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解答

 


第93回(2005.1.16)出題 の解答


【出題時のコメント】

 昨年末と今年に電話取材を受けました。ひとつは週刊将棋、もうひとつはNHKからの取材です。どちらも詰将棋マニア向けのものではありません。週刊将棋の方は一般の将棋ファンに詰将棋に関心を持って貰うためのものですし、NHKの方はコンピュータの棋力が上がってきたことの実例として「ミクロコスモス」を取り上げることを検討しているだけなので、番組構成上、実際にそれが組み込まれるかどうかも未定です。
 こうした取材を受けるとき実感させられるのが、我々が詰将棋に関して常識的に知っていることが、世間にはほとんど知られていないということです。例えばNHKの取材の場合、「最長手数の詰将棋が、最難解の詰将棋ではないこと」とか「『ミクロコスモス』が今は市販のソフトで解けること」など、我々にとっては常識的なことから説明しなければなりませんでした。
 週刊将棋の方は、ターゲットが将棋ファンなのでその辺は心配ない…と思ったら甘いです。これは関係者から聞いた話ですが、むかし「ミクロコスモス」が週刊将棋の記事に載ったとき、読者から「詰め将棋って勝手に答えを決められるのに、何で長手数で騒いでるの?」という趣旨の質問が来たことがあったそうです。まあ、これは極端な例ですが、要するに、世間での詰将棋の認知度というのは、それほど低いということです。普通の詰将棋でさえこの状態ですから、フェアリーに至ってはもう「論外」と言うしかありません。

 さて、その「論外」を扱うこのページ。今年最初の出題は、一桁モノ。マドラシの手筋習得のための問題です。マドラシは、次回の「神無一族の氾濫」で取り上げる可能性が高いので、その練習の意味もあります。

 

【ルール説明】

  • ばか自殺ステイルメイト
     先後協力して最短手数で、攻方をステイルメイト(王手は掛かっていないが、合法手のない状態)にする。
      
  • マドラシ
     同種の敵駒が互いの利きに入ると、利きがなくなる
     ただし、玉は互いの利きに入ることはできない。
     
     
  • 【詰手順】

    23銀 同玉 12銀 32玉 21銀打 31玉 32銀打 23銀 まで 8手

    動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)

     

    【解説】

     本作はマドラシの手筋物。
     マドラシでの利きの消滅は、必ずしも1対1とは限りません。可能性としては、駒の利きの数だけ、一度に利きが消える可能性があるわけです。本作では、2枚の銀を一度にマドラシの作用で石化させるのですが、3手目から普通に 32銀 21銀 XX銀 32玉 などと進行させると、XX銀と持駒の銀を同時に石化させることができません。
     また最終形にも注目してください。銀がダイヤ型に並んでいて綺麗ですよね。玉も入れた全体の形も駒型に見えます。これを出題したくなったのは、この最終形が魅力的だったせいもあります。
     複数駒の同時石化を最大限に行うというテーマは、なかなか面白いと思います。銀であれば、一度に5枚の銀の利きを消すことが理論的には可能なので、持駒制限枠を撤廃したルールで、どなたか限界に挑戦してみませんか?

     

    【正解者及びコメント】 (正解者10名:解答到着順)

     

    若林さん

    リハビリには悪くありませんが、正直、初形と持ち駒だけですね。
    などと甘いことを言っていると、氾濫では難解なマドラシ双方ステイルメイトだったりして。

    スーパーキルケなら駒取りでマドラシによる受けが出来るな……
    なんて妄想をしましたが、さて。誰がついてくるか以前に作品を作る人がいなそうな。
    そもそも将棋盤でスーパーキルケ自体私は聞いたことないですし。

    初形と持駒だけなんてツレナイことを…最終形も見てやってください。
    氾濫でどんな傾向の作が出るかは、次回の出題で明らかになると思います。
    スーパーキルケって、駒の復活場所を任意に指定できるキルケのことですよね。日本の将棋に当てはめると、二歩とか行き所のない駒になるような場所を除いて、どこにでも再生できるという風なルールになるのでしょうか。余りにも過激すぎて、まともな作ができるのかどうか不安になるルールですので、どなたか先駆者(人柱とも言う)が出るのを待ちましょう。

     

    川並洋太さん

    簡単そうに見えて意外と難しいです。
    終了図から21銀を無くしたものを目指していたら偶然わかりました。
    昔所属していた将棋でフェアリー家が迫害されたのですが(当然退部しました)、かしこ詰の連続王手は受け入れても、他の変則ルールは受け入れられない人が多いのは不思議です。

    「迫害」とは穏やかでないですね。
    クラブとか学校が世界のすべてではないので、退部したことで、本人が清々した気持ちでいるなら問題ないと思いますが…。
    自分の経験だと、中学までの将棋部は「部」の体を成していない所が多いです。さすがに高校になると、本気で将棋を好きな人が多いので、詰将棋を好きな人もわずかながら居るようになります。
    そこから更にフェアリーに興味を持って貰えるかどうかは運と努力次第。私の場合は、加藤徹氏の「寿限無」を紹介したことで、そのわずかの詰将棋ファンから大いにウケを取ることができました。あの再帰構造が理解できたときの驚きと感動は、ルールの違いという壁を越えてしまったのです。名作の力は偉大!

     

    ほの字さん

    やっとのことで銀1枚を自縄自縛にする詰上りを思いつき解決。
    過去問よりは大分やさしそうだが、初めて挑戦したルールでもあり相当長考。

    この最終形の特徴は、21銀が受方でなく攻方の駒になっていることです。受方銀が攻方王の真横に張り付く形がステイルメイトの常道なので、その逆を行くこの最終形はなかなか思い付きにくいと思います。

     

    大阪市の住人さん

    掲示板、お騒がせしました。

    「グラスホッパー」が直木賞を逃したのは残念でした。これで、間違えてこのページに跳んでくる人が減ります(^^;
    掲示板は原則フェアリー関係の話の場ですが、時には他愛のないお喋りも良いものです。また、何か面白いネタがあったら書き込んでください。

     

    たくぼんさん

    銀を二つ渡せば何とかなるかなと考えはじめたらこれがなかなかうまくいかない。
    最後の一手で2つ石に出来るんですね。
    思い込みはいけません。

    この解答で、たくぼんさんは、いぬたさんと並んで本ページの解答ランキング2位になりました。次回で単独2位になるかもしれません。
    本ページで解答上位になっても普段は良いことがないのですが、例えば神無一族の作品集の出版があったときに、上位何名かにそれを無償配布することがあります。それを励みに(あまり励みにならない?)何年後になるか分からない、次期作品集の出版の日まで、上位をキープしてください。

     

    泉真理さん

    久々に解答します。
    銀が3枚だと簡単なのですが、4枚だと難しいですね。
    王の位置を逆にしても銀3枚で詰みますね。
    ステイルメイトでは、駒余りが無いので持ち駒が多い程難しいですね。

    泉さんは第78回出題以来の解答。最近マニアックなルールが多くてごめんなさい。
    ステイルメイトで持駒が多いと、一般に解く方も作る方も難しくなります。本作でも持駒制限を撤廃して銀12枚とかで作りたかったのですが、検討時間が掛かりすぎてアウト。
    ただ、銀の枚数を増やしても、部分的にはこの最終形に収束してしまう(11王型の場合には)ことが多いので、今回の出題はその基本部分の出題になりました。
    なお、ステイルメイトで持駒や置駒が多いときの対策を、fmの新規機能として実装、評価中です。これについては次版公開までしばしお待ちを。

     

    もずさん

    最初は銀を2枚捨てる詰め上がりを考えていたのですが、それが無理そうだとわかって3枚残しを考えると解けました。

    今回のほとんどの解答者は、このもずさんの短評にあるような思考過程を辿ったと思います。まずは23銀、32銀と連続で打つ筋から考え、これが不詰だと分かって正解に至る、というパターンですね。もっとも、もずさんの場合は、この過程がきっとほんの少しの時間で終わったのだと思います。
    あと、もずさんご自身のステイルメイト作品も、また見てみたいです。何しろ、神無一族でステイルメイトが流行りだしたのは、もずさんの影響なんですから。

     

    いのてつさん

    銀は二枚捨てなければならない、という固定観念に縛られ苦労しました。
    作意だけ見たら簡単に解けそうなのになあ・・・

    私も、世間の詰将棋の認知度の低さにがっかりしたり、悔しい思いをしたことが何度かありました。
    将棋を指す人でも、詰将棋を実戦の訓練としてしか見ていないことがほとんどな気がします。
    チェスにおけるプロブレムの位置づけも同じようなものなのでしょうか。

    「詰将棋は実戦の訓練」という認識は、プラス面とマイナス面があります。プラス面は指将棋から人材が流入してくること、マイナス面はその認識から抜け出してくる人が少ないことです。
    これがプロブレムになると「プロブレムはチェスの実戦の訓練」になるなんて話はないようなので、ある意味詰将棋より厳しい環境に置かれているかもしれません。神無太郎さんが海外出張に行った時の話ですが、チェスを知っている人にチェスプロブレムの話題を振ったら「チェスのルールに何か問題があるのか?」というような反応を返されてしまったそうです。チェスは世界各国に広まっていますから、認知度が低くても、全体の愛好者数はそれなりに確保できているのでしょうが…。

     

    瘋癲老人さん

    初手23銀しかないのはつらいか。最終手の感触はよし。

    前回、癇癪老人さんがラストを狙っているのではないか、と書いたところ「別にラスト狙ってるわけでもないですが、酒入れちゃったんで危ないとこでした。」とのお返事を戴きました。かつてラスト解答者の常連だったいぬたさんも、やはり狙ってではなく、自然に最後の解答者になっていたそうです。

     

    荻江香木さん

    マドラシルールならではの詰上がりですね。美しいです。今回は解答ラスト?

    というわけで、今回のラスト解答者は荻江さんでした。解答到着時刻は締切日の23時54分!
    総じてこのページへの解答は、出題直後に来るか、締切直前に来るかの両方が多く、あまり難問でない場合、解答募集期間の長さは解答数に影響しないようです。
    とはいえ、ページの更新作業は結構面倒なので、これ以上出題のサイクルを縮めることはしません。今の4週サイクルが一番、しっくりきます。

     

    おかげさまで、解答者数が2桁の大台に乗りました。これに味をしめたわけではないですが、次回もまたマドラシば自STMです。作者は神無太郎さん。今回と違って本格的な作品なので、腰を据えて取り組んでください。

     

    (2005.2.6 七郎)


    第92回(2004.12.19)出題 の解答


    【出題時のコメント】

     今年はフェアリー駒をたくさん取り上げました。今まで仕事にはまってfm関連の開発に手をつけられなかった神無次郎氏も、ようやく若干の余裕ができ、改良や機能拡張に対応して貰えるようになりました。その中には、フェアリー駒関連の機能の拡張も含まれます。いずれは、それらの成果を皆さんに公開できるようになるでしょう。
     ところで、フェアリー駒が使えるなら、フェアリー盤も…という話が出てきても当然かと思います。私自身も「盤が無限に大きくて、駒も無制限に使えたらなぁ」と夢想することがあります。この場合は「成」のルールを取っ払って、必要に応じフェアリー駒を追加して、好き勝手な超巨大趣向作を作るわけです。

     超巨大盤を使う目的は何か?

     それは、第70回の出題で言及した「ライフゲーム」と同様です。超巨大盤で、もし「論理ゲートの自由な組み合わせ」や「読み書き可能な無限のメモリ」を実現できれば、理論上そこで「コンピュータ」を構築することができます。そうすれば、どんな複雑なロジックでも、詰将棋で表現可能になるのです!
     もし超巨大盤で「詰将棋コンピュータ」が構築できたら、それに何をさせれば良いでしょう? 今時、弾道計算などさせても意味はないですし、ロマンがありません。ここはやはり、そのコンピュータを使って、例の古典的3手詰を解かせましょう。「詰将棋を解く詰将棋」― それはどんな巨大なもので、3手詰を解くのにいったいどれだけの手数を要するのでしょうか?

     さて、妄想はこのくらいにして、今回の出題は年賀詰。今年さんざんお世話になったグラスホッパーと、前回使用した(2,0)リーパーに登場してもらっています。受方持駒制限やステイルメイトも、今年多用したもの。来年の出発というより、今年の締めといった方が良い作かもしれません。

     

    【ルール説明】

  • ばか自殺ステイルメイト
     先後協力して最短手数で、攻方をステイルメイトにする。
     
  • ステイルメイト
     王手は掛かっていないが、合法手のない状態。
     
  • グラスホッパー王
     王(玉)がグラスホッパーの性能になる。
     
  • G(グラスホッパー)
     クィーンの線上で、ある駒(敵の駒でも味方の駒でも良い)を1つ飛び越したその直後の地点に着地する。そこに敵の駒があれば取れる。

  • 跳20
     いわゆる(2,0)リーパー。前後左右に1マス分飛び越して動く。
     例えば今回の出題図で、55跳は35,53,57,75の4地点に利きを持つ。
      

     

  • 【詰手順】

    45角 58玉 67角 同金 57跳 56玉 55跳 54角 57銀 同金 まで 10手

    動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)

     

    【解説】

     本作の狙いは一目瞭然。「1」から「1」への立体曲詰です。
     また、初形と最終形を比べると、ちょうど角が相手側に寝返った形になっています。これも本作の狙いのひとつ。攻方の駒が、そのまま攻方の駒として復活する場合は「フェニックステーマ」というチェスプロブレムから輸入されたネーミングがありますが、相手方の駒として復活した場合は何と呼べば良いのでしょう? 良いネーミングがあったら提案してください。
     さて、最終形では受方のグラスホッパーの利きにより、「跳20」がピンされているわけですが、ここに来る駒は、非限定を生じないように開閉の動きができれば良いので、他の駒でも構いません。例えば、横に1マスしか動けない駒(六郎氏が「蟹」と命名)を使えば、下のような図も可能です。こちらの方が解くのは易しいかもしれません。

    (参考図)解答は白字で図の下に記載しています

    45角 58玉 67角 同金 57飛 同金 45蟹 56玉 55蟹 54角 まで 10手

     

     

    【正解者及びコメント】 (正解者6名:解答到着順)

     

    川並洋太さん

    持ち駒制限を見逃してしまい、始めに 45角58G36角47飛35跳56G45角45飛55跳54合を見つけたのですが結局それがヒントになりました。
    最近卒業文集の自由作文にライフゲームコンピュータのことを書いたのですが、詰将棋コンピュータは並列処理が難しそうなので初期局面がどちらの必勝か調べる方が楽な気がします。
    ライフゲームのルールを組み込んで開き王手や発生王手が飛び交う詰将棋は面白いと思うので誰かが作ってくれるとうれしいです。

    ライフゲームコンピュータを作文に書く学生さんなんて、日本中探してもなかなか見つからないでしょうね。これは川並さんの「個性」になりうると思うので、これを足がかかりに識見を広めて、いろいろ研究してください。
    さて、ライフゲームに比べて詰将棋が「コンピュータ」の実現に向く世界かどうかは難しいところ。並列処理がない点では詰将棋は不利ですが、駒の種類が多い点では詰将棋が有利です。できるなら、あまり恣意的なルールを導入せず、なるべく我々に馴染みの深い道具だけで「コンピュータ」を構築できたら良いのですが、果たして可能か否か?

     

    荻江香木さん

    原型復帰は予想していましたが角一枚の向きが変わっただけとは!

    荻江さんは前回からの連続登場。この調子で今年もお願いします。
    さて、駒の向きが変わるというのは、実に詰将棋向きのテーマなんですが、何と呼べば良いのでしょう? 私もちょっと考えたのですが、「裏切りテーマ」では露骨ですし、「オセロテーマ」ではちょっと格好悪い気もします。
    なお、このテーマでの作例は
    第19回神無一族の氾濫の2番(神無太郎氏作)や、九州G作品展フェアリー別館の第3回の7番(北村太路氏作)などが思い浮かびます。いずれも、受方→攻方への寝返りですが、逆の作例は思いつきません。本作が初めてとは思えませんが…。
    ちなみに、駒が裏返るテーマは普通作で作ったことがあります。
    橋本孝治普通詰将棋作品集の第5番です。(注:かなりおバカな作品です。)

     

    いのてつさん

    リーパーを消そうとして苦労しましたが、詰上がりが見えれば後は一気。
    年賀詰にふさわしい好作です。

    リーパーを消すのではなく、ピンをして動けなくするのが、本作の狙いのひとつ。
    やはり最終形にヤマを張れるかどうかが、解図の決め手ですね。
    ところで、「ステイルメイト」もやはり「詰上り」と呼んで良いのでしょうか?
    厳密には「詰」と「ステイルメイト」は違いますが、面倒くさいので、私も「詰上り」と呼びたいのですが…。

     

    たくぼんさん

    あけましておめでとうございます。新年の挨拶と共に解答を送ろうと思って年明けから問題を考えたのですが、大苦戦して1週間も経ってしまいました。
    それというのも初めに銀を捨ててからの5四銀の筋が頭に浮かんだのが原因。どうやっても銀が捨てられない。
    あれこれしているうちに角捨てて54角の筋もあることに気が付き(遅い)やっと解決。
    なんと1→1の立体曲詰ではないですか。すばらしいの一言です。最近やっとグラスホッパーの動きにも慣れてきましたのでまた楽しい作品で楽しませて下さい。今年も宜しくお願いします。

    新年早々、てこずらせてしまったようですね。この作では詰上りにヤマを張らないと、なかなか「行って戻って」の「G」や「跳」の動きは見えにくいと思います。今年もグラスホッパーにはお世話になる予定ですが、別の駒にもなるべく焦点を当てたいと思います。

     

    もずさん

    超巨大盤で3手詰を解く話、私にはさっぱり想像できませんが感動的です。
    fmはロイヤル駒でないフェアリー駒を扱えるようになったのでしょうか(これまでは無理でしたよね?)
    そうなるとまた可能性が広がって面白そうですね。

    将棋盤上でコンピュータを作る話は、あれだけでは分かりにくかったと思います。これに関しては「ライフゲイムの宇宙」(ウィリアム・パウンドストーン (著)日本評論社 ; ISBN: 4535783837)などが参考になると思いますので、興味があれば読んでみてください。
    なお、fmはロイヤル駒以外に1種類だけならフェアリー駒を使えるよう機能拡張が行われています。リーパーやライダーはもちろん、その合成や限定走りが行えたり、前後横の利きを個別に指定できたりするので、中将棋を初めとする古将棋の駒も「居喰い」など特殊な動きを伴うものを除いて、多くが使用可能になります。まだ動作確認や機能拡張の予定があるので、いつ公開できるか決まっていませんが、楽しみにお待ちください。

     

    瘋癲老人さん

    こんばんは。
    今年もよろしくお願いします。

    瘋癲老人さんからは、締切日21時に解答を戴きました。
    もしかすると、いぬたさんのようにラストを狙っての解答でしょうか!?

     

    今回は年内解答が2通だけだったので、どうなることかと心配しましたが、年明けに4通の解答を戴き、ほっと胸をなでおろしました。次回は駒詰は一休み。また手数も一桁台となる予定です。

     

    (2005.1.9 七郎)


    第91回(2004.11.21)出題 の解答


    【出題時のコメント】

    それとハルマゲドンを信じているせいで別解が気にならない。余詰の指摘は同時代人の務めで、随聞記流にいえば、後世の明眼の士を愧じてのことだが、後世の人がいないのだからその必要がない。籠釣瓶ではないが十九年は夢の間だ。
    (詰将棋パラダイス臨時増刊「三百人一局集」(1981年)、西田尚史氏作「ゴールドベルク」の作者自身によるコメントより抜粋)

     私はfmを使って、1970年代のばか詰の超長編の検証作業をしています。そして現在は、1976年11月に発表された西田尚史氏作「ゴールドベルク」の検証作業中です。いまだ検証作業は継続中ですが、ちょっと驚く結果が出たので、異例ですが、中間報告をします。
     まず手数ですが、作意5119手に対し、すでに4901手の早詰が見つかっています。まだ手数は短縮可能ですので、これについては調査を継続します。
     もっと問題なのが、作意と同手数の駒余り順が存在することです。それも収束10手で!
     作意での収束10手はこうなっています。

    25玉 27香 26香 同香 14玉 15香 同玉 16歩 14玉 15香 まで

     ところがfmは作意の次に、駒余り順を検出しました。

    26玉 27歩 25玉 26歩 14玉 15香 24玉 25歩 23玉 24香 まで 駒余り 歩

     私も他人のことは言えないのですが、この簡単な余詰が28年間も見逃されていたとは、ちょっと信じ難いことです。私は「三百人一局集」の図と手順に基づいて検証作業を行っているのですが、この記述が誤っているのでしょうか? それとも、ハルマゲドンの夢が消え去り、浅ましくも人々が生き残ったように、明眼の士の代わりに盲目の機械が事実を暴き出したのでしょうか?

     さて、今回の出題は長編趣向作。受方の持駒を飛だけに制限してあります。ここで使用した「跳20」は、いわゆる(2,0)リーパーのこと。チェスプロブレムではDABBABAと呼ばれる駒です。長編ですので手順は適当に略記してください。ただし、途中の破調の部分を忘れないように!

     

    【ルール説明】

  • ばか自殺詰
     先後協力して最短手数で、攻方の玉を詰ます。

     
  • 異王(銀/跳20)
     攻方の王が銀の性能、受方の玉が跳20の性能になる。
     
  • 跳20
     いわゆる(2,0)リーパー。前後左右に1マス分飛び越して動く。
     例えば今回の出題図で、39跳は19,37,59の3地点に利きを持つ。

     

  • 【詰手順】

    48角 19跳
    「37角 39跳 28角 59跳 37角 48飛 同角 79跳 57角 99跳
    66角 97跳 77飛 99跳 97飛 79跳 88角 59跳 77角 79跳
    68角 99跳 77角 97跳 86角 99跳 77角 79跳 88角 59跳
    77角 39跳 66角 48飛 同角 19跳」(=A)
    12飛 同金 A
    13飛 同金 A
    14飛 同金 A
    15飛 同金 A
    16飛 同金 A
    17飛 同金 A
    18飛 同金
    37角 39跳 28角 59跳 37角 48飛 同角 79跳 57角 59跳
    68角 39跳 29飛 同金 57角 48飛 同角 19跳
    11飛 同馬 A
    12飛 同馬 A
    13飛 同馬 A
    14飛 同馬 A
    15飛 同馬 A
    16飛 同馬 37角 39跳 28角 同金 まで 482手

    動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)

     

    【解説】

     角追いにより入手した飛による、金と馬の呼出しがテーマ。
     手順のポイントは12手目。ここ79跳を59跳とすぐにターンしてしまっては以下 68角 39跳 57角 となった時点で受方に合駒がなく、角の行き先がなくなってしまいます。そこで、9筋に遠回りして、受方に合駒の飛を返すのですが、攻方が与えようとした飛を、受方はすぐに取ることができないので、一旦、角の位置変換を行ってから取ることになります。このちょっとした味のある手順が、本作のウリで、単調な持駒入手になることを避けることができたと思います。
     なお、金が18に来たとき、29飛 同金 と直接飛を渡す手順が成立するので、ここだけいきなり79跳から59跳にターンします。また。詰上り還元玉は作者の趣味です。

     

    【正解者及びコメント】 (正解者7名:解答到着順)

     

    いのてつさん

    フェアリーではよく見かける駒の呼び出しですが角の位置変換、手数短縮の破調、そしてフェアリー駒を生かした詰上がりと細かい所まで気配りがなされていて、楽しめました。
    今年はフェアリーやプロブレムで趣向作をたくさん作るのが目標でしたが、出来た!と思っても後から見るとルールを生かせてなかったり一本道過ぎたりで・・・

    今回、一番乗りの解答者はいのてつさんでした。毎回一番乗りが変わるのは良い傾向だと思います。
    創作の方も、難しいことは考えず、どんどんやってください。フェアリーは作品の質も量も貧弱な分野が多いので、どんな作品でも、どんな試みでも、全くムダになることはないと思います。

     

    瘋癲老人さん

    手数は長いが軽い頭の体操。

    フェアリー駒というだけで、敬遠された方も多かったと思いますが、実際は解いてみると、易しい問題だったと思います。事実、そういう短評が多かったです。
    今まで、フェアリー駒を使った“だけ”の趣向作なんて作っても意味がない、などと考えていたのですが、こうしてみると、フェアリー駒を使ったお気楽な趣向作も結構作る意味があるのかもしれません。

     

    川並洋太さん

    学生は期末考査の季節です。この問題が解けたので安心して勉強できそうです。間違いでも連絡はしないでください。
    名前忘れすみませんでした。

    実は、最初の解答のとき、川並さんは無記名でした。皆さんも名前の書き忘れには注意してください(特にメールアドレスに送信者名が付記されない場合)。
    ただ、試験で名前を書き忘れたら大変ですが、このページの解答では名前を忘れても、大して影響はないですね。

     

    たくぼんさん

    考え始めてすぐにある筋に思い当たって並べてみると、あっさり詰んでいる。
    意外と簡単だったな・・・と思い手数を数えてみると・・・538手・・・ありゃ。
    そういえば破調の部分があるとか・・・怪しいのは18金まで引っぱってきた場面。
    よく見ると29飛と打つ順の他に39飛と打つ順もあり同じ形に戻る。
    これは作意じゃないと判断して、逆から29飛と打つ順を発見してやっと解決しました。
    跳20は意外と考えやすい駒でかなり楽しめました。受け方持駒制限は解答者にとって煩雑な変化読みをしなくてよいので本当に楽しめる為の好条件だと思います。

    跳20に限らず、行動の不自由な駒は、趣向作のネタになりやすいです。受方の持駒制限も、気楽に趣向作を作るのに役立ちます。
    ちなみに「跳20」の表記は暫定的で、fmでも統一されていません。場合によって、「跳20」と「20跳」の両方の表記が出てきます。そのうち一本化したいと思っています。

     

    荻江香木さん

    お手数お掛けしてすみません。こんどはできてるかな・・・

    荻江さんは初解答。そのせいか、最初は送信ミスで本文が空白でした(危うく迷惑メールとして処理するところでした)。今後もご解答よろしくお願いします。

     

    安武翔太さん

    破調部に気づかなかったので、500手を超えてしまい、焦りました。
    易しい趣向作で、楽しめました。

    安武さんの解答は85回以来2回目ですね。楽しんでいただけたようで何よりです。今後も気が向いたら(できたら毎回が良いですが)解答を送ってください。

     

    もずさん

    (2,0)リーパーは行けるます目が限られているので将棋の駒とうまく組み合わるのが難しいのではないかと感じていましたが、なるほどこういう処理の仕方があるんですね。

    私もそんなに研究しているわけではないですが、不自由な駒は、案外趣向作のネタになりやすいです。ただ、動きが地味だとあまり面白くないので、見た目が派手で、実は不自由というリーパー系の駒は狙い目だと思います。

     

    次回は年賀詰。今年こだわったグラスホッパーでの出題を予定しています。

     

    (2004.12.12 七郎)


    第90回(2004.10.24)出題 の解答


    【出題時のコメント】

     

    キング・クリムゾンにしかプレイ出来ない音楽が生まれると、遅かれ早かれキング・クリムゾンは登場してその音楽をプレイする。(ロバート・フリップ)

     キング・クリムゾンは私の好きなロックバンドのひとつです。言わずと知れたプログレの雄ですが、今の若い人には案外馴染みがないかもしれません。
     このバンドの特徴のひとつは、メンバーの入れ替わりが非常に激しいことです。唯一の固定メンバーはギタリストのロバート・フリップだけで、それ以外のミュージシャンは次々と加入・脱退を繰り返し、同一メンバーで続けてアルバム発表をすることは滅多にありませんでした。「人が音楽を生む」のではなく「音楽が人を生む」という、上に引用したロバート・フリップの思想は、激しいメンバーチェンジの中から生まれたのか、それとも最初からこのバンドの構成原理だったのかは微妙なところですが、キング・クリムゾンというバンドの実態を良く表していると思います。
     詰将棋においても、詰将棋は作者の個性の発露であるという考え方と、作者は詰将棋が世に出るための媒体に過ぎないという考え方があります。多分、後者は少数派だと思いますが、私は後者の考え方に強い共感を覚えます。私は詰将棋の世界は作者の有無に関係なく存在しており、作者はその世界の探索者であると思っているのです。そして、自分にとって最高の褒め言葉は「この作者は凄い」ではなく「詰将棋は凄い」なのです。だから「ミクロコスモス」の看寿賞選評で、小泉潔氏が「詰将棋って凄いものだ」と、そのものズバリの言葉をくれたのは、とても嬉しいことでした。今後、同じような言葉を貰う可能性は非常に低いので、この言葉は私の一生の宝物になるでしょう。

     さて、今回の出題はグラスホッパー王の双裸玉ば自。受方の持駒を歩だけに制限してあるので、煩わしい合駒読みに悩まされることはないと思います。

     

    【ルール説明】

  • ばか自殺詰
     先後協力して最短手数で、攻方の玉を詰ます。
      
  • G(グラスホッパー)
     Qの線上で、ある駒(敵の駒でも味方の駒でも良い)を1つ飛び越したその直後の地点に着地する。そこに敵の駒があれば取れる。

     
  •  

    【詰手順】

    78香 77歩 64香 55G 46香 37歩 58香 88G 55香 38歩成 まで 10手

    動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)

     

    【解説】

     4香の限定打と、香の限定空き王手がテーマ。
     4香の限定打と言ってまず思い出されるのは、秋元龍司氏の9手詰(近代将棋 昭和51年9月)。わずか9手で4香すべてを遠く近くに打ち分ける名作です。
     本作の限定打はすべてGの射線上で行われるので、限定の意味は弱いのですが、その代わり打った香が限定移動するところがウリでしょうか。普通作の短編で、4香を打ち分け、そのうち1枚以上を空き王手で移動させるテーマで作ろうとすれば、結構な舞台装置が必要になりそうですが、たった2枚の盤上配置(双裸玉)でそれができてしまうのは、フェアリーならではだと思います。
     なお、4香のうち2枚は歩でも良く、受方の歩も2枚以上なら同じ手順が成立します。

     

    【正解者及びコメント】 (正解者6名:解答到着順)

     

    川並洋太さん

    ジャンプ台操作の勢いのある攻防(?)が見事です

    今回、一番乗りの解答者は川並さんでした。解答番付での順位も上がってきていますし、着実に力を付けている証拠だと思います。

     

    もずさん

    Gを78に飛ばす筋が作意だとばかり考えていたのですが、こちらの筋も面白そうなので完全作にならないかと見ていたら正解にたどりつきました。
    最後の4手がぴったり決まって爽快です。
    自分はこういう手順が好きなんだなと感じました。

    私もこういう手順は好きです。
    出題時のコメントでああいうことを書いておいて何なんですが、私は主義主張が先にあって、それに合わせて作品を創るということはしません。自分で作ったプラカードに自分が振り回されるのは、まっぴらです。
    ただ、自分の心の底に、自分の意志で素材を捻じ曲げるより、詰将棋が自然に持っている性質を具現化したいという考えがあるのは確かです。両者が一致すれば一番いいのでしょうが…。

     

    北村 太路さん

    中空に浮かぶ香の三ツ星が美しい。
    場所が限定されるのは、支点によってききが変わるGだからですが、
    その分見えにくく、解くのにいつも苦労します。

    支点を作る意味が強いのが初手と2手目ですが、これがこの作の一番の難関だと思います。打った時点では、どちらも意味が見えないですからね。ここを突破すれば、後は比較的易しいと思います。

     

    いのてつさん

    理詰めで解ける気軽な作品。持駒が限定されているので考えやすかったです。

    受方の持駒制限は、フェアリーではこれからもっと盛んに行われて良いと思います。
    余詰防ぎが楽で、余計な合駒に煩わされることなく、構想を表現できるからです。
    ただ、紛れが少なくなる分、味わいが淡白になり易いので、それを補うだけの「何か」が必要です。特に短編だと、そのバランスが難しいところです。
    また逆に長編だと持駒制限により、とんでもない「怪物」が現れることもあります。人間に解ける範囲を越えた作品に出くわすと、その扱いには頭を悩まされます。

     

    たくぼんさん

    攻め方の香の限定打や受け方の限定歩合の意味付けが普通詰で感じられる以上に納得させられますねえ。
    とくに5八香から5五香がお気に入り。グラスホッパーは面白いと感じました。

    本作最大のウリが、最終手の55香です。自分の逃げ道を塞ぐための限定移動というのは、それだけで一局を支えるテーマになるので、普通作でも面白い主題になると思います。

     

     

    瘋癲老人さん

    論理的な作品ですね。
    詰め上がり3香が並んでいい形です。

    瘋癲老人さんは本ページでは初登場。コメントによると、新人というわけでもないようですので、ここの常連になっていただけるかどうかは、今後の出題作の質次第と言ったところでしょうか。何とかレベルを落とさず、かといって理不尽に難し過ぎない選題を心掛けたいと思います。

     

    次回もフェアリー駒絡みですが、グラスホッパーばかり優遇するのもアレなので、別の駒を使った作品を出題する予定です。予定に変更がなければ長編です。

     

    (2004.11.14 七郎)


    第89回(2004.9.26)出題 の解答


    【出題時のコメント】

     

    演奏会では、20世紀中期以降の作品と古典を組み合わせるのがプログラムの定型になっているが(中略)このプログラムを見る限り、メシアンはスタンダード扱いになっている。
    (メシアン「彼方の閃光」-サイモン・ラトル/ベルリン・フィルのCDの解説より)

     オーケストラの演奏会でいわゆる“前衛的”な作品とか、馴染みの少ない作品を演奏するとき、よく取られる手法が「オーソドックスな曲目と組み合わせる」というやり方です。演奏会もタダではありませんから、海のものとも山のものともつかない曲をお金を払って聴きに行くのは、お客にとっては一種の賭けです。とはいっても、オーソドックスな曲目ばかり演奏していたのでは、新しく作られた良い作品が埋もれてしまいます。そこで、採られるのが上記の「カップリング方式」。オーソドックスな作品で一定の満足が保障されているので、聴きに行く方も冒険しやすいというわけです。特に20世紀中期以降の曲は、評価が定まっていないものが多いので、この手法がよく使われます。
     ところが、このメシアンの「彼方の閃光」は、1992年に初演されたばかりの新作。確かにメシアンは「トゥーランガリーラ交響曲」などで、確固とした地位を築いていますが、「彼方の閃光」のような出来立てホヤホヤの曲がスタンダード扱いになるとは、時代も変わったものです。演奏自体も新作の演奏にありがちな生硬さは全くなく、まるで手馴れた曲を使って名人芸を披露している感じでした。おそらく21世紀に入ってそれなりに時間が経ったので、20世紀(特にその後期)に行われた数々の音楽的実験を再評価し、取捨選択していく作業が本格的に始まったのでしょう。
     この「取捨選択」で何が生き残るか、私には全く予想できません。例えば、私が20世紀初頭に生きていたとしましょう。もし、私がマーラーやブルックナーの才能に注目していたとしても、20世紀末にこの人たちの曲のCDの売り場面積が、ベートーヴェンのそれを抜く、などという状況が予想できたでしょうか? それも一過性の流行などではなく…。

     さて、そんな観点から見ると、今のフェアリーは「取捨選択」どころか、まだまだこれから数々の実験を積み重ねる必要がある段階だと私は思っています。私は、70年代のばか詰のレビューなどもやっていますが、これはあくまでも個人的趣味に過ぎません。

     さて、今回の出題はグラスホッパー王とナイト王を使ったちょっとした構想的短編。作者の神無六郎氏はトップページ初登場。狙いが明確なので、解ければ気持ちよいでしょう。「取禁」の制約があるので、紛れは少なくなっていると思います。

     

    【ルール説明】

  • ばか詰
     先後協力して最短手数で、受方の玉を詰ます。
      
  • 異王(G/騎)
     攻方王の利きがG(グラスホッパー)の利き、
     受方王の利きが騎(ナイト)になる。
      
  • G(グラスホッパー)
     Qの線上で、ある駒(敵の駒でも味方の駒でも良い)を1つ飛び越したその直後の地点に着地する。そこに敵の駒があれば取れる。

     
  • 騎(ナイト)
     チェスのナイト。いわゆる八方桂。(○がナイトの利き)

     
  • 取禁
     攻方・受方とも駒を取れない。
     ただし、王手放置は禁手(「駒を取れないから王手ではない」とはしない)。
  •  

    【詰手順】

    53角 42桂 35角生 34桂 13角生 12騎 22角成 まで 7手

    動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)

     

    【解説】

     騎が一番詰みやすいところ、と言えば11の地点ですが、残念ながらそこは11香で埋まっています。さすがに、91地点まで騎を運ぶのはこの手数では難しいので、12騎の詰上りが最有力となります。
     ところが、初手から13角 12騎 22角成とすると、24地点に騎が跳ねられるので、詰みません。そこで、初手53角から4手掛けて、盤上に34桂を発生させるのが巧い構想。Gの利きが24に生じるため、12騎の詰上りが実現するのです。利きを発生させるため合駒を発生させ、更に動かすという構想も素晴らしいですが、角の限定開き王手・不成による移動が手順に花を添えています。
     ルールを見ただけで敬遠された方も、この手順を見ていただければ、納得のいく好短編だと思います。なお、攻方のGが王になっているのは余詰防ぎ。普通のGだと、金合の余詰が発生します。こちらの筋で作品を作るのも一興でしょう。

     

    【正解者及びコメント】 (正解者5名:解答到着順)

     

    北村 太路さん

    素晴らしい。
    グラスホッパーも斜め横2回使えてるし、不成も入るし、完璧すぎます。

    今回、最初の解答者は北村さん。出題翌日の昼の到着です。
    最近は、解答・創作共に充実した活動をされているようですね。例の日記の復活も嬉しい限りです。

     

    川並洋太さん

    合駒を動かすと仮定すると、騎が動くのは1回。
    23騎だと広いので12騎。
    24騎を防ぐために34に駒が必要、合駒は桂だと分かる

    川並さんも28日には解答を送ってくれました。出題した当初はルール説明を見ただけで解答者全員が逃げ出してしまうのでは、との危惧もあったので、すぐに解答が寄せられて胸をなでおろしました。
    皆さん、管理人の精神衛生のため、解けたら出来るだけ早く、解答を送ってくださいね。

     

    mirさん

    7手で限定合が動いて不成2回。
    普通作でやれない手順をやるのだからこれが当然なのか。
    あるいは「手筋もの」が作られる土壌が消滅し、マニアにしか理解されない世界になってしまうのか・・。

    普通作7手で限定合が動いて、不成2回…
    もしすっきりした形でそんな作が出来たら、賞が取れそうですね。
    どなたか、このテーマに挑む勇士はいませんか?

     

    たくぼんさん

    騎を1二に持っていくのは予想がついたが、なかなか思い通りに行かない。
    初手から1三角 1二騎 2二角成の盤面を見ていて・・・ふと詰方G王の意味を思いつく。
    そして桂合から角生の手順を発見。まさに脱帽です。解後感抜群の好作と思います

    フェアリー駒を使った問題はともすれば「フェアリー駒を使っただけ」というケースが少なくないのですが、本作はフェアリー駒を使う必然性が強く感じられる作品だと思います。特にGの特性が巧く活かされた良問だと思います。

     

    もずさん

    第86回もそうでしたが、
    この角とグラスホッパーのパターンは応用がききやすいようですね。
    フェアリー駒の特徴をつかむのはまだまだ研究が必要なんだろうなと思います。

    第86回の出題も確かにG線上の角の空き王手が主題でした。本作はこれを構想的に使い、興味深い成果を挙げています。
    なお、「G線上の角」があるなら「G線上の飛」も当然あるわけで、これもかなり応用分野が広そうです。

     

    次回もグラスホッパー絡みの作品を出題する予定です。苦手な人からは「一体いつまで続けるんじゃぁ」との声も聞こえてきそうですが、いろいろ面白い成果が出ている分野なので、その報告も兼ねて出題を続けています。多分、次回の「氾濫」でもグラスホッパーが出てくることになるでしょう。

     

    (2004.10.17 七郎)


    第88回(2004.8.29)出題 の解答


    【出題時のコメント】

     

    Abbado has created a marvellous new orchestra in Lucerne
    (フランクフルト・アルゲマイネ紙)

     こう書かれたシールが貼ってあるのは、クラウディオ・アバドが指揮をしたルツェルン音楽祭のライヴCDです。このCD(2枚組)に収められているのはマーラーの「復活」とドビュッシーの「海」の2曲。「復活」の方は以前にNHKで視聴したので、良い演奏だと知っていましたが、「海」の方には飛び上がるほど驚かされました。今まで聴いたことのない音が聴こえる「海」と言えば良いでしょうか。曲の微細なフレーズまで透視できるようなクリアな音の前に、今まで聴かされてきた「海」は「靄のかかった海」に過ぎなかったとさえ思えます。スタジオ録音と違い、パート毎の細かい音量調整のできないはずのライヴCDでこんな音が聴こえるということは、実演を前にした聴衆はもっと驚かされたことでしょう。上で引用したシールに書かれた言葉も単なる宣伝文句とは言えません。
     この演奏をしたルツェルン祝祭管弦楽団は一級のソリスト達を集めて創設されたとのことです。これが本当の「スーパー・オーケストラ」になるのか「単なる寄せ集め集団」に終わるのかは指揮者の力量次第ということになるのでしょうが、この演奏を聴く限りは心配無用でしょう。
     ところで(ここはCDレビューのページではなく、詰将棋のページです)詰パラの告知にあったように、現在「饗宴2」の企画が進行しています。これが「スーパー作品集」になるのか「単なる寄せ集め作品集」になるのかは、やはり編集担当S氏の力量次第でしょうか。

     さて、今回の出題はグラスホッパーを使った趣向作。おおげさな配置ですが、難しくはないと思います。受方の持駒制限に注意してください。

     

    【ルール説明】

     

    【詰手順】

    34歩 67G 33歩成 45G 34と 67G 43と 45G 44と 同香
    34歩 67G 33歩成 45G 34と 67G 43と 45G 44と 同香
    34香 67G 33香成 45G 34杏 67G 44杏 97G 42G 75G
    64香 97G 63香成 75G 64杏 97G 73杏 75G 74杏 同香
    64歩 97G 63歩成 75G 64と 97G 73と 75G 74と 同香
    64香 97G 61香成 99G 92G 97G 96桂 75G 72G 97G
    27G 37歩成 まで 62手

    動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)

     

    【解説】

     本作は簡単に言うと10手1サイクルのはがし趣向作です。
     Gの空き王手を利用して成金を作り、その成金で歩または香をはがしていきます。この趣向の難点は成金を作る関係上、はがす位置が限定されてしまい、結果としてサイクル数が増やせないことでした。
     そこで、本作では平行移動した趣向の舞台をもうひとつ用意し、2部構成とすることで、趣向作らしさを演出しようとしています。そのため、盤面全体に駒が置かれ、とっつきにくい印象を与えているかもしれません。
     収束は最短になるように心掛けたのですが、往々にしてGは勝手な所に跳ぼうとするので、おとなしく詰んで貰うまで結構苦労させられました。

     

    【正解者及びコメント】 (正解者3名:解答到着順)

     

    mirさん

    趣向は見えるが、その後Gを飛ばしまくる収束が見えず大苦戦。
    Gは王と利き数は同じだが、動き回るぶん解後感の爽快さがずいぶん違うような気がする。

    収束は皆さん苦労されたようですが、これでも短くまとめたつもりなんです(信じてください(T_T))。
    Gは作者の都合など無視して勝手に暴れ回り、下手すると趣向本体より収束が長いなどということもしばしば。作者がおとなしくして、Gを暴れるままにしておくことで、興味深い作品を得られることもありますが、本作では詰みやすい場所を意識的に用意して、Gに無理やり自殺して貰いました。61圭の苦肉の配置が作者の力量不足を露呈しているようで情けないです。

     

    若林さん

    こういう手なりで解ける長手数はありがたいです。
    楽しく盤に並べて解けました。
    収束もいかにもグラスホッパーらしい動きで良いですね。

    若林さんは作品感想以外に、解図過程や「氾濫」の感想なども送ってくれました。解図過程は私だけで楽しませて貰いましたが、「氾濫」の感想は各作者全員に送りました。
    作品の短評を媒介として、作者と解答者がコミニュケーションを行う…これは、チェスプロブレムなどにはあまり見られない、日本の詰将棋界が生み出した素晴らしいシステムで、今後も大事にして行きたいと思います。

     

    たくぼんさん

    序盤はすらすら行くが、29手目42王に気づくのに時間がかかり(Gの利きが今一頭に入っていないのか)
    しばらくすらすら行って収束でまた一苦労。詰んでいると確認するまでが遅いんですよね。
    作品としては紛れは少ないので楽しめる内容と思います。

    フェアリー駒の一番の問題点は、その駒の性能を把握している人が少ない点ですね。
    私自身もチェスプロブレムのフェアリーを解くときに“この駒の性能は何だっけ?”と毎回確認している始末なので、苦労するのは良く分かります。新しい駒に慣れるには、自分で例題を作るのが一番の近道なのですが、解答専門の人にはキツイでしょう。
    このページでフェアリー駒を使う問題を出題するときは、紛れが少ない問題か、手数の短い問題を出すようにした方が良さそうです。

     

    解答減となりましたが、次回もグラスホッパー絡みの作品の出題です。しかももう1種フェアリー駒が出てきます。その代わり手数は短いです。さて、この出題は吉と出るか凶と出るか…。
    そういえば、プロブレムパラダイス30号でも解答者減を嘆く担当者の声が目につきました。やっぱり、フェアリーは研究すべきフィールドが大きい割に、人材が不足しているのでしょうか? まあ、それでも私達は地道に活動を続けていくしかないのですが。

     

    (2004.9.19 七郎)


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