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6月号 結果

第17回

神無一族の氾濫
担当 神無七郎

@神無太郎

49金、69玉、59金、79玉、89金、同歩成、69金、88玉、79金、77玉、
68金、87玉、88歩、86玉、77金、97玉、87金迄17手。

☆ 横一線に歩が並んだきれいな対称形。今回の解答者増に貢献した作品です。

市村道生―初形を見て一瞬戸惑うが、リーゾナブルな手順に好感が持てる。好作。

秋元節三―食欲をそそる客寄せ作に思わずペンを取った。

今川健一―最終図は、これと決めて取りかかる。しかし68歩を取るとは、思い及ばず苦労。

☆ 9段目では詰まないので、どこかで穴をあける必要があるのですが、正解は8筋。追い出した直後の68金がちょっと逆を突く感じで、短評もここに集中しました。

磯田征一―新発見、48金が入ってプロブレムになった。草創期には形だけで許されたことを思い出します。

☆ 好形好作で、多くの人の記憶に残る作品でしょう。

A神無三郎「親指姫」

56香、同桂、64銀、66玉、75銀右、55玉、66銀、同玉、75銀、55玉、
64銀、66玉、55銀、同玉、54飛、66玉、56飛、67玉、79桂、同と、
68歩、同玉、79金、67玉、68金、同玉、69歩、67玉、68歩、78玉、
88金、79玉、89金、68玉、79金、77玉、88金、67玉、77金、68玉、
67金、78玉、77金、88玉、87金、98玉、97金、88玉、87金、78玉、
77金、68玉、69歩、同と、67金、78玉、68金、79玉、69金、88玉、
78金、89玉、88金、79玉、89金、68玉、69歩、同龍、79金、59玉、
69金、49玉、59飛迄73手。

☆ 「姫シリーズ」の最新作。18手の序奏から、左下の箱の中で、金を主役としたパズル的な手順が繰り広げられます。

天六辰年―詰上図が見えてからも手数短縮に苦しむ。

佐々木寛次郎―苦労して77手にやっとこさ漕ぎつけた時に、駒井さんなら一発で73手だろうなぁと思った。

☆ 99桂は手数伸ばしのための配置。これがなくても完全作ですが、手数は69手となります。作る立場から言えば巧妙な配置なのですが、この桂を消去しようとして苦労された解答者が大勢いました。罪作りな配置です。

作者―金と銀との駒繰りを楽しんでください。また、初手に対して同角と応じれば、そのまま先手が詰んでしまう構成になっています。

B神無太郎

53金、同玉/69金、59香、58角、64金、同玉、65香、同玉、68香、
67香、76金、同玉、79香、78角、87金、同玉迄16手。

【キルケ】取られた駒が最も近い指し始めの位置に戻される。戻せない場合は持駒になる。(復活後の位置を/で示す)

【ステイルメイト】王手は掛かっていないが、合法手のない状態にする。

佐藤宣多―この初手は最後に考えた。9筋方向に追わなければと分かっていても、金をフリーにするのは勇気が要る。

市村道生―69金を包み込む手順が見事。芸術的な逸品。

☆ キルケルールでは、捨てた駒が盤上に再生するので、単純な捨駒ではステイルメイトに持ち込むことはできません。本作では2手目に再生してしまった金を攻方の駒と玉方の駒―取られたときに逆王手になる香と角―で囲い込んで、ステイルメイトを実現します。キルケばか自殺ステイルメイトの古典となるべき佳作です。

☆ また、これは発表に際して一族内で周到な準備をした作品でもあります。

作者―この作で特筆すべきは、作品自体ではなく、検討に使った改造版fmのことだろう。通常のfmでの検討は絶望的なルール、手数、持駒の組合せ。この難条件を逆手にとり、検討時間の短縮のための特殊ロジックをfmに組み込んだ。一作の検討のためだけにfmを改造したのは、fm十年の歴史の中で初めてのことである。fmの力技に人間の知恵を注ぎ込む。はたして、フェアリー詰将棋の未来を切り拓く手法となるか。

C神無太郎+神無八級「ポエニクス」

19飛、36歩/49金、58金/53歩、54歩/69金、78金、同歩成/69金、68金上、同と/69金、78金、58と/49金、
48金、同と/49金、58金、38と/29桂、17桂、同と/29桂、同桂/13歩、同香生/29桂、37桂、19香成、
同飛/11香、37歩成/29桂、17桂、28と上/29桂、37桂、29飛、同飛/82飛、85飛/69金、68金上、25飛/49金、
48金上、同と/49金、38金、58と/49金、48金上、68と/69金、同金上/63歩、38と/49金、58金上、48と/49金、
同金上/43歩、44歩/39銀、28銀、同飛生/39銀、38銀、同飛生/39銀、28銀、48飛生/49金、38金、58飛生/49金、
48金上、68飛生/69金、58金上、78飛生/69金、68金上、74飛生/79銀、88銀、同歩成/79銀、78銀、同と/79銀、
同銀/73歩、同飛生/79銀、88銀、同飛生/79銀、78銀、64歩/89桂、77桂、同杏/89桂、同桂/91香、48馬/49金、
同金上/22角、86飛成/79銀迄72手。

☆ 傑作が誕生しました。まずは手順を並べて鑑賞して下さい。

☆ キルケにおいては、飛び道具の王手に対して、受方の駒を合駒するのではなく、攻方の駒を復活させて、合駒の代わりに使う受けがあります。これを「魔女返し」と呼びますが、本作はその「魔女返し」と空き王手を趣向的に繰り返し、目まぐるしく局面を変化させていきます。

☆ 手順は変化に富んでいます。初形で詰上りが想定できないので、序盤は手が切れないように進めていくしかない訳ですが、26手目29飛と受けてからは、逆に多くの紛れの中から本筋を探す展開になります。8段目に金銀を揃えた45手目辺りから本作の主部と言える受方飛不成の行進が始まりますが、香の再生や邪魔な馬の移動なども挿入されており、ひと筋縄では行きません。

駒井信久―22角で44銀を取らせる筋など、紛れが多くて難しい面もあるが、面白さは抜群だった。

市村道生―キルケ駒の返し技が次々にさく裂して息をつくひまがない。パズル解きの楽しさが満喫できる傑作。

☆ 「ポエニクス(Phoinix)」は「不死鳥」の意。主に太郎氏が作図を担当し、八級氏が様々なアイデアを提供する形で創作は行われました。完成までの約3ヶ月間、2人の間で交わされたメールは200通以上。素材となる18手の小品から出発し、何度も「これが限界」という壁を突破してこの図に到達したのです。推敲を尽くし、構想と趣向を融合した傑作と言えるでしょう。

Dもず

19角、39歩成/28飛、48飛/43歩、同龍/28飛、38飛、同龍/28飛、同飛/82飛、同と/28飛、29飛、同と/28飛、
58飛/53歩、同金/28飛、48飛、同金/28飛、38飛、同金/28飛、29飛/23歩、同金/28飛、68飛/71銀、同銀成/28飛、
58飛、同全/28飛、48飛、同全/28飛、38飛、同全/28飛、29飛/41金、同全/28飛、78飛/91香、同桂成/28飛、
68飛、同圭/28飛、58飛、同圭/28飛、48飛、同圭/28飛、38飛、同圭/28飛、29飛/31銀、同圭/28飛、
88飛/83歩、同香成/28飛、78飛、同杏/28飛、68飛、同杏/28飛、58飛、同杏/28飛、48飛、同杏/28飛、
38飛、同杏/28飛、29飛/21桂、同杏/28飛、98飛、同歩成/28飛、88飛、同と/28飛、78飛、同と/28飛、
68飛、同と/28飛、58飛、同と/28飛、48飛、同と/28飛、38飛、同と/28飛、29飛/11香、同と/28飛、
98飛、同香成/28飛、88飛、同杏/28飛、78飛、同杏/28飛、68飛、同杏/28飛、58飛、同杏/28飛、
48飛、同杏/28飛、38飛、同杏/28飛、29飛、同杏/28飛、38歩迄87手。

【打歩】最終手は打歩詰でなくてはならない。

市村道生―2段に亘ってのハガシ趣向。2筋まで移動させて、そこで消す構想に感服。名作。

☆ 呼び出しはがし―こう書いてしまうとフェアリーでは珍しくない、と思う人がいるかも知れません。しかし、手順を見てください。通常の呼び出しはがしに使われる遠打ではなく、空き王手で呼び出しはがしを行っているではありませんか! しかも、呼び出される駒の種類がサイクル毎に変化しています。日本式のキルケにおいて、神無一族以外でこんな高度な作を創ってきたのはもず氏が初めてです。

作者―飛の復活をしつこく繰り返しました。受方の選択肢が少ないため、ルールに慣れれば考えやすいと思います。

☆ 着想も素晴らしいですが、無駄のない配置や繰返し数を最大に取る構図は、新人離れしています。もず氏はフェアリー以外に詰中将棋の創作等も手掛けており、今後の動向がに大いに注目される作家です。

☆ 今回のキルケ絡みの3題。ルールのせいで敬遠した方も、ぜひ盤に並べて鑑賞してして下さい。作品の良さは必ず感じられるはずです。


【全題正解】駒井信久、市村道生
【4題】宮谷保可楽
【3題】佐藤宣多、24
【2題】磯田征一、天六辰年、佐藤善起、佐々木寛次郎、飯山 修
【1題】桑田倫彦、半裸一族、林八江子、今川健一、原岡望、汗里蒔里、天津包子、千葉肇、中村増一、中西勝一、Sub、戸井田洋太、坂本竜雄、伊東史郎、秋元節三
(太字5名当選)

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