【出題時のコメント】
今 月、本サイトで詰将棋用XMLビューアを公開しました。以前「ブラウザ上で動く盤面」として JavaScriptで書いていたものを、多くのブラウザで使えるよう、Actionscriptで書 き直したものです。新しい言語を覚えなければいけないので、リファレンスと首っ引きでプログラミング作業を行ったわけですが、そこでひとつの言葉が目に飛 び込んできました。
「アフィン変換」
これを使えば、ベ クトルで表された図形の回転・伸縮・平行移動が一発でできるという優れモノなのですが、一般の人は「何それ?」という感想しか持たないと思います。筆者も 普通ならそういう反応をするはずなのですが、この言葉は例外でした。なぜなら、大学時代に何を思ったか「アフィン空間」の講義を選択し、全然ついていけず に単位を落とした記憶があるからです。でも不思議と不快感はありません。むしろ予期しないところで古い友人に再会したような気分です。
よく「日常生活で数学なんて使わない」という人がいますが、事実はむしろ逆です。「犬も歩けば数学に当たる」と言っても良いくらい日常生活には数学が溢れ ています。それを普段意識しないのは、蛇口を捻れば水が出ることを普段は意識しないのと同じ理由です。「なぜ蛇口を捻ると水が出るのだろう」と考え、それ を追求すると、数学のみならず物理、化学、社会、経済、法律など、ありとあらゆる人間の活動が芋づる式に出現します。筆者も普段はそんなことを意識して生 活していませんが、たまには「日常の舞台裏」を覗いてみるのも良いでしょう。意外なものに意外なところで遭遇できるはずです。
さて、今回の出題は駒数制限オーバーの作です。ルール設定さえ理解できれば半分解けたも同然ですが、気分転換にはなるかもしれません。
【ルール説明】
【手順】
28銀 同玉 39銀 同玉 48銀 同玉 49銀 同銀 37銀 同玉
46銀 同玉 57銀 同玉 58銀 同銀 68銀 同玉 69銀 同銀
79銀 同玉 88銀 同玉 77銀 同玉 78銀 同銀 86銀 同玉
87銀 同銀 95銀 同玉 84銀 同玉 75銀 同玉 76銀 同銀
64銀 同玉 65銀 同銀 55銀 同玉 56銀 同銀 44銀 同玉
45銀 同銀 35銀 同玉 36銀上 同銀 26銀 同玉 27銀上 同銀
15銀 同玉 16銀 同銀 24銀 同玉 25銀 同銀 13銀 同玉
14銀 同銀 22銀 同玉 23銀 同銀 31銀 同玉 32銀 同銀
42銀 同玉 43銀 同銀 51銀 同玉 52銀 同銀 62銀 同玉
63銀 同銀 71銀 同玉 72銀 同玉 81銀 83玉 72銀 同銀 まで 100手
→動く盤面で鑑賞する(Flash Player 9が必要です)
【解説】
ご覧の通り盤上は銀だらけ。飛び駒がないので、受方の玉だけでなく銀も一緒に自玉付近に連れてきて、退路封鎖をさせる必要があります。また攻方の銀の枚数は49枚ですから、すべての銀を消すのに最低98手掛かり、捨駒以外の手を指す余裕は1手しかありません。先に収束を考えると、この「捨駒以外の手」も最終盤で使う公算が大きく、それまでは受方銀の出遅れにだけ気をつけながら、捨駒を連発すれば良いことが分かります。
ここまで条件を絞り込めば、後はあまり紛れはありません。ひとつだけ気をつけないといけないのが9手目付近。ここで57銀を先にやってしまうと、後で右辺に戻ってきたときに困ります。後で邪魔になる26銀と35銀の2枚をこのタイミングで消去するのが軽い伏線で、ここさえ乗り切れば後は難しいところはない と思います。
余談になりますが、むかし添川公司氏にある小駒煙を見せてもらったとき「この仕組みで50枚くらいまでなら消せる」と氏が語っていたのを思い出しました。 本作のようなルールで50枚消せても、全然大したことはないですが、普通の詰将棋のルールで50枚消せたらかなり凄いと思います。普通詰将棋専門の煙詰作家の皆さんも、作図技術の限界に挑戦する意味で、駒数制限オーバーの煙詰に挑戦されてはいかがでしょう?
【正解者及びコメン ト】(正解5名:到着順)
香箱さん
最初 目がチカチカしたけれど、序盤で26と35の銀を消しておけばあとはすらすらと解けて心地よい。誤記がありませんように。
☆ 香箱さんの解答は出題当日の23:59に到着。「最も遅い当日解答」という レアな記録を打ち立てました。
ちなみに、こういう作品では解けていることが分かれば良いので、誤記はあまり気にしなくて大丈夫ですよ。
たくぼんさん
初形 を見てビックリ。でも解図の方向は分かりやすいのでとっつきやすい。
とはいえ9手目57銀とやって苦しみました。37銀から35銀を消去しておけば
あとが流れることがわかり解決。煙詰はいつ解いても気持ちよいですね。
☆ たくぼんさんの解答は「成禁ですので生の表記は省略しています」と丁寧な注 釈付でした。fmの出力でもちゃんと「生」を省略してくれますし、「成禁」の条件下においては「生」がない方が棋譜が見易くなるので、むしろ推奨の記譜法 です。
小峰耕希さん
今日 (5日)になってやっとやる気が出て、盤に並べたのですが、当然ながら駒種を度外視しても一組では足りず、マグネット盤付属の駒も動員したので、盤上には 大きさバラバラの駒が混在(笑)。
しかも「角」や「金」を「銀」と読み替えるのを忘れて迷走したり(爆)。
ただ目が慣れてからは楽勝。序の伏線(すぐに57とやらない)がちょっと気が利いてますね。
☆ 今回は駒数が通常より多いので皆さんいろいろ工夫をされていたようです。例えばKifuwに駒数オーバーオプションとか、未定義駒作成機能とかあると、PC画面上で駒を動かして確認できるので、とても嬉しいのですが…。
えっ、自分で作れって? うーん、実は昔VBで作ろうとしたことがあったのですが挫折しました。Kifuwの操作性はとても優秀なので、これに匹敵するようなフェアリー用の棋譜管理ソフトを作るのは難しいです。
真Tさん
初形 を見て「純度95.1」を思い出しました。
「純度95.1」は暗算で解けたのですが、同○でない手が意表をついて最初の方にあるのではないかとか、銀を最短で83または72に運ぶには…とか考えて しまったために暗算では解けませんでした。
58の銀を連れた趣向手順に気づいてからも26銀と35銀の消去と収束で苦労して、存分に楽しむことが出来ました。
☆ 前回ややこしい問題を出してしまったせいか、必要以上に警戒させてしまった みたいですね。
「純度95.1」は盤上に駒が増えていくタイプの作品だったので、その逆を作る計画もあったのですが、実現できませんでした。いつか完全に 盤面を埋め尽くす初形からの煙詰も作りたいですね。できれば趣向手順を入れて。
瘋癲老人さん
並べ るのが億劫でほったらかしでしたが締め切り間際になったので碁石を並べて考えました。
7手目から右辺の銀を3枚さばいておくところが難しい。間に合わないかと思いました。
☆ なるほど、碁石を使うのですか!
うちには碁石はありませんがオセロのセットがあるので、これから多量に同種の駒を使うときはオセロの駒を使いましょう。これからのフェアリー作家・解答者は、碁石かオセロの駒を常備することが必要ですね!(多分違う)
☆ 出題翌日には解答が2つ到着し出足好調だった今回の出題ですが、その後パタリと解答が途絶えました。「最近のネット出題で解答が集まらない傾向はここにも現れているなぁ…」とか思っていたのですが、最終日になって解答が3通集まり、胸をなでおろしました。
解 答者を増やすという意味では、解答・出題の場所を集約できる「ウェブフェアリーパラダイス」への移転を検討した方が良いと思いますが、そのときには他の出 題コーナーとの兼ね合いで、どういう位置付けでどのような作品を募集・出題するかという点を明確にしないといけません。当面は、ここに書いた出題稿や結果 稿を転載してもらう形を採り、どのような形で「ウェブフェアリーパラダイス」へ移転するか考えたいと思います。
(2008.7.6 七郎)
【出題時のコメント】
先週行われた「コンピュータ将棋選手権」で、優勝・準優勝したソフトがトップクラスのアマ棋士を破り、話題になりました。私はこのライブ中継を自宅で見て いたのですが、時代の変化を感じました。―― いや、別にコンピュータソフトが勝ったことに驚いているわけではありません。それが起こるのは時間の問題でしたから。
むしろ驚いたのは、こうして動画や音声 をリアルタイムで配信することが、誰にでもできるようになったことです。このライブ中継はUSTREAMというサービスを使っていたようですが、Webカメラとイン ターネットに繋がったパソコンさえあれば、誰でもライブ中継ができるそうです。テレビ局などが見向きもしない一部マニア向けの映像を配信するにはピッタリ のサービスではないですか!
そこで思ったのが、詰将棋の全国大会で もこういうライブ中継ができないかということ。実際、「コンピュータ将棋選手権」のライブ中継を見たときは、映像と共に、会場のざわめきや対局者の呟きが 聞こえてきて、なかなか臨場感がありました。もし全国大会がライブ中継されれば、日程が合わなかったり、会場が遠方で来られない人でも、全国大会の様子や 雰囲気を味わうことができるでしょう。また、慣れた人ならチャットを使って、自宅に居ながらにして「参加」することも可能かもしれません。今年の全国大会 では難しいかもしれませんが、来年以降の全国大会ではぜひライブ中継の導入を検討して欲しいと思います。
さて、今回は出題が延び延びになってい た長編の出題です。そんなに難しいとは思いませんが、手数が長いですし、JEWEL BOX #5などとも重 なるので解答期間を4週間としました。解答は解けているのが分かる範囲で略記して戴いて構いません。
【ルール説明】
【手順】
98金 同玉/87金 88金 99玉 98金 89玉 88金 同と/78金 79金/78と 98玉
89金 87玉 98金 同玉/87金 88金/87と 99玉 98金 89玉 88金 同と寄/78金
79金 98玉 89金 同玉/98金 99金 78玉 88金/99と 79玉 78金 同と寄/68金
69金/68と 88玉 79金 同玉/88金 78金/88と 同と左/68金 69金 89玉 79金 98玉
89金 同玉/98金 88金/98と 79玉 89金 68玉 78金/89と 69玉 68金 同と/58金
59金/58と 78玉 69金 同玉/78金 68金/78と 同と左/58金 59金 79玉 69金 88玉
79金 同玉/88金 78金/88と 69玉 79金 58玉 68金/79と 59玉 58金 同と/48金
49金/48と 68玉 59金 同玉/68金 58金/68と 同と左/48金 49金 69玉 59金 78玉
69金 同玉/78金 68金/78と 59玉 69金 48玉 58金/69と 49玉 48金 同と/38金
39金/38と 58玉 49金 同玉/58金 48金/58と 同と左/38金 39金 59玉 49金 68玉
59金 同玉/68金 58金/68と 49玉 59金 38玉 48金/59と 39玉 38金 同と/28金
29金/28と 48玉 39金 同玉/48金 38金/48と 49玉 39金 58玉 49金 同玉/58金
48金/58と 39玉 38金 同と/28金 29金 48玉 38金/29と 49玉 48金 39玉
28角 同と/29角 38金 29玉/39角 28金/38と 19玉 29金 同桂成/17金 28角
同圭/29角 18金/17歩 29玉/19角 28金/18圭 39玉 38金/28と 49玉 48金 39玉
28角/19と 同圭/18角 38金 同圭/28金 29金 48玉 38金/29圭 49玉 48金
同と/58金 59金/58と 38玉 49金 同玉/38金 48金/38と 同と右/58金 59金 39玉
49金 28玉 39金 同玉/28金 38金/28と 49玉 39金 58玉 48金/39と 59玉
58金 同と/68金 69金/68と 48玉 59金 同玉/48金 58金/48と 同と右/68金 69金
49玉 59金 38玉 29角/18圭 同と上/28角 49金 同玉/38金 48金/38と 59玉 49金
68玉 58金/49と 69玉 68金 同と/78金 79金/78と 58玉 69金 同玉/58金
68金/58と 同と右/78金 79金 59玉 69金 48玉 39角/28と 同と直/38角 59金
同玉/48金 58金/48と 69玉 59金 78玉 68金/59と 79玉 78金 同と寄/88金
89金/88と 68玉 79金 同玉/68金 78金/68と 同と右寄/88金 89金 69玉 79金 58玉
49角/38と 同と直/48角 69金 同玉/58金 68金/58と 79玉 69金 88玉 78金/69と
89玉 88金 79玉 89金 68玉 59角/48と 同と右/69角 79金 同玉/68金 78金
89玉 88金 同と寄/98金 78角 同と上/87角 88金/98と 79玉 89金 68玉 79金
同玉/68金 69金 89玉 98角/87と 88玉 79金 同玉/88金 89金 68玉 78金/89と
69玉 68金 同と/58金 87角/98と 78歩 68金/58と 79玉 69金 88玉 79金
同玉/88金 89金/88と 68玉 78金 69玉 68金 79玉 78金 同と/88金 89金
68玉 79金 同玉/68金 69金 89玉 98角/87と 88玉 79金 同玉/88金 89金
68玉 78金/89と 69玉 68金 同と/58金 59金/58と 78玉 69金 同玉/78金
68金/78と 同と左/58金 59金 79玉 69金 88玉 79金 同玉/88金 78金/88と 69玉
79金 58玉 68金/79と 59玉 58金 同と/48金 49金/48と 68玉 59金 同玉/68金
58金/68と 同と左/48金 49金 69玉 87角/98と 78と左 同角/87と 68玉 59金
同玉/68金 69金 48玉 58金/69と 49玉 48金 同と/38金 39金/38と 58玉 49金
同玉/58金 48金/58と 同と左/38金 39金 59玉 49金 68玉 59金 同玉/68金
58金/68と 49玉 59金 38玉 48金/59と 39玉 38金 同と/28金 29金/28と 48玉
39金 同玉/48金 38金/48と 同と左/28金 29金 49玉 39金 58玉 69角/78と
同と直/68角 49金 同玉/58金 48金/58と 39玉 49金 28玉 38金/49と 29玉 28金
同圭/18金 19金/18と 38玉 29金 同玉/38金 28金/38圭 同と/18金 19金 39玉
29金 48玉 59角/68と 同と直/58角 39金 同玉/48金 38金/48圭 29玉 39金 18玉
28金/39と 19玉 18金 29玉 19金 38玉 49角/58と 同と左/39角 29金 同玉/38金
28金 39玉/29角 38金 同圭/48金 49金/48と 28玉 38金/49圭 29玉/28角 39金
18玉 19歩 まで 427手
→動く盤面で鑑賞する(Flash Player 9が必要です)
【解説】
ば か詰の追い趣向の一種に「角金追い」があります。加藤徹氏の85手詰(詰パラ1975年3月)や 同じく加藤徹氏の125手詰(詰パラ1979年10 月)がその代表例です。本作はこれをPWCルールに応用したものですが、そのままのPWCルールだと簡単に詰んでしまうため、更に 「打歩」の条件を加えています。
この「角金追い」趣向、PWCが付かない 通常の条件下では、水の中を泳ぐ魚のように駒がスイスイ動くのですが、PWCで邪魔な駒をいっぱい置いておくと、まるで水銀の中を泳ぐようなもどかしい動 きになります。
当初は、金で金の群れを掻き分けて進む手順だと、単純な手順しか出てこないんじゃないかと思っていたのですが、空き場所を狭く設定すると、空間確保のた め、金が割と面白い動きをします。更にこれに角を絡めることができることに気付いて、一気に創作意欲が湧いたのを覚えています。全体のストーリーは「歩を 稼ぐために角が一往復し、金はそのサポートをする」という割と単純なものですが、常に複数のと金で攻方の駒を取る選択肢があるため、最短手順を求めるのは かなり面倒だと思います。
ところで、皆さんはと金群を片付けながら進む金から、「倉庫番」というパズルゲームを思い出しませんか?
「PWC」では他のやり方でも「倉庫番」的な表現が可能でしょうし、他のルール(例えば「取禁」)でも「倉庫番」的なパズルができそうに思います。本当に そうかどうか、今後研究を進めていきたいと思います。
【正解者及びコメン ト】(正解1名!)
たくぼんさん
とにかく脳か ら熱が出るほど考えました。
まずは手が滞 らないように手順を考えていき右辺へ追う。
そこで18歩を取る順を考えるがダメなので後手の持駒の歩を合いさせる方法に行き着く。
19角を左辺に運んで合駒を取る順だ。この辺りでは手数計算をしていないので運ぶ順が最短とは分からない。
とにかく途中図を何枚も作り進める。歩合を出して右辺に再び角を運んで何とか詰型まで辿り着く。
ここで手数を数えると50手以上オーバー。
そこから途中図から途中図までの最短の経路をひたむきに検討した。
ある程度考えると同じパターンのものが最短手順となるのでその順を骨子として解いていく。
金と玉の位置交換は手筋ですねえ。それと角の移動のタイミングも数手短縮の本当にぎりぎりで成立している。
とにかく一番悩んだのが244手目の79玉。
これまでのパターンだと同と/98金が筋なだけに2手オーバーに悩まされた。
それとオオボケであるが、最初18歩の成らせ手順を入れておりここでも時間を食った。
感じとして成らせが入ると早合点。結局最後の最後までこの部分に気が付かなかった。
それにしてもこの限られたスペースでこの構想を唯一解で創ってしまう七郎さんには恐れ入る。
かつて宇宙人と言われていたのも納得できますね。とにかく疲れ た〜〜。
☆ たくぼんさんからの解答はWord文書で、18もの途中図が入った超力作で した。
お忙しい中、本作に多くの時間を割いていただき、ありがとうございました。
特に左辺での折り返し部分における手順短縮に苦労されたようですが、これは作者が意図的に入れたものではなく、自然に入ってきたものです。もしこれで、非 限定があるとか、サイクルが大幅に削られるとかの不都合があれば、それを防ぐための方策を講じたと思います(実際右辺の折り返しは、17桂配置で恣意的に 凝った手順にしています)が、左辺の折り返しは、形も自然で手順も良かったので、fmが見つけた最短順をそのまま採用しています。この部分は作者が創った というより、詰将棋の神様が用意したものを借りてきたと言った方が良いでしょう。逆に、左辺の折り返しを変則的な手順なしで実現しようとしたら、かなり創 作は困難になったと思います。
☆ 今回、解答者はたくぼんさん唯一人。詰めるだけなら難しく ないけれど、最短手順を求めるのは難しいという「解答者に優しくない」問題でした。先月はネットでの出題や作品募集が多くあり、イベント過多だったせいも あるかもしれません。今月もいくつも作品募集がありますし、「氾濫28」にも解答を貰わなくてはいけないので、次回の出題はもう少し気楽に手を出せる作品 にしたいと思います。
個人的には「詰将棋用XMLビューア」の製作に手を出した ため、先月は思いっきり時間不足の状態に陥りました。JEWEL BOX #5もまだ全部解けていないので、ちょっとピンチです。
(2008.6.8 七郎)
【出題時のコメント】
前回の結果稿では長編の出題を予告していましたが、予定を変更して「受先形式」の作品を出題します。実 は「第28回神無一族の氾濫」の募集テーマが「受先形式」なのですが、期待していたよりも作品の集まりが悪く、神無一族以外からの投稿はまだ一作という状 態です。そこで今回は「受先形式」のPRも兼ねた出題を行うことにしました。
さて、この「受先」というやつですが、「受方から指し始める」以外は普通の詰将棋と同じです。これを将棋の実戦に当てはめると「必至が掛けられた状態で 最も粘れる受けを探す」ことに相当します。こう考えると「受先形式」も普通の詰将棋の自然な拡張で、とりたてて奇異なルールではなさそうです。もしかした ら、将来は双玉などと同じように、普通の詰将棋の一部になるかもしれません。ただし、詰将棋には「攻方に対する王手義務」があるので、指し将棋では全然 「受け」になっていないような「受け」でも、結構延命効果があったりします。その辺の性質を利用して、実戦離れした詰将棋独特の手順を実現するのも作家の 腕の見せ所でしょう。もちろん、他のルールでも「受先形式」で作品を作ることは可能ですので、通常の「攻先」とは一味違った作品群が生まれることを期待し たいところです。
とりあえず、まだ馴染みの薄い「受先」ではありますが、今回の作品は易しいので多くの解答を期待しています。また、「受先形式」に興味が湧いたら「氾濫 28」への投稿もよろしくお願いしますね。
★「第28回神無一族の氾濫」の作品募集 は終了しました。結局、神無一族以外の出題作は1作だけです。どなたの作品か予想するのも一興かも。(2008.4.21追記)
【ルール説明】
【手順】
18香成 27飛 15玉 16歩 同玉 17歩 同杏 26飛 15玉 16歩
同杏 25飛 14玉 15歩 同杏 24飛 まで 16手
→動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)
【解説】
本 作はの狙いは初 手18香成。最遠地点への移動ではなく、一歩前で止まるのが少し面白いと思います。
全体の構図を一段下げれば最遠移動になっ てしまうのですが、それではつまらないですよね。
手順自体は概ね易 しいの ですが、初手の香の移動先によって微妙に詰ませ方が変化します。こ こさえ読めば、後は難しいところはありません。初手に移動した香を元の位置に戻して、待望の24飛を実現します。
- 初手16香 や初手17香生は 28飛 25歩 同角 15玉 24銀 同玉 43角成 14玉 25馬 まで
- 初手17香成は26飛 25歩 15歩 同玉 16歩 同杏 25飛 14玉 15歩 同杏 24飛 まで
- 初手18香生や19香成は 27飛 25歩(15玉は 16歩 同玉 17歩 15玉 24銀 まで)同角 15玉 24銀 同玉 43角成 14玉 25馬 まで
正直、受先形式はまだどんな可能性がある かあまり分からないのですが、うまくいけばチェスプロブレムのような横に広い変化群と、詰将棋らしい縦に深い変化群の双方を活かした作品が出来そうな気が します。
【正解者及びコメン ト】(正解10名:到着順)
香箱さん
25歩の中合 に備え て2手目の飛車の引き場所は27。
ただし初手17香成の変化には一服盛られていて26飛としなければならないのがスパイシー。
☆ 香箱さんは出題当日の解答。というか、出題当日の午後3時半でした。
解答が早いだけでなく、ポイントの17香成の変化をきちんと読んでいるのはさすがです。
橘圭吾さん
中途半端な位 置への香成が狙いでしょうか?
久しぶりにかしこを解いたのですがやはり変化を読むのが面倒です。
誤解でなければよいですが・・・
☆
正解 でした。(一箇所誤記はありましたけど…)
「最悪詰」などもそうですが、このページでも「変化」と「紛れ」の両方を読まないといけないフェアリー作品を出題する機会が増えました。「紛れ」だけ読め ば良いばか詰系統のルールとは違った頭の使い方が要求されるので、出題する方も変な勘違いや見落としをしていないか戦々恐々です。
小峰耕希さん
作意は如何に も七郎さん。僕の好みは変化の24銀捨てかな。
☆ 小峰 さんからは解答と共に、第15 回九州Gフェアリー別館の同氏作に関する余談が送られてきました。
あれは受先形式の協力詰だったわけですが、「指将棋派の読者の間で思わぬ好評を博しました」とのこと。
指将棋派の人はこういうのに興味を持たないだろう、という先入観は捨てなければいけませんね。
フェアリーでも、ルールが簡明で、パズル感覚で取り組めるものは、積極的に紹介してみるのも良いと思います。北村太路さん
作意より変化 のほうが難しかったです。
変化は4四銀がよく利いてました。
☆
今回は作意がすぐに分 かってしまった人が多かったです。まあ、いつも使っているパターンですからね。
変化に関しては作意より短ければ何でも良いという、長編作家の悪癖が出ていないとは言い切れません。
短編作家の方だと、変化手順をもっと丁寧に作り こみそうな気がします。赤土陽一さん
とりあえずは 両王手から逃れなくてはならないので、香車が走って脱出口を開ける必要がありますが、この18成限定は巧いです。
香が18に飛び出してくる様子は“カオリさん”の家出に見えました。十八に 家を飛び出し 十六年 肩を並べて 帰る父娘(オヤコ)
☆
いつも楽しい五七調の短 評を送ってくださる赤土さんですが、今回は行って戻る香を家出娘に見立ててくれました。
今回はカオリさんの家出でしたが、桂子さんの家出とか、アユムさんの家出とか、他の駒で作っても面白いかもしれませんね。家に帰るまでの年月(手数)を延 ばす方向で創作するのも、テーマを引き立てる一つの方法だと思います。この家出娘テーマ(チェスプロブレム風に言えばスイッチバック)は、受先形式の代表 的な利用例になるかもしれません。
また、赤土さんご自身も偶数手のばか詰を作られているとのこと。今のところ偶数手ばか詰を発表できることが明らかなのは、たくぼんさんの所の「偶数手ばか 詰作品展」(不定期)と九州Gフェアリー別館(年4回)ですが、割と自然な拡張ルールなので、これからは発表場所も増えてくるのではないでしょうか。たくぼんさん
受先の普通詰 となると初手が煩わしくなると思ったが、このような創り方をすればとっつきやすいですね。
初手の移動位置の変化にに対応する飛の移動位置が微妙に変わっているのが面白いといえば面白いが
結構最長手順を探すのは大変でした。
☆
受先の作図経験が浅いの でまだ分かりませんが、普通詰将棋に受先を適用しても、あまり難解になることは無いように思います。というのは、難しい初手を入れようとすると、大抵は見 落としが起きて「不詰」になってしまうからです。また、明快なロジックがないと、初手の非限定が生じやすいという問題もあります。(手順の途中の非限定が 許せる人でも、初手の非限定は受け入れ難いでしょう。)
というわけで、受先の普 通詰は意外に難解にならない、と私は予想していますが、これから作例が増えれば実際はどうなのかが判明するでしょう。
隅の老人Bさんまたまた、新 ル−ル?
これでまた、老人を悩ませるの。
一手目を妙手で限定させるのは、難しいでしょうね。
☆
新ルールというよりは、 既存ルールの拡張ですね。
今までフェアリーのルールは、やたら派手なものとか、珍奇なものがもてはやされて来ましたが、普通のルールの延長線上で小さな拡張を付け加える種類のルー ルも、もっと研究されて良いと思います。
真Tさん17香成には 26飛、17香生には28飛(29飛)と初手によって、攻め手が変わるのが面白いですね。
フェアリーの雰囲気のある手順で楽しめました。
☆
一応今はフェアリー扱い ですが、将来的には受先形式も“ちょっ と変わった詰将棋” くらいまでは浸透して欲しいと思っています。双玉詰将棋などは、もう普通の詰将棋と同列くらいに市民権を得ていますが、そこまでは行かなくても、せめて受 方持駒制限と同程度には作図が試みられて良いと思います。
泉真理さん今回の作品は 普通の詰め将棋が王方が必至の状態から始まるので「必至詰」がいいのではないでしょうか。
ところで、ここの作品で最悪詰以外で「ばか」でない作品は初めてでしょうか。
(最悪詰も王方が協力する。)
☆
普通の詰将棋に受先を適 用したときのルール名は私も悩みました。結局はルール名を「詰将棋」で「受先」という条件を括弧に入れて表記する方法を採りましたが、今後も検討が必要 ですね。
「必至詰」は簡潔で良い名称ですが、他のルールでは受先を適用しても初形が必至とは限らないので、一般性はありません。何か応用が利きやすく、耳にも馴染 む言葉はないでしょうか。何か良い名称が提案されるまでは「受先詰将棋」かなぁ…。
なお、このサイトで最悪詰以外で受方と攻方が協力しない作品を出題したのはこれが初めてです。「ばか」の付かない自殺詰なども出題したいですが、問題は 検討ですね。自殺詰のように、余詰で潰れるためにあるようなルールは、なかなか出題する勇気が湧きません。
瘋癲老人さん歩がいっぱい あるので安直に最遠移動かと思いましたが違いました。
☆
今回の作品は最遠移動で はなく、中途半端な移動が狙いだったのですが、いつかは最遠移動も作ってみたいですね。そのときは、やはり盤の端から端まで移動させたいですが、果たしてでき るかどうか…
☆ 今回 の出題は解答者10名で、何とか2桁に達しました。「受先特集」となる「第28回神無一族の氾濫」への解答もよろしくお願いします。
次回の出題は長編の予定…… と前にも同じことを書 きましたが、今度こそちゃんと予定通りに出題できるでしょうか。
(2008.5.4 七郎)
【出題時のコメント】
今回の出題は受験勉強で忙しいはずの伊達さんからの投稿作品です。
詰将棋作家は、やらないといけない仕事がたくさんあるときに限って詰将棋を作りたくなるという困った習性があるらしく、私も時々そんな習性に悩まされま す。そんな時は変に我慢したりせず、とっとと駒を並べる方が大抵は良い結果になるようです。そのまま作品が仕上がるときもあれば、途中で行き詰って挫折す るときもありますが、どちらにしろ創作したいという欲求をある程度満足させてやらないと、中途半端に図やアイデアが頭に残って、他の作業の集中力を欠いて しまいます。作者のコメントによると、本作は割とすぐにできた方らしいので、その後は気持ちよく受験勉強に集中できたに違いありません!(←あくまで推 測)
ところで、本作のルール名を見て引いてしまった人はいませんか? 確かにやたら条件が多くて、解図意欲を減退させるような問題設定ですが、逆に考える と、ルール名がいくつも付いているのは明確な狙いがある証拠でもあります。やたら紛れが多くて試行錯誤を強いられる作品とは違うので、毛嫌いせずに解図し て戴ければ、きっと納得のいく手順が出現することでしょう。ただ、アンチキルケルールに慣れた人は、今回の「キルケ」の条件で勘違いを起こし易いかもしれ ません。うまく解けない場合は、「キルケ」の過去問などで、頭を「アンチキルケモード」から「キルケモード」に調整して解き直すことをお勧めします。
【ルール説明】
【手順】
87飛 77角打 同飛 同角生/28飛 58飛 98飛生 93角 66歩 同角成 99角成
78歩 まで 11手
→動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)
【作者のコメント(投稿時)】
この作品の元ネタはJEWEL BOX#4の第2番です。
これを見て「もっと変わった感じの打歩ができれば」と思って着手しました。
最初は両王手の筋を考えていたのですが、いろいろと駒を動かしているうちにこのようなヒネクレた詰めあがりが浮かんできました。
あとは配置を整理するときにちょっと困っただけで、想像以上にあっさりとできあがった感じです。
余詰防止の駒も一枚だけで済んだのはラッキーでした。ちなみに、(僕が調べたところだけでは)こういう詰めあが りが可 能なのはこの地点だけみたいです。
少しでも不利感を持っていただけたら幸いです。
【解説】
本作は打歩が主題 の作品 ですが、作者が作者で、ルールがこれですから、単純な打歩でないことは容易に想像がつくでしょう。今から、この作品の狙いを、順を追って説明していきま す。
普通「打歩詰」は 玉頭に 歩を打ちます。歩はひとつ前に進む駒ですから当然ですね。しかし、性能変化やフェアリー駒のあるルールでは、玉頭以外の場所に歩を打って「打歩詰」を実現 する場合があります。(本サイトでは第87 回出題でフェアリー駒を使った「玉頭以外の打歩詰」の例があります。)
今回の作品の場合、ルール名に「マドラシ」という性能変化を生じる要素があるので、「玉頭以外の打歩詰」が狙いにあることが推測できます。さて、「玉頭以外 の打歩 詰」にヤマを張ったとして、「マドラシ」で具体的にそれをどう実現したら良いのでしょう? 単純にマドラシの効果で利きを消しあっている状態(以下「石 化」と呼称)で、石化した駒の間に歩を打っても、それを取ると再び石化して「詰」になりません。
まず思いつくのは、2組以上の石化が起こっている状態で、その本来の利きの焦点に歩を打つことです。下の参考図を見てください。(参考図)
こ れは割と有名な形で、 23歩! の1手詰です。
23歩を龍で取れば、12角が有効のまま、角で取れば22龍が有効のまま、両方を同時に石化させることも、逃げることもできないのでこれで詰みです。歩を 打って両王手というのも妙な感じですが、これもマドラシの手筋として覚えておきましょう。さ て、この詰型を本作に当てはめ最終手を推測しましょう。キルケルールの効果で、復活できる位置から王手をすれば取られる心配はないので、8段目の飛、 11〜99の斜線上の角でそれっぽい形を作ってみます。
(仮想図)
この図で88歩とすれば、飛と角の利きが一度に復活して詰み……ではありません。
88歩は角の復活位置を塞いでしまっているので、単純に66玉で角を取られてしまいます。
どうやらマドラシの手筋をそのまま使えば解けるほど、単純ではないようです。ただ、ここで諦め ずに 粘って考えると78歩が有力な手段として見えてくるでしょう。
もし同飛生と取られても、歩が77に復活し、66角の利きが復活します。つまり、78歩は取れないのです。今度は88の位置も空いているし、いやぁ、なか なか捻った問題だったなぁ、後は手順を整理するだけか……などと考えてはいけません。
冷静になって見直すと、78歩でも単純に66玉で脱出されてしまいます。確かに取られた角は88に復活しますが、99角によって石化しているので、王手が 掛かっていないのです。さて、困ったこと になり ました。詰型の想定が根本から誤っていたのでしょうか?
ここで、ちょっと 見方を 変えてみましょう。
仮想図の99角はどこからやってきたのでしょう?
受方の角 は最初 から22に居ますから、これを99に持ってきたいのですが、いかんせん手数が全然足りません。駒交換で持駒にさせてというのも無理があります。
じゃあ、やっぱり詰型の想定が間違っていたんだろう……と考えがちですが、諦めてはいけません。
99角はだめでも99馬なら発生させることができるのです。
マドラシでは生駒と成駒は別種の駒として区別します。従って、成駒の王手に対し生駒が成ることによって受けることが可能です。
つまり仮想図の66角・99角のペアを、66馬・99馬のペアに替えれば、「66馬(または66角成) 99角成」という手順でその形を実現 できま す。
成・生の使い分けを、角の位置変更に使う手順は大変珍しく、まったく同様の前例を筆者は知りません。感触としては山田嘉則氏作マドラシ詰9手(詰パラ1991年10月号)を思い出しますが、いずれにせよ希少な手筋です。
99角が99馬になっても何のメリットもないように思えますが、ここでキルケルールの細則を思い出してください。キルケでは取った駒は生駒になって戻るの です。つまり、仮想図で66角・99角のペアを、66馬・99馬のペアに替えれば、78歩に対して66玉と逃げることはできません。復活した88角は99 馬によって石化されることはなく、66玉に対して王手を掛けた状態になるからです。
こ こまで 分かれば、後はこの詰型に向かって手順を組み立てていくだけですが、角の生と成りの使い分けに、飛の復活と飛生が織り込まれ、最終手に至る前にも手堅くポ イントを稼ぐ手順になっています。
「打歩」を巡って一捻りも二捻りも、あるいは三捻りもある、実に凝りに凝りまくった作品でした。
ここからは若干余談を。
キルケで成駒が取られたとき生駒として戻るというのは、アンチキルケで成駒がそのまま戻る設定と異なるため混同しやすいのですが、これは元々、駒の本来の 性能を活かしたり、二歩禁設定を有効にする目的がありました。本作でも、駒の本来の性能を活かす効果が有効に働いています。
もちろん、キルケ系のルール全般を見直して、日本の将棋にそれを適用する場合の標準的な方法を統一することも考えられますが、このような作品を見る限り、 無理に統一を考える必要もないように思えます。
【正解者及びコメン ト】(正 解3名:到着順)
北村太路さん
パッと見で、 歩で玉 頭叩いて詰み「ではないな」と思い、第4回氾濫の太郎さん作を思い出したので比較的スムーズに辿りつきました。しかし、最初はやはり焦点の8八に歩を打っ て、6六馬を抜かれてしまいました。
7八歩を思いついて、同飛は7七に歩が復活して、6六馬の利きが復活して、
「これだ!」と思いましたが、やはり、6六馬が抜かれたら、8八に「馬」が復活しても駄目か・・・、ん?もしかして、キルケのルールって。。。と確認して 8八に「角」が復活することがわかりどうにか解決。
キルケで生に戻っちゃって、マドラシ利かないなんて、なんか変な感じだなぁ。と思いました。
ちょっと考えオチ感が強すぎて、あまり楽しい感じが伝わらない作品でした。
☆
マド ラシで 「焦点打による同時石化解除」の作品は結構多く作られているので、それを思い出すのが解図の近道ですね。(結局、本作では焦点とは違う位置に歩を打つので すが)
「神無一族の氾濫」の第2回や第4回の神無太郎さんの作品は、この手筋の好 例として覚えておきたいですね。
北村さんの「考えオチ」の感想には、馬発生の意味付けが二重になったことが要因としてあるかもしれません。もし、「99馬は99角より短手数で発生させら れる」という効果と、「99馬は88角を石化させない」という効果を分離して表現できれば、また違った感想になったろうと思います。
たくぼんさん
まあ、マドラ シであ ることと作者が最近両王手ものを創っていることを考えれば、飛角の焦点に歩を打つ両王手の詰上りであることは予想がつく。
歩が取れそうなのは6筋で2二角の存在で角合もでるだろう。
でまず考えたのが、87飛 77角打 同飛 67歩 同飛 97飛生の筋だったのですが結構考えて詰まず。
次に作意順となったのだが、実は9手目の場面で詰まないと思い込んでしまって大苦戦。角を成るということをすっかり忘れておりました。
歩合がなかなかでない構成が実に巧みで最終手も焦点である88歩で無く角の復元場所を空ける78歩とうのが実に巧みです。
来年度は受験で詰将棋活動はお休みとのことですが嬉しい報告を待ってますよ。
☆
焦点 打から ひとつずれた筋に打つことを看破しても、最初に角歩の連続合から読み、そこから先で苦戦……というのは筆者も全く同様でした(一応、投稿を戴いたときに自 分で解いてみました)。
99馬の発生に素直に感心できたのも、そのせいかもしれませんね。
隅の老人Bさん
最後の最後ま で、ル −ルの確認が必要。
ル−ルを最大限に駆使しての創作。
何日考えたやら、これは難しいや。
☆
北村 さんと たくぼんさんの解答が比較的早い段階で到着したので楽観していたら、その後全然解答が来ず。締切最終日に隅の老人Bさんから解答が届きました。
最後まで諦めない「根性流」は、こういう複雑な条件が付いた作にも通用することを証明してもらった気がします。
☆ この ところ 花粉の主役がスギからヒノキへ交替。私の場合、症状はヒノキ花粉の方がキツく、今日も朝から頭痛と下痢に悩まされていました。この結果稿を書くのもかなり 辛かったのですが、もうすぐピークを過ぎるので、あと少しの辛抱です。
次回の出題は長編の予定です。たぶん「チェイン」よりは易しいでしょう。
(2008.4.6 七郎)
【出題時のコメント】
昨日、妖 精都市でフェアリー詰将棋の同一作検索支援プログラム x4cc が公開されました。
これはフェアリーデータベースから同一作検索の機能のみ取り出したプログラムで、登録など必要とせず、誰でも自由に使うことができます。自分の作った フェアリー作品に前例があるかも…という心配のある人は、投稿や発表の前に x4cc で確認してみてください。類似作とか途中が同一というのは無理ですが、完璧な同一図は防げるはずです。この x4cc は技術的にも面白い点があります。
「同一図の検索を行うプログラムなのに、図面のデータを持っていない」
ということです。何だか不思議な話ですが、理屈は簡単。図面の代わりに図面のハッシュ値で検索を行っているのです。図面をそのまま データとして持たないことで、万一のデータ流出に備えているのですね。この方式は全詰連の詰将棋データベースにも取り入れて、同一作検索機能の一般公開を 可能にして欲しいと思います。
ところで、この x4cc に関わっていて少し思いついたことがあります。それは
「将棋の全対局の全局面を保存したらどうなるか?」
ということです。仮に、プロ棋士の公式戦を1年間で約2000局。1局あたりの平均手数を130手としましょう(あくまで仮定の数 値です)。ハッシュ値は1局面あたり8バイト、これにその局面の元となった棋譜を識別するための情報等8バイトを加えるとすると、
2000×130×(8+8)=4160000
つまり、1年間のプロの全対局の全局面がたった4MBで収まってしまうんですね。これなら過去に遡って100年分くらいのデータ を持っても、今のコンピュータなら平気でしょう。
これを応用すれば、ネット対局とか対コンピュータ戦で「これは○○九段と××八段が□□戦で指した将棋だよ」と教えてくれる機能とかが付けられそうです し、コンピュータ同士の対戦で定跡から外れたときの参考データにもなるでしょう。同一局面が多数あるときには、勝率だけ参考にしても良いと思います。
当然の事ながら、全詰将棋の全局面を同じように保存すれば、「途中で同一図となる作品」も検索できることになります。フェアリーだと極端に手数が長い作 品もあるので現実的ではないですが、対象を簡素図だけに絞ったり、普通の詰将棋を対象とするなら実現は充分可能に思えます。さて、よもやま話はこれくらいにして、今回の出題作を紹介しましょう。今回の出題は、一時受験対策で活動を休止されていた荻絵香 木氏の作品です。その作品内容に鑑み、本サイトでの出題としては異例ですが、懸賞出題としたいと思います。また、解答募集期間も通常より1週長く4週間と しました。ぜひ多くの解答をお寄せください。
【ルール説明】
【手順】
69馬 25銀 15歩 同玉 59馬 26銀 16歩 14玉 69馬 36角
94飛 84金 15歩 同玉 95飛 75金 16歩 14玉 94飛 74金
15歩 同玉 95飛 65金 16歩 14玉 94飛 64金 15歩 同玉
95飛 55金上 16歩 14玉 94飛 54金 15歩 同玉 95飛 45金
16歩 14玉 94飛 44金 15歩 同玉 95飛 35金 16歩 14玉
94飛 34金 15歩 同玉 95飛 25金 16歩 14玉 15歩 24玉
94飛 35玉 95飛 44玉 94飛 55玉 95飛 64玉 94飛 75玉
95飛 86玉 59馬 77金 96飛 75玉 95飛 64玉 94飛 55玉
95飛 44玉 94飛 35玉 95飛 24玉 94飛 15玉 16歩 同金
95飛 14玉 94飛 54角 69馬 15玉 95飛 35銀 59馬 25玉
69馬 26玉 59馬 36玉 69馬 37玉 59馬 47玉 69馬 57玉
79馬 47玉 69馬 37玉 59馬 36玉 69馬 26玉 59馬 25玉
69馬 15玉 59馬 14玉 69馬 36角 94飛 15玉 59馬 26銀
95飛 14玉 94飛 54角 69馬 58桂成 15歩 13玉 79馬 68圭
14歩 同玉 69馬 15玉 95飛 35銀 59馬 14玉 69馬 36角
94飛 15玉 59馬 26銀 95飛 24玉 94飛 35玉 95飛 44玉
94飛 55玉 95飛 64玉 94飛 75玉 95飛 86玉 96飛 87玉
69馬 78圭 97飛 86玉 96飛 75玉 95飛 64玉 94飛 55玉
95飛 44玉 94飛 35玉 95飛 24玉 94飛 15玉 95飛 35銀
59馬 14玉 94飛 54角 69馬 15玉 59馬 26金 16歩 25玉
69馬 36銀 95飛 24玉 79馬 14玉 15歩 まで 207手
→動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)
【作者のコメント(投稿時)】
知恵の輪系ばか詰を作りました。
いかがなものでしょうか。
【解説】
上記のようなあっ さりと したコメントと共に送られてきた本作 。
添付され ていた 作品を見て、あまりに凄い内容に絶句してしまいました。本作の構造上の特 徴は、 「知恵の輪」を動かすための“エンジン”が2つ付いていることです。「9筋で香によりピンされた飛」と「9段目で飛によりピンされた馬」の2つがそれで す。単独の“エンジン”を使った作品は今までにも数多く作られていますが、ひとつの作品で複数の“エンジン”を積んだ作品は初めてでしょう。
更に、この2つの“エンジン”は斜めに動く2枚の駒 ― 角と銀 ― によって切り替えられ、交互に働くようになっています。つまり、単純に2つの機構をシーケンシャルに並べただけではないのです。この独創性的な仕 組みを 発見しただけでも賞賛に値するのですが、本作は解答者わずか1名という結果からも分かるように、大変奥行きの深い謎解き問題となっています。
具体的な手順につ いては 後述しますが、何よりも本作の解図を困難にしているのは「目標が見えない」ことでしょう。
普通詰将棋の「知恵の輪」問題でもそうですが、大抵の「知恵の輪」作品は、「鍵」を探し、それを並べていくと、最終的な目標も自然に見えてくるものです。 ところが本作は「鍵」らしい機構はいくつも見えるものの、それらの「鍵」を適用した結果、どのような成果が得られたのかがサッパリ分からないのです。例え ば「目標」が「詰めるための駒の入手」なら、メリットがはっきりしているので、どの局面に誘導すれば良いか、そのためにはどの「鍵」をどう適用するか、と いう戦略が比較的容易に立てられます。ところが、本作ではそのような分かりやすい「目標」が見当たりません。それもそのはず、詰上り図を再度見てみましょ う。分かり易いように 馬の利 き筋に色を塗ってみました。これを見ると、馬の利き筋を通すことそれ自体が目標だったことが理解できるでしょう。初形を見て「馬の利き筋を通したい」とい う感覚は、多くの解答者が共通に感じるはず(57桂などいかにも邪魔駒っぽい)ですが、通った利き筋を利用して目に見える成果を得ようと考えると、まるで 違う方向に解図の努力を注ぐ破目に陥ります。
更に、最終目標さ え分か れば本作が容易に解けるかと言えば、そうではありません。
例えば、初形はすぐにでも玉鋸で57桂を消去に行きたいところですが、その前に85金を邪魔にならないところ(最終的には1筋まで)運び、更には78金を 77金に移動させておく(後々成桂を78に移動可能にするための伏線)という周到な準備作業が必要です。これらの「鍵」は適用順序を比較的自由に選べるの で、どれが最も効率良いのか丁寧な比較が必要です。ある「鍵」を適用しないと次の「鍵」に移れないという古典的な「知恵の輪」作品に比べ、本作の解図がよ り困難になっている要因がここにもあります。
また、 「鍵」の 適用順序以外にも多くの紛れがあります。例えば、62手目は35玉の代わりに15玉として 94飛 15玉 16歩 同金 … と進めたくはならないでしょうか? fmで検討に8時間を要する事実は、この手数にしては異常に紛れが多いことの証です。具体的な手順は実 際に並 べて戴くのが一番良いと思うので、ここではアウトラインのみ説明します。手順前後の紛れに関しては、各自研究してください。
(初形〜10手 目)序 奏。57桂消去を急がず、85金の処理を優先する。
(11手目〜60手目)金鋸片道。85金を25まで運ぶ。16まで運びたいがここは我慢。
(61手目〜90手目)玉鋸往復。78金を77に移動。25金を16に移動。
(91手目〜98手目)場面転換。角と銀を移動させて、飛でなく馬の方を働かせる。
(99手目〜124手目)玉鋸斜め往復。57桂を消去。
(125手目〜154手目)46桂を68に移動させる。角と銀を移動が絡んだ巧妙な手順。
(155手目〜188手目)玉鋸往復。68成桂を78に移動。
(189手目〜詰上り)収束。初形位置に玉が還元して詰み。
「チェイン」と名 付けら れた本作は間違いなく傑作です。手数の短縮ではなく、詰める方法を見つけること自体が難しく、故・森茂氏の全盛期の作品と比べても遜色のない「深み」を 持っていると思います。ここでは作品の構造や特徴について自分なりに最善を尽くして伝えようとしたつもりですが、その真価はやはり実際に解いた人にしか分 からないでしょう。解説者の言葉の至らない分は、各自の研究と実際の解答者の声で補完して戴きたいと思います。
【正解者及びコメン ト】(正 解1名、感想3名)
たくぼんさん
何と言ったら いいの でしょうか!
普通詰将棋の知恵の輪作品のような構想を趣向手順と融合させた作品とでも言いましょうか。
これがばか詰なんだから驚きです。解き始め に、浮か んだパーツは、以下の通り
A:94〜95飛により85金を84〜75〜74・・・と25迄近づける
B:79馬を59〜69として玉を近づけて57桂の消去
C:46桂を58桂成とさせ成桂を引かせて24に運ぶ
特に、BをしないとCが出来ないためこれが本筋と思ったのが運のつきで、69馬 25銀、15歩 同玉 16歩 同銀、49馬 25玉 以下 B手順→C 手順という順を散々読まされました。
おまけにC手順は成桂を24まで持ってきても何も役に立たずかえって邪魔で目的が見えず。
それにこの順では銀の位置が16の為、16歩が打てずA手順が出来なかったのです。
とにかくこの順がそれらしいのでなかなか見切れませんでした。
しばらくして16銀ではなく26銀ならA手順が出来ることに気づき光が見えました。
B→C→Aかと思ったら、A→Bだったとは・・・。
金を25に持っていけば飛の縦移動を利用して玉が8筋まで運べる!
この段階で作意と感じました。あとは知恵の輪の鍵を考えるという楽しい作業でした。
ようは邪魔な46桂を78に移動させるというのがポイントで実に無駄なく実現しています。
収束も実にスマートで解後感はすこぶる良い。
それにしても作者はこの作品を一体どうやって完成させたのか。
構造はシンプルで内容は奥深いそして余詰がこの形でないというのが本当に凄い。
序がもう少し入りやすければ、もっとたくさんお方が解けたと思うが、この奥深さがこの作品をいっそう味わい深いものにしている。
まさに文句のつけようのない傑作と言っていいでしょう。
☆
本作 唯一の 正解者。
多忙の中で最後まで諦めずに、正解をお寄せくださったことに感謝あるのみです。
今回は懸賞出題ですので、後ほど賞品を送付させて戴きますね。
(抽選の必要がなかった…)
隅の老人Bさん(感想)
最後の最後ま で努力 したが詰まず、残念。
(メー ルの内容)
明日の解答が楽しみです。
今朝ほど、Aさんが「詰んだかい」、とメ−ルしてきた。
それへの私の返メ−ル。
まあ感想もこんな処です。
お笑い下さい。
ダメ、「チェ−ン」が、いまのと ころの たくぼんさんと同じ繋がらない。
1筋から階段を下って6筋、ここから5,6段目で王鋸で1筋、更に、もう一度王鋸で6筋へ、ここから、4,5段でジグザクで1筋へ、23歩を25歩と持ち 上げて、 43王、43と、で詰み、これが私の読みです。
繋がらない、最初に配置の24銀(予想は15銀)は、どの位置に移動させておくか、
46桂は何処に片づける(予想は48成桂)、分からない。
最初に持駒歩が10枚、でも、あと2枚欲しいな。あれば詰むが手数が短い。
手数から推すと鋸は、もう以1回あるかもね。
段々、ギブアップ近し、いいえ、ギブアップです。
☆
この 内容か らすると、正解に辿り着くにはもう一山か二山くらい越える必要があったみたいですね。常連の隅の老人Bさんをしてこれですから、本作の謎解きがいかに奥深 いものだったか分かると思います。
橘 圭吾さん(感想)
お手上げにな りまし た。結構な時間考えたのですが……難しいです。
序の舞台作りの方法を色々試しましたが巧く行きませんでした
☆
白旗 感想な がら結構時間を掛けて戴いたようで、ありがたく思います。
たくぼんさんは「10時間くらいは考えました。」と書いていましたが、10時間で解けたらメチャクチャ早いと思います。
北村 太路さん(感想):3.10追記
■がチェイン の特 徴。☆が自分の失敗です。
■2つのエン ジンが 絡み合うのがすごい
☆1エンジ ン、シー ケンスな繋がりしかなれていないので、
7九馬、同桂成あたりから、6筋に穴を空け、9筋の飛車にエンジンを
バトンタッチするんだと思ってました■鍵が馬筋を 通す、 というのがすごい
☆6四が桂で あるこ ともあり、6筋に攻方歩を打つ→歩だけ自由なので
それで駒を取る、と考えてしまいました■舞台の繋ぎ 方がす ごい
☆さっさと5 七桂は 消したいし、4六桂も邪魔なので私も4八に成桂で
退避させていました☆目的もわ かってい なかったので、まさか序盤に持ち歩のほとんどを使い、
8五金の退避に当てるなんて思ってもみませんでした☆左側に利く 馬筋も 見えなかったし、5四角、2四銀が飛馬の線路の
切替スイッチになるのも気づきませんでした☆自分の想定 を越え た時に全ての可能性を探る努力が足りませんでした。
たくぼんさんを見習いたいが根気がないので無理・解こうとし てみ て、正解を並べてみた分だと、七郎さんの解説で
大変よく伝わりました。・この機構の 繋ぎ 方、この序盤に金鋸を入れてみたのはすごいですね。
作者もかなり時間を使われたのではないかと思います。
手数伸ばしにもう一回片道の王鋸でも入れられそうですが、
手数よりも1四玉、9五飛、7九馬の還元を意識されたのではないかと推察。
(5四角も?)・fmで時間 がかか るのは6筋に歩が打てるせいかと思いましたが、
その他部分もいろいろ手があるのですね。
いろいろ手はあってもエンジンが3九飛、9二香で完全にコントロール
されて いるのが作図の確かさなのかと思います。
☆
掲示 板に記 入していただいた北村さんの感想をこちらに転記しました。
他にもメールで追加感想を戴いているので、後で追記したいと思います。(追記)2008.3.13
隅の老人Bさ んが感 想で「(歩が)あと2枚欲しい」と書かれていましたが、歩が後2枚あったときの手順を教えて戴きました。「チェイン」の初形から16歩を除いて持駒にし、 更に持駒に(本来は存在しない)1歩を付け加えた図(参考図1)で説明します。
69 馬 15玉 59馬 25玉 69馬 26玉 59馬 36玉 69馬 37玉 59馬 47玉 69馬 57玉
79馬 47玉 69馬 37玉 59馬 36玉 69馬 26玉 59馬 25玉 69馬 15玉 59馬 14玉
69馬 58桂成 15歩 同玉 59馬 48圭 16歩 14玉 15歩 同銀 69馬 24玉 79馬 25玉
69馬 35玉 79馬 36玉 69馬 46玉 79馬 47玉 69馬 57玉 79馬 同桂成 97飛 66玉
67歩 65玉 66歩 64玉 94飛 84金 65歩 同玉 95飛 66玉 67歩 同玉 97飛 77銀成
68歩 66玉 96飛 65玉 95飛 66玉 67歩 同玉 68歩 同全 97飛 66玉 67歩 同金
96飛 55玉 95飛 46玉 96飛 35玉 95飛 26玉 96飛 25玉 95飛 16玉 96飛 66金
17歩 同玉 97飛 57金 18歩 16玉 96飛 26銀 17歩 15玉 16歩 25玉 95飛 36玉
96飛 45玉 95飛 56玉 96飛 65玉 95飛 75金 66歩 同玉 96飛 76角 67歩 65玉
66歩 同金 95飛 54玉 94飛 45玉 95飛 34玉 94飛 25玉 95飛 14玉 94飛 24歩
15歩 同玉 95飛 25歩 16歩 14玉 15歩 13玉 14歩 23玉 13歩成 24玉 14と 34玉
24と 44玉 94飛 43玉 34と まで 159手→動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)
邪魔になる駒 を全部 片付け、4段目と5段を素通しにしてから2筋の歩を突いて詰型を得る面白い手順です。北村さんの感想にも同じような紛れ筋を読んだことが書かれていたの で、やはり有力な紛れ筋だったのでしょう。
ところで、同じ設定(つまり2歩多く持駒を持たせる)でfmに解かせてみると、全然別の筋を検出してきました。69 馬 15玉 59馬 25玉 69馬 26玉 59馬 36玉 69馬 37玉 59馬 47玉 69馬 57玉
79馬 47玉 69馬 37玉 59馬 36玉 69馬 26玉 59馬 25玉 69馬 15玉 59馬 14玉
69馬 25銀 15歩 同玉 59馬 26銀 16歩 14玉 69馬 36角 94飛 84金 15歩 同玉
95飛 75金 16歩 14玉 94飛 74金 15歩 同玉 95飛 65金 16歩 14玉 94飛 64金
15歩 同玉 95飛 55金上 16歩 14玉 94飛 54金 15歩 同玉 95飛 45金 16歩 14玉
94飛 44金 15歩 同玉 95飛 35金 16歩 14玉 94飛 34金 15歩 同玉 95飛 25金
16歩 14玉 15歩 同金 94飛 25玉 95飛 24玉 94飛 35玉 95飛 44玉 94飛 55玉
95飛 64玉 94飛 75玉 95飛 86玉 59馬 同桂成 96飛 75玉 95飛 66玉 67歩 同玉
68歩 77玉 97飛 86玉 96飛 75玉 95飛 64玉 94飛 55玉 95飛 44玉 94飛 35玉
95飛 24玉 94飛 25玉 95飛 16玉 17歩 同玉 97飛 67角 18歩 16玉 17歩 25玉
95飛 24玉 94飛 35玉 95飛 44玉 94飛 55玉 95飛 66玉 67歩 57玉 75角 66金
同角 56玉 57金 まで 157手→動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)
途中まで作意 と同様 に進め、馬を一旦消してから、合駒として角を取り返す手順です。こうして紛れ筋を調べてみると、「チェイン」が精妙なバランスの上に成立している作品であ ることが良く分かります。
飛を軸とした知恵の輪型の作品には、鮎川氏の3千手越 えのばか詰という超大物がありますが、研究を進めればまだまだ色々な展開がありそうな気がします。(2008.3.13 七郎 追記)
☆ 前回 の正解 者13名から一転、今回は危うく正解者なしとなるところでした。
このページでこれだけの傑作を出題できたことは担当者冥利に尽きますが、「自分も解答者の立場で参加できたらなぁ」とも感じました(花粉症で思考力が鈍っ ているので、たぶん解けなかったでしょうけど…)。
次回の出題は長編の予定だったのですが、もしかしたら短編になるかもしれません。
(2008.3.9 七郎)