【出題時のコメント】
有名なメーテルリンクの「青い鳥」に、「九つの惑星の王」という登場人物がいます。しかし、なぜ「九つの惑星」なのでしょう?
「青い鳥」が発表されたのが1908年、冥王星が発見されたのが1930年ですから、普通は「八つの惑星の王」となるはずです。トンデモ系の解釈をすれば「メーテルリンクは冥王星の存在を予言していた!」となるのでしょうが、「九つの惑星の王」のセリフで、
「ただ土星と天王星と海王星はべつだけれどね、なにしろバカバカしく距離が離れていて遠いんでね」
というのがあり、冥王星を意識していた痕跡はありません。
きっと真相は、後年作者自身が改訂した(メーテルリンクの没年は1949年)とか、ごく平凡なものだと思いますが、事情をご存知の方がいらっしゃいましたらご教示ください。少し話は変わりますが、昨年「太陽系第10番惑星発見」のニュースが流れたとき、日本では「宇宙戦艦ヤマト」の「アクエリアス」を思い出した人も結構いたようです。もし、そういう人が昨年12月の神無太郎作「七色星団の戦い」を見たら、そこでもあの宇宙を舞台にしたドラマを懐かしく思い出したことでしょう。時には盤駒を宇宙に見立て、星のロマンに浸るのも良いものです。
さて、今回の出題は第96回出題のバリエーション。最近、筆者は頭がすっかりアンチキルケになっていたので、感覚を取り戻すのに苦労しました。受方の持駒制限にも注意してください。
果たして本作、星に思いを馳せる役に立つでしょうか?
【ルール説明】
【詰手順】
23角生 13玉 24と左 同角 14角成 12玉 23馬 11玉 33馬 12玉
34馬/33歩 11玉 33馬 12玉 34馬 13玉 24馬/22角 12玉 34馬 13玉
35馬 12玉 45馬 13玉 46馬 12玉 56馬 13玉 57馬 12玉
67馬 56歩 13歩 同玉/17歩 57馬 同歩成/88角 22角生 12玉 56角 同と/88角
13角成 同玉 79角 46角 同角/22角 同と/88角 22角生 12玉 45角 同と/88角
13角成 同玉 79角 35角 同角/22角 同と/88角 22角生 12玉 34角 同と/88角
13角成 同玉 79角 24角 同角/22角 同と/88角 22角生 12玉 23角 同と/88角
13角成 同玉 79角 24角 14と 12玉 13と 11玉 22と 同と まで 80手
→動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)
【解説】
第96回出題は角の復活位置を塞ぐための馬鋸という構想でしたが、本作の馬鋸は「と金が作れるように」という、どちらかと言えば普通の意味付けです。実はこの部分は序奏の延長で、と金を作ってからメインの趣向が始まります。キルケ特有の「使っても減らない角」を利用し、角捨てと角の入手を繰り返しながら、10手1サイクルで、と金を自陣に誘導していく手順がそれです。収束は趣向手順の延長で出来ており、合駒の24角で42の退路を塞げば自然に詰むようになっています。
駒数が少ない割に手数が長いので一見難しく思えるかもしれませんが、ご覧のようにメインの趣向が分かれば、意外と易しい作なのではないかと思います。
【正解者及びコメント】 (正解者2名:解答到着順)
若林さん
と金ノコ! 第96回で伏線があったとはいえ、参りました。脱帽です。
正に自殺詰ならではの手順ですね。
序の細かい2歩利用や、と金消去で79角が王手になることなど、細かい所が気持ち良いです。
☆ 若林さんと瘋癲老人さんは共に出題翌日の解答。いつもながら、高い解図力を見せてくれています。このお二人以降は一通も解答が来なかったのが少し残念ですが、手順自体は明快なので、解けなかった方も手順を並べて楽しんで戴けたらと思います。
瘋癲老人さん
馬鋸が出てくる形なのはすぐ分るので意味付けを考える。
と金送りしかなさそう。
収束を予習すると15とは残さなければならない。あとは一瀉千里。
楽しい昼のティータイムでした。
☆ 「収束を予習する」というのは面白い表現ですね。確かに途中で紛れがあって選択に迷うときは、収束から先に考えて可能性の大きいほうを選ぶという解き方が有効です。実力解答者の短評は、こうしたノウハウの勉強にもなりますね。
☆ 今回で解答数の総計がちょうど600になりました。途中複数問の出題がいくつかあることを考えると、やはりちょっと少ないですね。難しい問題が多いのが大きな要因でしょうが、これは改善(?)される見込みが少ないので、せめて次回からは締切一週間前に、「妖精都市」の掲示板で告知して、解答を募ることにします。
その次回出題ですが、一応候補作はあるものの、選題は未確定。出題は一週間先なので、じっくり考えます。
(2006.2.12 七郎)
【出題時のコメント】
本ページ読者の皆様に、ひとつお知らせがあります。
すでに今月号の予告などでご存知の方も多いと思いますが、将棋世界2月号の付録は一冊丸ごと「ミクロコスモス」の解説書になります。手順の解説は編集長の角建逸氏が自ら行っており、図面等をふんだんに使った丁寧で分かり易い説明を読むことができます。また、私自身も11ページ分の執筆のスペースを貰いました。「ミクロコスモス」に関わること、というのが前提ですが、結構自由に書かせて貰いました。興味のある方は、ぜひ将棋世界2月号をご購入ください。
また、角氏は詰将棋関係の付録の構想をいくつも持っており、今回の付録の評判が良ければ、将棋世界の付録に詰将棋関連の企画物が続々登場ということもありえます。ですから、「ミクロコスモス」に大して興味のない方も、将棋世界2月号を買うと詰将棋界の振興に貢献できるかもしれません。
(以上、コマーシャル終わり。)さて、今回の出題は年越し恒例の初形「一」。余詰や非限定を避けるため、少し位置が中央からずれていますが、その辺は大目に見てください。PWCは前回も出題したルールですので、初めての方も前回の出題や練習用のPWC小作例集などを参考にして、解答をお寄せください。
【ルール説明】
【詰手順】
34と/24歩 45玉 44と 55玉 54と/44歩 45玉 55と 34玉 45と 同玉/34と
44と/34歩 35玉 45と 25玉 35と 14玉 25と 23玉 34と 同玉/23と
24と/23歩 43玉 34と 32玉 43と 22玉 33と 同玉/22と 23と/22歩 42玉
33と 31玉 42と 21玉 32と 同玉/21と 22と/21歩 33玉 32と 23玉
33と 12玉 23と 11玉 12歩 まで 45手
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【解説】
本作は収束の歩の下降部分から逆算で横追いに繋げて作った一局です。どちらもPWCの趣向としては基本的なもので、上田吉一氏の「極光II」72番と同様のパターンです。手順中キーとなるのが、歩の入手法。前回の出題では「行き所のない駒」の禁則を利用していましたが、今度は「二歩」の禁則を利用しています。これで、PWCでの駒の入手法の2パターンを紹介したことになります。
なお、本作では初形「一」にこだわったため、横追いが極端に短くなっています。「横追い+縦追い」を強調するなら、次のような表現が良かったかもしれません。余詰防ぎが大変なので、縦追いの回数が増やせないのが残念ですが…。
→動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)
【正解者及びコメント】 (正解者5名:解答到着順)
瘋癲老人さん
歩入手部分と歩後退部分がきっちり別れてるので難解性はない。
適度に楽しめました。
両手順が絡み合ってなくてよかったです。
☆ 瘋癲老人さんは「第24回神無一族の氾濫」のいくつかの作品への感想も送ってくれました。
内容から見て正しく解けているのは間違いありません。どれも正解が少なかった作への感想なので、解図力の高さを感じさせられます。
若林さん
と金追いで綺麗に限定できるものですね。
2歩禁からの歩の入手とPWCによる歩下げが上手くリンクして手頃で楽しい年賀詰。
☆ 今回は瘋癲老人さんに先を越されましたが、若林さんも年内の解答。いつも真っ先に解答を送ってくれるので、出題者にとっては頼れる存在です。今年もよろしくお願いします。
橘圭吾さん
二歩禁を利用した歩の入手の序が後半の歩下げと巧く連結している。
詰上がりの特定も簡単で、易しいながらにPWCらしさが出ている趣向作。
☆ この作品、詰上りは普通の「打歩詰」なので、最終形を決め打ちした人には易しかったと思います。PWCルールの浸透はまだまだこれからですが、慣れた人なら「一目」かもしれません。
たくぼんさん
まずは歩を取ることを考えて9段目へ・・・・手数オーバーだし下段での詰型なんてないし・・・。
そしてやっと二歩禁で取ることに気付く。
24、34歩型からの34歩奪取を考えるがはるかに手数オーバー・・・。
ありゃ〜。ここで方針を替え詰め上がりを考える。どうも詰上型は1つしかなさそうだ。
ここからひたすら創作するかのように逆算して途中の型を把握する。
そして再び初めからドッキング手順を模索・・・。
っていうのが解図工程ですが、途中趣向のような繰り返し手順が現れたりして驚きの連続。
すごく面白かった。しかし斜めの駒チェンジがどうも慣れていないのか気付きにくい。まだまだ勉強しないといけないようです。
☆ たくぼんさんも勉強がてら、PWCばか詰入門を再開されてはいかがでしょう? 詰上りが限定されそうで、短編での創作は難しいかもしれませんが…。
もずさん
出だしに苦労してかなり不規則な手順を考えてしまいました。
作意はすっきりした手順でお正月にふさわしいですね。
☆ 実は全体を一段降ろすと、その不規則な手順で潰れてしまいます。「成禁」の条件を付けると繰り返しを一回増やせますが、そこまでする作ではないですしねぇ。
☆ このところの寒さで、また風邪を引きました(ダメじゃん)。次回に何を出題するかも決まっていません(更にダメ)。しかも「第24回神無一族の氾濫」の結果稿も書かないといけないし(ぉぃぉぃ…)。果たして次回の出題は無事にできるのか!?
(2006.1.15 七郎)
【出題時のコメント】
今回は新しいルールの登場なので、いつもの無駄口は省いて、ルール説明から入ります。
そのルールとはPWC(Platzwechselcirce)で、元はチェスプロブレムのフェアリールールのひとつです。日本におけるPWCの研究と言えば、上田吉一氏の「極光II」が代表的なものですが、残念ながらこの本では、細則が記されておらず、日本の詰将棋のルールにこれを適用したときの細かい問題については不明でした。そこで、本サイトでは、2005年9月5日に掲示板でクロ氏が提案されたルール設定を採用しています。そのルール設定は以下の通り(字句については若干改変させて戴きました)。
- 取られた駒は(2.の例外を除き)取った駒が元あった場所に復元する。
- 二歩及び行き所の無い駒の禁に触れる場合は、復元せずに持駒になる。
- 成駒は成ったままで復元する。
- 成れる位置に復元した場合でも、成不成の選択は行えない。
2.と4.は、互いに密接に関連しています。本来、PWCは駒の増減が発生しないルールなのですが、この2.と4.の設定により、この「日本式PWC」では桂香歩の増減が生じることになります。
ちなみにPlatzwechselcirceは直訳すると「場所交換キルケ」なので、PWCの和名は「交換キルケ」で良いと思います。さて、今回の出題は「PWCばか詰」ではなく「打歩」の条件を加えた「PWC打歩ばか詰」です。最初の出題からいきなりこれでは文句が来そうですが、PWCの練習用にPWC小作例集を作成しましたので、そちらを参考にしてPWCの感覚に慣れてください。また、たくぼんさんのブログでもPWCに関する記事が取り上げられています。ルール解説や例題はこちらの方が親切なので、ぜひご覧になってください。
【ルール説明】
【詰手順】
99角 88歩 同角 33桂 同角生 22金 同角生/33金 同銀/21角 23桂 同金/33桂
12歩 まで 11手
→動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)
【解説】
PWCの基本手筋に「9段目からの遠打に連合い」というパターンがあります。本作の場合は「打歩」の条件が付いているので、9段目の角に歩桂の連合いをすることは予測可能でしょう。
ただ、それ以降の手順は工夫が必要で、単純に玉を追い出すパターンだと、手数がオーバーしてしまいます。一番のポイントは9手目から 23桂 同金/33桂 として角にヒモを付けるところで、ここを 23桂 21玉/11角 31桂成 11玉/21角 などとすると2手長くなってしまいます。攻方の手だけでなく、受方の手も利用して、目的位置に利きを発生させるのが、PWCらしい手順です。
【正解者及びコメント】 (正解者9名:解答到着順)
若林さん
角(馬)歩だけでは無理なので桂も入手。
桂の打ち場所が限定になるのは22か33。22ではすぐに手が切れるのと、
収束の予測から解決。PWCと打ち歩の相性は良いですね。
作例12が手数の割にさくさく解ける内容で面白かったです。
作例11の香4はやってみたくなりますよね。
こちらの方では盤面に香を横に並べたりしてみましたが、
今のところ芳しい成果はありません。
攻め方飛(金)一枚、受け方香4枚で何かできそうな気はするのですが。
☆ 若林さんの解答は出題日翌朝に到着。もちろん一番乗りです。
作例集の感想も戴けて嬉しかったです。
橘 圭吾さん
導入の4手がこのルールの定番で、最終形もこれくらいしか形がないのですぐに解けました。
☆ 橘さんは初解答。でも、解答が初めてというだけで、このページにはちょくちょく顔を出してくれています。短評も作図経験者らしいものですね。
吉川 慎耶さん
99角、88歩、同角、77桂…う〜ん、どうやっても13手…。99角、88香、同角、22金、19香…これもダメだ〜。駒を動かすこと1時間強、やっと解けました。
取らせ駒を作るというのはPWCならではですね。詰み形が複雑じゃなくてなによりです。
面白いルールがどんどん発表されていてフェアリーの奥深さを知りました。新しいルールも丁寧に説明してあるのでこれならついていけそうです。
☆ ルール説明の丁寧さは、新しい人を新しいルールに引き入れるためにはとても重要なものですが、ついつい手を抜いてしまいます。今回はそれを補う意味で小作例集を作ったのですが、役に立ったみたいですね。
北村 太路さん
一手の緩みもない好作ですね!
2三桂 同金/3三桂に気づいたときは目からウロコが落ちた思いです。
遠打、中合いの意味付けもPWCならではですね。
詰上がりがフェアリーメイトじゃないことはどうでもいいですね。
(PWCのフェアリーメイトの形ってそんなに面白くないし)
☆ 確かにPWCのフェアリーメイトは地味ですよね。
こういう点ではキルケやアンチキルケの方が、大技を出せて面白い気がします。
PWCの場合は、最終手の味よりはそれまでのプロセスで勝負、ということになるのでしょう。
隅の老人Bさん
桂合までは必然と信じて考える。それからが一苦労。
解ければ「なあーんだ」。だが、これが嬉しいのです。
☆ 無解の方の多くは、13手解で2手短縮できなかったものと思います。
特に、桂を取らせて角にヒモをつけるところは盲点になりやすいでしょう。
もずさん
はじめは玉を追い出す手ばかり読んでいました。
桂だけは8段目から取っても持駒にできるというのが
将棋におけるPWCの基本手筋になりそうですね。
☆ 前回は出題の方でお世話になったもずさん。
いずれまた出題をお願いすることがあるかもしれません。そのときはよろしくお願いします。
小峰耕希さん
出だしは予想通りでしたが、4手目以降の展開が読めず時間を食いました。
12月1日の夜に布団に潜った途端に詰上がり図が頭の中に浮かんで来て、そこから逆算したら出題図に辿り着いたという具合です。我ながらかなり変な解け方でした。
作意以外で読んだ順としては、初手から99角、88香、同角、桂合、同角、22金、19香、18歩、同香…の変化があります。これは明らかに手数オーバー。
なので2手目88歩合は難しくないのですが、次の桂合の位置が問題。結果として33桂合が33桂復活を呼ぶ形になって詰むのが面白い。
最終手が打歩だとわかりきっているのに、そこまで持っていくために細かい工夫を必要とするために、思いの他苦戦したという感じでした。解答番付で順位がどんどん上がるのが楽しいです。
また解けたらメールします。
☆ 小峰さんからは「余談」としてある情報を戴いたのですが、ここに載せてしまうと皆さんの楽しみが減るかもしれないので、まだ伏せておきますね。(もちろんフェアリー関係の情報です。)
たくぼんさん
歩合はすぐ分かりましたが、次の3三桂合がすばらしい応手。
詰上がりはいつの間にか攻方の桂に変わっているのもユーモラス。
☆ たくぼんさんには、アンチキルケ入門に続いて、PWC入門も期待しています。
でも、PWCはアンチキルケと違って説明することが少ないので、入門講座はすぐに終わってしまいそうですね。
瘋癲老人さん
桂がないと詰みそうにないのはすぐ分りましたが桂は33に打つものという先入観にとらわれて苦戦。
桂と金を入れ替えるのに気づいたらあっという間でした。
☆ 打つのではなく移動させてヒモを付けるのが、本作の主眼。
ここを評してもらえると、作者冥利に尽きます。
☆ ちょっと風邪を引いてしまい、根性で何とか結果稿を作成しました。まだ頭がぼうっとしているので、文章が変になっているところもあると思います。
今回は新ルールなので、出題時には解答減を覚悟したのですが、前回並みの解答を戴けて安心しました。解答してくださった皆さんに感謝します。
次回も同じ「PWC打歩ばか詰」のルールで出題する予定です。
(2005.12.18 七郎)
【出題時のコメント】
野村総合研究所(NRI)が興味深いレポートを発表していました。題して、「国内のマニア消費者層(いわゆる「オタク層」)の実態とビジネス的価値に関する調査研究」(http://www.nri.co.jp/news/2005/051006_1.html)。このレポートでは「オタク」について、次のように定義しています(字句を若干編集しています)。
こだわりの対象に対して、(1)所得や余暇時間のほとんどを費やす「消費性オタク」、(2)「自分の趣味を周りに広めたい」「創造活動をしたい」と考える「心理性オタク」、この2種類の特性を兼ね持つ人 この定義を見ると詰キストはもろに「オタク」に分類されそうですが、市場価値が低いためか、このレポートには出てきません。更にこのレポートは典型的な「オタク」を次の5つのタイプに分類しています。
「家庭持ち仮面オタク」、「我が道を行くレガシーオタク」、「情報高感度マルチオタク」、「社交派強がりオタク」、「同人女子系オタク」 これを詰将棋界に当てはめると、多くの詰キストはオタク趣味を表に出さない「家庭持ち仮面オタク」に分類されるでしょう。家庭を持っていなくても、自分の趣味を隠して会社や学校では一般人で通っている「仮面オタク」も多いはずですね。
また、それ以外のタイプに無理やり当てはめることもできそうです。例えばコミュニティーサイトが好きなアノ人は「情報高感度マルチオタク」で、小駒しか使わないアノ人や大駒しか使わないアノ人は“キャラクターへの固執が強い”「同人女子系オタク」の傾向がある、といった具合です(やや強引ですが)。
実際は、これらのタイプは「オタク」の持っている「共感欲求」「収集欲求」「顕示欲求」「自律欲求」「創作欲求」「帰属欲求」という6つの因子の強さをパターン化したものだそうなので、複数の分類に当てはまる人も多いでしょう。皆さんも自分がどの欲求を強く持っているかによって、どのタイプに属するのか考えると面白いと思います。ただし、他の詰キストがどのタイプの「オタク」に属するか、などという話は、お酒の席などの「記録に残らない」ところでやりましょうね。さて、今回の出題はもずさんのアンチキルケ作品2題。どちらも短手数ながら、アンチキルケの魅力満載の作品です。今まで、新しいルールということで敬遠されていた方も、これを機会にアンチキルケの世界をぜひ知ってください。短編ですが、2題同時出題ということで、解答締め切りは一週間延ばして、4週間とします。
また、アンチキルケ普及の一助としてアンチキルケ作例集を作成しました。次回の「神無一族の氾濫」ではアンチキルケの特集を組む予定ですので、このオンライン作品集は、それに備えた練習にもなるはずです。
【ルール説明】
1.
【詰手順】
91角 55金 同銀/39銀 同龍/82龍 29金 まで 5手
→動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)
【解説】
たくぼんさんのページで開催された第1回アンチキルケばか詰作品展のもずさん自身の作の派生作。作者曰く「簡素と言い難い」との理由で、その作品展に出さなかったそうですが、その厳格な創作姿勢は手順にも反映され、わずか5手の中にアンチキルケの効果が凝縮された大変密度の濃い作品となっています。
まず、初手が龍復帰時に自身の利きを遮るための限定遠打、2手目が銀のジャンプと最終手を見据えた限定合い、3手目が飛の利きの開放と銀の左右の戻り先の選択、4手目が両王手を玉移動以外で逃れるアンチキルケ独特の受け、そして最終手が51に攻方の利きがあることを見越したヒモなしの頭金。どれもアンチキルケの特色を活かした手順です。
アンチキルケばか詰作品展等のおかげで、アンチキルケの創作レベルは急速に向上しましたが、この図を初めて見せて貰ったときの驚きは、今でも色褪せていません。
【正解者及びコメント】 (正解者10名:解答到着順)
ぷらさん
これだけ濃い内容を少ない駒数で…脱帽です。
第一回作品展での氏の作品と同じ手順構成ですが73角の誘い手があり難問になってますね
実は自分でも似たようなのを作って2回目の作品展に投稿済みなんですが
駒数は倍だし…どうしよう((゜ー゜;Aアセアセ)
☆ このページでは初解答となるぷらさんが、今回の解答一番乗りでした。
たくぼんさんのページの「第2回アンチキルケばか詰作品展」でぷらさんの作品を拝見しましたが、私はあまり類似は気になりませんでした。手順が角(馬)と桂で統一されていますし、「そっぽ桂」という主題も入ってたので、別の作品として楽しめました。
同じネタでも、作る人によって自然と個性が出てきます。多少の類似は気にせず、これからも多くの作品を見せてください。
縫田光司さん
51を押さえるために、初めは銀を普通にどかすことを考えて、
次に一旦あきらめて73角の筋を考え、最後に作意にたどり着きました。
双方の駒がびゅんびゅんワープする手順はこのルールの醍醐味ですね。
☆ 縫田さんは第18回出題以来の久々の解答復帰。今後もよろしくお願いします。
創作の方では他の人が思いつかないような個性的な作品を見せてくれる縫田さんですが、解図過程の方はこの評を読む限り割と普通っぽいですね。多分、この順序で解くのが一番この作の面白さを堪能できるのではないでしょうか。
隅の老人Bさん
たくぼん教室で勉強。玉だけが、帰りたいのに帰れない。
☆ この短評の最後の一節が五七五になっているのは、「作意」それとも「偶然」?
銀と龍が家に帰ったのに、玉が帰れないという風に見立てると、詰将棋も詩情を感じさせるものになりますね。
吉川 慎耶さん
初手の最遠打と2手目の合駒は最後になって分かるのでこういう作品が長手数になったら解ける自信なし。
☆ たくぼんさんのページでアンチキルケデビューを飾った新人吉川さん。昨今の用語を使えば「たくぼんチルドレン」のお一人ということになるのでしょうか。本ページでもよろしくお願いします。
短評についてですが、確かにこの遠打は伏線としてやられると難しそうですし、長編でなく9手くらいでも、この密度の手順が展開されたら私も解ける自信がありません。今後どんな作が出るか戦々恐々です。
kzさん
おひさしぶりです。
ひさしぶりにHPをのぞいたら,アンチキルケが出題されていたので,
ヤル気を出して,ルールを覚えるところから始めました。
Takubon's詰将棋の『アンチキルケ入門』の第2回目までを予習しただけで,
その後15分くらいで解けたので,けっこう易しかったと思います。
73角とかも考えましたが,あんまり悩みませんでした。
でも,新ルールに挑戦するのは刺激的ですね。
☆ 森茂氏「龍の顎」の3名の正解者の一人、kzさん登場。
ルールをちょっと勉強しただけで、たやすくこの作を解いてしまう解図力には唖然とさせられます。次回の「神無一族の氾濫」にもぜひ解答をお寄せください。
小峰耕希さん
51は飛で簡単に抑えられるので、角の打ち場所は73ではない筈。
それ以外で限定打に出来そうなのは竜合を期待する91位しか
思い付かないので、あっという間に解けました。
多分本局は創作経験が多い人程早く解けると思います。
☆ こちらも初解答。たくぼんさんのページの活躍中の小峰さんです。今後もよろしくお願いします。
5筋の飛配置から73角の紛れ筋の読みを打ち切る論理的な解図法はとても参考になります。小峰さんは「第2回アンチキルケばか詰作品展」で、わざと51への逃走路を用意する構想を見せてくれましたが、何か共通する思考法を感じます。
川並洋太さん
とてもいそがしいのですが、学校で授業時間に考えてしまいました。
29金が気持ちよすぎです。
☆ 授業中に考えちゃダメでしょう、と言うべき所なのでしょうが、私も学生時代には(今も?)同じようなようなことをしていたので、他人に説教できません。
むしろ、1作だけでも解答を出してくれたことに感謝したいと思います。
たくぼんさん
龍に取らせる為の3九銀が旨い順です。丁々発止の攻防が5手の中に凝縮されています
☆ たくぼんさんの普及活動のおかげで、今回の解答者は2桁に乗りました。純粋な「ばか詰」以外で解答者が10名に達したのは第93回出題以来となります。もう、たくぼんさんの方に足を向けて寝れません。
小五郎さん
たくぼんさんの所の作品展で紹介されていたもずさん作と並行して考えていました。
どちらも難しかったのですが、あちらの正解手順を見てやっとこの作品が解けました。
最遠打や復活させて合駒にする、じゃま駒消去などの点が似ていますね。
本作品では両王手の時に玉以外の駒を移動させて逃れる、ということが盲点となりました。
☆ 初解答組みのトリは、たくぼんさん所でアンチキルケの修行を積んだ小五郎さんです。今後もよろしくお願いします。
この短評にもありますが、アンチキルケでは玉が動かなくても両王手を防げる場合が稀にあります。この辺をうまく偽装して、誤解狙いの作を作れば面白いかも…と思ったことがあるのですが、意識して作ると却ってバレバレの手順になってしまいます。こういう両王手逃れは、偽作意よりも、「抵抗感」を演出するような使い方が良いのかもしれません。
北村太路さん
わざと両王手するところが面白いです。
☆ 北村さんの短評は、上で私がグダグダ書いたことを一言で表しています。
両王手逃れの構想に気付かないと、3手目は受方の手の自由度を確保するために「そっぽ銀」を選択したいという心理が働いてしまいます。実に奥の深い手なのです。
2.
【詰手順】
11角 22角 19飛 29飛 88銀 同角成/22馬 まで 6手
→動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)
【解説】
「完成品」という褒め言葉が詰将棋界にはありますが、これは正に「完成品」と呼ぶのがふさわしい作品です。初形双裸玉から、詰上り双裸玉+飛角図式になるという、形の美しさに加え、最遠打2回に、そのすぐ隣に打つ限定合2回。しかもそれが、飛には飛、角には角という見事に様式的な対応を見せています。
3手目の遠打は29飛を発生させて間接的に21王を狙う普通のものですが、初手の遠打の意味付けは凝っています。33から77の間に角を打つと29飛合が逆王手になるため失敗。それを避けるため22に角を打つと、馬の復活場所が埋まるため復活できず失敗。従って11角 22角合が唯一の組み合わせになる仕組みです。最終局面の22馬を同角で取ると、その角が88に移動してしまい、セルフチェックの反則になってしまいます(いわゆる「北村手筋」)。同王も復活先の59に29飛が利いているため不可。
アンチキルケの古典となり得る珠玉の名作だと思います。
【正解者及びコメント】 (正解者9名:解答到着順)
ぷらさん
最終手に駒取り可能な自殺詰めのがアンチキルケに
向いてると前々から思ってはいましたが
これだけすっきりと洗練されたのを作られるとまいりますね
詰め上りも北村手筋でよくできてるなぁと思います。
☆ アンチキルケばか詰だと最終手に駒を取る手は駒余りになるので、「最終手での復活」のパターンが表現できないのがネックになりますが、アンチキルケばか自殺詰だとそれもやれるので、表現の幅が広がります。余詰も防ぎ易いですし、アンチキルケ作例集でも「ばか系」よりも「ば自系」が多いのはそのせいかもしれません。
縫田光司さん
あまりに悩みすぎて、「同銀成/31 まで」などと無茶な筋まで追ってしまいました。
わかってみれば、なんて虫の良い手順!
☆ 縫田さんの棋譜は復活位置だけを示す解答。もちろん、これでも正解です。
というか、実際は復活する駒種を指定しなくても手の前半部を見れば駒種が分かるので、当初はこの記譜法を使っていたのですが、見た目がキルケと同じ記譜法の方が分かり易いだろうということで、fmでは駒種を示す記譜法を採用してもらいました。
皆さんはどちらがお好みですか?
隅の老人Bさん
このルールは初めて、作例集で勉強。
角には角、飛には飛の遠打、正解なら嬉しいね。
☆ 見事正解です。
作例集は「参考書」というより「問題集」みたいな造りで、あまり親切な説明が付いていないのが気になっていたのですが、役に立ったようで嬉しいです。
吉川 慎耶さん
22馬で詰ますことが分かっても普通にやっては自分の角の利きが邪魔になる。
これを北村手筋によって上手く回避。
アンチキルケらしい受けの妙技で解いて感動出来る作品です。
☆ 同感です。本当に感動できる作品ですね。
もずさんの安直な妥協をしない真摯な創作姿勢が、このように究極とも言える図を産み出すのでしょう。私も作家として見習わねば!
kzさん
第2問の方は,詰み形がわからなくて苦労しました。
22の角が成れることに気づなかったものですから。
☆ 88角成/22馬の最終手はちょっと特殊な手ですね。感覚的には「居食い」に近いものがあるのですが、駒を裏返すので「成らせ」と呼んだ方が良いかもしれません。1手で原位置に戻る「成らせ」ができる駒は、角の他は飛と香ですが、桂を3段跳させて「成らせ」を実現する筋もありそうです。歩を1歩ずつ前進させて4回で成らせるのも面白そうです。
小峰耕希さん
実はば自系の作品を解いたのは今回が初めてに近いです。
最初のうちは勝手がわからず四苦八苦でしたが、
いろいろ考えてみると攻方角は11以外に適当な打ち場所が見当たらず、
そうすると最終形は22馬+29飛で詰ますしかないと気付いたという具合です。
大駒最遠打4連発が主眼という事になるのかな?
☆ 遠打というのは一般的には遠くから王手を掛ける手のことを指すので、正確には最遠打2発+最遠地点の限定合2発ということになるのでしょう。でも最遠打4連発と呼びたい気持ちも良く分かります。
たくぼんさん
久しぶりにアンチキルケばか自殺詰を解きました。
以前より解くのが苦にならなくなったということは入門編が役立っていることでしょうか・・・。
最遠打2発を無駄なく表現した傑作
☆ 他人に説明するのは、自分が理解する早道とも言いますし、解説業が解図力の向上に役立つ効果はきっとあると思います。
でも、そういう私自身は、あまり解図力が上がっている感じがしません。ちょっとfmに頼りすぎているせいかも…。
小五郎さん
最初の読みは19飛、29飛、22角、77角?、88銀、同角成で、
あれ、馬が戻れない・・というものでした。戻れれば詰んでいるので
この詰め上がりを追いかけていくと手順が見えてきました。
飛車・角の最遠打とすぐ隣に同種の合駒、が呼応していて美しく
心地よい手順ですね。
☆ 本作の美しさは結晶の美、至宝の輝きですね。
手順も良く、形も美しい作品というのは、フェアリーでも貴重です。これから幾多の傑作が生まれても、本作はアンチキルケの古典として将来に残ると思います。
北村太路さん
究極です。絶句です。
☆ 句読点を含めて10文字のこの短評が本作のすべてを物語っています。これ以上付け加えるのは、野暮というものでしょう。
【総評等】
隅の老人Bさん
いつも貴HPを楽しんでいます。
今回は短編ですが、初めてのルールもあり、長時間楽しめました。
解くのに当たって自殺詰は作例集を熟読しましたが、
年寄りの頭は固くて理解に時間がかかり、やっぱりボケたかなと思う始末。
1はたくぼんさんの教室で勉強して、ある程度は自信ありですが、
2は勉強不足で正解か否か、自信なし。
宜しくご指導の程をお願いします。
☆ どちらも見事正解でした。
隅の老人Bさんは「神無一族の氾濫」にも解答を寄せてくれており、その解図力と、新しいものにチャレンジする意欲にはいつも感心させられます。将来(20年後?)「隅の老人C」を襲名させて貰っても良いですか?
吉川 慎耶さん
今回は短編ということで自分に丁度いいレベルで安心して解くことが出来ました。
作例集はばか自殺でとても参考になったので、分かりにくいルールが出ましたら次もこの様な感じでお願いします。
☆ 今回の作例集のような、ある程度分量のあるものを提供するのは難しいかもしれませんが、新しいルールを導入するときは、ミニ作例集とか例題集のような形で、ルール理解の助けになるようなものを出すことを検討したいと思います。
今回の作例集に関しては、数々の良質な問題を提供してくれた北村さん、たくぼんさん、もずさん、若林さん、そして神無一族の面々に感謝感謝です。
川並洋太さん
私の学校はオタクばかりで、数学オタクや、ぷよぷよオタクや、鉄道オタクや、気象オタクや、マクドナルドオタクや、アニメオタクなど、大抵の人がオタクです。
医者や弁護士を目指す勉強オタクもたくさんいます。
私もゲームオタクで、変則的ゲーム攻略⇒将棋の変則的戦法(アヒルとか)⇒フェアリー指将棋⇒フェアリー詰将棋というルートでこの世界に入りました。他にこんな人はいないはずです。
あと、一般人の目で見ると、かしこ詰と、アンチキルケばか詰の違いは分からず、どちらも同じ将棋とみなされるようです。むしろ詰将棋という概念が存在していません。
☆ 川並さんは出題時のコメントに反応してくれました。
変則ルートでこの世界に入ったとのことですが、私も初めて「将棋」の類に触れたのは「軍人将棋」でした。ですから、将棋のルールを知ったときには、格の低い駒でも、格上の駒を取れるということに驚いたものです。(将棋はフェアリーだ!)
一般人にとって詰将棋と将棋が同じ扱いなのは…もう慣れました。
小五郎さん
はじめまして。名字のない小五郎です。
半年ほど前からフェアリーに興味を持ち時々作品集を見せて
もらい、ルール他手筋など参考にさせて頂いております。
毎月解答募集されている作品は難しくて解けなかったのですが
今回はアンチキルケの短編、たくぼんさんの所でずいぶん予習
したので手順を導き出すことができました。よろしくお願いします。
☆ こちらこそ、よろしくお願いします。
それにしても、たくぼんさんの講座は、新しいルールを導入するときのお手本とも言えるくらい、丁寧でかつポイントを押さえたものでした。
解説者として見習わないと、とは思うのですが中々実行は難しいですね…。
☆ 今回は新解答者の参加や古参解答者の復活があり、盛況でした。ちなみに今回、もずさんは作者なので自動的に解答番付に2点加算してあります。また、北村さんはいぬたさんを抜き去って解答番付単独3位に浮上しています。
次回はキルケの変種のひとつPWC(Circe Exchange=交換キルケ、とも呼ばれる)に関する出題を予定しています。ルールは、掲示板でクロさんが提唱された方式に従って、「復活時に成生の選択はなし(そのまま)」「二歩や行き所のない駒になる場合、復活できず持駒となる」という設定です。
(2005.11.20 七郎)