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解答


第164回(2010.10.10)出題の解答

「神無太郎 氏作」 Messigny協力自玉詰 31金32王, 13玉34金 #24 

【出題時のコメント】

GEN HIRANO Toshi Ichiyanagi (一柳慧) - Piano Media
http://www.youtube.com/watch?v=xV2DPzfV-As

 上に紹介したのはYouTubeで見つけた、一柳慧「ピアノ・メディア」の動画。演奏は平野弦です。私がこの曲を聴いたのは1度だけ。テレビの音楽番組(題名のない音楽会?)でこれを聴き、強烈な印象を持ったことを覚えています。当時の私はミニマル・ミュージックを聴いたことがなく、その言葉さえ知らなかったのですが、どうやらこれは日本へミニマル・ミュージックを「輸入」した最初の作品だったようです。その後この曲を聴く機会もなく、CDも見つけることができなかったのですが、世の中便利になったものですね。スティーブ・ライヒやテリー・ライリーらの曲を聴いてこの種の音楽様式に慣れた後では、初めて聴いたときほどの驚きはなかったのですが、今聴いてもそこそこ楽しめました。
 実は私は今までYouTubeは意図的に避けてきました。テレビなどではまず放送されないような珍しい曲や、曲自体はCDで聴けても「実演」を目にする機会が滅多にない曲の演奏が、YouTubeを探すと結構見つかるからです。しかも1曲見つけると「関連動画」として、こちらの興味をそそるような動画も紹介されます。そうやって際限のなく動画漁りを続け、気付かないうちにかなりの時間をに消費していた…なんてことが容易に起こります。これがYouTubeを極力避けてきた理由です。

 ただ、せっかくそこに豊饒な文化的資源があるのに、それを無視するのは勿体ないことです。特に、商業ベースに乗りにくいニッチでディープな領域では、多数派を想定したメディアではなく、少数派のために用意されたメディアからしか欲しい物は手に入りません。私は詰将棋に関して「将棋雑誌」から「詰将棋専門誌」へ、「詰将棋専門誌」から「フェアリー専門誌」へとどんどん狭くて深いメディアに活動の軸足を移してきましたが、音楽に関してもそろそろネット上のコンテンツの視聴を解禁すべき時期に来ているようです。

 さて、今回の出題はまだ「輸入」されて間もないMessignyルールの作品、作者は神無太郎氏です。氏はWFPでもMessigny作品を数多く発表されているので、それらの作品が解図の参考になるでしょう。WFP発行時期と合わせるため解答募集期間をいつもより一週長い4週間としていますが、極端に難解な作ではないと思います。

 

【ルール説明】

【手順】

13王/32玉 33玉 34金/31金 13玉/33王 24金 12玉 同王/33玉 32玉 31金/24金 42玉
32金 同金/24金 33金 31玉 32金/33金 12玉/31王 22金 同金/33金 23金 11玉
12金 31玉/11王 21金 同金 まで 24手
最終形

動く盤面で鑑賞する(Flash版)Flash Player 9が必要です)

動く盤面で鑑賞する(Silverlight版)Silverlight 4が必要です)

 

【解説】

使用駒は玉2枚と金2枚だけというミニマル作品。実に簡素な初形ですが、力ずくで解こうとしてはいけません。空しい駒の入れ替えを繰り返した挙句、どこに向かえば良いのかサッパリ分からないまま途方に暮れることになります。
 こういう作品を解くときの常道は「詰上りから考える」です。このルールと使用駒なら合駒は出ないので、詰上り型は限られます。もし手数が充分あれば攻方玉を9段目に持ってきて頭金で詰ませる形もありますが、24手という手数ではそれは無理です。従って「攻方11王・受方31玉21金」という詰上り型しかないことが分かります。厳密にはこれを左右反転させた型や受方32玉という型もありますが、手数や逆算可能性を考えるとこれらの候補は消え去ります。更にこの詰上りから1手逆算すると「攻方11王21金・受方31玉22金」、更に1手逆算して「攻方11王12金・受方31玉22金」、更に1手逆算して「攻方31王12金・受方11玉22金」(Messignyらしい手が出てきた!)……といった具合に後ろ8手くらいは順調に逆算できると思います。
 この逆算解法である程度後ろを固めたら、今度はそれを念頭に頭から解いていきます。逆算で出てきた局面になるべく近くなるように、駒の位置を調整しつつ手順を進めれば、最初から無目的に試行錯誤を繰り返すよりはるかに短い時間で正解に到達できるでしょう。

本作は24手の中にMessignyらしい駒の入れ替えが10回も登場し、Messignyルールの感覚を身につけるのに大いに役立つ作品になっていると思います。本作は「玉+小駒」の入れ替えを主としたパターンですが、神無太郎氏は「玉+大駒」の入れ替えを主としたパターンをWFPに発表されています。
 これらの基本パターンが研究・発表され、Messignyの基本的な性質を作家や解答者が熟知するようになれば、次にはより高度な応用作品が生まれてくるでしょう。今はそれに備えた地ならしの時期なのではないかと思います。


【正解者及びコメント】(正解3名:到着順)

瘋癲老人さん

出だしはこの筋だろうと確信は持つがなかなか手数が縮まらない。
7手目の12王が見えませんでした。
駒が大きく動くので解後感はいいです。

今回も瘋癲老人さんが早々に解答一番乗り。しかも締切近くまで他に解答者がいない「独走状態」でした。
7手目が見えにくいという感想はとてもよく分かります。「王手をするために玉以外の駒を動かす」ことに我々は慣れているのですが、「王手をするために玉を動かす」という習慣がないからです。
頭では分かっていても感覚がそれに追いつかない、という状態はそのルールがある程度浸透するまではどうしても避けられない現象です。
 
 
たくぼんさん

詰上りが予想付くので逆算も利用して解きましたが、32金/33金が意外と見えず時間が掛かってしまいました。
これだけの長丁場が唯一解とはすごいですが、もっともっと長いのもどこかに潜んでいそうですね。

おそらくこの領域は神無太郎さんが徹底的に調べていると思うので、ぜひ聞いてみたいですね。
単純に考えれば「玉+金」でこれだけ長いのですから、「玉+銀」ならもっと長いものがありそうですが、非限定が避けられるかどうかは分かりません。
それに、太郎さんは「手数」よりも「入替回数」を重視して発表作品を選んでいるように思えるので、「玉+金」でももっと長い物がありそうです。
 
 
隅の老人Bさん

出題図を眺めて、あれやこれやと最終図を考える。
王と金だけでの最終図は?
試行錯誤の末、ひねり出した最終図、偶には当たることもある。
根気、それとも運が良かったか、久しぶりにOFMが解けました。

隅の老人Bさんは第160回以来の解答。
たった3回しかお休みされていないわけですが、それでも間が空いてしまったように感じるのは、普段から活発に解答に勤しまれている証拠だと思います。今後も慣れないルールが飛び出すことがあるとは思いますが、よろしく解答をお願いします。
 
 
私事になりますが、今月半ばに引越しを予定しています。
次回の出題はいつも通り一週間後(14日)に行いますが、荷物の整理と通信環境の復旧が終わるまで、しばらく解答募集受付を遅らせることになるかもしれません。
やや変則日程になりますが、次回は詰パラ12月号掲載予定の「氾濫33」にちなんでステイルメイト作品の出題を予定しています。「氾濫」ともども解答をよろしくお願いします。

(2010.11.7 七郎)


第163回(2010.9.12)出題の解答

「神無七郎 作」 背面協力自玉ステイルメイト 27歩35角47歩 +銀2桂4, 45玉 #16 

【出題時のコメント】

『妙手説は1990年代に復活した』

 …とまあ、いきなり何を言い出すのかという書き出しですが、まあ聞いてください。
 ご存じの通り昔(主に江戸時代)は「妙手説」が使われていました。現代のように「最長手順になるよう受ける」のではなく「最も難しい、あるいは妙手を要するように受ける」というのがその趣旨です。そもそも現代のように広く解答を募集して正誤を審査するなどという習慣がなかった時代ですから、「一番難しい手順を答えとして書いておけば十分」と考えられていたのでしょう。
 ところが近代に入り、詰将棋が解答募集の対象になると、「難しい」とか「妙手」という曖昧な基準では解答審査に不都合なため、「最長手順」という計量可能な基準が採用されるようになりました。

 でもちょっと待ってください。本当に「難しい」とか「妙手」は計量不可能なのでしょうか?

 確かに「妙手」を感覚的に納得しやすい数値に還元するのは困難です。しかし「難しい」の方は実用性を無視すれば数値化は可能でしょう。例えば「詰を証明するために読む必要がある局面数の最小値」を「難しい」の基準とし、これが最大になるように受けるのをルールにしたらどうでしょう?
 詰を証明するために必要な局面数は一般にはかなり大きな数になるので、解答者が人間だととても実用にはなりません。でも、解答者が機械なら数値の大きさは問題にならないはずです。
 1990年代、コンピュータによる詰将棋の解図の研究が進むと、実際にそれが行われました。それまでの詰将棋解図ソフトが「1手で詰まなければ3手、3手で詰まなければ5手…と読む深さを増やしていく」という素朴な(しかし不自然な)解き方をしていたのに対し、この時代の詰将棋解図ソフトは「まずは詰め易そうな手から読んで、うまくいかなければ改めて詰め易そうな手を選び直す」という高度な(しかし自然な)解き方に変わりました。このとき「詰め易そう」かどうかを見積もる基準に使われたのが「詰を証明するために読む必要がある局面数」です。これが冒頭に述べた『妙手説は1990年代に復活した』の意味です。

 もちろんコンピュータ用の「妙手説」はオリジナルの「妙手説」とは異なるものですが、そこには本質的に相通ずるものがあり、だからこそそれまでの詰将棋解図ソフトでは手も足も出なかった作品が解けるようになったのでしょう。もし「妙手説」を単に時代遅れで不合理な因習としか考えていない人がいたら、それは「妙手説」の時代遅れで不合理な側面しか見ていないだけだと思います。もしかしたら「妙手説」以外にも、その真価が知られていないものがあるかもしれませんね。

 さて、今回の出題は前回に続いて単玉のステイルメイトです。前回が「キルケ」というステイルメイトになりにくいルールだったのに対し、今回は「背面」というステイルメイトになり易いルールです。なぜ「背面」がステイルメイトになり易いかというと……おっと、これはヒントの出しすぎですね。これが「氾濫33」の募集要件を満たす作品というのも大きなヒントになると思います。

 

【ルール説明】

【手順】

44角 23玉 22桂 15玉 14桂 27玉 36銀 同玉 35角 54玉
43銀 同玉 42桂 35玉 34桂 47玉 まで 16手
最終形

動く盤面で鑑賞する(Flash版)Flash Player 9が必要です)

動く盤面で鑑賞する(Silverlight版)Silverlight 4が必要です)

 

【解説】

出題時のコメントで「背面」はステイルメイトになりやすいと書きましたが、その理由を考えるのがこの作を解く早道です。
 「背面」は相手の駒と背中合わせになったときに、性能が入れ替わるルールです。また、このサイトでは性能変化により動ける可能性がある駒は、一時的に盤上に利きがない状態になっても良いという、標準的なルール設定を採用しています。従って「背面」ではどの駒をどこに置いても「行き所のない駒」にはなりません。これは逆に言えば「行き所のない駒」になりそうな手をいくらでも指せるということを意味します。
 本作は「背面」ルールのこの性質を利用して、性能変化のない通常ルールでは打てない「2段目の桂」を打ち、効率的なステイルメイト型を発生させることを主眼としています。ついでに「2段目の桂」の存在を利用して他の桂も止めるようにし、「四桂詰」ならぬ「四桂止」のステイルメイト型に仕上げました。初形の角配置はできれば持駒にしたかったのですが、さすがに余詰で無理でした。それでも、盤上の駒も持駒も消さない初手が入ったので良しとしたいと思います。

「背面」に限らず性能変化系のルールは通常駒が置けないところに駒が置けるので、珍しい詰上りやステイルメイトが多く存在するはずです。今回の「氾濫33」のお題「攻駒が残る自玉ステイルメイト」も、性能変化ルールの特性を存分に活かせるお題のはずですので、皆様の投稿をお待ちしています。


【正解者及びコメント】(正解4名:到着順)

瘋癲老人さん

持駒だけで12手使うので残り4手は角の王手2回だろうと決めうち。
27歩、26桂の配置では最終形がないので歩は2枚とも取らせなければならない。
そうすると玉は結構大きく動かさないといけないなとか考えながら試行してたら意外とあっさり解けました。
36銀から35角が巧い手だと思います。

瘋癲老人さんは前回の唯一正解に続き、今回も解答一番乗りでした。さすがお強い!
解説にも書いた通り、本当は角を持駒にしたかったのですが余詰のため角は盤上に配置せざるを得なくなりました。
せめて還元角にしようとしたのが35角配置なので、ここを見ていただけたのは嬉しいですね。
 
 
橘圭伍さん

久し振りに解けたので解答します
最終図の想定が容易いので簡単に解けました
2段目の桂とか動けなくて可哀そうです……

橘さんお久しぶりです。第151回出題以来の解答ですね。
この問題の時も性能変化系のルール(対面)で、角5枚で詰ませるという問題でした。
こういう普段見ることのない最終図でも簡単に想定できてしまうというのは、発想が柔軟な証拠だと思います。
 
 
雲海さん

ルールと使用駒から4桂全て残ってステイルメイトだろう、と決めうって解いたおかげですんなりと解けました。
最初に銀を使うと角の処理に困り、どうしても2手オーバーするのですが、それでも最初は銀を使わず44角とするのがやや指しづらかったです。

王以外の攻方の駒が残るステイルメイトでは、Kマドラシで40枚全て盤上に残る作や非標準駒数にして81枡すべて埋まった作品等が出てくるのでは、と楽しみにしています。(もしかして既にあります?)
他は普通の協力自玉ステイルメイトも興味があるのですが、既に吉田氏の妖精賞受賞作があり(ピンを使わなくてもあれだけ残せるのは衝撃でした)、どういう表現が残されているかを思案中です。

盤が全部埋まっているステイルメイトは第23回神無一族の氾濫で発表したことがありますが、40枚盤上に残ったステイルメイトは見たことがないですね。単に全駒が盤上に残る作なら普通作にもあったと思います。
王以外の攻方の駒が残るステイルメイトはほとんど未開拓なので、新しい表現がまだまだ手付かずで残っていると思います。
雲海さんのご投稿をお待ちしています。
 
 
NAOさん

このルールだけは解いておかないといけませんね。間に合いました。

さて、本問は一石二鳥の手が3回(6手目、14手目、16手目)も出てきました。
普通の手数からすると(9×2−3×2=12手)まで縮まる可能性さえありますが、駒が減らない普通の手(と言っても背面の角ですが)が2回(44角23玉、35角54玉)あり、普通に捨てる銀の2手と合わせて、謎解きの面白さが味わえる作品と思いました。
初手〜2手めで駒が減らない序盤は指しづらい感じです。

ps.詰四会の課題(桂ががんばっている)にも合致してますね。

ステイルメイトで盤上も持駒もどちらも減らない手というのは「妙手」ですから、作者も最初の2手にはこだわっていました。
こうして感想で触れてもらえると、やはりこの手を入れて良かったと思います。
詰四会の課題「桂ががんばっている作品」との関連もご指摘通り。ちょうどそれに向けた作品を作っていたときにこの作の素材を得ました。
この種の課題は形式的な条件よりも作図意欲が湧きますし、桂というちょっと変わった駒が主役だったのも良かったのでしょう。結構、いろいろなネタを拾えてとても有意義でした。
 
 
今回は「四桂止」の最終形が想定しやすかったようで、解答数は若干持ち直しました。「氾濫33」の作品公募もありますので、これで少しでもステイルメイトに興味を持っていただけたら幸いです。
更にステイルメイトの創作をサポートする意味で「fm虎の穴」に記事を追加しました。題して「邪魔者は消せ」。協力自玉ステイルメイトをfmで検討するときのテクニックについて解説しています。ぜひご一読を。
次回の出題は一週間後(10日)。久々に投稿作品の出題を予定しています。

(2010.10.3 七郎)


第162回(2010.8.16)出題の解答

「神無七郎 作」 キルケ協力自玉ステイルメイト 13銀16歩18飛55飛73角, 33歩46玉 #22 

【出題時のコメント】

 時代劇や忍者物ではしばしば「気配を消す」という場面があります。それは物音を立てずに近付くとか隠れるという形で表現されます。でも、音を消すことは存在を完全に隠蔽することにはなりません。たとえ音もなく忍び寄ったとしても、達人には察知されてしまうそうです。それはなぜでしょうか?
 通常、地上に無音の場所はありません。環境騒音という数多くの雑多な音が世界には溢れています。そこに何かが存在すると環境騒音を遮るため、何も音を立てなくとも、その存在を相手に知らせてしまうのです。目の見えない人などは特に気配の察知に長けており、大きさや形が分かるだけでなく、中には材質までを言い当てることができる人もいるそうです。

 一見現代人とは無縁な「気配を消す」という行為、最近はある装置の普及で身近な現象になりました。ノイズキャンセリング機能を持ったイヤホンやヘッドホンがそれです。これは周りの騒音を逆位相の音で相殺して、音楽を快適に聴ける静寂を提供してくれる大変ありがたい装置ですが、これを使いながら散歩などをしていると、横から突然車が現われて、ドキッとさせられることがよくあります。騒音と一緒に車の気配も消しているためです。車の危険を避け、歩道を歩くと今度は自転車にドキッとさせられます。ノイズキャンセリングによって、街は忍者のように気配を消して疾走する車や自転車で溢れかえる危険地域になるのです。考えてみれば、高齢などのせいで耳が悪くなった人は普段からそのような環境で生活しており、私は今それを疑似体験しているわけですね。自分も将来聴覚が衰える可能性がないとは言えませんから、運転者の安全意識が今以上に高まることを願わざるを得ません。

 さて、今回の出題は「気配」ならぬ「攻方の駒」を消す問題です。この飛角の並び方を見ただけで解図意欲が減退する方もいらっしゃるかと思いますが、上手にヤマを張って解いてください。なお、検討の都合で出題が実質2日遅れましたので締切も2日ずらしています。ちょっと変則的ですが、締切日前の日曜などを活用して解答をお寄せください。

 

【ルール説明】

【手順】

95飛 55香 同角生/91香 35玉 28角 95香 24銀生 26玉 17角 16玉
39角 17香 同飛/11香 同玉/28飛 88飛 26玉 15銀 同香 17角 同香成
28飛 同杏 まで 22手
最終形

動く盤面で鑑賞する(Flash版)Flash Player 9が必要です)

動く盤面で鑑賞する(Silverlight版)Silverlight 4が必要です)

 

【解説】

本作は5手目と15手目の「復活場所を塞ぐ限定開き王手」を中心に、いろいろな開き王手を盛り込んだ問題です。合計で4回の各開き王手が出てきますが、それらの意味付けを順に見ていきましょう。

 初手95飛:取られる場所に移動する。
 5手目28角:飛の復活場所を塞ぐ。
11手目39角:次の開き王手の形を作る。銀の復活場所を塞ぐ。
15手目88飛:角の復活場所を塞ぐ。

 これらの開き王手以外にも、3手目の復活位置選択、14手目「同玉/28飛」の“魔女返し”など、とにかく入れたい手が全部入れられたので、作品の出来には結構満足しています。
 人によっては11手目の意味付けの重複を嫌う人もいると思いますが、この手数だとこうでもしないと余詰を防ぐのが難しいので、ここはご容赦して戴ければと思います。

ところで5手目と15手目を比べると飛と角の役割が逆になるというのは、チェスプロブレムではツインや複数解という「横型」で表現される類のテーマです。私自身は不勉強なので良くわかりませんが、チェスプロブレムのテーマの中には詰将棋流の「縦型」手順に翻訳すると結構面白い物がありそうな気がします。


【正解者及びコメント】(正解1名!

瘋癲老人さん

銀が消し易いという理由で59飛〜39飛の筋から読み始めるが
玉を最下段に追いこむと最後に飛車が1手で消えないので
どうしても24手どまり。
飛車の移動が限定できるか不安ながらも横移動に方針転換。
飛横移動、55香合、同角生/11香、以下24手の順がすぐ見つかる。
なんとかなりそうな感じ。
飛車移動を限定にするには香を91に再生させて飛車を取らせるしかない。
以下作意順を進めて11手目の局面。11に香があればと思いつつも
ここでの香合は全く浮かばなくて暫く足踏み。難渋しました。
初形にはない香が2枚残っての最終形は意外性たっぷりでいい感じでしょう。

締切前日の日曜日にも解答が一通も届かず、一時は正解者ゼロも覚悟しましたが、締切最終日に瘋癲老人さんの解答が届き正解者ゼロを免れました。ありがとうございます。
瘋癲老人さんのコメントにもあるように初手59飛から39飛と回り、銀を消去する紛れはとても強力です。33歩はこの紛れを逃れるための配置で、これがないと以下のような余詰を生じます。
59飛 35玉 24銀生 34玉 39飛 24玉 51角生 33角 同飛成/22角 14玉
15歩 同玉/17歩 83龍 26玉 28飛 17玉 62角生 28玉 88龍 同角生
17角生 同玉 まで 22手
また、初形にない香で飛角を取っていくのは本作の狙いのひとつでもありますので、ここをコメントして戴いたのも作者としては嬉しいですね。
 
 
NAOさん(感想) 2010.9.8 追記

正解手順を拝見しました。参りました。
これだけキルケの手筋を入れられると閃き一発では難しいでしょう。
一題の解図に専念してあと1週間は粘らないと解けないのではないでしょうか。。
手筋満載ですが、とくに初手〜3手目(95飛 55香 同角生/91香)と12手目〜15手目(17香 同飛/11香 同玉/28飛 88飛)の流れがすばらしい手順に感じました。

初手59飛から入る順を進めていきましたが、16歩を取らせる手順がスムーズにいかず
玉移動がもたつきましたので、紛れ順でダメかなと思いました。
17角で16歩を取らせるのは予想とおりでしたが、95飛〜55香〜28角は全く浮かびませんでした。

結果発表後、NAOさんから感想を戴きました。過分なお褒めの言葉ありがとうございます。
でも解答募集期間の設定はやはり失敗だったようですね。日程的に厳しかったので通常の解答募集期間で出題したのですが、後一週間延ばすべきだったようです。
次回の出題は多分これより易しいと思いますが……
 
 
今回はかなり難解だったため正解者は瘋癲老人さんのみ。あのNAOさんからも「26手より縮まりませんでした」という白旗解答を戴きました。fmでの検討でも約200時間(失敗図も含めると1000時間)くらい掛かっており、作者・解答者双方にとって難物だったと言えるでしょう。
また近日中に「氾濫33」のお題を発表する予定ですので、次回の出題はそのお題に沿った作品になる予定です。出題日も通常通り日曜日(12日)に戻したいと思います。

(2010.9.7 七郎)


第161回(2010.7.11)出題の解答

/EFP=20S:牛#1 「神無七郎 作」 取禁協力詰 48金 +牛, 16歩26桂29龍36歩37と46歩49龍56歩57と66歩69角76歩77と86歩96歩97と98玉99角 #165 

【出題時のコメント】

今回の出題は古将棋のひとつ「大将棋」の駒である「猛牛」を使った作品です。
 将棋類には各時代、各地域で様々な変種が存在します。日本に限っても現在の将棋とは異なる多くの「将棋」がかつて存在し、うちいくつかは今も生き残っています。古将棋の駒はWikipediaの「将棋類の駒の一覧」で見ることができますが、これはとても覚えきれない数ですね。

古将棋の駒には現在の将棋の駒にはない特異な性質を持つものがあります。駒の利きが左右対称でないもの、2手分の動きができるもの、駒を取るのに条件が付いているものなどです。
 そして今回紹介する「猛牛」の特徴は「限定走り」。飛角香のように無限の射程距離を持つ走り駒と異なり、「猛牛」は2マスまでしか進めません。「それじゃ猛牛というより鈍牛だよ」なんて思う方もいらっしゃるかもしれませんが、「猛牛」は玉より足が速いので意外と強力です。合駒を発生させられる所は飛車と同様ですが、場合によっては王手を掛けられた方向にも玉を逃げることができる所は飛車と異なります。実際に動かしてみれば、その独特な味わいを感じることができるでしょう。

将棋類の変種の開発は今も行われており(最近ではどうぶつ将棋が有名ですね)、実際に対戦して遊ぶ「実用性」を無視していろいろと妙な駒を作って遊ぶのも良いでしょう。例えばアンサイクロペディアにある森羅万象棋には実用性は考慮外の、ギャグ、パロディ路線の創作駒がいっぱい並んでいます。もっとも、「取禁」などという対戦にはまったく不向きなルールを扱うようなこのサイトですから、いつかこのギャグ路線から引っ張ってきたネタが登場しないとも限りません。そもそも将棋の「取った駒を再利用できる」というルールだって元は単なるギャグだったかもしれないじゃないですか!

ちなみに、今回出題の作は「第8回詰四会フェアリー作品展」第2番(WFP第24号にて出題中)の姉妹作。難しい作品ではありませんが、WFPの発刊周期とのずれの調整のため解答募集期間を通常より1週長い4週としています。のんびりしすぎて解答締切を忘れないようご注意ください。

 

【ルール説明】

【手順】

78牛 89玉 88牛 79玉 89牛 68玉 88牛 78角成 58金 69玉
89牛 79馬 59金 78玉 69金 67玉 58金 78玉 88牛 69玉
68金 59玉 69金 48玉 68牛 58龍 59金 38玉 48金 39玉
38金 49玉 69牛 59龍 39金 58玉 49金 47玉 38金 58玉
68牛 49玉 48金 39玉 49金 28玉 48牛 38龍 39金 18玉
28金 19玉 18金 29玉 49牛 39龍 19金 38玉 48牛 27玉
28牛 17玉 18牛 27玉 17牛 38玉 18牛 28と 29金 37玉
17牛 27と 28金 47玉 37金 48玉 47金 38玉 18牛 28龍
48金 39玉 19牛 29龍 49金 28玉 39金 37玉 48金 28玉
18牛 39玉 38金 49玉 39金 58玉 38牛 48と 49金 57玉
37牛 47と 48金 67玉 57金 68玉 67金 58玉 38牛 48龍
68金 59玉 39牛 49龍 69金 48玉 59金 57玉 68金 48玉
38牛 59玉 58金 69玉 59金 78玉 58牛 68馬 69金 88玉
78金 89玉 88金 79玉 59牛 69馬 78金 89玉 79金 98玉
89金 87玉 98金 78玉 58牛 68と 88金 79玉 78金 89玉
79金 98玉 89金 87玉 98金 77玉 57牛 78玉 77牛 89玉
87牛 78玉 88金 79玉 89金 まで 165手
詰上り

動く盤面で鑑賞する(Flash版)Flash Player 9が必要です)

動く盤面で鑑賞する(Silverlight版)Silverlight 4が必要です)

 

【解説】

本作は空間を調達する問題です。
 狭い空間での「取禁」では、どこにどうやって空間を確保し、詰型を作るかというのが問題になります。初形を見ると左辺より右辺の方に空間があるので、まずはここに玉を運ぶことが考えられるでしょう。しかし、右辺で詰めようとしてもまだ空間が足りません。
 そこでもう一度左辺に戻ります。もちろんただ戻るだけではありません。右辺に行くときに動いたのは9段目の飛角だけでしたが、左辺に戻るときには7段目のと金も一緒に動かすことができます。つまり一往復することによって、右辺から左辺へ1筋分の空間を移動できたことになります。左辺には98地点の空き升がある分、右辺で詰めるよりより有利で、実際「98金」でその効果が現われます。
 盤面配置に着目すると、左辺の「97」が埋まっていて、右辺の「17」が空き升であることが、一往復の手順を生み出していることが分かります。配置されている駒ではなく、配置されていない空き升の方が重要なのは「取禁」ならではですね。

また、本作はコメントにもあるように「第8回詰四会フェアリー作品展」第2番と同時期に素材を得た作品で、本来はもう少しストックしておく予定でした。趣向自体は猛牛の「限定走り」を組み込めて満足していますが、序がちょっと淡白になっているのは気になるところです。今回の出題に合わせて仕上げを急いだのが影響していますね。


【正解者及びコメント】(正解3名:到着順)

たくぼんさん

牛という駒の特徴が掴めないので、ただ直向に駒を動かして全体の流れを読むところから始めた。
限定を意識して進めるとそれらしい趣向手順が現れたのでこれは作意の流れと感じた。しかしそこから手詰まり状態に。(かなりの時間が流れた)
というのも収束を28牛27金型と決めつけていたため。(26だけ桂なのでそう思うのが普通でしょ)
しかしどうしてもその収束形に持っていけないし、右に追って行って収束では手数が165手ではなく80手くらいになりそうなのだ。
しばらく考えていると26桂は28牛18金型の詰上り防止駒のようだと気づく。(早く気づきそうなものだ)
ということでもう一度左へ同じような手順で戻って行けば160手くらいになりそうなのでその順を追って収束を見つけてやっと作意に到達。
牛と言う駒の特性をうまく生かした趣向作の好作!!ほんと七郎さんの手にかかるといとも簡単に(実際はかなり苦労されているのでしょうが)ルールや駒の特性を生かした趣向作が生まれるのでしょうか・・・

今回はどうやら難易度の見極めを完全に間違えたみたいですね。作者からすると26桂配置は単なる余詰防止なのですが、これが有力な紛れを発生させ、そちらに誘われた解答者が迷宮に入り込む事態に陥ってしまったようです。
昔はこんな際どい紛れがあったらまず間違いなく余詰むので、たとえ不要でも「16歩」を「16と」とするような安全策を取った可能性がありますが、今はfmのおかげで結構大胆な構図が取れるようになりました。解答者にとってはそうでないこともあるかもしれませんが、作家にとってはありがたいことです。
 
 
藤田 周さん(初解答)

初めてです。よろしくお願いします。
協力詰はダンスのようで優雅に感じました。

藤田さんは初解答。本サイトで初解答というより、フェアリーでの初解答かもしれません。
解答者わずか3名の出題で正解を入れられるということは、解図力もかなり高いはずですので、今後もどんどん活躍されるよう期待しています。
 
 
瘋癲老人さん

行きはこれしかなく帰りはと金を連れての道行きに気づけば楽しく詰め上がる。
猛牛を使ったとっつき易い啓蒙作ですが解答数は伸びてないようで残念です。
26桂は危なそうな配置なので結構突っついてみましたが何も出ませんね。

 
瘋癲老人さんはそれほど苦戦されなかったようですが、やはり26桂は突っついてみたくなりますか。
この26桂は18金までの詰上りを防いだものですが、本図に至るまでにはそれで詰める物もありました。
参考までに下記に一例を示します。

【参考】18金までの詰上りを作意にした例
 参考図
 まあ、この図ですと「猛牛」を使う意味があまりない(飛でもそれほど変わらない)ので、ボツになったのですが…

 
 
今回は規則的な趣向手順の作だったので易しいと思ったのですが、この配置のせいか、あるいは空間の運搬という主題が見えづらかったのか、解答数は伸びませんでした。
次回は中編を予定していますが、fmでの検討が間に合うかどうか微妙です。別の中編で差し替えるかもしれません。

(2010.8.8 七郎)


第160回(2010.6.13)出題の解答

「神無七郎 作」 キルケ受先協力千日手 17歩28飛36王, 16玉 #18 

【出題時のコメント】

最近iPadの登場により電子書籍の話題が増えました。そのせいもあってか、こんな記事を見かけました。

電子書籍も国会図書館に“納本”へ 11年度スタート目指す
(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100608-00000007-zdn_n-sci)
「ほうほう電子書籍も納本できると… じゃあWFPも国会図書館に納本するよう、たくぼんさんに勧めなきゃ」などと思って読み進めると…
紙の納本制度では、小売価格の5割+送料程度の金額が「代償金」として交付されるが、電子書籍の場合は、送信のための手続き(メタタグ付与やDRM解除など)にかかる手数料を代償金として交付することを検討する。
紙の本より安いとはいえ、やっぱりお金は掛かるらしいです。
(※6月15日追記:上記は誤り。「交付」ですから逆に貰える方でした。WFPの場合は元から無料なのでお金を貰うこともないようですが…)

紙の本と比べたときの電子書籍の最大の長所は「場所を取らない」ことでしょう。本をたくさん買うと本棚が必要になり、本棚をたくさん置こうとすると大きな部屋が必要になり… といった具合に手元に置いておける本の数はどうしても制限されてしまいます。
 これに比べると電子書籍は本当に場所を取りません。例えば、このサイトにも神詰大全のPDF版が置いてありますが、この本のファイルサイズは634KB。4GBのフラッシュメモリでさえ約6千冊分収蔵できる計算です。これなら「どの本を捨てようか」で頭を悩ます必要もありません。
 私自身はiPadにしろKindleにしろ電子書籍閲覧用の端末は持っていない(読むものがないのに端末だけ買っても仕方ない)のですが、将来電子書籍の普及・標準化が進み、コンテンツが充実してくれば、「持ち運べる本棚」として閲覧用端末を購入する時が来ると思います。

さて、今回の出題は「氾濫32」の解答締切と時期が被るため、易しい作の出題です。いきなり王手が掛かった初形ですが誤図ではありません。協力千日手の開始局面は攻方の手番である必要はないはず…ということで受先形式の協力千日手です。最新版のfmにもこの機能が搭載されました(%ULで指定可)ので、皆さんもいろいろ試作してみてください。

 

【ルール説明】

【手順】

17玉 27飛 16玉 26飛 15玉 16飛 24玉 13飛成 同玉/28飛 18飛
16歩 同飛 24玉 26飛 15玉 16飛 同玉/28飛 17歩 まで 18手

動く盤面で鑑賞する(Flash版)Flash Player 9が必要です)

動く盤面で鑑賞する(Silverlight版)Silverlight 4が必要です)

 

【解説】

本邦初(?)の受方から始まる協力千日手作品です。きっかけは「氾濫32」の金子清志氏作を見て「この飛を合駒で発生させられないだろうか」と考えたことでした。
 攻方から始まる協力千日手だと合駒は手順の途中に出現することになりますが、受方開始ならば初手から合駒を読ませることができます。もしそれが千日手を成立させるための重要な鍵となる手なら、更に効果は大きいでしょう。
 本作は“受先”を合駒の発生に使っていませんが、これを“攻先”にして歩を持駒にしても、あるいは18に置いても簡単な早詰があることを確認してください。“受先”と“攻先”は単にループの開始地点が異なるだけでなく、ループの軌道自体が大きく変わる可能性がある――つまり、受先協力千日手では通常の協力千日手にない手順が実現できる可能性があるのです。

何だかルール設定の話ばかりになってしまいましたが、一応手順にも簡単に触れておきましょう。初手で歩が消えるのはほぼ必然ですが、「キルケ」という条件を考えると初手で消えた歩を取り返す手段は2つです。歩の復活箇所は3段目なので、3段目の歩合を攻方の駒(飛または龍)で取るか、3段目を受方の駒(玉)で埋めた状態で歩合を取るかです。結局効率が良いのは後者で、初形に戻すのに都合の良い合駒位置を考えると、16歩合が限定であることが分かります。
 本作はこのルールでの試作品的な存在ですが、ミニ趣向的な手順が出てくるので、意外と自分でも気に入っています。


【正解者及びコメント】(正解6名:到着順)

雲海さん

 飛の復活(復活は1回だけかと思っており、2回あるのは想定外でした)を駆使してミニ往復玉鋸が出来るとは、粋な小品ですね。
 受先の協力千日手は確かに面白そうですね。個人的にはある協力千日手の作があって、受先にしたら異なる手順が成立する作を見てみたいです。

雲海さんの仰る通り、攻先と受先のツインはできそうですよね。ただ、詰将棋には「王手義務」があって攻方手番と受方手番の配置が同じにできないのが難しいところです。
ただ、受先を「奇数手」にして「協力千日手」ならぬ「協力手渡し」(先後協力して盤上配置・持駒が同じで手番だけが初形と異なる局面に最短で到達する)とすれば可能だと思うので、実際にやってみてはいかがでしょう?
 
 
北村さん

久し振りに解けました。
2回は復活して及第点。
易しくて手が狭かったはずが、意外と時間がかかりました。

北村さんは第134回出題以来久々の解答。「復活」が特徴のキルケルールで復活というのもなかなか粋ですね。
また創作・解答両面で活躍されることを期待しています。
 
 
若林さん

後に17歩の王手を実現するには歩を取らせて取り返すしかない。
受方の手数は玉が17-x3-16と移動するのに8手、歩合に1手でぴったり。
普通に追うと13玉16飛の形になってしまい玉がスムーズに運べない。
キルケによって13玉18飛の形にして16歩合を実現する。
シンプルですが飛車のキルケが繰り返されるので味が良いです。

 
本作の唯一の見どころは飛が(1回ではなく)2回復活することなのですが、この辺は皆さんにも好評で良かったです。
ただ、「受先」の協力千日手で何がやれるかというのは、私もよくわかりません。この作を見て「自分ならもっと上手くやれる」と思う人がどんどん出てくると良いと思います。
 
 
たくぼんさん

出来た〜と思ったら17手。早詰??いえいえ手数は守らねばいけません。
ばか千日手では王取って打ったり出来る王手放置可の条件付作品も面白そうかな。

 
17手だと初形の局面に戻っていませんよ。ついつい普通の協力千日手の癖が出て、受方の手番で終わらせてしまったようですね。
先にも書きましたが、受先だと「手渡し」を目的にするのが良さそうです。「果報は寝て待て」で鍛えられているたくぼんさんなら、きっとこのルールでも良い作品を作れると思いますよ。
 
 
隅の老人Bさん

取られたら定位置に戻るが、戻れない時もある。
なるほど、「ル−ルをよく読みましょう」、ですね。

 
隅の老人Bさんの解答は暑中見舞いも兼ねられていて、暑い中解図に精を出されている様子が伝わってきました。
私はもう暑さと戦うのは諦めてエアコンをつけっぱなしにしています。根性ゼロです。(だから余計に体が弱くなるのでしょう…)
 
 
瘋癲老人さん

易しいとはいえ正算では解きづらい。
収束16に飛車を捨てるのが必然ということで
歩合いは6段目に決定。

 
協力千日手を純粋に正算で解けるのはfmくらいでしょうねぇ。
やはり後ろと前と両方から読んで、繋がりやすい手順を探すというのが常道だと思います。本作の16歩合などは、そういうやり方でないとなかなか見つけられないと思います。
 
 
今回からSilvelight版の「動く盤面」をバージョンアップしました。今まで味気ないテキスト表記だったので、少し見た目を将棋盤っぽくしたのが主な変更点です。本当は「拡張機能」もいろいろ付ける予定だったのですが、まだ中途半端なのでその大半は隠してあります。(もし、半端な機能が表に出てしまっていたらごめんなさい。いつかこっそり直します。)
次回の出題作品は未定。詰将棋全国大会でアピールすれば解答が増えるかもしれませんが、肝心の作品の在庫がパッとしないものばかり……この一週間はちょっと頑張らないとだめですね。

(2010.7.4 七郎)


第159回(2010.5.16)出題の解答

「神無七郎 作」 Messigny協力詰 16と17歩18角26と27歩36と37歩39香46と47歩56と57歩59香66と67桂69香76と77歩79香86と87歩96と97歩99銀 +歩, 19玉28角 #73 

【出題時のコメント】

今月の初めに「コンピュータ将棋選手権」が行われました。優勝は本命の「激指」でしたが、300台以上のPCを稼動させる超並列マシンや、ひたすら待機戦術で時間切れ勝ちを狙うソフトなど、今年もいろいろな出場者がいて面白かったです。コンピュータ将棋プログラムの話は第153回出題でもしましたが、今回はこのとき触れた「文殊」の採用した「合議制」についてもう少し考えてみましょう。

「文殊」は当初、単純多数決で指し手を決めていたのですが、なぜそれで元のプログラムより強くなるのでしょう? 一応の根拠は「文殊」の作者のグループによる以下の論文に示されています。

思考ゲームによる合議アルゴリズム 〜単純多数決の有効性について〜
http://homepage1.nifty.com/ta_ito/CSA/CSA-2009-07-gougi.pdf

例えば0.6の確率で正解を出す人が3人集まって多数決を取ったとき、その結論が正解となる確率は約0.65。つまり単独で決めるより良い答えとなるわけです。「三人寄れば文殊の知恵」の格言通りですが、この言葉は単純でない合議(皆で持ち寄った答えのうち最良のものを選ぶような方法)を想定していると思われます。単純な多数決でさえ単独より良い答えを出せるというのは、ある意味驚きですね。

でも、ちょっと待ってください。上の例で集まった3人の正解確率を0.4としたらどうなるでしょう?
 この場合、多数決の正解確率は約0.35となり、残念ながら単独の正解確率より低くなってしまいます。これは多数決という方式の罠ですね。集団で何かを決めるときに、半々以上の確信を持つ人が誰もいなかったら、単純な多数決は避けたほうが良いでしょう。上に紹介した論文でも、多数決がうまくいくかどうかの分水嶺が正解確率0.5にあることがグラフで示されています。

さて、ここまでは集まった人々の正解確率が全員同じ場合の話でした。でも正解確率にバラツキがあるとどうでしょう? 極端な話、正解確率1の「神」が一人いて残りの「人」が正解確率1未満だと、多数決は正解確率を減らすだけです。
 では、優秀な人が一人いればそれで充分なのでしょうか?
 具体的な例で確かめてみましょう。賢者(正解確率0.6)1人と小賢者(正解確率0.55)2人が多数決を取ったとします。すると多数決の結論が正解となる確率は0.5995。残念ながら賢者1人より悪い確率になってしまいました。
 やっぱり、優秀な人が一人いればそれで充分? いえいえ、そうではないのです。
 今度は小賢者の正解確率を先ほどよりほんの少し高い0.551に設定しましょう。すると多数決の結論が正解となる確率は約0.6005。賢者1人の確率を上回りました! どのような場合に多数決が有効か一般化するのは私の力量を越えますが、上記ような賢者1人と小賢者2人の例ならば、多数決が有効な条件を二次不等式で表せるので、それほど難しくありません。もしかしたら中学校の数学の演習問題に使えるかもしれませんね。

ちなみに上の議論には重要な前提があります。成員が各々独立に答えを出すということです。集まった人達が日和見主義者ばかりで誰かの意見に右へ倣えだと、多数決だろうが何だろうが一個人の結論と変わりなくなってしまいます。他人の意見に流されず自分の意思をきちんと持つことは、その個人だけでなく、集団にとっても重要というわけです。詰将棋の世界で「多数決」が登場するのは賞を決める時ぐらいですが、投票や選考を行う人も自分の選んだ作と他の人が選んだ作が異なっても気にしないことが大切、と言えるかもしれません。

さて、今回は本サイトでは初登場となるMessignyルールの作品です。いつもなら新しいルールの場合はその説明にスペースを割くのですが、このルールはWFP22号でも登場したばかりですので、今回は説明は省略させて戴きます。詰上り位置を暗示する配置もあるので、それほど難解ではないと思います。

 

【ルール説明】

【手順】

28角/18角 29玉 18角/28角 39玉 28角/18角 29玉 18角/28角 38玉 29角 49玉
38角 39玉 28角/38角 48玉 39角 59玉 48角 49玉 38角/48角 39玉
48角/38角 28玉 39角 19玉 28角 29玉 38角/28角 39玉 28角/38角 49玉
38角/28角 58玉 49角 69玉 58角 79玉 88銀 68玉 79銀 59玉
68銀 48玉 59銀 39玉 28角/58角 49玉 58銀 48玉 39角 38玉
49銀 29玉 38銀 18玉 29銀 19玉 28銀 18玉 19銀 29玉
18銀 38玉 29銀 49玉 38銀 58玉 49銀 69玉 58角 68玉
69歩 59玉 48角 まで 73手


詰上り

動く盤面で鑑賞する(Flash版)Flash Player 9が必要です)

動く盤面で鑑賞する(Silverlight版)Silverlight 3が必要です)

 

【解説】

単純な6手の送り趣向が本作の出発点。初手から紛れがほとんどないので、これは見え易いと思います。ただ、この流れに乗って20手目を58玉とし普通に左辺に向かうと後で苦労します。99に銀がいるので、6筋より左に行くときにはもう1枚の角の応援は不要。攻方の角1枚で玉を追うことができます。従って、後々都合の良い位置に受方の角を置くために一旦右辺に戻るのが正解となります。
 収束は角銀追いの手順が主体になりますが、これは協力詰の基本手筋。ばか詰中長編 検討結果報告 (10)で取り上げた飯田岳一氏の作品などがその代表例でしょう。

飯田岳一/1979年2月/詰将棋パラダイス/修正図
(飯田岳一/1979年2月/詰将棋パラダイス/修正図)

本作は送り趣向の部分があまりにも単純だったので、20手目からの角の運搬の方が主になるよう作図方針を変えたものです。おかげで難度は上がり「問題」としては手応えが出てきましたが、「作品」としては中途半端な構成になってしまいました。もっとMessignyの特徴が出た趣向に発展させる、あるいは角の運搬作業を主体にもっと構想を発展させる、などの努力が必要だったように思います。


【正解者及びコメント】(正解6名:到着順)

渡辺さん

今回は詰め上がりから逆算が出来るので解きやすかったです。

99銀を活用するには4枚の香車はすべて消える。
となると詰め上がりは4通りしかなく、数手逆算すると「59玉、48角」型以外ないことが分かる。
ここから7手は一本道に逆算可能で、がんばると20手逆算できる。

この局面を素直に作ろうとすると、詰むのに107手かかる。
99の銀を利用すると69香と79香が一気に取れることに気付けば、59香を取ったあと、48角/38角から49角、58角と追って行けば、最後に58角/28角 を経由して85手に減らすことが出来る。

この最後の入れ換えを作るために後手角を28に残す細工は実は69香と79香を取る前にした方が効率的 であることに気付けば作意に到達する。

ところで合議制の話ですが、大数の法則というのがありまして、確率pで正解を出す小賢者が無数に居たとすると、確率1で「その賢者達のうちの割合pの人数が正解を出す」ということが言えます。
ですから、p>0.5のときは小賢者の人数を増やしていくと多数決が正解を出す確率は1に収束します。
また、大賢者1人と小賢者2人の場合ですと、小賢者は大賢者の平方根の割合以上で正解を出せば大賢者の手助けが出来ます。
例えば大賢者の正答率が0.6の場合は正解:不正解= 3:2ですから、小賢者は√3:√2すなわち、正答率で √3/(√3+√2) = 3-√6≒ 0.550511以上あれば良いことになります。
大賢者の正答率が0.9の場合は9:1ですから小賢者は3:1すなわち正答率0.75以上が必要になります。

渡辺さんは解答と一緒に、コメントに出てきた「合議」に関するコメントも送ってくださいました。平方根の比で考えるというのは、二次不等式を立てるよりスッキリしていて、模範的な解答ですね。
この賢者と小賢者の話は非常に単純化されたモデルなので、そのまま日常生活に適用できるわけではありませんが、こうやって単純なモデルで考えたことは複雑な事象に対処するときも有用な指針を与えてくれます。専門的な解析はできないとしても、このような考察は折に触れてやっていきたいですね。
 
 
若林さん

収束から考えました。
一度受方角を28に避難させないといけないのと、49銀-69玉のために1筋での折り返しが必要なのがキーですね。
気持ちよく詰ますことができました。

本作、初形から収束が見えてしまうのは正直言って「作り損ねた」感があるのですが、おかげで解答は前回より(一通ですが)増えました。
1筋での折り返しは「盤の2段を使う角銀追いは3筋分あれば折り返しが可能」という協力詰作図上の「定理」(?)に沿ったもの。本来なら、せっかくMessignyルールを使っているのですから、Messigny特有の性質を利用して「定理」に当てはまらない作品の実現を目指すべきなのでしょうが……
 
 
瘋癲老人さん

詰め上がりは一通りしかないので難しくはないが、手数を合わせるのに苦労しました。
無駄手の69角を指していた為なかなか2手縮まらず。

 
瘋癲老人さんの仰っているのは38手目から、78玉 69角 … と進む紛れのことですね。この筋は後で58角に形を戻さないといけないので、手数を損してしまいます。
誰でもそうだと思いますが、こういう「癖」というか「なぜか自然にこう指してしまう」筋で紛れに入ってしまうとなかなか抜けられません。しかも、慣れないルールだと盲点に入ったのかそのルールに対する知識不足なのか判別できず、疑心暗鬼になることが多いです。
 
 
たくぼんさん

良心的な設計のおかげで歩を打つ場所が分かるので詰上りも予想がつく。
とはいえ序に28角型にするために一旦右へ戻る順は試行錯誤の上に辿り着いた順。
早く左の銀の元へ行きたいという心理の逆を突かれました。

 
そう67桂は「良心的な設計」なのです。決して余詰に負けたわけではないのです!(空しい)
一応は9筋以外には歩を置かない(代わりに9段目の香を歩にする)ような案も考えたには考えたのですが、なかなか思ったような手順になってくれませんでした。詰将棋って難しいですね。
 
 
雲海さん

最初は20手目を58玉として、49角、69玉、58角、79玉、88銀以下79手で詰ましてしまいました。(79手に到達するまでにも苦労がありましたが)
どこで間違えたのだろうとさらに右往左往し、20手目を39玉として右辺へ追っていく手順をやっと見つけて解決できました。
心理的には早く左辺へ行きたいので、一旦右辺へ追うのは盲点でした。

本作で意外な所は趣向らしき手順があまりないことでした。もっとメッシニーらしい趣向手順が出てくるかと思ったのですが。
角2枚だけじゃそんなに発展性が無いのでしょうか?もしかしたら非標準駒数の方がこのルールとは相性がいいかもしれませんね。

ちなみに前作のPWC107手詰の倉庫番趣向の作は、玉が48へ行けることになぜか気がつかなくて撃沈しました。情けない・・・

 
雲海さんもこの作品には物足りなさを感じているようですね。これは角2枚とか標準駒数だからというより、単に私がMessignyをあまり知らないせいだと思います。自分自身の作図経験が増えたり、他の作家の方々によるMessignyの作例が増えれば自然にレベルは上がってくるのではないかと思います。
 
 
隅の老人Bさん

持駒の歩の打てるのは6筋だけ。9筋の銀を働かせるのには?
ともかく、王を9筋方面に追いましょう。
方針決定、あとは根気と暇つぶし。
なんとなく、収束図はこれかな?で、また追い回したら、詰みました。
ひさしぶり、OFMが解けて、嬉しいな。
この勢いでパラ誌のMessignyに挑戦しよう。

 
隅の老人Bさん、お久し振りです。確か第151回以来の解答ですね。ぜひ「氾濫32」への解答もよろしくお願いします。
 
 
今回は初形から詰上りがある程度想定できる問題だったおかげか、解答が1通増えました。ちょうど「氾濫」ともリンクする出題だったので、この解答増は嬉しいですね。次回は「氾濫」の解答の邪魔にならないよう、易しめの問題を出題する予定です。ぜひ「氾濫」ともども解答をよろしくお願いします。
また「1手詰?コンクール」も解答も今月15日が締め切りですので、こちらも宜しくお願いします。

(2010.6.6 七郎)


第158回(2010.4.19)出題の解答

「神無七郎 作」 PWC協力詰 25桂35桂37桂47桂48歩56王72歩 +角, 26銀27銀36玉38金41香42香43飛44香49金58金59金65飛74歩 #107 

【出題時のコメント】

今は4月の後半。世間的にはゴールデンウィークの控えて予定を立てる時期ですが、筆者にとっては「神無一族の氾濫」の出題稿を作成する時期です。結果稿に比べると出題稿は書くことが決まっている分作成が楽なのですが、作品が思うように揃わない時など、出題の質を落とさずどうやって頭数を揃えようかと四苦八苦することがあります。
 そのような事態に備えて用意するのが「予備作」。自分でテーマに合う作品を作ったり、逆に既存のストックに合わせてテーマを選んだり(ちょっとズルイ)することにより、投稿不足に備えるのです。幸い今回の「第32回神無一族の氾濫」にも、充分な数と質の作品が寄せられたので、「予備作」をこちらの出題に回すことができました。このところ長編ばかりが続いて解答者の皆様も大変かと思いますが、連休などを利用して解答をお寄せ下さい。創作の出発点は第156回出題と同じ素材ですが、あれよりは易しいと思います。

えっ、いつもよりコメントが短い? まあ、いろいろ立て込んでいますので……
 

 

【ルール説明】

【手順】

63角 45飛 同角成/63飛 37玉/36桂 55馬 36玉/37桂 54馬 37玉/36桂 64馬
48玉/37歩 75馬 66飛 同馬/75飛 37玉/48歩 55馬 36玉/37桂 54馬 37玉/36桂
64馬 36玉/37桂 63馬 37玉/36桂 73馬 55飛 同馬/73飛 36玉/37桂 54馬
37玉/36桂 64馬 36玉/37桂 63馬 37玉/36桂 73馬/63飛 48玉/37歩 84馬 66飛
同馬/84飛 37玉/48歩 55馬 36玉/37桂 54馬 37玉/36桂 64馬 36玉/37桂 63馬
同飛/43馬 54馬 37玉/36桂 64馬 48玉/37歩 75馬 66飛 同馬/75飛 37玉/48歩
55馬 36玉/37桂 54馬 37玉/36桂 64馬 36玉/37桂 63馬 37玉/36桂 73馬 55飛
同馬/73飛 36玉/37桂 54馬 37玉/36桂 64馬 36玉/37桂 63馬 45香 同馬/63香
37玉/36桂 55馬 36玉/37桂 54馬 37玉/36桂 64馬 48玉/37歩 75馬 66香
同馬/75香 37玉/48歩 55馬 36玉/37桂 54馬 37玉/36桂 64馬 36玉/37桂 63馬
45香 同馬/63香 37玉/36桂 55馬 36玉/37桂 54馬 37玉/36桂 64馬 36玉/37桂
63馬/64香 45香 同馬/63香 37玉/36桂 55馬 36玉/37桂 46馬 まで 107手


詰上り

動く盤面で鑑賞する(Flash版)Flash Player 9が必要です)

動く盤面で鑑賞する(Silverlight版)Silverlight 3が必要です)

 

【解説】

まずは初形を見てください。4筋に香が並んでいます(途中に飛が混じっていますけど…)。この利きが消えれば簡単に詰ますことができるので、並んだ香を順次はがしていきたいのですが、残念ながらルールはPWC。そう簡単に駒は消えてくれないので、ばがす代わりに邪魔にならない所にどいてもらいます。

キルケ系のルールでは「消去」の代わりに「待避」を用いることがあり、筆者もしばしばこのネタを使っています。ルールは少し違いますが、第5回アンチキルケばか詰作品展に発表した作品などは最も分かり易い例のひとつでしょう。

第124回出題図
(参考図:第5回アンチキルケばか詰作品展より)

ただ、今まで自分が発表した作にはちょっと物足りない点がありました。「待避先」が割と直線的で、どこにどうやって片付けるかということが自明なことが多いように感じていたのです。本作も当初は馬鋸の進行方向がそのまま待避先になっていたので、物足りなさを感じていました。そこで工夫したのが馬鋸の筋に別の軌道を付け加えることでした。馬鋸の筋を二重にすればおそらくもっと複雑な機構ができると思いますが、本作のように片道で帰ってくることしかできない軌道を付け加えるだけでも、予想以上に複雑な待避機構ができあがりました。

馬鋸の馬が一旦軌道を外れて別の役割を果たし、また軌道に戻ってくる仕組みは普通詰将棋でも大きな成果を挙げていますし、これからも研究と発展が期待されます。この作品自体は最初の飛の待避の仕方さえ分かれば、あとはその一部を使って残りの全部を待避できるので割と易しかったと思いますが、いろいろなルールと組み合わせられるフェアリーでは、多重軌道を使った高度な機構がまったく手付かずで残っているように思います。

 

【正解者及びコメント】(正解5名:到着順)

市村道生さん

3ヶ月連続した難解作から、今月は軽趣向作。
何か、長期の旅行から、久し振りに懐かしの我が家に帰って落ち着いたような気分です。

後続の邪魔にならないよう、順次、奥の場所から整理して行く趣向ですが、その方法が実に巧妙で、最初の飛車などは、何と9回の移動でやっと目的地に移す事となります。
PWCのルールを最高に駆使した手順で、楽しく推理しながら解けるパズルの傑作です。

このところの難解作連発には、さすがの市村さんも辟易されていましたか。
本サイトでの基本的な出題方針は「良さそうなものから先に出す」なので、時には難解作が続くこともあるのですが、特にここ2回は例外的な難しさだったと思います。多分、本作くらいの難度が本サイトの「難問」の標準的なレベルではないかと思います。
 
 
若林さん

玉の可動範囲が3ヶ所で、持ち駒角。
4筋の掃除という目的がはっきりしていて手がつけやすかったです。
はがし趣向ならぬずらし趣向と言ったところでしょうか。
気持ちよく変速馬鋸が楽しめました。7筋の一見ゆるやかな枠が見事です。

 *

解図中は合駒は一切読みませんでしたが、金があると4筋に角を運んで封鎖できるのですね(fmで確認)。これが銀(縦横方向への移動が直進のみ)ではできないのが綺麗ですね。

156回のPWCは解くため=45桂を消去するためキーが全く見えず、投了。
前回の作品は4筋突破が鍵なのは分かっても、そのための配置自体見つけられませんでした。
どうも(特に)PWCにおいて、ある目的を達成するために必要な配置がある程度複雑になると見つけられなくなるようです。

若林さんは下段の金配置に言及されていますが、正に仰る通り。「と金」ではなく「金」になっているのは余詰対策です。こういう所に気付いて貰えるのは嬉しいすね。
ただ、時には気付いて貰うと困る場合もあります。それはもっとスマートな解決方法があるのに、下手な方法で余詰防ぎなどをしてしまった時です。本作も「本当はもっと良い対策があるのでは…」という疑念が拭えないので多少不安は残っています。
 
 
渡辺さん

今度は倉庫番ですね。荷物(飛香)を奥から順に詰めて行きます。
(手前)63→66→75→73→84(奥)の順。
ただし75を詰めた後は66 は無理なので代りに64に詰めます。

気付いてみれば簡単なのですが、歩が稼げるループが何通りもあってこれが作意と無関係であることに気付くまで、どうやって歩を打つ場所を作るのか思案してはまっていました。
No.156を解いていなければ歩を取る手に惑わされずに済んだのですが...。

 
「倉庫番」はこの種の趣向にはピッタリの言葉ですね。駒を運搬するのが主題の詰将棋はこれからは倉庫番趣向と呼ぶことにしましょう。
あるいは新しいルールとして「倉庫番」を使うことができるかもしれません。移動先にある駒を1個だけ進行方向に動かせるルールとか… 誰かやりません?
 
 
たくぼんさん

4筋の邪魔な駒を移動させることはすぐに分かるが、しばらくは48歩が取れることに気付かず一悩み。
取れる事に気付くと面白いようにストーリーが見えてきた。
倉庫に邪魔な物を片付けるそんな作品ですね。面白かったです。

 
たくぼんさんも「倉庫番」を連想されたみたいですね。やはりこの種の作の呼称は倉庫番趣向で決まりでしょうか。鳥が枝を運んで巣を作るのにも似ているので、営巣趣向と呼ぶのも良いかもしれません。
48歩の配置は一種の「可動式の壁」。48玉の形のときは37に馬が入るのを防ぎ、37玉の形のときは48に馬が入るのを防いでいます。37桂もそうですが、こうして「動く邪魔駒」を置くのはPWC作図の上で重要なテクニックです。
 
 
瘋癲老人さん

1枚目の飛車を84にもっていくまでが大変。
最初は73で一息ついたので最後の香が5筋に来て失敗しました。
荷物運びパズルみたいで面白いと思います。

 
73に飛車を運んで一服。残りの飛香を運ぼうとして場所が足りないことに気付き、最初に戻ってもう一回。今回、正解された方々もこのパターンは多かったのではないでしょうか。
本家「倉庫番」と異なり格納場所を明示する必要がないのは、詰将棋の良いところですね。
 
 
花粉の季節もそろそろ終わりと喜んでいたら、5月になって急に暑くなり、少し体調を崩していました。まだWFP作品展も(難物っぽい)2問を残しているので、ちょっとピンチです。これから気合を入れて頑張ります。
 次回の出題は「氾濫32」に合わせて「自分の利きがない場所に駒が動くことがある」ルールの作にしようと思っているのですが、具体的に何を出題するかは未定です。
 また、「1手詰?コンクール」もそろそろ募集締め切りです。投稿宜しくお願いします。

(2010.5.9 七郎)


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