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解答

 

 


第61回(2002.7.1)出題 の解答

 

【出題時のコメント】

 いよいよ7月になりました。7月には何があるかといえば、もちろん分かってますね? 詰将棋の全国大会です。今年の全国大会は「詰将棋の歴史が始まってから400年」という区切りの年にあたるということで、異様に盛り上がっています。当日にいろいろなイベントが企画されているのはもちろん、詰将棋400年というホームページまで作られ、準備にぬかりはありません。かくいう私も、その日は「詰将棋シンポジウム」のパネラーや、オペレータの役で参加する事になっています。
 さて、その全国大会の企画のひとつに「握り詰」があります。もちろん、この握り詰の募集対象は「普通詰将棋」であって、フェアリー作品などはお呼びでないのですが、それなら自分達で勝手に作ってしまえということで、神無一族は全国大会と同じ使用駒指定でフェアリー作品を作って Online Fairy Mate に発表しています。
 フェアリーでの握り詰は普通詰将棋での握り詰より難しいのではないかと思うかもしれませんが、実際にやってみるとそれほどでもありません。むしろこれをきっかけとして、面白い素材を得たり、発想が膨らんで別の作品ができたりするので、良い刺激になっています。
 今回はその握り詰を2作展示します。解答募集期間も2作なので、やや長めに取りました。解答の方は解けた分だけでも結構ですので、いつもの通り管理人あてにE-mailでお寄せください。

 

ルール説明

1.

【詰手順】

29歩 同玉 28歩 同銀成 18歩 39玉 29歩 49玉 38歩 48玉
59銀 58飛 49歩 まで 13手

【解説】

 直角三角形に配置された斜対称の無仕掛け図。対面ばか詰のルールでこういう密室を崩すのは、そう難しいことではないのですが、本局の場合は持駒は歩が3枚だけなので、対面ばか詰のルールといえど、持駒を浪費してはいけません。
 初手29歩、同玉までは当然ですが、次に18歩ではなく、28歩とするのがポイント。これを同銀と取ることによって、密室からの脱出が可能になります。18歩から密室を追い出して、12手目58飛の対駒がポイント。38歩を49に引いて見事に詰め上がります。打歩詰は禁手ですが、歩が動いて詰むのは禁手ではありません。対面や安南などの変身物では時々突歩詰以外の歩の動きで詰め上がることがありますが、これの一般名称はありません。本作はさしずめ引歩詰でしょうか。

 

【正解者及びコメント】 (正解者5名:解答到着順)

 

泉真理さん

考える範囲が狭く、王手が限定されているので王手が続く手を考えるとよいと思います。
そのためには早く箱の中から追い出すことを考えました。
収束はルールが関係あると考えたら、偶然気がつきました。

☆泉さんは今回1、2共にトップ解答。
 並み居る(?)強豪解答者を押さえての一番乗りは見事です。

 

もずさん

密室の中でのやりくりをいろいろ考えていて、外に追い出す手順が見えませんでした。
こういう詰みは「引き歩詰め」とでも言うのでしょうか。

☆密室の中で詰まそうとすると手数オーバーですね。
 私の趣味で言うと、密室内で詰んだ方が高級感が出るように思いますが、たぶんそれでは
 うまくいかなかったのでしょう(憶測)。
 

 

北村 太路さん

中で詰むかと考えてすごく苦労しました。
2八銀「成」で外に出られる可能性にきづいた後も5八「飛」という手が全然思いつかず、長い間苦しめられました。
出題図がきれいで、とても握り詰という制約があったとは思えないです。

☆これも推測ですが、最初に形をある程度決めて、手順がきれいに決まるように駒を入れ替えて
 創ったのではないでしょうか。はずれてたらごめんなさい。

 

大阪市の住人さん

九段目だから突き歩詰?

☆これはさすがに「突き」というのは抵抗がありますね。
 こういう歩が動く詰上り。何か良い一般的用語ありませんかね?

いぬたさん

歩3枚しかないので簡単かと思ったら、なぜか58飛が見えず意外と手こずりました。

☆私も58飛は難しいと思います。(次の歩引きが見えないと指せないので)

 

2.

【詰手順】

47銀 29玉 38銀 同玉 58飛 49玉 59飛 38玉 58飛 48飛
同飛 29玉 59飛 49銀 同飛引 39銀 18銀 38玉 58飛 48歩
同飛上 同銀生 27銀 29玉 59飛 49銀生 18銀 38玉 39歩 まで 29手

【解説】

 無防備図式。駒の利きをよく見ると玉は密室に閉じ込められて、脱出できないことが分かります。この密室の中でなんとかするしかないわけです。
 まず最初の8手は邪魔駒消去。58銀と49歩は邪魔駒なのです。その後、合駒を発生させて、打歩詰の型を作るのですが、形から39歩の詰上りしかないことが分かります。途中、打歩詰以外で玉を詰めてしまわないよう慎重な操作が必要で、常に受けの余地を残した駒繰りを行います。具体的な手段は上記の手順を追ってください。打歩ばか詰は「生かさず殺さず」玉を追う手順が必要だという点で、ばか自殺詰に通じる所があります。

 

【正解者及びコメント】 (正解者5名:解答到着順)

 

泉真理さん

銀を2枚取ったので31手かかって悩みました。
(でも銀3連合の方がかっこいい?)

☆銀3連合だと非限定が避けられない(多分)ので採用はしないと思いますが、
 その方向で非限定なしにできたら確かに面白いですね。

 

もずさん

13手目にすぐ59飛と打つのか、49飛 38玉としてから58飛と打つのかを悩んだのですが、
よく考えてみると後者では12手目から29玉 59飛 49飛合としても同じなので、
前者しかないということがわかりました。
しかし、39に銀合をしてそれが二度も不成で動くとは全く予期しない展開でした。

☆本ページでは非限定がある作品を出題するときは(忘れてなければ)その旨を明示するので、
 手順に非限定が現れるような場合は、間違っていると思って間違いないです。
 ですから、それを利用して解くのも正当なテクニックです。
 

 

北村 太路さん

こちら側の問題がまた難しかったです。
最後は3九歩しか打歩詰にならなので2九と4九を塞がないといけないのですが
2九に効かせる銀は1八→2七→1八と動くし、4九を塞ぐ銀は3九に打ってから
4八→4九と動くし、複雑にからみあった手順にはただ驚くばかりです。

☆こういう合駒の複雑に絡み合った手順が出てくるのが打歩ばか詰の醍醐味の一つです。
 ばか自殺詰の密室物に通じる雰囲気があるでしょう?

 

大阪市の住人さん

九段目はやっぱり打歩詰。

☆偶然ながら、最終手は2局とも9段目の歩になりました。

いぬたさん

こちらは無防備ですか。
歩の入手場所と詰め上がりが見えているので考えやすかったです。

☆さすがに本ページの解答王いぬたさんです。
 論理的に進めていけば案外手は狭い作品だと思います。

 

【総評】

北村 太路さん

両問題とも握り詰という制限なのに単に駒をおいただけでない、というのが凄いと思います。
両問題の対称性はどのくらい意図して作られたのでしょうか?(無仕掛けー無防備玉、銀成ー銀不成、銀での王手に飛で合い(?)駒、飛での王手に銀で合い駒、他にもあるかも)

☆お褒めの言葉、ありがとうございます。
 両作の対称性はそれほど意識してはいませんでした。
 ただ太郎さんの作が先にできたので、同じタイプの作を創ってしまわないように、ルールや
 配置を設定したところはあります。
 後は使用駒の制約で自然に生じた対称性もあると思います。

☆全国大会は楽しいお祭りでした。これが盛会のうちに無事終わったことは、私もスタッフの
 一人としてとても嬉しく思っています。またこれが単なる一過性のお祭りではなく、今後の
 詰将棋界に良い影響を与えることを願っています。
 なお今回の出題、「片方の解答もOK」としましたが、片方だけの解答はありませんでした。
 やはり皆さん、全問解答でないと気が済まないようです。

 

(2002.8.5 七郎)


第60回(2002.6.3)出題 の解答

 


【出題時のコメント】

 掲示板でも報告しましたが、最近2週間ほど入院していました。原因は十二指腸潰瘍・消化管出血。特に不便だったのは最初の1週間。完全な禁食状態で、薬を飲みながら、24時間点滴という日々でした。
 入院で一番嫌なのが「検査」。特に今回は十二指腸以外にも出血箇所がないか確認するために「大腸ファイバー」というかなりきつい検査をやりました。これは胃カメラで使うのと同じようなファイバーを肛門から入れて大腸を覗くという検査です。ご存知のように大腸は腹部で何箇所か曲がり角があり(これを結腸という)、そこに無理やりファイバーを通すとき、かなり痛みを伴います。ですから、検査自体も胃カメラよりかなり辛いものです。更に検査の前に、大腸をきれいにするため、2リットルの下剤入りの水を飲まねばなりません。ミネラルウォーターのようなおいしい水でも2リットル飲むのは大変なのに、下剤入りのまずい水を飲むのはかなりの精神力が要求されます。これは「検査」というより新手の拷問か、妙な宗教の苦行みたいなものですね。間違っても2度とやりたいとは思いません。皆さんも健康管理をしくじって、入院したりする破目に陥らないよう充分注意してください。
 なお、入院していた2週間のあいだ、詰将棋には一切手をつけていません。病院には詰棋書を持ち込まず、将棋を知っていることさえ隠し通していました。我ながら大したものです(でも、入院期間が2週間でなく1ヶ月だったら、きっと禁断症状を起こしていたでしょうね)。
 というわけで、本ページで出題する作品もネタ不足気味なのですが、幸い加賀氏からの投稿作があるので、これを掲載します。駒数が少なく手数も一桁なので、手を付け易いと思います。

 

ルール説明

 

 

【詰手順】

88飛 18飛生 28銀 99玉 89飛 19飛生 同銀 98玉 99飛打 まで 9手

【解説】

 攻方の駒は飛と銀のみ。この2枚だけで9手以内に詰型を作るのはちょっと無理です。普通のばか詰ならばこういう場合、合駒の入手を考えるところですが、本局ではマドラシの特性を活かして、盤上に置かれている受方の飛を取ってしまいます。
 まず、初手の88飛に対し、受方は18飛生と同種の駒をぶつけて受けます。マドラシで互いの駒がぶつかった状態を「感電」状態と言ったりしますが、その感電状態を作る手です(マドラシでは成駒と生駒は区別しますので、成っては受けになりません)。ここで狙いの限定打28銀が飛び出します。感電状態を解除するために間に駒を挟むわけですが、打ち場所はどこでも良いわけではなく、後の展開で飛車を取れるように28でなくてはいけないのです。この理由は7手目に明らかになります。28銀と打った効果で、再度の感電状態を作る19飛生に対して、同銀と取れるのです。最後はこうして入手した飛を打っての詰上りとなります。簡潔な初形からマドラシらしい手順が展開される作品でした。

 

【正解者及びコメント】 (正解者3名:解答到着順)

 

もずさん

最初は、88飛 99玉 98飛 89玉 99飛 88玉 89銀 同飛成 同飛 98玉 99飛打
の11手詰が思い浮かびましたが、
玉から離れた場所でやりくりすることで2手短くなるんですね。

☆もずさんには今回の「神無一族の氾濫」にゲスト出演していただきました。
 良い作品なので、それが読者に伝わるように一生懸命解説したいと思います。

 

いぬたさん

飛と銀でどうやって詰ますのかと思ったら相手の飛をぱくるんですね。
オーロラをちょっと思い出しました。

☆例えば銀が4枚あって、28〜58に連続で打っていくような手順ができれば、
 まさに「オーロラ」になりますね。
 マドラシば自ならば歩7枚のオーロラなんて出来そうですが、誰か挑戦しませんか?

 
そういえば、第12回神無一族の氾濫の神無太郎作がこの構想でした。
 しかも7連打×2回という究極の構成。これを越える作はちょっと難しいかも。(2002.6.29 追記)

 

北村 太路さん

飛車1枚と銀1枚ではつまなそうなので何を取るのかな?と思っていたのですが、
最初から盤上に示されていることに気づきませんでした。

☆北村さんからは解答と一緒に投稿作品もいただきました。
 いずれ本ページで紹介したいと思います。 

☆7月には詰将棋の全国大会があります。本ページでもそれに協賛(便乗?)して、
 次回は握り詰を出題します。使用駒は全国大会と同じ飛角角銀銀歩歩歩。
 さて、どんな作品になりますやら…。

 

(2002.6.24 七郎)


第59回(2002.5.6)出題 の解答

 


【出題時のコメント】

 今回はホームページ作成の小ネタを取り上げます。
 ホームページ作成のとき、御法度とされるのがいわゆる「機種依存文字」の使用です。例えば、丸数字やギリシャ文字などは機種によって見え方が違うので、使ってはいけない文字とされています。そうは言っても、絵文字みたいものは、ページの表現を豊かにするために使いたくなることが多いのではないでしょうか? あるいはこの文字が使えたとしたら、使用頻度が高い文字というものがあるのではないでしょうか?
 例えば、ハートマーク。もしこれが「機種」とか「フォント」に依存していなければ、きっといろいろなホームページや電子メールにこの記号が氾濫しているのではないでしょうか。実はHTML文書の場合、機種依存文字に頼るという「反則」を使わずに、このハートマークを出す合法的な手段があるのです。
 それは、HTML文書のソースの中に ♥ という文字列を埋め込むことで実現できます。

 ほら→

 この「技」、案外と知らない人が多いらしいのですが、ちゃんとした「規格」に定められていることなので、まともなブラウザを使っている人はちゃんとハートマークが見えるのです。(逆に上のハートマーク表示されないブラウザを使っている人がいたら、ブラウザの乗り換えを考えた方が良いです)
 実は、他にも色々な記号がHTMLの規格として定められているので興味のある方は調べてみてください。本ページの下部にある著作権表示記号
©もその一種です。
 さて今回の出題です。記号ではありませんが、左右対称のきれいな象形です。手順もなかなか良いはずなので、皆さん解いてみてください。

 

ルール説明

 

 

【詰手順】

43桂 同飛 68王 52香 同飛生 61玉 69香 63香 まで 8手

【解説】

 初手の桂打はこれしかないので当然ですが、これに対して受方は飛の利きが玉になっているので、同飛と取ることができます。これに対して攻方も飛の利きを元に戻す王移動で、王手を継続します。この開始部分は安南らしさが良く出ていると思います。
 さて、問題はここからどうやって自殺するかです。玉と王が接近している形なら、歩や桂の合駒を稼いで攻方の王を歩や桂に変えて自殺するのが定跡的な手法ですが、このように玉と王が離れているとその手は使えません。
 正解は香合いを稼いで、王を香に変身させて王手をし、受方は香打でこれを仕留めるという手順です。合駒の香をする場所はただひとつ。香を取った飛が詰上りで邪魔にならないように、52地点に合駒する一手です。このため飛の不成という副産物が入ったのも本局の価値を高めています。
 飛躍した手はないものの、好形好作の見本のような作品でした。

 

【正解者及びコメント】 (正解者4名:解答到着順)

 

いぬたさん

これはお見事ですね。
飛を近付けて無力化するところが最高。

☆実は最初の投稿図では龍と玉2枚ずつの配置で、形も対称形ではありませんでした。
 ですから飛を近づけて無力化する代わりに、龍がそっぽに行って遠ざかる手順でした。
 推敲って大切ですね。

 

もずさん

安南なので王の動きを香にするのは予想できましたが、
初めは57香 同飛としてしまい、最終手でなるほどーとなりました。
改めて初形を見るとさすがと思わずにはいられません。

☆王の動きを香にするのをすぐに見抜けるのは流石です。
 初形についてですが、フェアリーではまだまだこのような好形で、手順も良い作が
 いっぱい眠っているんじゃないかと思います。今後の発掘に期待したいと思います。
 (自分も頑張らなきゃ!)

 

マプさん

この初形のシンプルさで限定されるとはすごいです。
持ち駒も桂馬でなければいけないはずだし、
あえて中合しないところもにくいです。
とにかく、シンプルで無駄がない!楽しめました。

☆楽しんで戴いて何よりです。
 52を角にすれば持駒は金にもできますが、合駒が飛香非限定になってしまいます。
 初形の飛2枚は合駒制限も兼ねているんですね。

 

スピカさん

フェアリー詰将棋に触れて約1年、
だんだんフェアリーの感覚に慣れてきたような気がします。
今回は左右どちらから入る人が多いのでしょうか?

よろしくおねがいします。

☆今回初解答はスピカさん。こちらこそよろしくお願いします。ぜひ常連になってください。
 さて、初手左右どちらが多かったかですが、63桂と43桂がちょうど半々でした。
 私は43桂から入る人が多いと予測していたのですが、ハズレでしたね。

☆今回の問題出題後、急に入院することになり、この結果稿が書けるかどうか心配したのですが、
 何とか退院が間に合いました。皆さんもお体には充分お気をつけ下さい。

 

(2002.5.27 七郎)


第58回(2002.4.8)出題 の解答

 


【出題時のコメント】

 「フェアリー詰将棋は何をやっても自由なのか?」

 これはフェアリーをやった者なら誰でもが一度は抱く素朴な疑問です。ところがこの設問、考え出したらきりがありません。
 一般的な理念としては答えはYes。つまり「何をやっても自由」なのですが、実際問題としてフェアリーとして出題される作品には、突飛なルール設定の物はあまりありません。
 これはフェアリー詰将棋が「詰将棋」として、出題=解答募集されることから生じる必然的な制約でしょう。あまりに突飛で普通詰将棋からかけ離れ過ぎたルールを持つ詰将棋は、作品の難易以前に、ルールに関する知識を解答者が頭に入れなければいけません。当然ながら解答者は付いていけず、解図に着手する前に脱落してしまうでしょう。逆に、普通詰将棋とルールの差分が少なければ少ないほど、解答者の作品への「食いつき」は良くなる、というわけです。また、作品に対する評価もルールに付いている条件が少ないほど良くなる傾向があります。
 よく作図をしていて、「ここで飛車が3枚使えたらなぁ」とか、「ここでこの手だけを禁止できたらなぁ」などと思うことがあります。そこで、本当に飛を3枚使ったり、特定の着手を禁止したりするのはフェアリー的な発想として決して異端ではないのですが、実際にそういう作品を出題すると、解答者が減ったり評判が悪かったりします。ルールが多様化した今のフェアリー界でも、やはり一番人気のルールは純粋な「ばか詰」だというのは動かし難い事実なのです。
 今回出題の作品も、「成りを禁止する」というルールの下で作れば、もう少し繰返し回数が増やせるのですが、そんなことをしたら解答者の皆さんはそっぽを向いてしまうでしょう(それにfmでも検討できなくなりますしね)。というわけで今回の出題は、ちょっと手順は短めの、対面ではよくある感じの軽趣向作になりました。収束だけはちょっと考えさせられるかもしれませんが、易しい作品だと思います。

 

ルール説明

 

 

【詰手順】

15歩 同玉 24歩 同角 16歩 同玉 25歩 同角 17歩 同玉
26歩 同角 18歩 同玉 27歩 同角成 28歩 同馬 29歩 27玉
28歩 同玉 29角 17玉 18角 35玉 36歩 まで 27手

【解説】

 この作品、王手が非常に限られています。初手は玉頭に歩を打つしかなく、対する応手も同玉しかありません。以下同様に歩を連打しても玉が19まで来て手が途切れるので、今度は角頭に歩を打って角を吊り上げます。角頭に歩を打ったとき、これを同角と取る以外の手は成功しません。例えば14玉としても、次の15歩は打歩詰。13歩成もと金が歩になるため王手になりません(このための12歩配置)。つまりこの作は4手サイクルで、玉と角とが一歩ずつ前進する趣向作になっていることがわかります。この趣向サイクルが繰り返されるのは4回。角が27に来たときは、角が成って馬になるので、ここから手を変えて収束に入ります。
 収束は馬を奪って角を玉頭に打ち、玉を角に変えて35に飛ばします。そして最後は突歩詰まで。37歩はこの突歩詰の収束を実現すると同時に、23手目46角以下の余詰を防ぐ一石二鳥の配置なのです。
 また、最初は玉方の駒を2枚増やして、29手にする版も考えたのですが、配置駒が増える割に手順が良くならないので、2手短い本図に落ち着きました。

 

【正解者及びコメント】 (正解者4名:解答到着順)

 

マプさん

確かにこういう自然に解けて楽しい問題だと手を出しやすいです。
ルールを複雑にすると確かに気が萎えますが、「成り禁止」手を伸ばすタイプも
解答時に教えて頂けると嬉しいです。

☆「成り禁止」で手を伸ばすタイプは次のような図を考えていました(未検討)。

  攻方 持駒歩14 受方 11玉19金21角
  手順:22歩 同角 12歩 同玉 …… 28歩 18玉 19歩 同玉 28歩 18玉 19金まで31手詰

 やっぱり「成禁」の条件を付けてまで出題する図じゃないですね(^^ゞ 

 

神無六郎さん

楽しい。収束も簡潔で、好みです。
13玉・22角配置にすると、攻方の歩が反乱を起こすんですね。
「成禁」にしたい気持ちがわかります。

駒詰めだったら「ENK」で検討出来るんだけど。
なんで、他のルールで使わせてくれないんだろう?(笑)

ついでに「攻方取禁」や「キルケ」も
Eフラグで一般化してくれないでしょうか>次郎さん

巻頭の言葉、全く同感です。
ルールがとっぴだと、本当に解くのがつらいですね。
私なんか、ば自系統はみんな駄目。(単に解答力がないだけだよ 笑)

突飛なルールが発展しないのには
他にも理由があると思います。

その1 ルール自体が「ヘン」だと、「ヘン」な手順が出てきても、ちっとも驚かない。

その2 ルールの特異な点を利用した手順ばかりが作られて、
     本当に独創的な作品が出来なくなる。

その3 作品数が少ないので、過去の作品と比べる楽しみが無い。

3番目が一番重要な点であるかも知れません。
加藤さん、森さん、飯田さんの70年代ばか詰の凄さは、発表当時よりも、作品数が増えた今のほうが、よりいっそう際立っています。

「チェス中立駒」は、60年代後半に作られたものだと思っていましたが、実は、T・R・ドーソンが1912年頃に発明していたのです。

私は、このルールが苦手で、ほとんど作品を鑑賞してません。
恐らく、当時の人にとっても、そうで、1・2・3が全て当てはまって、いったん廃れたのでしょう。

ところが現在では盛んに作られています。花形ルールの一つです。

怪物Petkow氏の出現によって、作品の数と質が飛躍的に増加して、その2とその3が解消したことが、華麗なる復活の原因になったのではないでしょうか。
あくまでも、これは推測に過ぎませんが。

☆六郎さんの感想は長文ですが面白いので、全文掲載させていただきました。
 なお文中に出てくる「ENK」とはfmで指定可能な「/ENK」オプションのことです。
 駒詰ではこれを指定することにより「成禁」のルールが解析可能なのですが、他の変身ルールなど
 にはまだ実装されていません。これは将来のfmの機能拡張に期待したいと思います。

いぬたさん

歩しかないので楽々でした。
収束がちょっと長いですが、余計な駒を置いてないのでOK。

☆余詰消しの37歩が収束に働いているが、ちょっとした自慢です。
 この歩は46に置いてもいいのですが、それだとちょっとワザとらしいかな…と思って37にしました。

もずさん

解けてみるとどうしてだったのかと思ってしまうのですが、非常に苦労しました。
角を馬にすれば28歩が王手になるわけですね。

☆易しい収束だと思ったのですが、もずさんをも悩ましたとは意外でした。
 最後に馬ができて、玉を追い越すところは破調で面白いかもしれません。命名「アキレスと亀」!?

☆今回は解答が増えるかと思ったのですが、ちょっと少な目ですね。(それでも前回の倍!)
 これにめげず、出題は続けていきますので、皆さん解答を宜しくお願いします。

 

(2002.4.29 七郎)


第57回(2002.3.11)出題 の解答

 


【出題時のコメント】

 詰パラ3月号でフェアリーランドの担当者が「目新しい人からの投稿がないのが悩み」と発言していました。確かに、フェアリーは人材不足が悩みの種で、特定の作者だけがいっぱい作って、なかなか新人が参入してこないという「作者数不足」が慢性化しているのが現状です。原因はいろいろあるのでしょうが、現在のフェアリーが普通詰将棋に比べて魅力不足になっていることが、その一因であることは否定できないでしょう。私がフェアリーを始めた頃は左真樹氏、飯田岳一氏、花沢正純氏といった面々が力作・佳作を連発していて、非常に面白かった印象があります。あの頃と比べると、現在のフェアリー界は、粒の小さい作品ばかりになっていて、かなり寂しい状態です。そういう状態の打破のために「神無一族の氾濫」があるとも言えるのですが、それが実を結ぶためにはまだまだ努力が必要でしょう。
 さて、今回はその人材不足のフェアリー界をなんとか支えている作家の一人である加賀孝志氏の登場です。このページの出題作が公募制になったにも関わらず、今まで氏からの投稿がなかったのは、単に氏がパソコンの操作に慣れていなかったためなので、これからは氏の作品を掲載する機会が増えてくると思います。
 今回の作品のルールは天竺ばか自殺詰。天竺ルールは「玉(王)の利きが、王手をした駒の利きになる」というルールで、このページの出題では初めてです。例えばこの図で、初手29飛などとすると、19玉が飛の性能になり、17王に逆王手が掛かってしまうのでダメ、という具合です。手数が10手あるので難しそうですが、
資料集のページにある天竺ばか自殺詰双裸玉4手詰集の中のひとつの詰上りパターンに持ちこめばいいので、方針を間違えなければ解くことができるでしょう。多数の解答をお待ちしています。

 

ルール説明

 

 

【詰手順】

64角 同玉 65飛 24玉 64飛 54香 同飛 44角 26香 25桂 まで 10手

【解説】

 ばか自殺詰の高級手筋に「銀杏返し」というパターンがあります。通常、ばか自殺詰は合駒や受方の置き駒を“動かして”詰むのが普通なのですが、次のようなパターンで合駒を発生させると、合駒を“打って”自王を詰ませることができます。

  1. 王手を掛ける
  2. 合駒で逆王手
  3. 逆王手の線上に駒を打って更に逆王手
  4. 合駒で更に逆王手

 ポイントは3で、王手を掛けている駒がピンされていること。このために4で発生した合駒を取ることができません。このアクロバティックなパターンを案出し、ばか自殺詰に関するそれまでの常識を覆したのは、あの左真樹氏でした。そして、いつからか「銀杏返し」と呼ばれるようになったこのパターンは、ばか自殺詰の高級手筋として、珍重されるようになりました。
 ところがこの高級手筋、ルールが天竺となると、意外に普通の手筋としてポンポンと飛び出してきます。実際、
天竺ばか自殺詰双裸玉4手詰集をご覧になれば分かる通り、4手で詰むパターンは天竺ではこの「銀杏返し」しかないのです。
 本作はその手筋の応用編。この4手の収束に向かって舞台を整える序奏では、玉が飛角に変身して飛び回り、最後は桂吊るしでの「銀杏返し」が飛び出します。変身物ということで難しく考えられた(あるいは最初から諦めた)方も多かったと思いますが、基本手筋を押さえておけば決して難しい問題ではなかったと思います。

 

【正解者及びコメント】 (正解者2名:解答到着順)

 

もずさん

初めは73の飛車が13に動いて詰むのかと思ったのですが、
ヒントのおかげで詰み形が見えました。
玉が大きく動いてダイナミックですね。

☆73飛は初手の限定と合駒香の限定のための配置。これに惑わされなかったのはさすがです。
 なお、もずさんは即日解答。いつもながら感心します。

 

いぬたさん

10手の天竺ばか自殺詰がこんなに簡単に解けるとは!
ヒントのおかげです。
天竺は詰め上がりがイメージできなくて苦手なんですが、慣れればそうでもない?

☆もずさんの解答以降、誰からも解答が無かったので心配していたのですが、
 最終日にいぬたさんが解答してくれて、ほっとしました。
 これでいぬたさんは休眠中(?)のたくぼんさんを抜いて、解答番付のトップに踊り出ました。

☆今回は「ばか自殺詰」「変身物」「手数2桁」の三重苦が響いたのか、解答者は僅かに2名。
 次回も「変身物」ですが、「ばか詰」なので少しは解答が増えるかな?

 

(2002.4.1 七郎)

 


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