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解答


第131回(2008.1.6)出題の解答

「神無七郎 作」 ばか自殺詰 53王57桂58桂 +金3銀3桂, 51金52角54銀55玉56歩 #14 

【出題時のコメント】

 皆様明けましておめでとうございます。
 年頭ということもありますので、昨年の当サイトの活動を簡単に振り返り、今年の目標などを述べてみたいと思います。

 昨年は最悪詰や奇数手ば自をトップページで出題しました。最悪詰は一種のリバイバルですし、奇数手ば自や偶数手ばか詰も既存ルールの拡張で、まったくの新ルールではありません。しかし、自分自身で創作したり、他の方々の作品を解図したりして、両者とも豊かな表現力を秘めた分野であることを実感しました。特に、最悪詰は自分でWorst1.exeという最悪詰の検討プログラムを作成してしまうほど嵌りました。プログラムそのものは性能的にも品質的にも、あまり満足できる出来ではなかったので、今年はこのWorst1.exeを改良したいと思います。最悪詰作品展の作品を全部(千日手ルールや打歩ルールなどとの組み合わせを除いて)実用的な時間の範囲内で完全検討できることが、具体的な達成目標です。

 また、トップページでの出題やfm等の配布等については例年通りに行っていきたいと思います。一応、サイト開設10周年という記念の年ではありますが、特別な企画は予定していません。とりあえずは、トップページの出題は「4週に1回のペースを守る」こと、fmの配布や研究記事の投稿があったときの掲載は「できるだけ速やかにページに反映させる」ことの2つを心掛けて行きたいと思います。本サイトの内容充実には皆様からの投稿が欠かせませんので、旧年中と同様、今年も解答・作品投稿・研究記事などをお寄せください。

 さて、今回の出題はフェアリスト向けの年賀詰です。気持ち良く解いて、今年一年の活動に弾みをつけましょう!

 

【ルール説明】

【手順】

45金 同銀 46銀 同銀 47桂 同銀成 46銀 同全 45金 同全
44銀 同全 54金 同全 まで 14手

最終形

動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)

  

【解説】

 初形1で最終形も1 。違いは54銀が裏返ったのみという、一種の「成らせ」問題です。作意以外の手を指すと受方の方の玉が詰んでしまうため、解図は易しいと思います。
 本局では成らせる対象の駒(本局の場合は銀)しか動かないように形式を設定したのですが、もう少し自由度を増やすと、なかなか凝った作品が作れるテーマだと思います。


 

【正解者及びコメント】 (正解13名:到着順)

 

川並洋太さん

あけましておめでとうございます。
一見どうやっても無理そうでしたが、とりあえず駒を動かしてみたら解けました。

新年最初の解答は川並さん。到着は出題当日の16時頃でした。
これを皮切りに当日解答が4通も!
何だか、遅れて出した年賀状に返事を貰ったような嬉しさを感じました。

 

香箱さん

新年おめでとうございます。香箱です。久しぶりに解けました。こいつは春から縁起がいいや。  

新年最初は大量に年賀詰が飛び交うので、やはり難易度の高い問題は新年の最初の出題には向きませんよね。
時間が足りない時は「年賀詰向き」を意識した創作をするのは難しいのですが、最近は少しゆとりがあるので、その辺も配慮できるようになりました。もっとも、今は「第27回神無一族の氾濫」の原稿作成のため、また時間がピンチになってますが。

 

橘 圭吾さん

今年も宜しくお願いしますm(_ _)m 新年なので易しい!久しぶりに解答出来ます。今年は半分位は解答したいものです

筆者の経験から言うと、創作と解答はできれば並行でやった方が良いと思います。特に若いうちは、後々の(詰将棋的な意味の)基礎体力を養うために、積極的に解答に参加することをお勧めします。
ちなみに、若いうちは言葉通りの意味の基礎体力を養うのも重要なのですが、筆者の場合はそれを怠ったので、今になって苦労しています。

 

真Tさん

これは楽しい成らせもの。後手は全て同銀。初形も1の字になっており、解後感抜群です。
図巧46番を思い出しました。 
  

図巧46番は生桂を4回の捨駒で成桂に変える作品。普通の詰将棋のルールでこれをやってしまう看寿は、やはり凄いとしか言いようがありません。
駒を成らせる手順は図巧55番などにも出てきますが、こちらは銀回転のテーマに応用され、より発展した形になっています。「図巧」には、今なお新鮮で応用例の少ないテーマが多く含まれていると思います。

 

ほの字さん

将棋の殿様ならいきなり54銀成ですね。
久振りに解答送信できて気分爽快です。 

まあ、いきなり成れないから成る手をテーマとした作品ができるわけですが、逆に駒をその場で裏返す手を指せるルールがあれば、それもまた独特の作品ができそうですね。
誰か研究しませんか? 

 

平井康雄さん

さすがにこれはわかりやすくて気持ちよく解けました。

ただ、初形に59桂を置いた方が良かったんじゃないですか?
初形、最終形が同じというのも魅力ではありますが、
59桂のあった方が形が良いし、
詰上げたら1つ短くなる、というのも悪くないと思いますが・・・

本作の場合は「成らせ」が狙いだったので、駒柱を作る演出は全然考えませんでした。
詰みに向かうに従って、柱が短くなるような作品はフェアリーなら割と容易に作れそうに思うので、いつか挑戦したいと思います。


赤土陽一さん(初解答)

銀の往復ですが、帰りは、銀が成るだけで手数が二倍かかっている点に、成銀の重さが巧く表現されていますね。

年明けに 財布ぱんぱん(持駒7枚) 走りこむ
しょいこみよたよた(成銀の足取り) 福袋かな

――今年の初詠みやいかに?

赤土さんお得意の57577短評。
この歌を読んだら、7枚の持駒が福袋を求めて殺到するオバサン達(失礼)に見えてきました。
赤土さんはこのページでは初解答ですが、今後どんどん解答数を伸ばされることを期待しています。

 

小峰耕希さん

ぱっと見余り簡単そうには思えなかったのですが、よく見たら
双玉とも移動場所が無かった(^^;)
本局のように気持ち良い1年になるよう期待していますが、
うっかりすると本局のように「寝返り」が(政界辺りで)
続発しそうな嫌な予感が…。

筆者は「寝返り」という言葉で、神無太郎さんの「裏切りの銀二」を思い出しましたが、これは「相手の駒になる」テーマなので少し違いますね。
フェアリーは物騒な名前が多いので、この種のテーマ(場所は同じで駒が裏返る、場所は同じで相手の駒になっている)にも、良い名前が欲しいところです。

 

瘋癲老人さん

原型復帰が唯一の取り柄でしょうか。
ちょっと易し過ぎ。

今回の出題は実力者には物足りなかったと思いますが、1月はネット上でもいろいろなところで大量の出題がされているので、「重い」作品は避けるようにしました。
現に九州G別館などは、解答者が少なくて困っているようですし、ここで足りない分をぜひそちらで補充してください。

 

荻絵香木さん

狙いは終形を見れば言わずもがな。
簡単ですが、確かに気持ちよく解けました。
間違えると、自玉が詰んでしまう所が面白いと思いました。
これと同じ狙いが、長編で実現できたら凄いですね。

本局は詰めるべき攻方の玉だけでなく、受方の玉も周りも全部相手駒に囲まれる形にしてあるので長編にならなかったのですが、2箇所くらい動けると充分長編も作れると思います。

 

もずさん

とてもわかりやすい意味付けで、気持ちよく解けました。
PWCで成らせの手筋が多用されていますが、
普通のば自ではこれまで意外と見なかった気がします。

確かにあまり見ませんね。あまり注目されない条件ですが、もっとこれを中心に据えた作品が作られても良いように思えます。「成らせ」の逆に「生らせ」(?)なんていうのもあっても良いでしょう。キルケ以外は一旦盤上から消さないといけないので、「成らせ」よりは難しいと思います。

 

隅の老人Bさん

1→1とは!さすがに巧みですね。
久しぶりに解けて、嬉しいな。
今年は春から縁起が良いぞ、です。

1→1なので、本来は元旦に出題すべき作品ですが、都合により6日の出題となりました。でも、ぎりぎりお正月と言える時期に出題できて良かったです。

 

北村太路さん

「1」→「1」の年賀詰。
銀、故郷に錦を飾る。

本局は言わば銀から全への出世ですね。
中将棋みたいに成った駒と最初から成った駒が両方があると、双方出世(例:銀→堅行、堅行→飛牛を両方行う)みたいなテーマもできると思います。

 

新年最初の出題は正解者13名となかなか盛況でした。実力者の方には物足りなかったかもしれませんが、年の初めのウォーミングアップとしての役目は果たせたようです。
ここ2回は筆者の自作が続きましたが、次回は投稿作品の出題です。このサイトでの出題としては少々異例ですが、懸賞出題 を予定していますので、お見逃しのないように!

 

(2008.1.27 七郎)

 


第130回(2007.12.9)出題の解答

「神無七郎 作」 PWCばか自殺ステイルメイト 31王 +飛2香, 71玉 #9 

【出題時のコメント】

 最近「埋蔵金」という言葉がニュースなどで聞かれます。国に埋蔵金があるのかないのか私には分かりませんが、「借金」があることは間違いないでしょう。借金と言っても、国の借金となると金額が大きすぎて実感しにくいのですが、インターネットは便利なもので、国の借金の総額や一世帯あたりの借金額を体感できるホームページがあります。

『日本の借金』時計(http://www.takarabe-hrj.co.jp/clock/

 ほんの少しの時間で、自分の月給や年収に当たる金額が、借金として加算されるのを見ると結構空しくなりますが、たまには日本の財政などという似合わないことを考えてみるのも良いでしょう。ちなみに、財務省も同様の「借金時計」を設置しようとしていたようですが、中止になってしまいました。曰く

8月1日、財務省ホームページの「日本の財政を考える」に掲載しました「借金時計」は、アクセスにより負荷がかかるため、公告等の掲載情報の円滑な閲覧を確保するため、一時掲載を取りやめております。http://www.mof.go.jp/oshirase.htmより抜粋)

 たかが時計ごときで運用に差し障る負荷が掛かるとは思えないので、アクセスによる負荷というよりは“政治的な”負荷が掛かったんじゃないかと思いますが…… 結局この「借金時計」は8月2日に止まったまま、未だに復活していません。どこかから本当に「埋蔵金」でも湧き出ないと、復活の日は来ないのでしょうか。

 さて、今回の出題は「奇数手ば自」第2弾。今回は「第27回神無一族の氾濫」のPWC特集に合わせての出題です。あまり難しくないと思いますが、もし苦戦したら今回の出題時のコメントや過去の出題作をヒントにしてください。  

 

【ルール説明】

【手順】

33金 41飛 51金 72香 同玉 22飛 32金打 同飛生/22金 42金打 まで 9手

最終形

動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)

  

【解説】

 この最終形を見て戴ければ、特に解説は必要ないでしょう。飛も玉も金に囲まれ、どれを取っても逆王手が掛かるので身動きができません。出題時に「埋蔵金」とか「借金」とか、「金」の付く言葉を連呼したのも、この最終形のヒントだったのです 。元々は飛の後ろにPWC特有の駒交換で香を飛ばして、退路を断つような構想で作っていた作なのですが、横方向の動きを封じる手段を考えるうちに、封鎖用の駒を全部金にするよう方針が変わりました。奇数手にしたのも、33金を最も素直に出現させられるからです。素材の種類によって、通常の偶数手で表現した方が良い場合と、奇数手で表現した方が良い場合があるので、偶数手ばか系や奇数手ば自系の出題形式が、もっと広く浸透することを筆者は期待しています。

 

【正解者及びコメント】 (正解4名:到着順)

 

真Tさん

出題時のコメントがヒントって?と思い解図したら納得しました。
双裸玉からきれいな最終形ですね。持駒の香にだまされかけました。


真Tさんの解答は出題から2時間も経たないうちに到着。驚異的な早さです。
真Tさんからは以前このルールでの投稿(第118回出題)を戴いており、その作は銀で角を封じる構想でした。もしかすると、発表していないだけで、飛を金で封じる構想も作っていらしたのでしょうか?

 

もずさん

飛を縛るのは角でピンするのが普通かと思いきや、
金4枚の登場には意表を突かれました。
必要最小限でまとまっていて完璧ですね。

今回はもずさんからも久々に解答を戴きました。社会人にとっては、詰将棋に掛ける時間と労力を確保するのはなかなか難しいことですが、もずさんにはそこを何とかクリアして、解答・創作両面で活躍して欲しいと思います。

 

北村太路さん

あまり難しくないと書いてあったのに、難しく考えてはまってました。
香を香っぽく使おうと思ったら短打かよ!とか、
山の表面は金ばっかりだけど、中には金がなくて、これじゃ埋蔵金というより金鉱山詐欺だ!とか、
思いました。(負け惜しみ)

まあいつの世でも「埋蔵金」の話が胡散臭いのはお約束ですし…… (^^;
持駒の香も多少はわざとらしいかなと思ったのですが、やっぱり作品を作る立場からすると、歩ではなく香にしたいですよね。
ちなみに「氾濫27」で出題させて戴いた北村さんの作品は、未だに「解けた」という声を聞いたことがありません。果たして正解者が出るのかどうかとても心配です。

 

たくぼんさん

ヒントより初手金打ちは予想がついただけに、初手22金、次に11金を目いっぱい考えてしまいました。
41飛、51金のパーツは分かったのですが、75香、74角に目がいったのが苦戦の原因でした。
それにしてもちょっと離れた33金は全く思考外でした。たまたま33金と置いた瞬間、詰上りが見えました。
金に囲まれる飛車のように私もなりたいとは思ったのですが、身動きできないのはまずいですね(笑)
 

私も実生活では金と無縁ですが、詰将棋では金を使いまくっています。便利ですからねぇ、金は。
なお、たくぼんさんは締切最終日に解答を送ってくださいました。大変忙しい中ありがとうございます。「氾濫27」も頑張ってください。特に6番!

 

 

本日の更新で今年の当サイトの活動は一応終了です。
12月31日から来年の1月4日の夜までは帰省のためお休みを戴きます。掲示板は放置状態になりますし、多分メールチェックもできません。
次の出題は新年の1月6日を予定しています。年頭の解図を気持ちよくスタートして戴けるよう、易しい作を予定しています。

 

(2007.12.30 七郎)


第129回(2007.11.11)出題の解答

「神無三郎 作」 ばか自殺詰 28王 +飛, 46玉 #9 

【出題時のコメント】

 つい先日、私が使っているプロバイダから「POP/SMTP over SSL」が使えるようになったとの知らせがありました。これを使うとメールでのやりとりを暗号化できるので、セキュリティが高まるのです。「暗号」と言えば、軍事での利用や、推理小説のネタのようなイメージがありますが、現代では通常の生活の中で当たり前に使用する技術になっています。メールならメールソフトで設定などをするので、まだ自分で暗号を使っている意識がありますが、カードでの買い物とかETCでの支払いのように、知らずに暗号を使っていることも多いでしょう。
 現代の暗号が昔の暗号と異なるのは、「暗号化のアルゴリズムが公開されている」ものが多いことです。暗号化の方法が分かっていても、「鍵」を知らない第三者には解読ができない(少なくとも今の技術では現実的な時間で解読できない)ので、アルゴリズムの公開ができるのです。暗号化のアルゴリズムを「公募」したり、「解読コンテスト」が行われたりしているのは、現代暗号ならではの現象と言えます。

 ちなみに、私たち詰将棋マニアにとっては、暗号の作成と解読は日常茶飯事です。暗号技術が普及するずっと以前から、難しい暗号を作成したり、それを解読したりして喜ぶという奇妙な遊びを詰将棋マニアは繰り返してきました。本来の意味での暗号と違って、詰将棋という名の暗号は、日常生活にはどう転んでも役に立ちそうにないですが、きっと暗号技術者と詰将棋マニアには相通ずるものがあると思います。一人で両方を兼任している人もいますしね。

 さて、今回は最近注目を浴びている「偶数手ばか詰」の対となる「奇数手ばか自殺詰」です。ルールは通常のばか自殺詰と同じですが、奇数手なので受方から指し始めます。初手に王手義務などの縛りがなく、フリーに指せるのは感覚的にとまどうかもしれませんが、今回の作品はさほど難しくないので、奇数手ば自に慣れるには良い問題だと思います。
 なお、本作は絨毯爆撃の産物ではなく、推敲の結果双裸玉になった作であることを念の為に付け加えておきます。

 

【ルール説明】

【手順】

19飛 16飛 26角 同飛 47玉 14角 25香 27飛 37角 まで 9手

詰上り

動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)

  

【作者のコメント(投稿時)】

46玉のほかに56玉でも完全であることを確認しました。
まあ46玉のほうが図として整っているので、出題向きですね。
斜め対称ですが、飛車は出きり、香車が腹から打てないので、完全限定です。。
いちょう返しも入り、処女作として満足です。

 

【解説】

 初形で攻方の王が空中にいるので、何はさておきその可動範囲を狭めておきたいところです。となれば、初手は18銀、27桂、19飛くらいに絞られてきます。18銀や27桂の場合は17地点を攻方の駒で埋めて38龍で詰めあがる形、19飛の場合は37馬で詰めあがる形が考えられますが、17を埋める必要がない分19飛が優れています。
 となれば後は37馬を発生させるだけですが、これが意外と困ります。“角合い発生→玉移動→角移動”という通常のコースを取ろうとすると、位置関係や駒数のせいでどうにもうまく行かないのです。
 これを解決するのが作者が“いちょう返し”と呼ぶ手筋です。ピンされた駒で合駒を発生させると、その合駒を取ることができないので、玉位置を変える必要がなくなるのです。本局では、25香が飛をピンしている(飛が動くと25香が28王を直射してしまう)ので、最後の37角を取れません。終わってみれば最初に予想した37馬ではなく、27を埋めての37角だったわけですが、これが本局最大の考えどころと言えるでしょう。多分、“いちょう返し”を知っているかどうかで、正答に至る時間が大きく変わると思います。

 ところでこの詰上り型、通常の偶数手ば自で実現しようとすると結構厄介です。特に攻方王の隅に飛を発生させるのが難しく、双裸玉の実現はまず不可能でしょう。私自身もこの種の詰上りを双裸玉でやろうとして挫折した覚えがあります。つまりこの詰上りは「偶数手よりも奇数手の方が表現形式としては適していた」と言えると思います。

 本局は神無三郎氏が奇数手ばか自殺詰に初トライした作品ですが、作者はこの後 JEWEL BOX #4 にも偶数手ばか系の作品を発表されており、偶数手ばか系・奇数手ば自系の分野で作品を量産されることが期待されます。

 

【正解者及びコメント】 (正解4名、感想1名:到着順)

 

真Tさん

詰上がりが見え易いので解き易かったです。25香がポイントでしょうか。

真Tさんの解答は出題当日に到着。
初手が比較的分かり易いので、この短評のように“解き易かった”という人が増えると思っていたのですが……。予想は外れました。

 

たくぼんさん

詰上りの第一感は18銀、26玉で48飛成でしたが全然ダメ。というわけで順算で解くことにしました。
初手は玉移動はないと予想。(それだと8手の作品ですでに発表されているなずなので) 

となると浮かぶのは1九飛で最後37角(馬)の形。
しかし、16(49)飛、26(48)合、同飛、36(47)合、持駒打、玉移動、27(58)飛の形がうまくいかない。
37角で終えるには最後に角を打つ以外方法がないのでと考えやっと25香に到達しました。 

あとから考えれば分かりやすい手順と思うのですが、詰上りが想定できないのでなかなか難しい。
初手が想定範囲内の手でしたので解けましたが、この初手以外だったらもっと苦労していたでしょう。
 

fmを使って少しだけ(本格的な“絨毯爆撃”だと時間が掛かりすぎるので略式で)調べてみたのですが、奇数手ば自の中には「パッと見、初手の意味が分からない」ものがあります。もちろん、そういった手も慣れれば結構見えるようになるのでしょうが、しばらくは苦戦するのは必至だと思います。

 

北村太路さん

半日くらいで解けたのですが、感想が思いつかなかったので送るのが遅れました。
時々個人的に何に対しても心が動かない無感動な時期があるのですが、そのエアポケットにはまりました。
すいません。

普通に解けてしまうとコメントが浮かばないということはあると思います。そういうときは無理に気の利いたコメントを考えなくても、「普通に解けてしまいました」と、そのまま書いてしまって良いと思います。それも立派な感想ですから。

 

小峰耕希さん(感想)

初手は多分これだろうと思ったんですが、以降の見当が付かず、
結局fmでカンニングしました。
何故か飛は取らせる駒だと思い込んでいた節があったようで、
香を発生させる筋が全然見えてませんでした。
どうやら僕はこのルールを解く際、攻方の駒をピンする順を
軽視する傾向があるようです。本当は基本手筋なんですけど…。
 

今回予想より解答数が少なかったのですが、その原因は“いちょう返し”にあるみたいですね。ピンされた駒で王手するのは、普通の詰将棋にはほとんど現れない手なので、馴染みが薄くても仕方ありません。
そういえば、普通の詰将棋でピンされた駒での王手が出てくる作品はどのくらいあるのでしょう? 双玉がそもそも少ないですし、双玉でもそんなことをしたら王手駒を取られてしまうので、かなり限られると思うのですが…(逆打歩詰絡みで少し実例があるくらい?)

 

隅の老人Bさん

28玉の逃げ場所を狭めるには、と考える。
後は適当、運任せ。幸運にも初手を発見。
角合、香合、総てが妙手。
よくぞ解けたり、我ながら天晴れです。
偶数ばか、自殺の奇数は、初手が手広くて難しい。


隅の老人Bさんの解答は締切ぎりぎりで到着。
今回は簡単に解けた人と、苦労した人がはっきり分かれてしまいました。
次回も奇数手ば自系の作品を出題する予定でしたが、こうなると少し迷いが出てきますね。

 

つい先日、花沢正純氏の訃報が舞い込んできました。森茂氏に続いて、花沢氏まで他界されるとは、とても残念で信じられない思いです。
花沢氏の活動分野は多岐に亘りますが、私にとって最も影響の大きかったのは、6416手の自殺詰やカピタン30号に大量に出題された自殺詰の趣向作群でした。おそらく、これらの作品に接していなければ「イオニゼーション」ひいては「ミクロコスモス」も生まれていなかったと思います。


花沢正純作 自殺詰 6416手※作意未発表

花沢氏には「氾濫」にゲスト参加していただいたり、Online Fairy Mateで作品を拝見したりしたこともありますが、こんなに早く亡くなられてしまうとは想像もしていませんでした。

ご冥福をお祈りします。

 

(2007.12.2 七郎)


第128回(2007.10.14)出題の解答

「小峰耕希 氏作 「鶯谷」」 最悪詰 13歩26桂42歩47王75歩86歩88香89桂97歩 +桂香歩,17玉18歩34桂41香52歩63歩85香98歩 #25

 

【出題時のコメント】

 今、私の手元には、図書館から借りてきた「ゲームシナリオの書き方」(ISBN4-7973-3260-3)という本があります 。別にシナリオを書きたかったわけではなく、舞台裏の話というか、「一見何の変哲もない」ことの中に「いろいろな知恵や工夫が凝らされている」ことが分かる興味深い本だったからです。この本の題材は「ゲームシナリオ」ですが、一般化して映画やドラマのシナリオや、小説などにも適用できそうな話が数多く盛り込まれています。無理やりこじつければ、これを詰将棋の創作にも適用できるでしょう
 例えばこんな話があります。“時限爆弾から赤いコードと青いコードが伸びている”という場面があり、ゲームのプレイヤーに行動の選択肢を選ばせます。ここで選択肢に「赤いコードを切る」「青いコードを切る」の2つが出るのは自然です。(「爆弾を投げ捨てる」なような第3の選択肢もありうるのですが、話の趣旨と関係ないのでここでは省略します。)
 ところが、“時限爆弾から赤いコードと青いコードと黄色のコードが伸びている”という場面で、「赤いコードを切る」「青いコードを切る」の2つしか選択肢が出てこないとしたらどうでしょう? 当然、プレイヤーは「何で黄色のコードを切る選択肢が無いんだ!」と不満を感じることでしょう。シナリオの作者は、プレイヤーにそうした不満を感じさせてはいけません。プレイヤーが感じるであろうことを先回りして予測し、シナリオを練る必要があるのです。

 この例で出てきたシナリオ作者とプレイヤーの関係は、詰将棋の作者と解答者にも当てはまります。解答者の感じ方は人それぞれですから、趣味の違いに過ぎない不満は無視しても良いのですが、明らかな改良点があるのに、まったくそれに配慮していない図を出してしまったら、それは作者の失敗です。誰の目にも赤青黄の3つのコードが見えるのに、赤と青の2つのコードのことしか出てこない……そんな詰将棋を貴方は発表しようとしていませんか? 投稿する前に、誰もが気付きそうなことを自分が見落としていないか、もう一度見直してみてください。

 さて、今回はそうしたウッカリな作家にとっては“脅威”の辛口解答者、小峰耕希氏の作品です。何だか前フリの文章で、評価のハードルを上げてしまったような気もしますが、この作品なら大丈夫でしょう。最悪詰はまだ馴染みのない方は、このページの過去問や、 たくぼんさんのページ の「最悪詰作品展」を参考にして本作に挑戦してみてください。

 

【ルール説明】

【手順】

29桂 16玉 17香 25玉 37桂 24玉 25歩 33玉 45桂 42玉
34桂 51玉 43桂 61玉 53桂生 62玉 61桂成 73玉 74歩 84玉
85歩 95玉 96歩 同玉 97香 まで 25手


動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)

  

【主な変化・紛れ】

8手目:33玉のところ23玉は
 24歩 32玉 23歩成 43玉 33と 53玉 43と 62玉 53と 73玉
 63と 同玉 64歩 73玉 63歩成 84玉 85歩 95玉 96歩 同玉
 97香 まで 4手長くなる

13手目:43桂のところ42桂成は 同玉 とし、
 53桂成 は 同玉 45桂 42玉 53桂成 31玉 42成桂 21玉 12歩成 まで早く詰む
 54桂 は 31玉 42桂成 同玉 以下同様に早く詰む
 34桂 は 51玉 42桂成 同玉 以下同様に早く詰む

15手目:53桂生のところ51桂成は 同玉 とし13手目の変化と同様に早く詰む

【作者のコメント(投稿時)】

攻方で「あれ」をやってみたのですが、如何でしょう?
偶然ウグイス図式になったので、調子に乗って命名付きです。

 

【解説】

 投稿時の作者のコメントにある「あれ」とは、桂の4段跳のこと。
 勘の良い方なら、この初形を見ただけで同じ作者による第1回最悪詰作品展第12番を思い出すのではないでしょうか。あちらの方は受方の桂の4段跳でしたが、こちらは攻方の桂の4段跳で、しかも跳ねる桂を打つ所から始める5段活用の手順です。

 最悪詰において攻方の桂の4段跳を実現する場合、最も難しいのが、桂が成れる位置に来た場合の変化処理です。最悪詰の作図経験をお持ちの方なら実感できると思うのですが、攻方駒が成れる場所での攻防は、攻方の選択肢が増えるため、不詰筋が生じやすくなります。既発表の最悪詰に入玉型の割合が非常に多いのもこのためです。

 本作においても玉が3段目に来た辺りから、変化・紛れが多くなります。
 中でも、特筆すべきは13手目42桂成を「変化」にしまい込んだ機構の巧妙さです。作意の43桂に比べ、42桂成は受方がどう応じても攻方の選択肢が増えます。攻方の選択肢が増えれば、不詰の可能性も増えるはずですが、41香が間接的に47王を睨んでいるために、受方にすべての変化をコントロールされてしまい、どの変化も(初手から数えて)23手以内に収まってしまうのです。作意だけ並べた方には収束が冗長に感じられるかもしれませんが、この収束の長さはこの変化を成立させるための最短の手順なのです。また、3手目に何の気なしに打った17香が、ここで効いていることも見逃せません。要となる駒が最初から配置されているより、途中から発生する方が、手順がより高級に見えます。

 本作は鶯図式(桂香歩のみを使用した作品)で桂の4段跳という条件を達成した高度な作品です。しかし、もっと大きな意義があるのは、13手目前後の最悪詰の常識に反した展開、そしてそれを生み出した機構の発見だと思います。この構成や機構が次のより高度な応用を生み出せば、最悪詰の作品のレベルはもっと上がることでしょう。今後、この作品を端緒に大きな展開が生まれることを期待したいと思います。


 

【正解者及びコメント】 (正解4名、感想1名:到着順)

 

たくぼんさん

まずは8手目2三玉から2四歩、3二玉、2三歩成、4三玉、3三と以下追って2手オーバー。
しばらく考えて4一香の逆王手を利用して手順限定させる手順に気付きました。変化の4五桂〜5三桂成〜4二成桂の順が作意より面白い(?)かも。
ここを過ぎればあとは一気呵成にゴールまででした。4一香の配置が絶妙で適度の変化、紛れのある鶯図式と思います。

8手目23玉は2手オーバーではなく、4手オーバーですね。
今回の解答で、たくぼんさんが本サイトの解答番付単独1位になりました。この解答も出題当日に届いたものです。
解答で実績を上げるには、優れた解図の力が必要なのはもちろんですが、詰将棋に多く時間を割ける環境を構築することが解図力以上に重要です。真っ当な社会人としての生活と詰将棋マニアとしての生活を両立させるのはとても難しいことですが、たくぼんさんはその点でも大きな成功を収めていると思います。

 

真Tさん

攻方桂の4段跳ね。第1回最悪詰作品展の同氏作の対の作品ですが、こちらの方が洗練されている感じがしていいですね。
成桂がピンされていることで詰む変化が、なかなか見えず苦労しました。
これは応用が利きそうです。

成桂がピンされていることで詰む変化に苦労されたとのことですが、本当にこの部分は面白いですよね
実は私、
初めにこの投稿を受け取ったとき、42桂成ばかりに目が行って、桂の4段跳であることに全然気がつきませんでした。今回の出題時のコメントで「赤青黄のコード」の喩え話をしましたが、誰にでも見える黄色のコードに気付かなかったのは私自身なのです。

 

香箱さん

はじめまして、香箱と申します。
下記の変化はいずれも(#)の局面に誘導する権利が受方に残ってしまい、逆王手を利用して23手で詰んでしまう。
それを避けて攻方が最悪を尽くした手順は上記に限定されるわけですね。桂の4段跳ねが鮮やか。
ところで「鶯谷」のココロは?

13手目42桂成、同玉、
 @53(33)桂成、同玉、45桂、42玉(#)、53(33)桂成、31玉、42成桂、21玉、12歩成まで早い。
 A34桂、51玉、42桂成、同玉(#)以下同上、
 B54桂、31玉、42桂成、同玉(#)以下同上
15手目51桂成、同玉、42桂成、同玉(#)以下同上

今回が初解答になる香箱さん。解答が届いたのが出題翌日ですから、相当の実力者だと思われます。
「鶯谷」の命名は鶯図式だからと思って何の疑問も持たなかったのですが、そういえば作者は東京近郊に住んでるわけではないですよね? 私も、鶯谷駅の構内で鶯の鳴き声が流されていたりとか、やたらラブホテルが林立していたり、といったような印象しかないので、命名の由来はよくわかりません。

 

北村太路さん(感想)

コンピュータを使ったので感想を送ります。
 
七郎さんが評価ハードルを上げていたので、単なる鶯図式ではないのは解く前からわかりました。
前回作者の作品を見たのが受方桂の四段跳で、本作も手を進めるうちに
どうも初手で打った2九桂の四段跳じゃないかなぁ、と思いました。
で、最初と最後はわかったんですが、10手目4二玉と指したあとがわからない。
まぁ大した手もないだろうと思って、機械に確認したんですが、
4二成桂、2一玉、1二歩成の簡単な3手詰が全然見えてませんでした。
簡単すぎたのでしょうか。
 
辛口評の作者だと、さぞ凄い作品だろうとハードルが上がる上に、七郎さんの前フリで二段ハードルが上がったので、評価はねぇ・・・。
自分の場合作品名がついている作品はハードルをもう一段上げるので、ちょっと書けない点数になります。
ハードルが上がってなかったら素直に優良可の良くらい上げれたかもしれませんが。
4一香(と4七玉)なんかもうまく作ってあるんですけどねぇ。
 
やっぱり全部ハードルが悪いんです。
 
ちなみに自分はど近眼なので黄色いコードを見落とすことがよくあります。
赤と青しかコードがないと思い込んでいるので、何度見直しても見つけれません。
作ってしばらく置いて冷静になったつもりで見直しても見つけられません。
でも、送った後すぐとかに気づくんですよね。憑き物が落ちたかのように。

北村さんの“感想”が届いたのも出題翌日。ちょっと見切りが早過ぎですねぇ。
北村さんの本作への評価が辛いのは、私がコメントでハードルを上げてしまったせいもあるでしょうが、簡単な筋を見落とした負け惜しみが混ざったせいもあると思います。
ちなみに、私も黄色いコードを見落とすことはしょちゅうです。
作者は自作を客観的に見るのは難しいですから、最初に作品を見る第三者、すなわち担当者がそこで頑張らなければいけません。担当者は「発表の前は文句を付けるのが仕事、発表の後は褒めるのが仕事」というのが、私が担当をするときの信条です。

 

隅の老人Bさん

序と収束は、これしかないな。
簡単、手数勘定、29手、あれ、何処で間違えた?
8手目を23玉と逃げました、苦戦、長考。
41香と47玉の配置の上手いこと。
解答書きで気が付いた、桂の4段跳び、さすがですね。


隅の老人Bさんも、桂の4段跳びは最後に気付きましたか。
何だか同類を見つけたようで、ホッとしました。
フェアリーだと、記録だ条件だと言ってもあまり意味がないですから、あまり注意を払わないんですよね。

 

今回は出題翌日に3通の解答と1通の感想が届き、出足好調だったのですが、その後解答数は伸びませんでした。「氾濫27」の原稿作成に気を取られていて、残り1週となったところで締切の告知をしなかったのも要因かもしれません。
ちなみに次の出題も投稿作品で、奇数手ばか自殺詰です。最初なので難度は控え目のはずです。

 

(2007.11.4 七郎)

 


第127回(2007.9.16)出題の解答

「伊達悠 氏作」 アンチキルケばか自殺詰 74香84王95桂 +角香, 51玉57飛 #10

 

【出題時のコメント】

 妖精都市でもお知らせしましたが、「第27回神無一族の氾濫」の出題作品を募集しています。対象は「PWC」を使用した作品で、組み合わせるルールや手数は自由です。ただし、担当者(私)に検討する余力がないので、fmで検討可能なルールでお願いします。(詳細については妖精都市に掲載中の募集要項をご覧下さい。)
 以前にも「アンチキルケ特集」でゲスト参加中心の「氾濫」をやったことがあるのですが、あの時は参加者を予め募り、特設のコミュニティページで出題・相互批評する形式でした。当時はアンチキルケルールの草創期で、参加者の創作レベルを一気に上げる良い方法だったのですが、その反面、参加者が互いの作品を知ってしまっているため、参加者には「氾濫」解答の楽しみがなくなってしまうという欠点もありました。
 今回は投稿による公募制なので、他の参加者の作品を見ることはできません。ですので、自作が採用されても、他の参加者の作品を解答する機会が保証されています。

 ルールを指定して作品募集をするこの形式は、たくぼんさんの所でやっている「○○作品展」のシリーズと基本的に同じなのですが、掲載場所が詰パラということで、投稿された作品を全部掲載というわけにいかないのが、ちょっとつらいところです。投稿された作品の数や内容によっては、残念ながら返送させて戴くこともあるかとは思いますが、どうか積極的なご参加をお願いします。今回の公募形態がうまくいったら、今後もルールやテーマを変えて、投稿作品主体の「氾濫」(そのうち“神無一族の”と言えなくなるかもしれない)を続けていこうと思います。

 さて、「氾濫」だけでなく、トップページでの出題も最近は投稿作主体です。今回の出題は“Mr.打歩”の伊達氏。でも、今回は打歩ルールではありません。さて狙いは何でしょうか? 詰パラ8月号の同氏作を解いた人ならピーンと来るものがあると思います。

 

【ルール説明】

【手順】

15角 24飛 54香 62玉 26角 63玉 53角成 74玉/51玉 75馬 54飛引成/82龍 まで 10手

動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)

  

【作者のコメント】

詰パラ8月号の作品ができたときには、既にこのような詰めあがりを考えていました。
すなわち84の自玉に対して4筋の飛車、82の龍の両王手を。あとは95に桂馬を置いて余詰防ぎをして、75に香車でも打って完成!!!
・・・・・・・かと思いきや・・・・・・・
ここで重大な問題が発生しました。最終2手をどうするか?
当初考えていたのは非常に単純な「91玉に対して角打ち→飛車が取って龍になって終わり」というものでした。
しかしこれではあまりに駒数が多くなってしまい(最終的には15枚!)、できたと思ったら余詰がボロボロ。何度も繰り返して修正をしても全く効果が無く、とうとうあきらめてしまったのが今年の1月頃だったと思います。

今年の詰将棋全国大会でフェアリーランドの片岩さんから「来月の詰パラでアンチキルケの投稿作品を載せますよ」と言われてから改めて創作に着手してみました。
しかしそれでも駒数は減らない。余詰も消えない。
2度目のアタックも無駄に終わってしまうのか・・・・・・そう思っていました。

ある夏休みの日、そろそろ寝ようと思っていたときでした。
不意に「開き王手をして、飛車で香車を取って詰みというのはどうだ」という考えがひらめいてきました。
最初はそれほど大したアイデアではないと思って、一応メモをしてからその日は寝ました。
しかし目が覚めてから考えてみると「これはいけるのではないか?」という気がしてきました。考えれば考えるほどよいアイデアでした。
特に75の地点に何もない状態から馬を移動させてくるのは余詰が一気に減る画期的?なものだったと思います。
とにかくまずは創ろうと思って創作してみたのが、今回の問題の配置を74香→73香としたものでした。
すると、余詰はあったものの作為解以外にもう1つだけでした。あとは余詰にならないように73香→74香としてFMにかけると・・・・・・完全作!!!

盤面駒数わずか5枚で狙いを表現できたのは本当に奇跡でした。
自分で言うのも何なのですが、(時間をかけたということもあって)自身の中では一番の会心作です。
・・・・・・ちなみに、これを詰四会でたくぼんさんに見せて逆算案を検討してみましたが、形重視で結局やめました。
たぶんこれが一番よい配置だと思います。
僕が「玉を11に配置して角をもう1枚持ち駒にして最遠打と見せかけて短打」ということを一瞬考えていたのは口が裂けても言えません。

 

【解説】

 本作は一言で言えば 、駒の利きが変わるのではなく、駒の位置が変わるルールで同種の駒による両王手を実現した作品です。

 皆さんもご存知の通り、普通の詰将棋では飛と飛、角と角(成駒との組み合わせも含む)という同種の駒同士での両王手はできません。ところがフェアリーでは対面、安南と言った駒の利きが変わるルールで同種の駒の両王手が出現する可能性があります。
 ただ、理論的に可能であっても作例自体は多くありません。ちょっと考えると、安南などはそういう実例がいっぱいありそうですが、私が調べた範囲では同種の駒の両王手の実例はありませんでした。安南は、変身した駒の利きで両王手を掛ける狙いで作品が作られているためで、利きが同種の両王手の例がある反面、駒自体が同種の両王手作品がないのです。(さあ、作家の皆さん。早い者勝ちですよ!)
 対面には有名な例として佐々木浩之氏の作品(余詰)があり、以降も少数ながら同種の作品が作られています。

「佐々木浩之/詰将棋パラダイス/1986年7月/余詰」 対鮮ばか詰  +飛2, 46と48と57玉66と68と #5

 さて本題のアンチキルケですが、同種の駒による両王手というのは、詰パラ8月号の伊達さんの作品が初めてです。別種の駒による両王手や三重王手などは盛んに作られているのに、同種の駒による両王手作品が無かったというのはちょっと意外な感じです。詰パラ8月号の作品が角が主役であるのに対し、本作では飛が主役になっており、両方とも伊達さんが一番乗りということになりました。
 ただ、本作は単に「誰もまだやってないことをやってみた」だけの作品ではありません。飛と龍の両王手による詰上りだけならば、アンチキルケを解き慣れた人ならば、想定はそれほど難しくないのです。むしろ本作を難解にしているのは、攻方王の脱出路である75地点をどう塞ぐかという問題です。手数や持駒が充分にあって、48角を配置できるのならば、三重王手によって75を塞ぐことも可能ですが、残念ながらその場合は74香が邪魔になります。
 結局、75地点の封鎖と74香の消去を同時に行うためには、作意のように玉のジャンプを利用するしかないのですが
、手数が短い作品でこんな一見のんびりした手段を読むには、相当の勇気が必要です。本作を正解された今回の解答者は、本当に強いと思います。

 作者はこれから「受験」という一大イベントのため、あまり詰将棋に時間を割けなくなるようですが、「合格」という吉報と共に、本格的にカムバックされるよう祈っています。


 

【正解者及びコメント】 (正解4名、感想1名:到着順)

 

たくぼんさん

実はこの作、詰四会の席上で作者に出題されて、盤駒並べて15分くらいで解きました。(答えを教えてもらったわけではないので解答してもいいですね。しかし15分って早いのか遅いのか?)
飛2枚による詰上りは予想できるので15角-24飛、54香-同飛成/82龍のパーツは思いつく。
54香を最後に打つと74香の消去が難しいので、早めに打っておく。と後は組み合わせれば・・・と思ったがこれが意外と難しい。
74香を成り捨てる手に目が行ったのが原因。
75を埋める駒もなかなか見出せない。・・・・!・・・・74香を玉に取らせて消去する順が見えて無事解決。
初手の15角が75までジグザグに移動するのも面白い。
作者はもう2手逆算したいなんて言ってたけど。このままがいいと思いますよ。

15分で解けたら凄く早いと思います。今回の解答で、たくぼんさんが本サイトの解答番付1位になりましたが、この作品が15分で解けるならそれも当然と言えるかもしれません。今後も単独一位目指して頑張ってください。
なお、逆算は私もしない方が良いと思います。もし、57飛を空中発生させることができれば、逆算するのも良いのですが、普通に香打・飛合だと最終手が不成立になりますし、他の手段で無理にこの形にするのも改悪になりそうです。

 

瘋癲老人さん

難しい!74香を捌こうとして悪戦苦闘。
玉に取らせればいいとは。
両王手は見え見えだが飛角の筋も読ませるし
駒数最小。傑作でしょう。

瘋癲老人さんをも唸らせるとは、なかなかできる芸当ではありません
これは作者も誇って良いと思います。

 

真Tさん

最終71玉に対して93角、○○飛成/82龍と思って苦戦しました。
75のふさぎ方、74香の消去法が面白いですね。

真Tさんが嵌った紛れは、いわゆる「アンチキルケ版魔女返し」ですね。
三重王手などでは良く使われる技法なので、熟練者ほどこの筋に陥り易いかもしれません。

 

隅の老人Bさん

幾日考えたやら?
詰棋では、創るのは解くことよりも難しい?
フェアリ−では、逆かな。でも、私には創れない。
ようやく解けての、負け惜しみ。
角打に飛合。よくぞ、ここまで延ばしたり。

fmで検討できる作品に関しては、作る方が易しいことも多いでしょうね。
検討作業が機械化できる今、作家にとっては「作れるか作れないか」は問題ではなく、「どこまで良い作品にできるか」が問題になります。フェアリーも“前衛”の名に甘えて、品質をおろそかにできる時代ではありません。

 

荻絵香木さん(感想)

久しぶりに解答します。
fmを使ってしまいました。
両王手と、それにいたる手順が面白かったです。
狙いを看破できれば、かなり論理的に解けそうですね。
自殺詰は苦手意識があったのですが、アイデアを純粋抽出できる感じがいいですね。余詰も出にくそうです(想像ですが)。

ところで、次回は記念すべき2^7回出題ですね。
2^nのオーダーで手数の増える超長編が出ると予想(期待)します(笑。
 

受験の方では先輩(?)に当たる荻絵さん。これから受験に立ち向かう伊達さんに、良いアドバイスがあったらお願いします。私がアドバイスすると「一浪したら、1年分詰将棋に割ける時間が増えますよ」なんて非教育的なことを言いそうですし。
そういえば、フェアリーで2ちょうどのオーダーになる機構って、ありましたっけ?
「寿限無」は3ですし、呼び出しはがしはnです。
ちょうど2のオーダーになる機構を見つけたら、一大発見になるかもしれませんね。

 

今回は1局単体の出題でしたが、少し難解だったようで、自力正解者は4名に留まりました。次回もまた投稿作品の出題で、ルールは最悪詰。このサイトの過去作や、たくぼんさんの所の「最悪詰作品展」で予習をしておきましょう。

 

(2007.10.7 七郎)

 


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