突歩詰でしたが、今回は合駒なしの詰め上がり。実は七郎氏より97となしで歩を発生させる手順の提案もあったのですが、手順を一意に限定できず、おあずけとなりました。
☆ 正解者はわずか２名。もし歩を合駒で発生させる手順が実現していたら、どうなっていたことか…。
②神無太郎
15角、16銀、26角、57玉、48角、49飛、46角、47金、35角、36銀、
24角、25銀右、35角、36桂迄14手。
【背面】敵駒と背中合わせになったとき、互いに利きが入れ替わる。
【ばか自殺ステイルメイト】先後協力して最短手順で、攻方をステイルメイト(王手は掛かっていないが、指し手のない状態）にする。
ほの字―９手目56角、13玉、12角成と、９月号太郎作を参考にしたつもりが難渋。やっと35角を発見。玉から離れるだけに盲点。25歩の捨て方は９月号太郎作の龍の捨て方とやや似た感じ。
☆ こちらも正解者は２名。最後に角を捨てるのではなく、桂による間接王手で角をピンして動けなくするのが特徴です。
市村道生―自然な流れで包囲網を構築。最終の４手は歳末のすす払い。好作。
☆ 市村氏の短評はこの作の２つの特徴を端的に現しています。まず、最初のキーワードは「包囲網」。これについては作者の言葉を聞いてみましょう。
作者―終始、王の周囲８枡を空けておいてのステイルメイトが狙い。
☆ 玉の周囲に駒がない詰上りをチェスプロブレムの用語で「鏡詰(Mirror Mate）」と言いますが、本作はその状態が最初から最後まで続くため、直接手のない茫洋とした不思議な感覚を醸し出しています。
☆ 次のキーワードは「すす払い」。25歩を処分するために、銀の背駒を操作する収束の４手は、冗長と感じる人と、良い味付けと感じる人の両方がいるでしょう。25歩を省いて10手で出題すれば正解者は増えたでしょうが、作品としては、やはりこの４手があった方が良いと思います。
③神無六郎
47飛、53騎、57飛、65騎、67飛、46騎、47王、58騎、57飛、37騎、
46王、16騎、17飛、35騎、15飛、23騎、25飛、44騎、45王、36騎、
35飛、55騎、44王、74騎、75飛、53騎、73飛、34騎、33飛、42騎、
43王、21騎、23飛迄33手。
【騎(ナイト)】チェスの Knight。いわゆる八方桂。
【異王(歩／騎）】攻方王が歩の性能、受方玉が騎の性能になる。
【成禁】詰手順中駒を成る手があってはならない。
市村道生―普通に追うと最後に躓く。精巧な飛車の軌跡に感嘆。
森美憲―騎の利きに王が入る錯覚を何度も繰り返してしまいました。
☆ 飛のアシストを受けながら、歩王が行進する手順が主題の作品です。初手の遠打も収穫。
☆ 「合駒なし」「成禁」の条件を考慮すれば、受方21騎王、攻方23飛・43歩王の詰上りは容易に想定できますが、そこに到達するには、歩王での直接王手と、飛を影にしての空き王手を効率よく組合せる必要があります。
作者―８手目が分かれ目。25、33、45と飛ばせる規則的な追いかたを選ぶと、盤の隅でつかえて、かえって手数が伸びてしまいます。
☆ 正解者は３名。今回最多とはいえ、淋しい数字です。単独出題なら正解者が増えたかもしれませんが、他の作が難解だったため、あおりを食った格好です。
④神無七郎
47香、36Ｇ、26飛、58Ｇ、28飛、38金、48金、36Ｇ、26飛、39Ｇ、
49金、37Ｇ、27飛、57Ｇ、46香、37金、48金、39Ｇ、29飛、36Ｇ、
26飛、56Ｇ、45香、36金、47金、38Ｇ、28飛、35Ｇ、25飛、55Ｇ、
44香、35金、46金、37Ｇ、27飛、34Ｇ、24飛、54Ｇ、43香不成、34金、
55金、32Ｇ、31桂成、35Ｇ、25飛、33Ｇ、23飛成、53Ｇ、42香不成、31Ｇ、
34龍、32桂、21金、13Ｇ、24金、同桂、43龍、33金、12と、35Ｇ
46龍、32Ｇ、31金、12Ｇ、16龍、15歩、同龍、14桂、13歩迄69手。
【Ｇ(グラスホッパー）】クイーン方向に駒を１つ飛び越えその直後の位置に止まる。
【打歩】打歩以外で詰ませる手を禁手とする。
☆ こちらは香の行進が主題。③の歩王の行進とテーマを合わせたつもりでしたが…
市村道生―リズム感のある華やかな作品。収束はそう簡単ではなかったですョ。
駒井信久―この収束は難しすぎる。
☆ 出題時に「簡単な序奏と収束」と書いたのが大失言。確かに序奏は簡単ですが、収束はそうではなかったようです。作者自身は「香を42まで生のまま送り込む」という目標を「最少の駒数」で達成できて満足していたのですが、駒数を減らしたことが、難解性を増してしまったようです。
☆ 手順は「夏木立型」と言われる、玉がお供を連れて移動していく送り趣向です。攻守５枚の駒が一緒に動くので、フェアリーとしては珍しく、粘りのある趣向手順が実現できたと思います。
⑤神無七郎
37金、同金、49飛、27Ｇ、29飛、28金打、同飛、49Ｇ、48金、同金、
29飛、39金打、同飛、47Ｇ、58金、同金、49飛、48金打、同飛、69Ｇ、
68金、同金、49飛、59金打、同飛、67Ｇ、78金、同金、57飛、89Ｇ、
87飛、88金打、同飛、67Ｇ、58金、49Ｇ、89飛、69金、同飛、27Ｇ、
67飛、49Ｇ、48金、76Ｇ、77飛、36Ｇ、27金、18Ｇ、17金、48Ｇ、
78飛、28Ｇ、26桂、38金、18金、55Ｇ、75飛、37Ｇ、28金、39Ｇ、
29金、同金、35飛、37金、同飛、19Ｇ、18金、46Ｇ、47飛、16Ｇ、
17金、36Ｇ、27金、18Ｇ、48飛、28歩、同金、同金、19歩迄79手。
駒井信久―紛れが豊富でかなりの難問。67飛をテコにして千日手を脱する手を発見するのは容易ではなかった
☆ 右が本局唯一の正解者駒井氏の評です。おそらくこの辺の難度が、人間の頭で解ける限界に近いのでしょう。
☆ この作の最大の難所は35手目58金から51手目78飛まで、強引に千日手を打開するところです。46歩を取らせるには、38桂を26に跳ねなければいけませんが、そのためには、飛を８段目に移さなければいけません。その目的のため、受方は唯一の金を手放します。そこから収束までの手順も合駒の紛れが多く難解です。
☆ この作品、千日手順を活かして普通の趣向作に仕立てることも考えられますが、この素材に関しては、Ｇという駒の性質を無理やり抑えるのが最善の表現だとは思えませんでした。④のように飼い慣らしたＧが良いのか、⑤のような野生のままのＧが良いのかは、素材や表現したい主題によって異なると思います。
〔解答成績〕
☆ 今回は正解者激減で、１題以上正解された４名すべての方が当選です。余った１名分の呈賞は次回の「氾濫」に回します。正解に至らないながらも貴重なコメントを下さったお二方には、賞の代わりに、感謝の気持ちを差し上げたいと思います。
| 【４題】 | 市村道生、駒井信久 |
| 【１題】 | 森美憲、ほの字 |
| 【０題(コメントのみ)】 | ｋｚ、市原誠 |
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