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6月号 結果

第21回

神無一族の氾濫
担当 神無七郎

@神無三郎「櫻狩」

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89と、同玉、88と、同玉、87と、同玉、86と、88玉、87と、89玉、
88と、99玉、98と、同玉、76角、87香、同角、同玉、89香、88角、
同香、76玉、98角、87歩、同角、86玉、76角、87歩、同香、96玉、
85角、87玉、76角、96玉、85角、97玉、98歩、同玉、76角、87香、
同角、89玉、98角、同玉、99歩、97玉、98歩、96玉、97歩、同玉、
99香、98角、同香、同玉、99歩、97玉、98歩、96玉、74角、85香、
同角、87玉、96角、同歩、89香、88角、同香、76玉、87角、86玉、
96角、87歩、同香、76玉、85角、87玉、76角、96玉、97歩、95玉、
96歩、同玉、85角、97玉、98歩、同玉、76角、87香、同角、89玉、
98角、同玉、99歩、97玉、98歩、86玉、89香、88角、同香、95玉、
86角、96玉、97歩迄103手。

☆ 第19回氾濫の「螢狩」に続く繊細な密室パズル。角追いを主体とした構成や最終手突歩詰が前作との関連を深く印象付けます。

鳥本敦史―角香歩を巧みに使った密室パズル。何度も堂々巡りして苦労しました。

今川健一―最後の突き歩詰まで、試行錯誤の難苦行。草臥れました、疲れました。

市村道生―95歩が巧い配置。内容が充実した密室の力作。

☆ 本作の基本構成は角香の持駒変換と歩の持駒増幅です。しかし、この作品には単純な繰返し手順は出てきません。95歩の移動・削除を行うために持駒変換・増幅が行われるのですが、毎回微妙な手順の変化が生じ、想定困難な詰上りと併せ、惰性で並べていたのでは正解に辿りつけません。

作者―狩シリーズ第二弾。狭い密室での角香歩やりとりに作者は満足。96歩95歩は苦心の配置。また93飛83桂は収束のため。当初客寄せのつもりがいろいろいじくっているうちに本格的なものになってしまった。

☆ 昨年は「霧姫」という傑作を見せてくれた作者ですが、今年も腕の冴えは健在のようです。

A神無六郎

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11角、23玉、21飛、22香、25香、34玉、22香不成、33玉、34香、43玉、
32香不成、53玉、52角成、同玉迄14手。

【ステイルメイト】王手は掛かっていないが、合法的な手がない状態。

川並洋太―始めは22飛から42飛だと思いました。攻め方に駒を渡すのは損な気がしましたが、4枚も盤上に駒を残せばその余裕が生まれるのですね。

☆ 例題で紹介したのは単純に「余分な攻駒を捨てる」という単純なステイルメイトでしたが、本作では王以外に何と4枚もの攻駒が残留します。

保木本恵三―受方の置駒が玉だけになるとは意外でした。

市村道生―玉、飛、角の効き筋を生香2枚で封鎖。好作。

kz―飛角香の団子の発見が解図のカギ。

☆ この作のように自駒の利きを自駒によって封じ込めるタイプの作品には1992年4月に発表された吉田直嗣氏のばか自殺ステイルメイト50手という傑作があります。本作はそれに比べればほんの小品ですが、比較的簡素な初形と、封鎖に使う香を合駒で発生させる構成で、充分魅力的な好作となっていると思います。

作者―太郎、七郎両氏の協力でやっと完成。この素材には軽い手順が似合う、と思っていましたが、一応成功したようです。後半の、ミニ趣向めいた所が特に気に入っています。

B神無七郎

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18金、同玉/49金、17金、同玉、29桂、16玉、15金、同玉、27桂、26玉、
18桂、27玉、19桂、18玉、27銀、19玉、18金、29玉、28金、同玉、
39金、27玉、36銀、同玉、37銀、同玉、48金、28玉、39銀、同玉、
49金、同玉迄32手。

【キルケ】駒が取られると最も近い将棋での指し始め位置に駒が戻される。戻すべき位置が埋まっていたりして、戻せないときは取った方の持駒になる。

kz―ラスト6手が見えず堂々巡りで発狂寸前。心理的難解作か私のセンス不足か? 桂は18でなく28だと思い込んでいました。

市村道生―持駒と手数から、遊び手は4回。理詰めで手順が選べるので、難解にもかかわらず楽しめる一局。

☆ 理論的に考えて駒が消えない手は4回まで。駒を消すためには原位置が埋まっている必要があるため、29・39・49が埋まっている状態で桂・銀・金を消します。これらの条件下で論理的に手を絞ればある程度、序と収束は見えるはずですが、「なるべく下段でカタをつけたい」という心理に囚われると、7手目15金が見えづらくなります。ここで28桂の紛れに嵌って2手縮められなかった方も多かったと思います。

駒井信久―もず氏の原作と共にすばらしい。

☆ 駒が消えにくいキルケという条件。駒を消さなければいけないステイルメイトという目的。この相反する2つの性質が高度なパズルを生み出す可能性を最初に示したのがもず氏でした。また、作意に無関係な攻方王を置かない単玉型のばか自殺ステイルメイトの発案者ももず氏です。そのもず氏の記念碑的傑作が2004年3月に Onsite Fairy Mateに発表された左記の作品です。

もず氏作

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☆ 未見の方はぜひ自力での解図を試みてください。本作はこれの改作案ですが、余分な装飾を付けただけのように感じられるかも…。

C神無太郎

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32桂成、同角、21桂成、同角、12香成、同角、23桂成、同角、12龍、同角、
21飛不成、91飛、同馬、21角、12飛、19飛、同馬、12角、23歩、同角
12飛、18飛、同馬、12角、23歩、同角、12飛、17飛、同馬、12角、
23歩、同角、12飛、16飛、同馬、12角、23歩、同角、12飛、15飛
同馬、12角、23歩、同角、12飛、14飛、同馬、12角、21飛、41飛、
同馬、21角、12飛、19飛、18歩、同飛不成、17歩、同飛不成、16歩、同飛不成、
15歩、同飛、14歩、同飛、13歩、12角、23歩、同角、12歩成、同角、
23歩、同角、34桂、同角、23馬、89角成、78歩、同馬、67歩、同馬、
56歩、同馬、45歩、同馬、34歩、同馬迄86手。

【Kマドラシ】同種の敵駒が互いの利きに入ると利きがなくなる。玉も例外ではない。成駒と生駒は別種の駒として区別する。

市村道生―手数の短縮に散々悩んだが、89角成の絶妙手が閃き解決。多彩な内容の名局。

駒井信久―飛の使用から馬の使用へと頭を切り替えるのが難関だった。

kz―盤上の華麗な舞。解けて感動。狂喜乱舞。

☆ 一見して「持駒消去物」と分かる本作ですが、そんな言葉で片付けられない程、手順は魅力に富んでいます。角を回転させる軽い手順と、馬が19→91を大ジャンプする序奏に続いて、6手一組で1歩消費して馬を近付ける第1趣向が始まります。馬を近付けて41に退かせた後、今度は飛の対による持歩消去の第2趣向が出現。更に、最後は89角成の大ジャンプから馬の対で歩を消す第3趣向が登場し終幕となります。第2・第3趣向の切替部で13歩をすぐに飛で取らないのも巧妙な構成。ここで惰性にまかせて同飛とすると、1歩を消せなくなります。

作者―序はどうにかしたかったが名案浮かばず。3ヵ所の繰り返し手順がそれぞれ異なっているところは気に入っている。

☆ こういう多段階の趣向は配置に皺寄せが来がちなのですが、本作ではほとんど何の仕掛けもなく、自然に各趣向部が繋がっています。素晴らしい素材を最高の形で仕上げた名局です。

D神無太郎

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「17飛(2回目以降は同飛)、19飛、同銀、17角不成、26金、同角不成、18飛、28飛、同銀、
17金、同飛、同角不成、26金、同角不成、19飛、18金、17歩、同金、」×17
同飛、19飛、18歩、17角不成、26金、同角不成、17銀、28銀迄314手。

☆ こちらは一転して、単純な持駒消去物。解答者に軽く楽しんで貰おうという作品です。出題時にその趣旨をもっと強調すべきでした。

鳥本敦史―一歩消費のサイクルが面白いですね。

市村道生―一歩を消費するのに、上下左右と手の込んだマドラシ手順。収束も良い切れ味。秀作。

作者―第4番の序で金を使おうとすると潰れる。その潰れ筋をヒントにして構成した。

☆ この作、構成は単純ですが、趣向手順は非常に魅力的です。飛角金銀が織り成す多彩な手順は見ていて飽きません。Cの副産物とのことですが、全く独立した作品として鑑賞しても充分に楽しめると思います。

【総評等】

kz―(略)…私の短評については、「熱心に書いているからムリして採用しよう」とか気をつかわなくて全く結構です。…(略)

☆ kzさんは「龍の顎」の時と同様に熱い「長評」を送ってくれました。こうした熱心な反応は作者にとっては、とても励みになるものです。誌面に反映できなくても、作者には必ず伝えますので、これからも思う存分、自分の思いを語ってください。


【全題正解】 駒井信久、市村道生kz
【2題】 鳥本敦史
【1題】 川並洋太、天津包子、保木本恵三、今川健一、森美憲
【0題】 市原誠、佐藤司

 (太字5名当選)

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