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解答


第126回(2007.8.12)出題の解答

a)「小峰耕希 氏作」 ナイトライダー王ばか詰 55夜64馬 +歩, 46夜 @+#11b)「小峰耕希 氏作」 ナイトライダー王ばか詰 35夜44馬 +歩, 26夜 @+#11c)「小峰耕希 氏作」 ナイトライダー王ばか詰 45夜54馬 +歩, 36夜 @+#11

 

【出題時のコメント】

 fmの2.65o版で、受先形式のばか詰、ばか自殺詰の検討ができるようになりました。以前も偶数手のばか詰や、奇数手のばか自殺詰を扱うことはできたのですが、それはあくまで「途中図」の扱いで、初形で王手が掛かっている必要がありました。今度の機能追加では初形で王手が掛かっている必要がないので、真の意味で受先形式の検討ができます。安南やキルケ等との複合ルールではまだ受先形式は扱えないのですが、fmhv.exe の中で扱える条件ならば検討が可能です。具体的には「打歩ばか詰」とか「ばか自殺ステイルメイト」などが該当します。他にもマニュアルを見ながらどんなルールが可能か、皆さん確かめてみてください。
 こうしてfmで検討が可能になるとやってみたくなるのが「絨毯爆撃」です。さっそく、「受先&ばか詰&裸玉&持駒1枚」の条件で絨毯爆撃をやってみたところ、完全作はたった9作という結果が出ました。
 こういった絨毯爆撃の成果は、以前なら資料集のページに掲載していたのですが、最近はあまりこのページを更新していません。最近はパソコンの性能が向上し、私のマシンで容易にできるような絨毯爆撃なら、ほとんどの人のパソコンで同じことができてしまうため、必要性が少なくなったからです。(単にサボっているのも要因のひとつですが…)
そのうちfm虎の穴 に絨毯爆撃のコツみたいな記事を書くつもりなのですが、これも都合で延び延びになっています。できれば皆さんも自力で、絨毯爆撃のやり方をマスターしてください。

 ところで、絨毯爆撃と似て非なる行為に「fmに適当な図を次々と入力して解かせる」という方法があります。一見、とても機械的で「創作」とは無縁の活動に見えますが、もし実行する人間の感覚が充分に優れていれば、結構面白い成果を挙げることができます。なぜなら、機械的な絨毯爆撃と違い、人間はfmの出力結果を見て、次に調べる場所や条件を柔軟に変更できるからです。もちろん、何の成果も挙がらず徒労に終わることも多いのですが、それでも「どこに鉱脈があるか」「何をすると余詰むのか」といったことを感覚的に把握する、一種の「嗅覚」とでも言うべきものが身につきます。散策を繰り返すことで、頭の中に大まかな地図ができるのと似ていますね。これは構想や手筋を元に作品を練り上げる、通常の意味での「創作」においても役立つものなのです。

 さて今回はそんな気ままな盤上の逍遥から生まれた作品で、作者は小峰耕希氏です。3局セットですので、解答募集期間を通常より1週間延ばして4週間とします。3題すべて解けるのが望ましいですが、解けた分だけの解答もOKです。また、ナイトライダーというあまり馴染みのない駒を使用しているので、作者からのヒントも添えておきましょう。以下に白字で書いておきますので、ヒントをご覧になりたい場合はマウスで選択して反転させてください。

a) 46夜が最後81で詰上る
b) 26夜が22で詰みます
c) 詰上りがb)のそれの左右反転形になる

 なお、ナイトライダーについては第8回神無一族の氾濫に作例がありますので、参考にしてください。


 

【ルール説明】

【作者のコメント及び手順】

a) 何気なくこの図をfmに掛けてたら、幸運にもナイトライダーの四段跳び
  スイッチバックが入っていたので、嬉しくなって投稿。46夜が最後81で詰上る。

36夜 62夜 63歩 43夜 54馬 81夜 62歩成 49夜 76馬 81夜
72と まで 11手

動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)

b) a)を2筋右に移動してみたら、何故か詰上りも斜め一線に駒が並んで
  しまいました。26夜が22で詰みます。

77夜 64夜 55馬 43夜 44歩 22夜 43歩成 34夜 44と 22夜
33と まで 11手

動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)

c) a)とb)の中間に配置すると、詰上りがb)のそれの左右反転形になる。
  ナイトライダーの3段跳びが現れるのは本局だけ。

37夜 99夜 55馬 63夜 64歩 82夜 63歩成 74夜 64と 82夜
73と まで 11手

動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)

  

【解説】

 本作を解説するにあたってフェアリーデータベースで、ナイトライダーを使った作品のリストアップをしてみたのですが、全部で12作(13局がヒットしますが、1局は発表誌が違うだけで中味は同じ)しかありませんでした。後は本サイトの資料集のページにxyライダー+持駒歩の調査結果があるので、その中にナイトライダー王を詰ませる問題が含まれているだけです。しかも今回の出題まで、ナイトライダーを使った詰将棋として正式発表された作品は、たった1作しかありません(ナイトライダー王ばか詰7手 神無右京 詰将棋パラダイス 1997年12月 第8回神無一族の氾濫 )。チェスプロブレムの世界ではナイトライダーはグラスホッパーと並んで人気のあるフェアリー駒だそうですが、なかなか日本には浸透していないのが現状のようです。

 さて、そんな駒を敢えて使った今回の3作。実を言うと、作者から最初投稿されてきたのはa)の一作のみでした。内容的にも最も出来が良いので当然なのですが、これだけだと3段分のジャンプが出てこない(1段・2段・4段分のジャンプはa)に出てくる)のでc)を足して貰い、ついでに一筋ずらすだけで詰上りが反転するb)も足して貰うことにしました。こうやって3つ並べると、ナイトライダーのいろいろな活躍が見ることができて、面白いと思います。

 ところで、この3つの図の詰上りをよく見てください。何か共通性が浮かびませんか? 二つのナイトライダー王の位置に注目してください。全部、斜めに4筋分の空間を挟んで対峙していますね。
 簡素形で駒数が少ない場合、ナイトライダー王の遠くの方の利きを抑えるのはとても大変なことです。従ってナイトライダー王の利きをナイトライダー王で抑えるために、両者が自然にこのような位置関係になるのです。これを作者は「斜め四間の法則」と呼んでいます。もし、解答者がこの「斜め四間の法則」を知っていたら、出題時のヒントと組み合わせて初手が分かってしまったでしょう。もの凄く強力な法則ですね。

 なお、この作品の投稿後(前ではない)、作者はこのセッティングで全体を平行移動、上下反転した形の全検を行っています。この結果は「斜め四間の法則」の強力性を証明するものでした。資料集のページに置いておきますので、参考にしてください。


 

【正解者及びコメント】 (正解4名:解答到着順、全員3局共正解)

 

もずさん

b) のみヒントを見ました。
ナイトライダーは不慣れでしたが、よく考えてみると詰め上がり形は非常に限られているので、方針は立てやすい作品でした。
そのようなうまい組み合わせを見つけたのが勝因ですね。
手順としては、歩の空き王手が3つとも登場したのが意外でした。
個人的には、例えばですが下の2つのような図もあったら手順のバリエーションが増えたと思います。
(きちんと探索していないので、他に良い図があるかもしれません。)

今回の解答一番乗りはもずさん。とはいえ解答到着が23日ですから、やはり皆さん不慣れな駒に戸惑われたようです。逆に、解答を下さった方は全員3局共正解されているので、慣れてしまえば怖くない駒だとも言えそうです。進む方向が違うだけで、飛や角と性質は同じわけですから。
なお、もずさんの提示された図は小峰さんの全検結果に含まれていますので、ここでは割愛させていただきます。(どの図をチョイスしたか気になる人もいるでしょうが…)

 

瘋癲老人さん

bとcはすぐに分かりましたがaには苦しみました。
81〜49の往復が見えにくいです。
bcは詰め上がりがきれいですが、苦しんだ分
aの評価を高くしておきます。
ヒントは最初に見てしまいました。

a)は手順的には一番面白いと思います 。4手のスイッチバックは詰将棋では(当たり前すぎて)普通は大した価値の増加にはならないのですが、本作では動きが大きく、盤の端から端まで跳ぶので、インパクトが大きいと思います。

 

たくぼんさん

a)
ヒントから詰上図を想定し、ラスト3手を確定。
しかしと金で直接王手をかける手ばかり読んでなかなか正解にたどり着けませんでした。
開き王手がポイントですね。

b)
これも同様に詰上図を想定しましたが、こちらはラスト3手もちょっと意表を突かれるし、2手目もaの後だと4二に行きたくなる。心理的にやり難かった。
詰上りも美しいし好作

c)
こちらは2手目だけを考えれば解けました。
夜位置から言えばこれがbのはずだけど、bの2手目の紛れのために順番を入れ替えたのでしょうか?小癪な策略(笑)ですね。

総評:
ヒント無しでは絶対解けないかったと思います。
余りにも夜のラインが見え難いし詰上りが想定し難い。
ヒントつきで大正解です。
単なる詰む順探しになっておらず初形・手順・詰上りにも作者の主張が感じられます。

さてさて、作者の言葉ではb)とc)の並びの理由については語られていないわけですが、真相はどうでしょう? (敢えて謎のままに残しておくのも一興かも>小峰さん)

 

真Tさん

a)
これが1番難解でした。ヒントを見ても詰上がりが全く見えず、表を書いてやっとこさ見えました。
開き王手ぐらい入ってるのでは、という勘が働いたため手順も何とか構築できましたが、81〜49〜81夜の動きには驚きました。

b)
a)で鍛えられたのか、筋はすぐ見え、また開き王手はあるに違いないということで、割と楽に解けました。
歩(と)の動きが遠回りする感じで面白いですね。

c)
ヒントが強力なので、さすがに瞬殺。
それでも99夜と遠くに飛ぶのは嬉しいです。

b)とc)で後半一緒というのは残念ですが、それでも一路ずらしただけでそれぞれ唯一解になるとは驚きです。
これを発見した作者の感覚の鋭さは素晴らしいですね。
それにしてもナイトライダーの動きはわけが分かりません。いや、それが面白いんですけれど…。
というわけで、これを機に今まで敬遠していたフェアリー駒にちょっと手を出してみようかなと思ったりしました。

フェアリー駒は詰将棋の世界では、ほとんど手付かずですから、研究してみるといろいろな発見があると思います。問題は、今回の出題でもそうですが、解答者が少ないことに尽きます。作家にとっても慣れてない駒を使うため、難しい分野ではあるのですが…。

 

「解けた分だけの解答もOK」として出題したのですが、解答された方は全員3題とも解かれています。セット出題としてはこれは正しいことなのですが、やはりフェアリー駒だと「解く気になるかどうか」だけで全解・無解が分かれてしまうようです。
さて次回も投稿作品の出題です。最近ろくに創作の時間が取れないので、投稿があるととても助かります。ついでに「氾濫27」向けの作品投稿も宜しくお願いします。募集要項は妖精都市 にありますので読んでくださいね。

 

(2007.9.9 七郎)

 


第125回(2007.7.12)出題の解答

「神無七郎 作」 PWCばか詰 26香27歩 +香, 13歩14玉 #21

 

【出題時のコメント】

 今月の15日は全国大会のある日です。
 台風が近付いてきたりして雲行きは(文字通りの意味で)怪しいですが、交通機関が止まったりさえしなければ、私も参加する予定です。何時までいるかは分からないのですが、もし「一人一言」の時間までいたら、言うことは決まっています。

「森茂遺作展の解答をよろしくお願いします」

 先月の出題なのでもしかしたら勘違いしている人がいるかもしれませんが、パラ6月号出題の「森茂遺作展」の解答締切は今月末です。長編が多いので解答期間を通常の一ヶ月ではなく、二ヶ月としたからです。また、もう一つ念を押しておくと、これはフェアリーだけの作品展ではありません。最初の問題は普通の詰将棋です。ですから、フェアリーをやらない方もこれ1題の解答をお寄せください。故人を偲ぶ意味でも、できるだけ多くの方からの解答をお待ちしています。

 さて今回の出題は、「森茂遺作展」の解答作業の邪魔にならないよう(?)割と易しめの問題です。先行作として第7回PWCばか詰作品展の第1番(北村太路氏作)があるので新味はないですが、基本手筋のおさらいのつもりで解いてください。


 

【ルール説明】


【手順】

19香 18香 同香 15桂 同香 同玉/14香 19香 18香 同香 16桂
同香 同玉/15香 19香 18角 同香/19角 17飛 28桂 同角生/19桂 17香/18飛
同玉/16香 29桂 まで 21手

動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)

  

【解説】

 故・山本昭一氏はA型作品、B型作品という用語を使っていました。簡単に言えば、新機軸を世に問うのがA型作品で、アレンジの巧さと完成度で勝負するのがB型作品という分類です。どちらが優れているとかそういう話ではなく、作品のスタンスがどこにあるかを理解することで、どちらもそれにふさわしい評価や楽しみ方ができる、そういう指針の一種だと思えば良いでしょう。
 その分類で行くと、本局は典型的なB型作品です。香桂の連続合によって2枚ずつ稼ぐのはPWCの基本手筋なので、それを趣向風にアレンジした作を目指しました。本来なら趣向は3回繰り返したいところですが、余詰頻発で泥沼に陥ったため、結局は2回で終わり。その代わり、配置が盤面4枚で済んでくれたので、まあまあ納得できる作品になりました。手順は並べていただければ分かるので、説明は省略したいと思います。

 

【正解者及びコメント】 (正解9名、感想1名:到着順)

 

北村太路さん

初形も、駒種が多いところも、定番の不成が出るところも。
自作より数段いいなぁ。
自分の作図の力量のなさが改めて示されているようで、自分にがっかりです。

北村さんの作品はかなりパズル的な色彩が強く、あれはあの表現で正解だと思います。
創作の方針が違えば、まとめ方も違ってきますしね。

 

真Tさん

PWCらしさ満載で、楽しめました。
香がさりげなく品切れになり、飛合に限定されるのがいいですね。

森茂遺作展はフェアリーは全て解けたのですが、まだかしこの方が解けていません。
まだ、半月あるので解こうとは思いますが…。

全国大会には私も参加します。お会いできるのを楽しみにしています。

全国大会は本大会だけの参加だったので、残念ながらお話する時間がほとんどないまま終わってしまいました。
森茂遺作展へのメール解答は、最終的に5通戴きました。もちろん真Tさんからも戴いています。そのうちパラから解答が送られてくると思いますが、全部で何人の方から解答を戴けるか楽しみです。

 

たくぼんさん

とにかく玉の上方に駒が残らないようにするには1七で合駒(桂)するとダメなんですね。
どんどん現れる駒(大駒含め4種ですね)に思わず笑っちゃいます。
詰上りと初形の対比が面白いです。
久しぶりに気軽に解くことが出来ました。

この箱入り型の詰上りは私自身も気に入っています。これが目立つようにするには、初形は可能な限り簡素でないといけないのですが、盤面4枚で済んだので、ほぼ希望通りになりました。

 

川並洋太さん

おひさしぶりです。
この手順では香が足りなくなりそうに思ったのですが、足りてしまい不思議な気がしました。

川並さんは第108回以来の解答ですね。
香がぎりぎりの数のおかげで、最後の合駒が飛に限定されるのが本作のミソ。
PWCでは桂や香は貴重な駒なので、逆にこれらを品切れにするネタで、いろいろな作品が作れると思います。

 

もずさん

最小限の構図から飛角の限定合と完璧な内容ですね。
飛合が限定になる理由が北村氏の元の図と似ているあたりで価値が下がるのはやむを得ないとしても、角合を動かす手順が入ったこと、香打から香桂合を繰り返せたことなどとても楽しめた作品でした。

自分で言うのも何ですが、香合・桂合が主の手順から、飛角の合駒になる収束はやや意外性があると思います。B型作品はオリジナリティが低い分、ちょっとしたヒネリとか、 完成度の高さが求められます。

 

瘋癲老人さん

PWCの合駒はやはり見えにくい。
詰め上がりも想定して18角合に到達。

PWCでは合駒、特に合駒を途中で動かす筋は難解になりやすいと思います。特に18角合は2回動くので、収束まで考えないと指せない手です。
「PWCで難解作を目指すなら、合駒を何度も移動させろ」かな?

 

泉真理さん

PWCは桂香以外は持ち駒になりにくいので、結構難しいですね。
今回の問題では27歩を取られないようにするですが、桂香だけでそれを実現するのは難しいですね。

27地点は本作成立のポイントです。
ここから抜けられる形というのは、余詰が出そうで怖いのですが、fmのおかげでこういった大胆な構図も取りやすくなりました。
神無次郎さん、これからもいろいろ新ルールが出てくると思いますが、宜しくお願いします。

 

小峰耕希さん(感想)

13手目から28桂、27玉、19桂、37玉、39香、38歩以下23まで追って
詰まそうとしたりでさっぱり筋に入らないので、思い切って(仕方なく)
fmで12手目まで合ってる事を確認した上で解図を再開したら一瞬でした。

小峰さんは27から抜ける紛れ筋に嵌ってしまったのですね。
解答番付には加算されませんが、解けなかった感想でも送って戴けるのはありがたいです。
そうそう、JIGSAW BOX #02 の方は一応全部解けたと思うので、後日解答を送ります。

 

隅の老人Bさん

香合、桂合は何となく気が付いたが、角合、飛合で暑い暑い。
猛暑で眠れず、これで解けた?のかも。
お陰で、翌朝は連ドラを見損なう、これは残念。

連ドラは続きが気になるところで見逃したら痛そうですね。
私はドラマとかは全然見ないのですが、最近「例外」がありました。
フジテレビでやっていた「のだめカンタービレ」です。
月9ドラマを最初から最後まで見たなんて、生まれて初めての経験かもしれません。

 

伊達悠さん

この手順は・・・・・・後半に何が起こったのでしょう。
大駒の合駒が出てくるのはともかく、その大駒が生で動き、それが限定できてしまう。まさに奇跡のような手順ではありませんか!
今回のフェアリートピックスには入らないようですが、次回はまずこれが第一候補ですね。

そういえば、今月は Fairy TopIX もあったんですね。
実は九州G別館への解答も忘れてしまいました。最近ちょっとさぼり気味だったのですが、フェアリー関係の作業はやはりタスクリスト化して忘れないようにしないと…。

 

 

今回は収束が少し難しいですが、筋には入りやすかったと思います。このページで出題する作の難度は、これくらいがちょうど良いのかもしれません。
次回は久々に投稿作品の出題です。組局形式の出題なので、一挙に解答番付の点数を稼ぐチャンス(解答番付は難易に拘らず1図1点)だと思います。

 

(2007.8.5 七郎)

 


第124回(2007.6.17)出題の解答

「神無七郎 作」 PWCばか千日手 12歩22歩31飛, 11金13歩23玉33桂 #80

 

【出題時のコメント】

 唐突な質問ですが、皆さんは偶数と奇数のどちらが好きでしょうか?

 私は奇数が好きです。特に理由があるわけではなく、感覚的に。
 神無一族の中で私が「七郎」を選んだのも、おそらく奇数を好む自分の性質が反映されたためだと思います。考えてみれば、詰将棋もやたら奇数に縁があります。将棋盤は9×9ですし、駒の形は五角形ですし、普通の詰将棋の手数は奇数手です。 
 この「奇数を好む傾向」はどうやら自分だけの話ではなく、日本人は偶数より奇数を好む人が多いらしいです。ソースはここ↓

ほぼ日刊イトイ新聞 - 日本人の思い

 この調査の統計的信頼性はさておいて、人々が「偶数」や「奇数」に抱くイメージに一定の傾向があるというのは興味深い話でした。大まかに言えば、「偶数」は安定して柔らかいイメージを、「奇数」は個性的で尖っているイメージを多くの人が抱いているようです。自分の持っている「偶数」や「奇数」に対する感覚も、この調査結果と大体一致するものなので、これはすんなり納得できました。もし数に対する好みで性格判断をやれば、「血液型占い」などよりもよほど信憑性の高い結果が得られると思います。

 さて、今回の出題するのは3×3のミニ盤を使った作品です。これは通常の盤の右隅に着手が制限されたものだと思ってください。「行き所のない駒」の設定も通常通りです(でないと、いきなり13歩と33桂が「行き所のない駒」になってしまう)。上に紹介したページによると、日本人が最も好きな数は「3」だそうですので、きっとこの作品にも多くの解答が寄せられるのではないかと期待しています。80手の長丁場ですが、頑張ってください。


 

【ルール説明】


【手順】

33飛生/31桂 12玉 13飛生/33歩 22玉/12歩 23飛生 同桂/31飛 32飛生 21玉 31飛生
12玉 11飛生/31金 22玉 21飛生 13玉 23飛生/21桂 12玉 13飛生 同桂/21飛
11飛生 23玉 21飛生 同金/31飛 33飛生/31歩 22玉 32飛生 同歩/31飛
21飛生/31金 12玉 11飛生 23玉 21飛生 22歩 同飛生/21歩 33玉 32飛生 23玉
33飛生 12玉 32飛生 22歩 同飛生/32歩 11玉 21飛生 12玉 11飛生 23玉
21飛生 22歩 同飛生/21歩 33玉 32飛生 23玉 33飛生 12玉 13飛生/33桂 22玉
23飛生 12玉 22飛生 同歩/21飛 13歩 21玉/12飛 22飛生/12歩 11玉 12歩生/13歩
22玉/11飛 23歩 32玉 31飛生/11金 23玉/32歩 21飛生 32玉/23歩 22飛生 31玉
32飛生 21玉 22歩生 32玉/21飛 31飛生 23玉 まで 80手

動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)

  

【解説】

 ばか千日手では単に駒を入替えるより、一旦盤上から消えた駒を合駒などで再生させた方が面白いパズルになる場合があります。更にキルケのように駒の再生が難しい条件を加えると、簡単な仕掛けで手の込んだパズルを作ることができます。それが本作―PWCで駒が一旦消えるばか千日手―を作ろうとした動機です。やってみると3×3のミニ盤でも結構長編が作れます。これで80手に届くのなら、もっと盤を大きくするとどうなるんでしょう? 自由度がありすぎると手数は短くなりますが、仕掛けはいろいろ配置できそうですし…。
 そんな考察はさておいて、本作の手順を追っていきましょう。まずは、序の2手で二歩禁により早々に12歩が消えてしまいます。すぐ消えた歩を入手しようとしても場所が狭くて無理なので、もう一枚の歩も盤上から消します。ここでは行き所の無い駒の禁手を利用します。ところが、ここで大きな罠が待ち構えています。6手目から、歩を消すために考えられる普通の手順はこうです。

 32玉 33飛生/23歩 21玉 23飛生/33歩 12玉 ……

 真っ当な解答者は必ずこっちから読むだろうと思われる自然な手順ですが、これだと2手余分に手数が掛かるのです(しかも非限定付き)。正解は6手目23桂/31飛とする手順。歩稼ぎは後回しにして、3段目に桂・1段目に金の形を作ることを優先するのです。後から考えてみれば、金と桂の入替えはいつかはやらないといけない手順なので、先に入替えるか後で入替えるかの違いだけなのですが、すぐに歩稼ぎの手順に入りたい心理の逆を行くので、相当やりにくい手順だと思います。作者は試行錯誤で3つの隅の駒種を入替えて唯一解かつ最長の図を採っただけなのですが、思わぬ掘り出し物を見つけた感じです。
 後は歩稼ぎと、原形への復帰手順ですが、ここは余分な手間を掛けないことだけ注意していれば、正答に辿り着けると思います。歩稼ぎ手順は、この狭いスペースではほとんどこのパターンしかないような手順ですが、ミニ趣向になっているので、ここだけを抽出して別の演出を施すこともできたかもしれません。

 

【正解者及びコメント】 (正解1名! 感想2名:到着順)

 

たくぼんさん

簡単かと思ったらさにあらず。
EXCELを使い全ての変化をチェックして1つずつ確認していきました。
手順はというと、早々と攻方の歩を消されるので、早めに合駒で出そうとすると失敗。
桂を13に持ってきておくのがポイントでした。
歩の入手方法も実に巧みで、合駒で出た方の歩は取らないんですね。
2回繰り返してその後1つずつ駒を直していく様が実に上手い。
褒め言葉ばっかりですが・・文句ありません!
ちなみに私の好きな数字は名前から2です。


今回唯一の正解者はたくぼんさん。
本サイトの解答番付 をご覧下さい。不動の首位と思われたもずさんに、いつの間にか後1差に迫ってきました。
Excelで表を作って解答したというのも凄い話で、相馬康幸氏の「迷路」に対して、10ページに亘るグラフを作成して解答したという池田俊哉氏や、同じく表とグラフと計算で解いたという真鍋浩氏のエピソードを思い出しました。
この根性は正に解答者の鑑です。

 

神無太郎さん(感想)

とりあえず石で3×3の盤を作るのは基本として、
ただ、これだけでは簡単に解けそうにありません。

@まず試したのは、後手持駒制限。
 PWCだと駒を減らすのは大変なので、駒は増えないという前提。
 結構効果がありました。

Aさらに成禁を追加してさらに時間短縮。
 これはばか千日手解図の王道でしょうか。
 さらに効果がでました。

B一応成禁のみの効果も測定。
 後手持駒制限より効果大のようです。

神無太郎さんからは感想というか研究結果を戴きました。
「後手持駒制限」「成禁」の条件付加が「ばか千日手」の検討に有効であることの報告です。筆者も創作中は「成禁」の条件を付けて簡易検討をしていました。
ただし、最終的には無条件での検討をしています。
(「石」は問題設定の一部なので使いました。)
以下が各条件での検討結果です。(図面等省略)

@:後手の持駒をなしにする

解析時間:19秒 解析局面数:7620935 検出解数:1  全検完了

A:@に加えて成禁にする

解析時間:2秒 解析局面数:978252 検出解数:1  全検完了

B:成禁のみにする(後手の持駒は制限せず)

解析時間:8秒 解析局面数:3444802 検出解数:1  全検完了

ところで、これを単なる検討テクニックと切り捨ててはいけません。
こういうテクニックがあるということは、そのテクニックが有効な作品が多いということ。
ならば、そのテクニックが通用しない作品を創れば、珍しい作品となる可能性が大きいはずです。
例えば、「PWCばか千日手で持駒を一旦過剰に稼がなくてはいけない作品」「キルケばか千日手で駒を成らねばいけない作品」等々。
検討テクニックは作家にとってはネタの宝庫なのです。

 

小峰耕希さん(感想)

歩を稼ぐ展開になるんだろうなとは思いましたが、40手付近で持歩の枚数だけが違う局面を繰り返す辺り、予想以上に綺麗に仕上がっていると感じました。

小峰さんは解答期限を一週間間違えてしまったそうです。
このサイトでの出題は4週単位で解答募集期間が3週間という、少し変則的なスタイルを採っているので、解答する方にとっても間違え易い所です。
ちなみに次回はさらに変則的な出題になります。

 

 

今回は少し難し過ぎたのか、正解者は1名だけでした。次回の出題は今回より易しい作なので、解答数の回復を期待したいと思います。
ちなみに、来週は全国大会があります。ですから、日程の重複を避けるため、次の出題は12日(木)の夜にしようと思っています。少し変則的ですので、解答される方はお気をつけ下さい。

 

(2007.7.8 七郎)

 


第123回(2007.5.20)出題の解答

「神無七郎 作」 最悪詰 28角78歩89歩 +歩, 36玉68歩88歩 #37

 

【出題時のコメント】

 昔「必至」で千日手禁を利用して超長手数作品を作ろうと思ったことがあります。普通の必至は、詰めろ受け詰めろ受け→…と続いて最後「受けなし」になるのですが、双玉にすれば詰めろ連続王手で手数延ばし受け詰めろ連続王手で手数延ばし受け→…とすることができます。連続王手の千日手を同一局面4回とすれば、手数延ばしの部分は普通詰将棋で達成できる手数の3倍の手数という見積もりができます。必至では手数延ばしだけの手順は省くという考え方もありますが、必至もフェアリーの一部と見れば、単なる手数延ばしも有効とするルール設定の方が自然でしょう。
 しかし、ここからが問題でした。局面間の関係が単純ならば手順も単純な繰り返しになるのですが、局面の遷移に制約条件があると特定の局面の出現頻度が高くなり、最長の手数延ばし手順を求めるのが難しくなるのです。もちろん難しいこと自体は悪いことではなく、むしろ詰将棋的には作品価値を高める要素となるのですが、作者自身が解けないのでは話になりません。逆に作者自身が解けるよう問題を単純化すると、とてもつまらない作品になってしまいます。ということで、結局このアイデアはお蔵入りしたままでした。

 ところが最近、思わぬ所でこのアイデアが実現されているのを見つけました。ここです↓

最長片道きっぷの経路を求める

 必至どころか詰将棋でさえありませんが、根幹部分は正にこれ。JRの切符は、基本的に同じ駅を2度通らなければ片道切符とみなされるので、最長片道切符の経路を求める問題は、同一局面2回で千日手成立としたときの最長手順を求める問題と構造的に同じになるのです。
 上のページでは最長片道切符の経路を「整数計画法」と「全幅探索」の2つで解いているのですが、分かり易い表現で書かれているので、数学的な専門知識があまりなくても、論理の筋はちゃんと追えるようになっています。また、詰将棋創作との類似点が感じられる記述がここかしこにあり、何だか妙な共感を覚えてしまいました。

 今までの千日手利用作品は、普通の詰将棋の延長線上でちょっと目先を変えただけというのが多く、最長経路を求めるのにオペレーションズリサーチ的な解析を要求されるような本格的な難問はありませんでした。多分、そんな難問を出題されても解く方は困りますが、私はそういう作品も一度くらいは見てみたいと思っています。もちろん、作者本人がちゃんと正解を提示できるというのが前提ですが。
 

 さて、前回に引続き今回も最悪詰の出題です。言うまでもありませんが、本作には千日手を禁止するような条件は付いていません。


 

【ルール説明】


【詰手順】

37歩 46玉 36歩 37歩 同角 45玉 46歩 55玉 45歩 46歩
同角 54玉 55歩 64玉 54歩 55歩 同角 65玉 66歩 76玉
77歩 同玉 65歩 66香 同角 78玉 79香 87玉 88歩 98玉
99歩 同玉 87歩 88金 同角 89玉 99金 まで 37手

動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)

  

【主な変化・紛れ】

4手目:37香は 同角 45玉 49香 46歩 同香 55玉 43香成 54玉 53杏 以下不詰

【解説】

 本作は角筋を利用して「歩打ち→開き王手→歩合い」を繰り返す趣向作です。この筋は最初や途中で合駒が変わって別筋に入り込んでしまうことが多いのですが、なるべく余詰防止の駒を置かないで、趣向化できないかというのが創作時に心掛けたことでした。実を言うと最初は19角・27玉の形で作っており、4サイクルの趣向が成立したつもりで喜んでいたのですが、余詰のせいで1サイクル減ってしまいました。解答者の方々からも「なぜ19角の形から始めなかったのか?」という質問が寄せられたので、詳しく説明しましょう。
 19角・27玉の形から始めたときの作意は 28歩 37玉 27歩 28歩 同角 36玉 の6手が入る手順でした。4手目の28歩を28香とすれば、37歩の代わりに39香として手数が余分に掛かる…というのが当初の読みだったのです。ところが、部分図などを作って Worst1.exe で検討させると、39香には 37歩 同香 46玉 47歩 55玉 33香成 46歩 同角 54玉 と進み、作意と同手数で詰んでしまうのです。つまり合駒の非限定です。筆者はこの手順の47歩を見落としていたのですが、それでは最初のサイクルだけ合駒が非限定となる理由になりません。なぜ1段上がると、非限定が生じないのでしょう?
 これは【主な変化・紛れ】に書いた4手目37香の紛れと比較すれば分かります。成香のできる位置が43か33かという違いがありますね。成香が33だと王手を掛けられないので余詰は成立しませんが、43の位置ならば王手を掛けることができるので詰まなくなるというわけです。
 非限定の発生原因は分かったのですが、これを防ぐために上段に駒を置くのは何とも癪な話です。結局は1サイクル削ることにしたのですが、やはり4サイクルにできなかったのは残念でした。何か良いアイデアがあったら教えてください。

 また、収束も本来なら66香合の代わりに66歩合にして、全体の統一感を出したかったのですが、これもうまく行きませんでした。この配置を下手にいじると、今度は4手目37銀という意外な手で余詰が出たりします。もう少し最悪詰の勉強をしないと、思った通りの手順を思った通りに実現するというのは難しいようです。

 

【正解者及びコメント】 (正解6名、感想1名:到着順)

 

小林看空さん

長い割に素直な手順。
68歩の配置が大ヒント(香合限定)
43手詰にしなかったのは?詰め上がり角の対象位置を意識?


43手詰にしなかったのは、上記の解説の通り、非限定が生じたための苦肉の策でした。
今回の解答一番乗りは、最悪詰の元祖の貫禄でしょうか。

 

真Tさん

この趣向は考えたことがありました。折り返すのがいいですね。
19角で28歩からではないのは何か不都合があるのでしょうか?
千日手禁の問題は頭が全くついていきません。
面白そうとは思うのですが…。
 

千日手関連でコメントを戴いたのは、真Tさんだけでした。
引用した論文は面白いと思うのですが、やっぱり数学が絡むと多くの方は敬遠されるのでしょうか? フェアリー詰将棋でも千日手を本格的に利用しようとすれば、この辺の難しい話も避けて通れないと私は思います。
また、真Tさんからは Worst1.exe のバグの指摘も戴きました。近いうちに修正版を公開したいと思います。

 

小峰耕希さん

角のV字軌道が狙いでしょうか? でも77が抜けているから多分違いますね。
最悪詰は派手な演出や難解性で勝負するのは難しいので、明快な構想がないといけないと思うのですが、本局は主眼が不鮮明(鈍感なだけかも)なので、個人的には低評価。
あとこの収束は強力な余詰筋として頻出するのですが、いざ作意に使おうとするとつまらないという側面があって、なかなか厄介な手筋という気がします。

元は角に歩合いのパターンを趣向化したかったのが創作動機です。駒をベタベタ置けば比較的楽に実現できるのですが、斜移動の経路上には1枚も駒を置きたくないという意図もあったので、こういう形になりました。でも、結果的に中途半端な作品になっている感は否めません。

 

たくぼんさん

前半の趣向と後半の趣向2種類がうまくかみ合ってよい作品になっています。
収束形は数少ないので似たような感じになるのは仕方ないでしょうね。 
最悪詰作品展の8番と10番を思い出しました。

最悪詰作品展の第10番を見たときは、一瞬ネタが被ったかと思ったのですが、手数を見てそれはなさそうだと分かりました。
最悪詰作品展は思ったよりもバラエティに富んだ作が出ていたので、結果稿も楽しみです。

  

瘋癲老人さん

やっぱり最悪詰はそう面白くないなというのが正直な感想です。
収束が定型的なものにならざるをえないのも一因か・・・

最悪詰の収束は簡素形にしようとすると難しいですよね。この作を作っているときに予想外の余詰とかに結構出くわしたので、趣向作とかを条件作を作るより、変化紛れの錯綜する奇々怪々な中編とかを目指した方が、このルールの本領を発揮させられるのかもしれない…と、少し思ったりしました。

 

隅の老人Bさん

OFMから妖精都市、たくぼんさんと最悪詰が19題も出題されている。
たくぼん先生は、車を運転しながら(危ないな)解いた、とか。
それなら、初心者の私でも解けるかも。
19題もあるのなら、1題くらいは解けるでしょう。
先ずは、OFMは1題、これに挑戦です。
最初に、いつものように最終図を考える。
長考1番、金合させて、79金打OR 99金打?
左辺までは簡単に追える、でも解けない、あれ、どうして。
締め切り間際の金曜日、早朝?5時に目が覚めた。
こんな時間に動き出しては、寝坊の家内に叱られる。
で、またも、再挑戦、好きだなあ。
どこで間違えたと一から調べる、6手目の45玉からの小趣向を発見。
ここでは56玉と逃げていた、解けるかも?
途中の香合も意想外な好手、歩合ばかりを考えていた。
漸く詰んで、手数勘定、37手、正解?
妖精都市の2題解けず、たくぼんさんの処は僅か数題解けました?
最悪詰で頭が混乱、普通の詰棋が解けません。
七郎さんのこの作品で、最悪詰の面白さは、充分に堪能。
残りの作品はパス、いいえ、解けないのです、残念。 

隅の老人Bさんからは思考過程や、解図の風景が覗える長評を戴きました。
最悪詰作品展には苦戦されているようですが、まだ5日あります。隅の老人Bさんならきっと大丈夫!

 

北村太路さん(感想)

解けなかったので感想を。
読んだ順は、3七歩 4六玉 3六歩 3七桂 同角 5六玉 4八桂 6六玉 5五角 7六玉・・・でした。
歩合を繰り返す手段は時間の無駄かと思ってたんですが、繰り返していれば攻方6六歩が打てたんですね。
おかげで7七歩が取れずに詰ますことができませんでした。
収束はさんざん見た順(例:たくぼんさんのところの第1回最悪詰作品展の8番とか)だったのにそこまで繋げれませんでした。がっかり。
「6八」歩の位置の意味づけも勝手に勘違いしていたのですが、見栄えの問題だけでしょうか?それとも余詰防止も兼ねているんでしょうか。
 

本作は趣向作と予想して解かないと、意外と難しいと思います。
特に4手目の合駒が問題
。歩以外にも、香・桂・銀の合駒が強力で、これらの合駒で非限定や早詰が生じることもしばしばでした。68歩は直接には歩・香の非限定を消す配置ですが、この配置も序盤の合駒に影響を与えるので、迂闊なことはできません。
こういう余詰に悩まされているときに「いっそ趣向手順を紛れにして、銀合を作意にしようか」などと極悪なことを考えたりしたこともありました(やらなくて良かった…)。

 

 

前回と違い合駒が絡む展開だったためか、少し解答数が減りました。
次回の出題は未定ですが、次の最悪詰作品展向けの作品も少しストックしたいので、別のルールの作の出題になるかもしれません。

 

(2007.6.10 七郎)


第122回(2007.4.15)出題の解答

「神無七郎 作」 最悪詰 74王76金 +歩, 22歩32歩42歩52歩53玉62歩64角72歩82圭#57

 

【出題時のコメント】

 今回のお題は「最悪詰」。
 攻方がなるべく詰まないように王手を掛け、受方がなるべく早く詰むように応じるという、なかなか珍妙なルールです。ちょうど今、たくぼんさんのブログで「最悪詰入門」の講座が開かれているので、解き方や手筋の解説はそちらにお任せして、ここではちょっと用語のお話をしたいと思います。
 最悪詰は普通の詰将棋と同じように、攻方と受方が協力しないルールです。従って、普通の詰将棋と同様に「変化」と「紛れ」があるはずです。でも、何を“変化”、何を“紛れ”と呼べば良いのでしょう?
「受方の作意以外の手を“変化”、攻方の作意以外の手を“紛れ”と呼ぶんじゃないの?」という答えが返ってきそうですが、それは少し変です。“変化”は作意より早く詰まねばならない手順、“紛れ”は作意より早く詰んではいけない手順です。最悪詰では攻方と受方の立場が逆転しているので、「攻方の作意以外の手を“変化”、受方の作意以外の手を“紛れ”と呼ぶ」というのが正しいように思えます。
 この種の言葉の使い方は「定義次第」と言えばそれまでなのですが、このサイトでは最悪詰において「変化」を攻方に、「紛れ」を受方に適用しようと思います。

 今回の出題は、その「変化」「紛れ」が比較的少ない趣向作です。形から想定しやすい手順なので、解けてから意味付けを考える作品になるかもしれません。


 

【ルール説明】


【詰手順】

54歩 43玉 53歩成 33玉 43と 23玉 33と 12玉 23と 21玉
12と 31玉 22と 同玉 23歩 31玉 22歩成 41玉 32と 同玉
33歩 41玉 32歩成 51玉 42と 同玉 43歩 51玉 42歩成 61玉
52と 同玉 53歩 61玉 52歩成 71玉 62と 同玉 63歩 71玉
62歩成 81玉 72と 同玉 73歩 81玉 72歩成 92玉 82と 同角
84桂 93玉 92桂成 94玉 93圭 同角 85金 まで 57手

動く盤面で鑑賞する(JavaScript/CSS使用,IE専用)

  

【主な変化・紛れ】

13手目:21とは作意の収束に短絡し早詰

14手目:41玉は31と以下作意と同様に追い、94玉まで追ったところで95歩として不詰

48手目:91玉は 81と 92玉 82と 以下作意と同様で2手長い

 

【解説】

 形から予想されるように、この作は2段目にずらっと並んだ歩をはがしていく趣向作です。手順自体はありふれたものなので、それなりに付加条件を工夫すれば、ばか詰系のルールでも実現可能かもしれません。
 この趣向が最悪詰のルール下で成立する鍵は、13手目の変化と14手目の紛れの対比にあります。持駒に歩がある状態で収束手順に入ると、94玉まで追ったところで95歩と玉頭を叩かれ、同玉に85金として以下、金の押し売り手順で不詰となります。従って、受方は常に攻方の歩が手元に残らないように応接します。この収束にはいつでも入れるので、2段目の歩をまとめて取って、後でまとめて消去する手順も成り立ちません。

 とまあ、趣向の意味付けに関する変化・紛れはこれで終わりなのですが、当初は次のような誤解が2通ありました。(後に正答を戴いています。)

48手目より:91玉 81と 92玉 91と 93玉 92と 94玉 93と 同圭 85金 まで 57手詰

これは手順がちょうど作意と同じになるので、間違い易いところです。
上にも書きましたが、48手目91玉の紛れは 81と 92玉 82と 同角 84桂以下59手掛かるので、「受方最短」の条件に反し誤解となります。

ところでまた用語の問題なのですが、上のように「本来長い手順で詰む紛れを、誤って短く詰めてしまった」手順を何と呼べば良いのでしょう?
「本来短い手順で詰む変化を、誤って長く詰めてしまった」という手順は、普通詰将棋では「変別解」と呼ばれ、これは最悪詰にもそのまま適用できます。上の場合は紛れに関する誤解なので「紛別解」と呼べば良いのでしょうか。耳慣れないせいかもしれませんが、妙な用語ですね。

普通の詰将棋の世界では「変別解」の取り扱いについて論争が起きたりしていたのですが、「紛別解」については全く話題になりませんでした。なぜなら長手数で詰む紛れがあれば、それは「余詰」と呼ばれ、作品そのものが不完全になってしまうからです。「余詰」を間違った詰め方をしても誰も気にしません。
ところが最悪詰ではそうはいきません。「受方最短」に反する長手数の紛れはいくらあっても良いので、「紛別解」は誤答になります。

これは「最悪詰」に限らずすべての攻防系ルールに当てはまるはずですが、長手数で詰む紛れを余詰とする普通詰将棋の慣習がフェアリーでも継承されているせいで、表に出てきませんでした。今後はフェアリーでも、長手数で詰む紛れを問題視しないルールでの出題が多くなれば、こういう用語を使うことが多くなるでしょう。

 

【正解者及びコメント】 (正解9名:到着順)

 

真Tさん

出題のコメント通り解けてから意味を考えました。
なるほど、歩を消費させてないと駄目というわけですね。
趣向もいいですが、収束がうまいですね。
最悪詰は収束を作るのが難しいように思えます。パターンは結構少ないのではないのでしょうか?。

そうですね。収束の作りにくさは最悪詰の最大の欠点かもしれません。
詰める駒が強力だと、常に「押し売り手順」が出てきて、不詰になってしまいます。
でも、人間が知らないだけで、実は大きな鉱脈が眠っていたりするかもしれません。
まだまだ開拓は始まったばかりです。

 

小峰耕希さん

"変化飛ばし""紛れ飛ばし"連発で解きました。変化に多少面白い所もありますが、収束に関しては、北村さんの周辺巡り(不完全でしたが)の途中を切り出したような感じ。この順はきっと"手筋"と呼ばれるようになるのでしょう。…と選題コメントに話題を合わせてみたのですが、なかなかややこしいですね。
森さんの追悼作品展では、最悪詰の解説をうまく書けなかったので、七郎さんの解説に注目しています。
ところで、今回正解なら本サイト解答回数が10回になるんですね!

収束の北村氏作との類似は私も気になったのですが、駒数の多い不恰好な収束を避け、簡素な収束形を目指したら、こうなってしまいました。新型の収束の発掘は、今後の最悪詰の最大の課題になると思います。
それから、解答数10回到達おめでとうございます。何も賞品は出ませんが、今後も通算記録を伸ばしてください。100回到達する人が出たら、表彰ページを作って「殿堂入り」を称えたいと思っています。そこまでこのホームページが持つかどうか分かりませんが、小峰さんも「殿堂入り」を目指して頑張ってください。

 

たくぼんさん

最悪詰を創ろうとするとどうしても変化・紛れが少なくなりがちですが、本作、歩が消えていく趣向手順の素晴らしさもさることながら変化・紛れが程好くあり作品としての巾が広いと感心しました。

多分、本作は入門用には適当な難度だと思います。
創作初期はどんなルールでも変化・紛れが少なくなりがちですが、今後いろいろな「手筋」が発掘され「常識」の量が増えてくると、どんどん変化・紛れの多い作が出てくると思います。Worst1.exe もそれに対応できるよう、強化しないといけないのですが、なかなか難しいです。

 

瘋癲老人さん

最悪詰特有の考えにくさがあまりないので楽しんで解ける作品。
個人的には最悪詰は好みではありません。
頭はおかしくなるし解き終わってもスッキリしない事が多いので・・。

スッキリしないという感覚はなんとなく分かります。
普通の詰将棋は詰めに行ってそれを達成するものですが、最悪詰は詰まないようにして、それが失敗して詰んでしまう詰将棋だからです。
この「不完全燃焼感」とでもいうべき感覚は、私も「ばか千日手」を解く時に感じることがあります。
でもまあ、最悪詰に慣れればきっと普通の詰将棋の方がおかしなことをやっている感じになると思います(←末期)。

  

橘 圭吾さん

趣向手順は単なる手数稼ぎですか。
簡単ながらも良く出来ていますし、入門に最適。

仰るとおりです。
もう少し詳しく書くと「攻方にとっては手数稼ぎ、受方にとっては不詰回避」ですね。
これが「攻方にとっては手数稼ぎ、受方にとっては手数短縮」が意味付けになると、入門からだんだん離れて、難解作になっていくのだと思います。

 

北村太路さん

歩のはがし趣向もさることながら、各変化、紛れの割り切れ方がうまいです。
・・・あ、でも「変化紛れが比較的少ない」って書いてあるな。
これ以上変化紛れがあったらついていけません。

北村さんの作品だって、結構変化・紛れがあったじゃないですか。
あの周辺巡りだって、危うく短手数の紛れに落ちそうになりましたし。
作例が増えてくれば、作品も難しくなるかもしれませんが、どこに注意したら良いかもだんだん分かってくるので、あまり心配いらないと思います。

 

すとみしさん

角で逃げ道を塞ぐとともに、76の金でしか王手できないように先手の
手を限定してみました。
初形11枚、詰め上がりは5枚ですから、スッキリとしますね。
 

今回の初解答はすみとしさんです。
珍しいルールの作品は、コツをつかめば案外簡単に解けたりするので、ポピュラーなルールより新規参入がし易いこともあります。
今までフェアリーに二の足を踏んでいた方は、見慣れないルールの作が出てきたときは、むしろ「チャンス」だと思ってください。

 

隅の老人Bさん

たくぼんさんの学校で勉強、解答に挑戦は2度目。
果たして、正解か否かも分からない。
頼りは、面白い趣向手順で、57手で詰んだこと。
「習うよりは、慣れよ」、かな。 

趣向作ということもあったでしょうが、今回珍しいルールの出題にも関わらず、9名の解答を戴けたのは、たくぼんさんの最悪詰講座のおかげだと思います。
あの講座のシリーズは、将来的にも貴重な入門書になると思います。
全詰連の棋書保存委員会には、こういう文献も保存の対象にして欲しいと思います。

 

泉真理さん

駒を取る方が最悪とは気が付きませんでした。
新しいルールがどんどん増えていくので
以前のルールの作品は出題されなくなりますね。
(キルケ→PWC、自殺詰→ステイルメイトに置き換わっていくようですね。)

ルールは世につれ、世はルールにつれ……ではないですが、フェアリールールにも流行り廃りがあります。ばか詰以外のフェアリールールは、ちょっと注目を浴びてもすぐに流行が沈静化するのですが、最悪詰は果たしてどれだけ生き残れるでしょうか。

 

最悪詰というマイナールールの出題にも関わらず、今回は9通の解答を戴きました。
森茂追悼作品展で注目を浴びたこのルール。その奥行きはまだまだ未知数ですが、今後は最悪詰作品展を中心として、いろいろな研究成果が出てくると思います。このページでもプッシュして行きたいと思います。
ところで、次回は都合により一週休みとさせて戴き、2週間後の出題としたいと思います。楽しみにされていた方には申し訳ありません。

 

(2007.5.6 七郎) 

 


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