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☆「史上最大の氾濫」の今回。3番は満点評価。5番は残念ながら早詰でした。
◇解答者11名 全題正解3名
誤 | 無 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 平均 | ||
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@ | 1 | 2 | 2 | 4 | 0 | 2 | 0 | 0 | 4.75 | |
A | 0 | 2 | 5 | 2 | 0 | 2 | 0 | 0 | 5.11 | |
B | 1 | 6 | 4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6.00 | |
C | 0 | 4 | 5 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 5.57 | |
D | 0 | 8 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5.67 | 早 |
1.神無大九郎 『なりなり12』 | ||
「17角、 (「」内をあと3回繰返す) 19角、 |
☆極めて明快な構成の作品。トップバッターとしては最適だったと思います。
☆詰上り38龍の形が見えていますが、26地点に脱出口が空いています。ここを塞ぐ方法を見つけるのがこのパズルを解く鍵です。
須川卓二 ― 詰めあがりが見えるので、26の地点をどう埋めるかを考えると自然と答えが出てくる。しかし狭いところでの応酬は見事。解後感も最高。
池田俊哉 ― 四枚銀を取る趣向からその銀をすべて使う収束までパズルとしても趣向としても絶品。
☆数手の序奏を経て、16手ひと組で銀を入手する手順が現れます。これを4回繰返して必要な数の銀を確保してから、収束に入ります。収束ではそれまで稼いだ銀と角を活用して詰上げます。
☆収束の19角のために16手目の合駒が角に限定されることや、合駒の銀が逆王手になっているため、趣向手順が1サイクル12手でなく16手になっている所など、実にうまくできています。
☆これは大九郎氏が入籍した日にできた作品だとか。
神無大九郎 ― 妻曰く「入籍したのと作品ができたのどちらがうれしいの?」それはもちろん・・・
☆もちろんなぁに?
2.神無大九郎 『なりなり10』 | ||
☆『なりなり12』が繰返し趣向作的な作品だったのに対し、こちらはパズル色の強い作品です。ただ、飛飛角と歩以外は品切れなので手は意外と限られています。
☆まず最初の8手が序奏。この後、34手をかけて1歩を稼ぐことができます。
☆さて、これを繰返して好きなだけ歩を稼ぐこともできますが、本局ではこれ以上歩を稼いでももう何も起こりません。すぐに収束形に向かって局面を展開させて行きます。
☆最終的な目的はと金を発生させて59に利かせること。最初に稼いだ1歩は78手目に使い、これで飛を温存したまま玉を69に誘うことができ、千日手を打開します。ここの手順をもう少し詳細に眺めると以下の通り。
43手→60手 玉方に77歩追加
61手→80手 77歩を77とに
81手→88手 77とを78に誘導
89手→92手 78とを79に誘導
92手以降 78龍を作り収束
☆本作、多くの方が手数短縮に苦労されたようです。
花田勉 ― 112手から縮めるのに苦労した。29手目69角から歩2枚を手にする順を見つけて解決。
☆他にも112手解で苦労した解答者多数。出題者の予想を上回る難問となってしまいました。
3.神無小五郎 | ||
大和敏雄 ― これは素晴らしい。優れたパズルは芸術に近い。
駒井信久 ― 手数短縮に苦労したが、最短手数で完全限定の手順が得られるのは奇跡的とさえ思える。
☆一言で言えば「傑作」。皆さんぜひ盤に並べて鑑賞して下さい。
☆この密室は1番を90度回転させた構造です。従って、18地点を埋める必要があるのですが、残り駒や配置等から、47角・38飛の形で29に玉を追込み37飛、38成銀、18銀、39玉..と手を続ける以外に手段がないことがわかります。
☆そこで手順は以下のようになります。
初手〜20手:序奏。合駒を稼ぐための飛の入手。
21手〜70手:合駒稼ぎ。角を捨てて手駒にする前に銀2枚を入手して手数を稼ぐ。
71手〜136手:成銀の作成及び48地点への誘導。
137手〜144手:これで18地点を埋めるのに成功。
145手〜170手:収束。
中村剣(抜粋)― どうやら73手目の49銀打がすごい手で、銀を1枚多めに取っておいて、歩と交換した方が、手数が短くて済むという凄まじい理屈のせいで、一切の手順前後やキズなどが消えているようだ。まるで天使の悪戯のような、信じがたい理屈だ。この面白さが作者と解いた者にしか解らないのが無念でならない。
☆中村氏は本作を解いた熱い感動を長文で語ってくれましたが、スペースの関係で一部のみ引用しました。
☆作者の「小五郎」は実は太郎氏のこと。大九郎氏の作品に触発されたものなので「太郎+大九郎」÷2の意味でのペンネームです。
作者 ― 本作、ある条件を満たす図面すべてについて、唯一解を持つものかどうかをコンピュータ使って一気に検証する、いわゆる「絨毯爆撃」の手法を駆使して得たものである。本作に至るまでには出発点での試行錯誤を始め随所に人間の創意があり、従来の「絨毯爆撃」にはなかった人間と機械の協調の方法を示せたと思う。創意を語るのに十分な紙幅がないのが残念である。
☆本作品の推敲が「作者の経験と勘」と「絨毯爆撃」の併用で行われたのは非常にユニーク。本作の初形は約3千通りもの組合わせから選ばれたものなのです!
4.神無三郎 『輪姫』 | ||
「56飛、 (「」内と同様の手順をあと2回繰返す) 56飛、 (「」内と同様な手順を1回行う) 56飛、 |
花田勉 ― 手強い形の割に解き易く、また面白い。130手目より、成桂とと金を入れ替えるのがうまい。
久保貴史 ― 130手目の同成桂!ロジカルな構成の中に謎解きの醍醐味を味わいました。
☆1番から3番まで典型的な密室型作品を見てきましたが、これは特殊例。玉は全く動けないが、玉以外の駒は玉の周りに入って来れる半開放系の密室です。
☆手順は気の利いた序奏から始まります。成香をむやみにはがすのではなく、56成香を37まで運んで角を優先して入手します。34手で準備を完了してから本局の主題の駒の回転が始まります。
☆回転方向を決定しているのが27地点に置かれた歩です。この存在ため反時計回りの回転はすぐにストップし、手順にも香合が挟まれるという作図のテクニックを感じさせる配置です。
☆輪は好きなだけ回すことができますが、目標は45成香の誘導です。また130手目37同成桂の破調も良い味です。
神無三郎 ― 発想の原型は'72年4月の加藤徹さんの作品です。当初客寄せのつもりが、成桂とと金の入替えが入ったうえ、思いがけず手数が伸びたのは僥倖です。
☆四半世紀の時とルールの壁を越えて生まれた好作と言えるでしょう。
5.神無十郎 | ||
作者 ― 歩稼ぎはS59.8の9029手詰のバリエーション、趣向部では寿限無の歩下げを歩消去まで発展させてみました。純粋に謎解きを楽しんでいただくため、できるだけシンプルにしましたので、少しでも多くの方に解いていただければ幸いです。
☆トリを飾るは十郎氏の大作。まずは歩稼ぎの機構から。
「96飛、 95飛、 B、 95飛、 |
☆わずか1歩を稼ぐのに104手もかける巧妙な機構です。これを基に右辺の歩を操作して金を手に入れるのが、この作品の概要です。
☆では実際にその手順を見て頂きましょう。
[作意手順]
(1) 25歩→26歩
(2) 26歩→27歩
(3) 14歩→15歩、27歩→25歩
(4) 25歩→26歩
(5) 26歩→27歩
(6) 15歩→16歩、27歩→25歩
(7) 25歩→26歩
(8) 26歩→27歩
(9) 27歩消去
(10) 16歩→17歩、27歩発生
(11) 27歩消去
(12) 17歩消去、27歩発生
(13) 27歩消去
(14) 19金→18金、27歩発生
(15) 18金→28金、27歩消去
(16) 28金→27金、25歩・16歩発生
(17) 27金→26金→消去、収束
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☆本作、残念ながら早詰がありました。早詰解は駒井氏の4421手と中村氏の4143手の2つです。
☆駒井氏の解はステップ(16)から直接収束に向かう手順を解答しています。中村氏の解はそれに加えて
という2つの工夫をしている素晴らしい解でした。
☆これらの早詰解の詳細や、略記なしの全作意手順を Onsite Fairy Mate のHP(http://www.netlaputa.ne.jp/~k_7ro/)に掲載します。インターネットを使える方はご参照下さい。
【全題正解者】池田俊哉 駒井信久 中村 剣
【4題】大和敏雄
【3題】花田 勉
【2題】はやし 半裸一族 弘光 弘
【1題】須川卓二 久保貴史 佐藤宣多
(太字当選)
☆なお、コメントだけの解答が数通あり、計数から除外しています。ご了承下さい。
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