【出題時のコメント】
「自然はいつも隠れた欠陥に味方する」―有名な“マーフィーの法則”のバリエーションのひとつですが、この言葉は何かモノを作る人間は常に意識する必要があります。
詰将棋での「欠陥」と言えば、余詰や不詰等ですが、最近は機械検討の発達により、かなり高い確率でその発生を防げるようになりました。ただ、その検討機械自体が人間の作ったものですし、性能や機能の限界により、検討結果を無条件で信頼することは危険を伴います。もし完璧な検討機械があるなら話は単純ですが、少なくとも現在はそれは夢物語に過ぎません。
では、完璧でない機械は使い物にならないかというと、そうでもありません。不完全な(これは「不完全なのが分かっている」ではなく「完全だと証明されていない」という意味です)機械で結果の信頼性を上げる「手筋」のひとつに「複数の機械を使う」という手段があります。同じ問題を違う機械で検討させ、結果を突き合わせて、相違が見つかれば儲けもの。相違が見つからなくても、多少は安心感が違います。各機械の信頼性が同じくらい高く、しかも処理の論理が違えば、複数の機械を使う意味は更に高まるでしょう。
残念なことにフェアリー詰将棋では今のところ、有力な検討ソフトはfmしかないので、こういう複数ソフトでの検討はできません。いつか神無次郎さんに挑戦する技能と熱意を持った「勇士」が現れることを期待したいですね。(念のために言っておきますが、これは私がfmを信頼していない、という意味ではありません。)さて、今回の出題はちょっとした法則問題。以前の版(2.62q版)のfmでは「不詰」となってしまう作品です。もし「こんなの詰むわけない」と思ったら7月27日に修正した「ルール説明」を読んでみてください。(基本的には「打歩」関係の用語をフェアリーランドに合わせただけですが…)
【ルール説明】
【詰手順】
25角 59玉 26角 48銀成 49歩 まで 5手
→動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)
【解説】
「打歩」と言えば玉頭に歩を打つもの――フェアリーでも安南や対面といった「変身物」以外ではそれが常識です。しかし、ホッパー系の駒を利用すれば、変身物でなくても、本作のように玉頭以外の場所に打つ打歩詰が実現可能です。
この詰上り、ちょっと見ると39地点に合駒が可能なように見えますが、実はそうではありません。角銀が品切れのため、39地点に打てるのは飛か金だけ。どちらを打っても攻方のGを詰めてしまうため、「打歩詰め以外の手で王を詰める禁手」となるのです。従って、受方は応手がなく、これで詰み。めでたく打歩詰の成立となります。これが出題時に「法則問題」と称した所以。2筋に重ねて角を打つのも、48に銀が(不成でなく)成で移動するのも、GがただのGではなくG王になっているのも、すべてはこの39飛と39金を反則にするためなのです。
なお、これを出題するのに先立って7月27日に「打歩」に関するルール説明を修正しました。これは打歩関係の用語をフェアリーランドに合わせるためですが、実はfmの対応はもっと早く、2年前にはすでに単に「打歩」と言った場合は「完全打歩」(打歩以外の詰め手を禁手とする)と解釈し、指定した場合は「単純打歩」(打歩以外の詰め手を失敗とする)と解釈するようになっています。何とものんびりした話ですが、その間このような微妙なルール解釈の必要がある問題を出題する機会がなかったので、つい更新をサボっていました。これからも出題直前にルール説明のページを直す、などということがあるかもしれません。
【正解者及びコメント】 (正解者7名:解答到着順)
川並洋太さん
39金飛成銀は詰む。角銀は盤上。歩桂香は禁手。
14角 25金 が怪しいと思っていたのですが、ふと、この手順を思いつきうまくいきました。
39に合駒が打てると、48成銀と書いた時に気づき、あわてましたが大丈夫でした。
初めて盤にならべずに解けました。
中一の友達にコンピューター部に所属する詰め将棋作家がいるのですが、フェアリー指し将棋が好きなようなので、フェアリー詰将棋の話を聞かせてみたところ、かなり興味を持ち、プログラムで悪魔詰めを作れるかもしれないといっていました。fmの存在は知らないようなので新種の検討ソフトを作るようになるかもしれません。
☆ 「悪魔詰」は比較的マイナーなルールなので、このプログラム作成に興味を持つ方が。いるとはビックリしました。個人的には需要の高い「かしこ系」のフェアリー検討ソフトが欲しいのですが、どんなルールであれ、新種のフェアリー検討ソフトが登場すれば、その分野で新たな展開が期待できるので、ぜひ実現して欲しいものです。
mirさん
フェアリー駒には手が出なかったが、解答発表が誕生日なので、根性で解く。
こういう作品を見るとまさに未開の大地。
そもそも59歩で詰めたくなるのを49歩で詰める意外性。
G王の縦方向行き場を、2枚角で再度ふさぐという限定も味がいいし、最終手以降39金/飛は禁手。(だから攻方GでなくG王なのか)
4手目は最終手以降の39金/飛が禁手で詰むよう成限定。
23銀はたぶん22銀でもよいことを差し引いても、全ての手に意味があり、好作。
☆ お誕生日おめでとうございます。とっつきにくいフェアリー駒に根性で解答してくださるのは嬉しい限りです。
フェアリー駒はチェスプロブレムの作例を知らないと、既存の手筋を新手筋と思い込む可能性があるのですが、持駒絡みの手筋はチェスプロブレムの先例を気にする必要がないので、狙い目だと思っています。
なお、mirさんの推測通り23銀は22銀でも構いません。
若林さん
法則系問題というヒントで容易に解けました。
(銀を裏返すまでに5分考えたのは秘密。)
最終手を詰みにするための銀角の消費の仕方、とくに23銀が良いです。
前回結果より
>「明確な構造を持たない長編」というのが、
>ここ十年来の私の研究テーマなのですから
それぞれの実例を見ると相違はありそうですが、相馬康幸氏の「ピュアな詰将棋」に近いような考え方でしょうか。
※ピュアな詰め将棋は、全体でかっきりひとつの
※明確な構造を否定しないので、やっぱり本質的に別物かも。
並べる専門に近い私にはそこまでの視野を持てそうにはない世界ですが、夢を感じますね。
☆ 若林さんの仰る通り、私の言う「明確な構造を持たない長編」と相馬氏の「ピュアな詰将棋」は非常に良く似た概念です。ただ、私がそれをフェアリーやチェスプロブレムで表現しようとしているのに対し、相馬氏は普通詰将棋でそれを実現しようとしているので、実際に出来上がる作品は随分印象が違うと思います。
また、こうした傾向の創作理念が出てくる背景には、機械検討の実用化が大きく寄与していることは間違いないでしょう。こういう傾向の作品を創作するには、作者の技量だけでは不十分で、多量の試行錯誤が避けて通れないからです。それにこれがどんな成果として現れるか、まだ未知の部分が多い分野であるとも言えると思います。
大阪市の住人さん
自玉はいつも死にたがっている。盤上は絶望と悲惨に塗れている。
でも僕は戦おうと思うんだ。君との記憶だけを武器にして・・・
(ISBN:4-04-873547-0, 四六版, p.322 2004-07-31 角川 \1575)
☆ 素晴らしい!
皆さんも、上記のISBNで検索を掛けてみてください。題名を見て納得すると思いますよ。また、上の一文はその本のキャッチコピーをちょっと改変したものですが、この作品によくマッチしています。
鳥本敦史さん
解くこと自体は簡単で、すぐに解答を送ろうとは思ったのですが
角の打ち場所が非限定?48の銀は生でも?とか
本当に「49歩」で打歩詰になっているか?とかすっきりしなかったのですが
「ルール説明」を読んでやっと理解できました。
角2枚並べるのはGが跳んで行ってしまわないようにしているんですね。
同じく「銀成」も47にGが跳べないように、
それから何気ない4銀の配置も詰上がりで抵抗するにしても
39には飛か金しか打てないから「打歩詰」が成立している
と絶妙の配置だとわかって感心しました。
☆ 本当は「ルール説明」の読解力を要求するような問題は、あまり出すべきではないのでしょうが、夏ですし(何が?)、たまにはこういうペテンに近い作品を出すのも気分が変わって良いのではないかと思って出題しました。案外、皆さん好意的に評していただいているので、ちょっと安心しました。
もずさん
合駒されてだめと思ったら、銀も角も売り切れでした。
銀が23においてあるのは、Gが22へ跳ねられるようにするためなのですね。
☆ 本作の弱点はやはり2筋の銀ですね。
もっとさりげない配置にしたかったのですが、妙案は浮かびませんでした。
北村 太路さん
自分の逃げ道をふさぐためにわざわざ2筋に繋げて角を打つ手順が不思議な感じでした。
☆ 角を重ねて逃げ道を塞ぐ手順はかなりダサいのですが、作者はこれがなぜか妙に気に入っています。
日記を拝見すると、解くよりも短評で苦労されたようですが、あまり肩肘張らずに、第一印象をそのまま書けば良いと思いますよ。
☆ このところグラスッパー絡みの作品を連続して出していますが、次回もこの路線でいく予定。解答数が減らないか不安ですが、特に方針変更がなければ長編趣向作を出題します。せっかく動く盤面を用意したんだし…。
(2004.8.22 七郎)
【出題時のコメント】
毎年、1月と7月は私にとっては「“神無一族の氾濫”の原稿を書く月」なので、今回はそれにまつわる内幕話をしましょう。
“氾濫”の主催はあくまで神無一族であり、フェアリーランドと別枠で運営されているわけですが、どちらも解答受付窓口は詰パラ編集部のため、E-mail解答以外は編集部から月初めにまとめて解答の束が送られてきます。その解答の束の中に時々(というよりかなり頻繁に)フェアリーランド向けの解答や作品投稿が混じっていることがあります。当然、そういったものは即座に編集部に送り返すわけですが、その時は、余計な手間をうざったい思うと同時に、「見てはいけないものを見てしまった」ような後ろめたい気分にもなります。
特に投稿作品を見ていると「自分がフェアリーランド担当でなくて良かった」と思う場合が多々あります。それは、間違って送られてきたフェアリーランド向けの投稿作品の「質」がお世辞にも「高い」とは言えない場合が多いからです。もし、自分がフェアリーランド担当で、こんな作ばかり送られてきたら、きっと数ヶ月でキレてしまうでしょう。もちろん投稿の中にはちゃんとした作品も多いと思いますが、現フェアリーランド担当者が投稿作品のレベルについてどう感じているのか、一度聞いてみたい気がします。さて、7月恒例の「全国大会連動企画:握り詰」は今年もお休み。「握り詰」はOnline Fairy Mateに投稿したので、そちらを見ていただくとして、このページでの出題はグラスホッパーを使った、ちょっと趣向作風でちょっと構想作風な中編です。受方の持駒制限があるので易しくなっていると思います。
【ルール説明】
【詰手順】
37角 46歩 26角 47歩成 37角 46と 26角 45と 37角 35G
46角 15G 37角 35G 26角 55G 37角 46と 15角 同G
55G 45と まで 22手
→動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IEのみ)
【解説】
普通、大駒で空き王手の形を作るには、王手する駒と、その利きを止める駒は、効き筋が別でなければいけません。例えば飛の利きを角で止める、角の利きを飛で止める、といった具合です。ところが、ホッパー系の駒には、利きの軸線上で同種の利きを持つ駒で空き王手の形を作れるという特徴があります。もちろん、ホッパー系の駒はライダー系の駒(飛角香のような「走る」駒)とは違うので、このようなことが起きるのですが、なかなか不思議な感覚です。
本作はその特徴を活かして、グラスホッパーの斜めの利きで、同じく斜めの利きを持つ角を開閉させる手順を主題に、趣向作風の構成にしたものです。とは言っても、本格的な趣向作を目指したものではなく、趣向は風味程度に切り上げて、15歩消去という構想に重きを置いています。つまり初形から15歩がなければ、8手詰なので、それを消しに行って戻ってくるという手順が入ります。
収束はどうするかちょっと迷いました。最後まで攻方のグラスホッパーを不動にするか、あるいはもう最終手45との所から 59G 15G 26角 までの手順で詰上りとするか…等です。結局は初形の軽さと、「あまり難しくならないこと」を考慮してこの形に落ち着いたのですが、慣れない駒のせいか解答は減ってしまいました。
【正解者及びコメント】 (正解者3名:解答到着順)
若林さん
やや苦戦した割に、いまひとつGの楽しみ方がぴんと来ません。
37角のリフレイン、角の捨て場所をつくる15歩消去あたりが味だとは思うのですが。
単純にGに慣れていないだけだと思いますが、いっそのこと15歩を取り払ってG王ばか自殺詰8手、くらいのほうが私のレベルだと解いて楽く感じたかも。
氾濫第20回CG王ばか詰43手なども面白かったです。
(逆にDになると解答を並べても理解できない;)
☆ 私は「構想作風味の趣向作」とか「趣向作風味の構想作」とか結構好きなのですが、本作はむしろ「どっちつかず」の印象を与えてしまったようですね。このネタ、凝るともの凄く複雑な趣向に発展する余地があるのですが、そうするとここでは出題できなくなってしまいます。
なお、氾濫20の5番は理解できないのが自然だと思います。なぜなら「明確な構造を持たない長編」というのが、ここ十年来の私の研究テーマなのですから。(なぜそんなことを研究しているのかは、いずれきちんと語りたいと思います。)
川並洋太さん
26角が王手になるのになかなか気がつかず、それ以外を全検してしまいました。
☆ 解説でも触れましたが、ホッパー系の駒は利きの軸線上で同種の利きを持つ大駒による空き王手の形を作れるという特徴があります。今回解答が少なかったのも、このようなホッパー系独特の利きに慣れるのが難しいというのが大きな要因にあると思います。しかし、この駒は面白いので、今後もこのページや「氾濫」などで登場して貰おうと思います。
もずさん
グラスホッパーは難しいです。
趣向作風というヒントで作意にたどりつきましたが、
それまでは44角 15G 33角成 のような紛れに悩まされました。
☆ もずさんの挙げた紛れは非常に有力で、結構手が続きます(結局は切れますが)。グラスホッパーは暴れだすと手の付けられない駒で、神無六郎氏曰く「敵に回すと怖い」存在です。暴れるグラスホッパーに縄を付けて無理やり制御するか、逆に好きなだけ暴れさせるか…作家としては両面から研究していきたいと思います。
☆ フェアリー駒の登場で予想通り解答は減少。次回もグラスッパーを出そうかと思っていたのですが、予定を変更した方が良いかもしれません。
なお、今回からJavaScriptを使用して「動く盤面」を用意しました。こういうのは、いつもは神無次郎さんに頼むのですが、次郎さんが仕事にハマって何もできない状態なので、やむを得ず自分で作成しています。まだ「とりあえず動く」というレベルですが、一定の動作検証が済んだら、関連ツールと一緒に公開するつもりです。
(2004.7.25 七郎)
【出題時のコメント】
先日、遅れ馳せながらスティーヴ・ライヒの「スリー・テイルズ」のCD・DVDを購入しました。この作品、帯には「デジタル・ビデオ・オペラ」と謳われていますが、むしろ「ドキュメンタリー・オペラ」と言った方が分かりやすいと思います。従来のオペラが「物語」に音楽が付いているのに対し、この作品ではデジタル加工された「記録映像」に音楽が付いているのです。
この作品の圧巻はやはり第3部の「ドリー」でしょう。遺伝工学が作り出したクローン羊「ドリー」を出発点として、人とテクノロジーの関係について語る識者達のインタビューが非常に興味深く、音楽も実にノッている感じです。
このインタビューで一番印象に残ったのが「自分をアップグレードしたい」という言葉でした。これは、修練で自分の能力を高めたいとかいう趣旨ではなく、もろに「サイボーグ化」を希望した言葉です。もっと技術が発達して安全なサイボーグ化ができる時代ならともかく、現時点で本気でサイボーグ化を望む人がいるというのは驚きでした。尤も、本当に人の脳をスキャンして、コンピュータ上で思考活動が再現できるようになる時代が来ないとは言い切れません。もし、私の生きているうちにそんな技術が実現したら――私はそれまでの体を捨てて、サイボーグ化することを望むでしょうか?さて、今回の出題は神無太郎氏によるばか詰。このところ難しい問題が続いた上、「神無一族の氾濫」と重なるため、易しい問題にしました。お気軽に取り組んでください。
【ルール説明】
【詰手順】
48香 55玉 56香 66玉 68香 56玉 57香 まで 7手
【解説】
本作は持駒香一色の初形から、いろいろな意味づけの香の限定打が出てくる作品です。最初の香は角筋を止める限定打、2つめの香は後で取られるための短打、3つめは取られないための離し打ち、最後はばか詰系特有の最短手順にするための短打です。2つめの香短打を除けば、どれもごく自然な着手なので、割と易しかったと思います。
ところで、このネタには先例がありました。1995年8月にフェアリーランドで出題された筒井氏の作品です。初手の味などは若干異なりますが、他は基本的に同じ。盤面3枚・詰上り左右対称という仕上がりの筒井氏の作品の方が、作品価値は高いと思います。
【正解者及びコメント】 (正解者15名:解答到着順)
須藤さん
57地点を利用するしかないので、楽に解けました。
詰むか詰まないかは別にして、第一感は49香、48角生、47香でした……何かに毒されている!?
☆ いえ、ごく自然な発想だと思います。
我々には「神無太郎氏の短編ばか詰=合駒入りの構想作」という図式がしっかり植えつけられていますから。
筒井浩実さん
持駒香4のばか7手はいくつか作ったことがあるので、興味深く解きましたが、自作(59歩、67桂/45玉/香4)と手順がほぼ同じですね。
このところ難しい出題が続きましたが、このくらいなら解答できます。
☆ 筒井さんの作品の類作を出してしまい大変失礼しました。もちろん太郎さんが筒井さんの作品を真似たわけではなく、私の調査不足です。簡素図式は調査の手抜きをすると衝突の危険が常にあるので、今後は気を引き締めて掛かりたいと思います。せめて「ばか詰」「ばか自殺詰」だけでもデータベースがあれば…とも思いますが。
ほの字さん
これなら解けます。
☆ ほの字さんは初解答。初解答などがあると、普段は解答に参加していなくても、見てくださっている方が結構いることが分かって嬉しいです。
安武翔太さん
初解答です。
詰め上がりが割と早く浮かんだので簡単でした。
☆ 安武さんも初解答。以前から活躍されていたので、これが初解答というのはちょっと意外な気もします。今後もよろしくお願いします。
ぽこさん
シンプルなうえに、7手詰ということは香を打つだけなので解きやすいですね。
それで、3九角は香の位置を限定しているのは分かるのですが、6六桂の配置は・・・いないと余詰めでもあるのでしょうか?(理由が思いつかなかったので)
☆ ぼこさんは第65回以来の解答。今回は初解答以外にも、久々に解答を送ってくださった方が多く、ホームページの運営を続けて良かったと思えました。
ところで66桂の配置ですが、これがないと4手目に非限定(66玉でも65玉でも良い)が生じます。他には全く意味が無いので、あまり置きたくない駒ですが、仕方ありませんね。
川並洋太さん
最後は57香しかありえないので 終わりから考えたら簡単でした。
手順が限定になるのがすごいです。
☆ 私信によると川並さんは創作などでも頑張っておられるようです。ぜひ学業と詰将棋の両立を図ってください。
谷口翔太さん
香を長く使ったり、短く使ったり。
遣り繰り算段、いや四段でした。
☆ 谷口さんも第71回以来久々の登場。短評を見ると今川さん風ですが、谷口さんで良いのですよね?
HUBさん
ものすごく久しぶりに解けたと思ったら、前回の解答は一年も前でした。
まだまだ簡単なものしか解けません・・・
ところで解き終わった後で、初形の6六桂は何のための配置だろうと考えたのですが、これは4手目6六玉を限定するためですか?
☆ HUBさんは第72回以来の解答。それ以前が第64回でしたから年1回のペースでしょうか。無理せずマイペースで解答で良いと思います。
本当はこのページでの出題の難易度も考えた方が良いのですが、これは管理人の気まぐれでかなり変動しています。最近は難し方に偏りがちで申し訳ないのですが…。
北村太路さん
限定することによって問題になることができるわけですね。
勉強になります。
6六桂がなぜ「桂」なのかわかってなかったりするのですが、氾濫がまだ1題も解けていないので、そちらを優先します。
☆ 66桂に対する質問はかなり多かったのですが、桂以外、例えば歩だと49香 48金…の筋で余詰。他の駒だと作意の邪魔になります。玉方65歩でも良いのですが、それではあんまりですしねぇ。
ところで「フェアリーの森遭難日記」の復活はないのでしょうか。結構楽しみにしていたのですが。
mirさん
このところの難問にまったく手が出ず悶々としているなか、久々解けました。
最終手はルール上の限定という感じで、そこが少し味消し?
☆ 確かにルール上の短打は味気ないですが、他の限定打もあまり味があるわけじゃ…(禁句)。
逆に、普通のばか詰で最終手香遠打というテーマは面白いかもしれません。合駒制限なしで表現できたら画期的じゃないでしょうか。
スピカさん
分かりやすい問題でした。初手は限定打だったのですね。
☆ 初手が最終手の伏線というのは手順構成としては理想的。本作は易しい短編なのでそれほど感じないかもしれませんが、難解な長編などでこういった構成を採った作品をぜひ見たいものです。
鳥本敦史さん
3手目56香は発見するまで少し時間がかかりました。
☆ 多分この問題の最大のポイントは3手目の短打だと思います。本作ではすべての香打に場所の選択肢があるわけですが、ここが一番選択肢の多いところですから。
もずさん
この香車の詰め上がりはわかっていても気持ちいいですね。
手順限定の仕組みもうまいと思います。
☆ 私もたった4枚で限定したのはうまいと思っていたのですが、解説でも触れたとおり3枚で限定した先例がありました。なお「39角→49と」とすれば、初形・詰上り共左右対称になるのですが、この案は当然ながら一族みんなに却下されました。
たくぼんさん
いや〜ほっとしますね〜
最近難しいのが続いていて、おまけに仕事が忙しく解答出せずにいたのでやっとという感じですね。
桂2枚の配置が絶妙です。
☆ 本ページの出題は最近やや難しいのが続いたので、私も気にしていました。易しくて、それでいてしっかりした主張のある作品、というのが理想なのでしょうが、なかなか難しいものです。
若林さん
69桂と持ち駒から解答は簡単。
66桂の配置がちょっと残念ですが、気持ちの良い4香連打。
☆ 今回のトリは解答番付で上位陣を急追している若林さん。たくぼんさんと共に、余裕の締切日解答でした。
☆ 今回は久々の2桁解答。初解答や久々の解答復帰などもあり、管理人としてはとても嬉しいです。「氾濫」の締切も近いですが、こちらの方も宜しくお願いします。
次回は皆さんの苦手なフェアリー駒作品を予定していますが、そんなに難解ではないと思います。
(2004.6.27 七郎)
【出題時のコメント】
先週、ようやく長年の解析作業が完了しました。「マドラシばか自殺詰・双裸玉・持駒銀」の全検です。この全検作業は、少なくともこのサイトがオープンした1998年には始まっていました。というのも1998年1月28日にトップページの第1回出題で、この全検作業の途中で採取した図を出題しているからです。同じ条件の「持駒金」や「Kマドラシばか自殺詰・双裸玉・持駒銀」「Kマドラシばか自殺詰・双裸玉・持駒金」が比較的短時間で全検を終えたのに対し、この「持駒銀」だけが6年間も掛かったのは不思議です。
で、これだけの時間を掛けた結果はというと、正に「泰山鳴動鼠一匹」でした。要するに完全作となる詰上りのパターンがひとつしかなかったのです。しかも完全作の最長手数は28手。つまり第1回結果発表時に予測されていた結果以上のものは遂に見つからなかったということです。
これらの検討結果についての報告はいずれ、Online Fairy Mate に寄稿し、その後で本サイトにも登録するつもりですが、時間の関係で少し先のことになるかもしれません。
ただ、検討に時間が掛かるルールは他にもあります。中でも他のルール(条件)と組み合わせない「ばか自殺詰・双裸玉・持駒1枚」は、全検が特に困難なものの代表です。他の条件と組み合わせた方が検討時間が少なくて済むというのは、人間の感覚的には奇妙な話ですが、単純なルールほど奥が深いと思えば少しは納得できるかもしれません。さて、今回の出題は他の条件との組み合わせのない「ばか自殺ステイルメイト」。前回出題した「偶然に頼った要素の強い作品」と違い、これは「作者の意図通りにできた作品」です。次回の「神無一族の氾濫」の2番のヒントにもなると思うので、腕試しのつもりで挑戦してみてください。
【ルール説明】
【詰手順】
34銀 44玉 11角 33飛 35角 34玉 23銀 同玉 24香 13玉
22香生 35飛 まで 12手
【解説】
本作の狙いは「双裸玉で攻方王以外の攻方駒が残留する」ばか自殺ステイルメイトです。もちろんこの狙いの作の初めての作品というわけではありません(実際本サイトでも第75回出題では攻方王以外に2枚の攻方駒が残留している)が、これまでは他の変則条件との組み合わせで、攻方駒の残留を実現していました。本作では普通のばか自殺ステイルメイトでこれをやろうというわけです。
チェスプロブレムでは、盤上の駒をうまく押し込め、自分の駒同士が邪魔をすることによってステイルメイトを実現する「箱詰め」型のステイルメイトが多いのですが、日本の詰将棋でこのタイプのステイルメイトはあまり見かけません。これは駒の性質上、最終形が限られたものになってくるせいもあるでしょう。また、箱詰め型のステイルメイトでは、1992年4月に発表された吉田直嗣氏のばか自殺ステイルメイト50手が決定版として存在し、これを超える作を作るのは容易ではありません。
本作は吉田氏の作のような本格的なパズルではなく、規模を縮小し、小型の箱詰め型ステイルメイトを実現しています。その代わり、舞台を双裸玉に設定することによって存在価値を主張しようというわけです。本作は手数も12手で、攻方王以外の残留駒も2枚しかありませんが、今後研究が進めば、もっと大量の駒が残留する双裸玉作品も出てくるでしょう。ただし検討は大変で、本作でさえfmでの検討時間は1500時間を越えています。越えるべき壁は余りにも高いと言わざるを得ません。
【正解者及びコメント】 (正解者1名!)
もずさん
攻方の駒が残るのはなかなか難しいです。
どのくらいの人が解けるものなのか興味があります。
「『神無一族の氾濫』の2番のヒントにもなる」というのも意味深長ですね。
そちらも楽しみです。
☆ 解答者は1名。出題後2時間未満で解答を送ってくれたもずさんだけでした。
実は本作、もずさんご自身のキルケばか自殺ステイルメイト26手と基本的に同一構想で、その縮小版と言っても良い手順です。もちろん、本作は最初からその線で創作を始めたわけではなく、結果的に似てしまっただけなのですが、これも将棋の駒の性質のせいでしょうか。それともこの分野の研究が進んでいないせいでしょうか。ともあれ、何らかのブレイクスルーが望まれます。
なお、本作は「第21回神無一族の氾濫」の2番・神無六郎作のヒントになっています。これのせいで、解答が増えれば担当者は嬉しいのですが、これのせいで作品の評価が落ちるおそれもあります。もしそうなったらごめんなさい、六郎さん。
☆ このところ難問続きで正解者は激減。
次回は「氾濫」と重なるので難問は避け、易しいばか詰作品を出題する予定です。
しばらく解答から遠ざかっていた方も、これを機会に復帰をお願いします。
(2004.5.30 七郎)
【出題時のコメント】
掲示板等でもお伝えしたように、森茂作「龍の顎」の特別懸賞出題は正解者3名という結果でした。正解された3名の解答は、どれも苦心の跡と解けた喜びが伝わるもので、結果稿でもその雰囲気を伝えられるよう努力したいと思います。また、誤答が1通ありましたが、これも解説者にとっては貴重な情報源です。「どこで間違い易いか」ということが、誤解答を調べることによって分かるからです。
ところで、この「龍の顎」にまつわるこぼれ話をひとつ披露しましょう。「龍の顎」の検討作業の段階で、森氏と手紙のやり取りをしている時に、森氏から次のような報告が寄せられました。この儘の図では、私のパソコンで二百時間超えそうなので、種々試行して完全と確信の末、本図を盤面左右入れ換えを行ってfmで全検させましたところ、35時間ほどで完了しました。
つまり、左右を入れ替えたら、検討時間が大幅に短縮されたと言うのです。私のパソコンでも追試を行いましたが「龍の顎」では以下のような結果が出ています。
正図:
解析時間:29時間 17分 25秒 解析局面数:12835813159
左右反転した図:
解析時間:7時間 13分 20秒 解析局面数:3311954772なぜこんなことが起こるのか、一応理由を説明しましょう。fmは一度読んだ不詰局面を憶えて読みを省略したり、既出の局面に戻る手順の読みを打ち切ったりすることで、解析時間の短縮を行います。従って、たまたま正解もしくはそれに近い手順を先に読めば、効率的な検討ができるのです。fmは大体右回りの手から順に読んでいくので、右側からの王手や右側への王手回避が正解の手順に多ければ、早く検討が終わることになります。皆さんもfmでなかなか結果が出ないときは、「左右入替」のテクニックを試してみてください。
さて、今回の出題は「背面ばか自殺ステイルメイト」。ルール名と手数で思いっきり敬遠されそうですが、どうか解答をお寄せください。当たり前ですが、この図は左右を入れ替えても意味がありません。
【ルール説明】
【詰手順】
37角 38飛 48角 58玉 67角 同玉 37角 47角 34角 同飛成 まで 10手
【解説】
本作、初手からかなり有力な紛れがあります。それは 48角 49飛 … とする手です。攻方王の稼動範囲を一気に狭めるので、手が出やすいですし、実際この筋でステイルメイトとなるような玉位置の組み合わせはたくさんあります。しかし、本作ではそれではうまくいきません。手数が足りないのです。
正解の37角はその紛れより一筋離れているので何が狙いか分かりにくいのですが、34龍と成らせることにより、攻方王の上部を埋めることができるのです。手順中に角を捨てて角を交換し角合を発生させるのも味の良い展開です。47角が46地点に「影の利き」を持っている「背面」らしい最終図も確認してください。
と、いかにも自分の計算どおりに作ったように書いていますが、実を言うとこれは偶然の産物。最初は間接王手のステイルメイトをネタにしようと思っていたのが、fmによりこのステイルメイト形が検出されたので、それに乗り換えた結果です。
フェアリー詰将棋は神秘の世界。作者の小賢しい「構想」の上を行く魅力的な手順がまだまだたくさん眠っているのですね。
【正解者及びコメント】 (正解者2名:解答到着順)
清一さん
飛車は4筋に発生させるものと思い込んでいたので、38飛は盲点でした。
角のスイッチバックから角合、飛車成までの詰め上がりで、少しの緩みもない好手順だと思います。
☆ 今回の一番乗りは清一さん。今回から出題が夜になったので、さすがに即日解答はできなかったようですが、翌日にはもう解答を送ってこられました。清一さんは背面ルールにまだ慣れていないようなのですが、それでも解けてしまうというのは、それだけ力のある証拠でしょう。
鳥本敦史さん
78飛〜74飛成が思いついたのでなんとか解けそうな気がして考える気になりましたがかなり苦労しました。
78飛が大活躍ですね。
☆ 清一さんの解答の後、全然解答が来なかったので、今回も解答者は一人かと諦めていましたが、解答締切日に鳥本さんの解答が届きました。思わぬプレゼントを貰ったようで嬉しかったです。
やはり解答者お二人の感想を見ると、飛で縦の筋を抑えるのでなく、横の段を抑えるという発想の転換が難しかったようです。それができたお二人は、やはり立派というほかありません。
☆ 今回も難問のため正解者は2名。このところ、ステイルメイトの出題が続いていますが、これは次回の「神無一族の氾濫」のための布石と考えてください。本ページでの次回の出題も、ばか自殺ステイルメイトの予定です。
(2004.5.2 七郎)
【出題時のコメント】
今回もキルケ誕生物語の続きです。おおいずみ氏によるルール提唱後、NIFTYの会議室で試作とルール整備が続けられました。このうち「無神都市」への収録漏れがあった自作2作を紹介しておきましょう。自分で忘れるだけあって、つまらない作品です。
a.b.
ただ、この作品のb.で初めて、おおいずみ氏や神無太郎氏以外からの反応がありました。Bancoran氏です。Bancoran氏は日本初の「キルケばか自殺詰」(1993-12-28 13:01)も発表しています。神無太郎氏もやや遅れて同日の22:07に「キルケばか自殺詰」を発表しています。両題とも残念ながら不完全でしたが、こういった盛り上がりに反応して、神無次郎氏がfmにキルケを実装してくれた(1994-1-10)のは幸いでした。また、これに先立って(1993-12-31〜)神無太郎氏が「キルケ問題作?」というシリーズで、キルケルールの整備に貢献する作品群を発表しています。これらについてもいずれ紹介したいと思います。
また、ルールについての論議ではこういうのがありました。670/671 HGH02775 橋本孝治 RE:キルケルールの補足説明
(11) 93/12/30 23:58 667へのコメント
おおいずみさんが提唱した『日本式』のキルケルールの設定は合理的で、一点を除いて、おおいずみさんが最初に提唱した通りで問題ないと私は思っています。このルール、もしかしたらマドラシなどより普及するかもしれません。
ところで、問題の「一点」とは二歩の扱いです。おおいずみさんの原案では、と金を取って二歩を生じさせるのは「禁手」となっていますが、これを「元の位置に戻すことができないので、取った方の持駒とする」とできないでしょうか。原案通りだと、妙な法則問題風の詰上りが出てきて、このルールで表現できる領域を狭めるおそれがあります。一般的に二歩絡みの法則問題は、ちょっと変わっていて複雑な問題ができる代わりに、作図を不自由にすることが多いのです。これに対する神無太郎氏のコメントを抜粋します。
673/675 SGR03057 神無太郎 RE:キルケルールの補足説明
(11) 93/12/31 12:23 670へのコメント
法則問題は私の好みですが、駒再生時の二歩禁についての取り扱いは橋本案がよさそうに思います。
「再生できない場合には取った方の持駒にする」という原則のみの適用で済むから。
ついでにいうと、5筋の駒を再生する位置は、取られた方が指定できるほうがいいのでは?
駒の所属はかわっていないんだし・・・で、結局二歩禁の扱いはこの通りになったのですが、「5筋の駒の再生位置を取った側が決めるか、取られた側が決めるか」という問題は懸案として残りました。「駒の所属が変わっていないから、取られた側が決める」も「取った側の着手なのだから取った側が決める」のどちらもありえます。ばか詰系ではどちらでも余り関係ないですし、かしこ系でもあてはまる実例がなかったので深刻な問題にはなりませんでしたが、標準ルールがないのは不便なものです。当初は「取られた側が決める」で進めていたのですが、2000年頃に「取った側が決める」に改定しています。この選択が妥当なのかどうかは未だに自信がありません。
今回の出題は本サイトの解答王もず氏の作品です。元々はもず氏がご自分のサイトの掲示板で掲載していたものですが、非常に面白い作品なので無理を言って投稿して貰いました。「ば自」なのに攻方王がないので奇異な感じを受けるかもしれませんが、この種の作品では攻方王を置いても「飾り」にしかならないので省いています。駒が再生するキルケという条件下で攻方の駒をどうやって捨てるか…。見逃すのは勿体ない高級なパズルです。
(追記:2004.3.16)
上記コメント中「5筋の駒の再生位置を取った側が決める」という文がありますが、これは正確には「5筋の駒の再生位置に選択肢がある場合、再生位置を取った側が決める」という意味です。例えば5筋で銀を捨てた場合、79と39の両方が空いていれば、取った側が再生位置を選択しますが、どちらか一方しか空いていない場合は無条件で空いている方に再生します。(片方だけが塞がっていても、そこを再生位置とする誤解が何通かあったので、追記しました。)
【ルール説明】
【詰手順】
18銀 28玉 39銀 18玉 29銀 同玉 28金 39玉 49金 28玉
27金 同玉 37金 同玉 48金 28玉 39銀 同玉 49金 同玉 まで 20手
【解説】
駒が消えにくいキルケという条件、駒を消さなければいけないステイルメイトという目的。この相反する2つの性質は、極めて高度なパズルを生む可能性があります。本作は、その可能性を端的に示したモニュメンタルな作品です。
まず収束から考えると、最後は「49金 同玉」か「39銀 同玉」しかありません。更に逆算を考えると、最後の4手は「39銀 同玉 49金 同玉」であることが推測されます。これで、金銀1枚ずつが消えますが、残りの3枚はどうやって消すのでしょう。金を消すには49地点が埋まっていなければいけませんし、銀を消すには39地点を埋めなければいけません。
もうひとつ解図の要件を整理しましょう。手数20手で持駒は8枚。1枚の駒を消すのに2手掛かりますから、駒を消さない手は2回しか選択できません。この2回の権利をどう使うかも問題になります。
問題図を与えられて最初に思いつくのは、初手28金あるいは19金に同玉とさせて、復活した金で49を埋める手段です。これだとすぐに金3枚の消去ができるので、惹かれやすい紛れですが、銀3枚を消すにはこの金を39に移動しなければならず、更に上述した収束に持ち込むため、これを48に移動しなければいけません。つまり、駒を消さない手が3つ入るため、手数オーバーになります。同様に「18銀 同玉/39銀」で銀3枚を先に消去する手段も、金の消し方と復活した銀の扱いに苦慮させらることになります。
上記のような紛れが強烈なため、正解の「18銀 28玉」のスタートは意表を突いた難手となっています。一見すると「18銀 同玉/39銀」と変わりないようですが、この後の手順を見れば分かるように、39銀を玉で取らせることができるので、銀を1枚余分に消すことができるのです。「駒を消さない権利」2回のうち 1回を早々に行使するうえ、この手では直接復活位置を埋められないのも、この手を一層の難手にしています。
作者はご自分の日記で「私が作ったのではなくソフトに作ってもらったといった方が正確です」と仰っていますが、この様な巧妙なセッティングを思いついた時点で「作者の勝ち」と言って良いと思います。仮にこの形でうまくいかなかったとしても、別の形で良い作を見つけられたことは間違いないからです。
【正解者及びコメント】 (正解者1名!)
若林さん
5筋にからむルールの見落としをしてしまって大はまり。
作ったかのように綺麗な手順。
NONKばか自殺ステイルメイトの基準がこれになってしまうと今後の発掘は大変そう。
☆ 今回唯一の正解者は若林さんでした。多くの常連解答者が挫折した難問に対し、出題翌日には解答を送って来られたのには感心させられます。
実は若林さんも最初は「追記」で書いたような勘違いをされていたのですが、すぐにご自分で気付いて正解を送ってこられました。他にも何人かルール解釈の誤りによる誤答があったのですが、どうやら私の選題文の書き方が迂闊だったようです。自分では気を利かせて「5筋の駒を取ったときの再生位置」の話題を選んだつもりだったのですが、言葉足らずのため裏目に出てしまいました。フェアリーのルール説明は難しいです。
☆ 今回は難問のため正解者はただ一人という結果に終わりました。ただ、作者のもずさんが自作ということで解答を控えなかったら、解答者は2名になっていたでしょう。それを考えると、自作については「解答を出さなくても解答番付に加点する」という処置を取った方が良いと思われます。次回からはそういう運用をしていきましょう。
なお、出題文の中で引用した自作の解を一応載せておきます。
- 78金 58玉/57歩 68金 48玉/47歩 58金 38玉/37歩 48金 28玉/27歩 38金 19玉/28飛
29飛 同桂成/28飛 29飛/21桂 まで 13手- 11香成 22玉 12杏 23玉 13杏 24玉 14杏 25玉 15杏 26玉
16杏 27玉 17杏 28玉 18杏 39玉/28飛 29飛 38玉 48金 まで 19手
(2004.4.5 七郎)