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解答

 

 

 


特別出題 「寿限無2」の解答

 

【出題時のコメント】

  20回目の出題にあたる今回の作品は加藤徹(=神無十郎)氏の「寿限無2」です。
 題名から分かる通り、これはあの名作「寿限無」(19,447手詰!)の作者自身による改良版です。「寿限無」をご存知の方も、そうでない方も、ぜひ解いてみて下さい。その巧妙極まる機構に感動すること間違いなしです。

 この配置と手数を見て「こんな作、自分に解けるわけがない」と思った方はいらっしゃいますか? そういう方は白旗を上げる前に、ぜひ神無次郎氏による
「寿限無」の解説を一読して下さい。本作の基本部分は前作の「寿限無」を踏襲していますので、それを応用すればきっと解けるはずです。

 

【ルール説明】

 

【詰手順及び解説】

全詰手順はここからダウンロードしてください。RSK形式(励棋で鑑賞可能)とfmo形式(fmviewで鑑賞可能)の2通りを用意してあります。

 

 世紀の大作「寿限無」。その後継バージョンとなるのが「寿限無2」です。前作「寿限無」を知っている人には、「寿限無を2回やるんだよ」という様な説明の方が分かりやすいかも知れませんが、この解説では「寿限無」を知らない人のために、敢えて、一から説明していきます。

☆歩を稼ぐ機構

初形から「92金 83歩 93金 84玉 83金 94玉」として持駒を1歩稼ぐことができます。この6手をA手順としましょう。

 

☆7筋の歩を下げる機構

 玉方の残りの歩は6枚あるので、A手順を6回繰り返せば、6歩を手駒に持つことができます。この状態になれば、7筋の歩を2つ下げることが出来ます。具体的には以下の手順です。

A A A A A A
95歩 同玉 96歩 同玉 97歩 同玉 98歩 88玉 89歩 77玉
78歩 同玉 79歩 87玉 88歩 96玉 97歩 95玉 96歩 94玉

 この56手をB7手順とします。

 

☆6、7筋の歩を下げる機構

 さて、7筋の歩が2つ下がると、今度は同じ6歩を使って、6筋の歩をひとつだけ下げることができます。本当は2つ下げたいので、もう一回6筋の歩を下げます。都合の良いことに、7筋の歩もこれで2つ下がった状態になっています。

B7
A A A A A A
95歩 同玉 96歩 同玉 97歩 同玉 98歩 88玉 89歩 77玉
78歩 67玉 68歩 78玉 79歩 87玉 88歩 96玉 97歩 95玉
96歩 94玉
A A A A A A
95歩 同玉 96歩 同玉 97歩 同玉 98歩 88玉 89歩 77玉
78歩 68玉 69歩 78玉 79歩 87玉 88歩 96玉 97歩 95玉
96歩 94玉

 この172手をB6手順とします。

 

☆4、6、7筋の歩を下げる機構

 さて、6、7筋の歩が共に2つ下がると、ようやく4筋の歩をひとつだけ下げることができます。このとき6、7筋の歩は元の位置に戻ってしまうので、これまでの手順をもう一度繰り返さなければいけません。

B6
A A A A A A
95歩 同玉 96歩 同玉 97歩 同玉 98歩 88玉 89歩 77玉
78歩 67玉 68歩 58玉 59歩 47玉 48歩 57玉 58歩 66玉
67歩 76玉 77歩 87玉 88歩 96玉 97歩 95玉 96歩 94玉
B6
A A A A A A
95歩 同玉 96歩 同玉 97歩 同玉 98歩 88玉 89歩 77玉
78歩 67玉 68歩 58玉 59歩 48玉 49歩 57玉 58歩 66玉
67歩 76玉 77歩 87玉 88歩 96玉 97歩 95玉 96歩 94玉
B6

 この648手をB4手順とします。

 ここまで来れば、この非常識とも言える超長手数の機構が見えてきたでしょう。つまり、「ある筋の歩を下げるには、それより左の筋にある歩を全て下げておかねばならない。しかもある筋の歩を下げると、それより左の歩はすべて元の位置に戻ってしまうので、また最初からやり直さねばならない」というわけです。なんてことだ!

☆3筋とその左の歩を下げる機構

 同様に、4筋より左の歩が全部下がると、3筋の歩をひとつだけ下げることができます。このとき4筋より左の歩は元の位置に戻ってしまうので、これまでの手順をもう一度繰り返さなければいけません。

B4
A A A A A A
95歩 同玉 96歩 同玉 97歩 同玉 98歩 88玉 89歩 77玉
78歩 67玉 68歩 58玉 59歩 47玉 48歩 36玉 37歩 46玉
47歩 57玉 58歩 66玉 67歩 76玉 77歩 87玉 88歩 96玉
97歩 95玉 96歩 94玉
B4
A A A A A A
95歩 同玉 96歩 同玉 97歩 同玉 98歩 88玉 89歩 77玉
78歩 67玉 68歩 58玉 59歩 47玉 48歩 37玉 38歩 46玉
47歩 57玉 58歩 66玉 67歩 76玉 77歩 87玉 88歩 96玉
97歩 95玉 96歩 94玉
B4

 この2084手をB3手順とします。

 まだ解説に付いてきてますか?

 

☆2筋とその左の歩を下げる機構

 更に同様に、3筋より左の歩が全部下がると、2筋の歩をひとつだけ下げることができます。このとき3筋より左の歩は元の位置に戻ってしまうので、これまでの手順をもう一度繰り返さなければいけません。

B3
A A A A A A
95歩 同玉 96歩 同玉 97歩 同玉 98歩 88玉 89歩 77玉
78歩 67玉 68歩 58玉 59歩 47玉 48歩 36玉 37歩 25玉
26歩 35玉 36歩 46玉 47歩 57玉 58歩 66玉 67歩 76玉
77歩 87玉 88歩 96玉 97歩 95玉 96歩 94玉
B3
A A A A A A
95歩 同玉 96歩 同玉 97歩 同玉 98歩 88玉 89歩 77玉
78歩 67玉 68歩 58玉 59歩 47玉 48歩 36玉 37歩 26玉
27歩 35玉 36歩 46玉 47歩 57玉 58歩 66玉 67歩 76玉
77歩 87玉 88歩 96玉 97歩 95玉 96歩 94玉
B3

 この6400手をB2手順とします。

 このように指数関数的に手数が増えていく機構から、「ハノイの塔」を思い出す方も多いでしょう。しかし、ハノイの塔が2のオーダーで手数が増えていくのに対し、寿限無の方は3のオーダーです。寿限無の方が偉い!

 

☆1筋とその左の歩を下げる機構

 更に更に同様に、2筋より左の歩が全部下がると、1筋の歩をひとつだけ下げることができます。このとき1筋より左の歩は元の位置に戻ってしまうので、これまでの手順をもう一度繰り返さなければいけません。

B2
A A A A A A
95歩 同玉 96歩 同玉 97歩 同玉 98歩 88玉 89歩 77玉
78歩 67玉 68歩 58玉 59歩 47玉 48歩 36玉 37歩 25玉
26歩 14玉 15歩 24玉 25歩 35玉 36歩 46玉 47歩 57玉
58歩 66玉 67歩 76玉 77歩 87玉 88歩 96玉 97歩 95玉
96歩 94玉
B2
A A A A A A
95歩 同玉 96歩 同玉 97歩 同玉 98歩 88玉 89歩 77玉
78歩 67玉 68歩 58玉 59歩 47玉 48歩 36玉 37歩 25玉
26歩 15玉 16歩 24玉 25歩 35玉 36歩 46玉 47歩 57玉
58歩 66玉 67歩 76玉 77歩 87玉 88歩 96玉 97歩 95玉
96歩 94玉
B2

 この19356手をB1手順とします。

 これでやっと準備は終わり、全詰手順の記述に移りましょう。

☆全詰手順

 さて歩を全部下げて何をするのでしょう。答は以下の通りです。

B1
A A A A A A
95歩 同玉 96歩 同玉 97歩 同玉 98歩 88玉 89歩 77玉
78歩 67玉 68歩 58玉 59歩 47玉 48歩 36玉 37歩 25玉
26歩 14玉 15歩 13玉
14歩 同銀 32香成 23銀左
14歩 24玉 25歩 35玉 36歩 46玉 47歩 57玉 58歩 66玉
67歩 76玉 77歩 87玉 88歩 96玉 97歩 95玉 96歩 94玉
B1
A A A A A A
95歩 同玉 96歩 同玉 97歩 同玉 98歩 88玉 89歩 77玉
78歩 67玉 68歩 58玉 59歩 47玉 48歩 36玉 37歩 25玉
26歩 14玉 15歩 13玉
14歩 12玉 22成香 同歩 13歩 同玉
14歩 24玉 25歩 35玉 36歩 46玉 47歩 57玉 58歩 66玉
67歩 76玉 77歩 87玉 88歩 96玉 97歩 95玉 96歩 94玉
92金 83香 93金 84玉 83金 94玉 95香 まで 38889手

 最初は1筋から左の歩を全部下げておいて、33香を32成香に変換。もう一度1筋から左の歩を全部下げておいて、今度は32成香を玉方に取らせます。最後はその香を合駒で奪って頭香までの詰み。
 これだけの長手数ですが、機構は実にシンプルで理解しやすいものです。最初と最後の図を比べると、違いは21歩→22歩、33香→95香の2点のみ。たったこれだけの事をするのに、この気が遠くなるような手数。正に驚きの名作です。
 全詰手順を略記を使わずに記述した棋譜は上の方にありますので、ぜひダウンロードして動かして眺めて下さい。fmview等で最高速度で動かして眺めていると、意志を持っているかのような歩の動きに幻惑されてしまうでしょう。

 

【正解者及びコメント】 (正解者6名:解答到着順)

Satoshiさん

元が素晴らしいだけに改作図の新工夫もどうでもよいことのようにさえ思えてしまう。もちろん見事な改作であることには間違いないのだが。

☆Satoshiさんの解答は実にシンプル。原典版「寿限無」を前提にして、たった8行
 で手順を記述してしまいました。

寿限無と同じことを2回やる。
一回目
「14歩 12玉 13歩 同玉」
−>「14歩 同銀 32香成 23銀左」
二回目
「14歩 12玉 13歩 同玉」
−>「14歩 12玉 22成香 同歩 13歩 同玉」
として95香まで38889手

 これでも、もちろん正解です。

神無太郎さん

38889手という手数、どうも見覚えがあると思っていたら、吉田直嗣氏の「安北寿限無」と同手数だったんですね。機構も2×寿限無で同じ。「寿限無2」という命名は完璧です。

神無次郎氏に倣ってfmで本作の手順を検証してみました。検証地点は次郎氏のと同じ。作者自認というか「寿限無」と同様の非限定しか見つかりませんでした。不謹慎とは思いましたが、解数を計算してみました。87歩を89歩に下げるのと77歩を78歩に下げるのの手順前後が再帰的手順の中で増幅されてなんと2^3^3^3^3^2=2^162通り。さらに13歩生と13歩成の成生非限定を加えて(掛けて?)総計2^163通りです。
#「寿限無3」はもっと(桁違いに)恐ろしい。

☆いつもは「見てるだけ」の太郎さんですが、本作に限っては解答(というよりコメ
 ント)を送ってくれました。本当は解説者である私がやらなければいけない検証作
 業を代わりにやってくれたので、とても助かりました。吉田氏の「安北寿限無」は
 Online Fairy Mateの28号(
1994-08-14)に発表された作です。手数は奇しくも本作
 と同じ38889手。興味ある方は、
神無三郎氏(PXC03614@nifty.ne.jp)に問い合わ
 せてみて下さい。

 

くるまさん

 あまりの長手数に当初は完全にあきらめていたのですが、寿限無の解説を見て挑戦する気になりました。手数が約2倍になっていることから、同手順を2回繰り返す発想に気づきました(邪道ですかね)。
#これよりも前回の対面ばか詰が解けなかったのが悔しいです。

☆「寿限無2」という名前も同手順を2回繰り返す事を暗示していますね。
 でも、「だんご3兄弟」と「寿限無2」を比べるのは加藤さんに失礼?
 原典版「寿限無」を見ずに、「寿限無2」を見たら、きっと飛び上がるほど驚かさ
 れるよ思います。

 

mirさん

 こんにちは。前回は正解1人で寂しかったです。今回は手数を見ただけで即パスしようかとも思いましたが、解説を見ながら頑張って解きました。
 手数が手数なんで、あんまり自信ありませんが・・。これで合ってるとすると、事実上合駒稼ぎの部分と歩のみ。あとはただの枠という範囲内で、このような機構が成立していること自体が驚きです。1つの歩を下げると、他のが全部上がってて、また1からやり直しなんて・・。とても人間の考え付くこととは思えない。
 フェアリールールと、加藤徹氏の頭脳に乾杯。

☆加藤氏によってばか詰は芸術になった、と言われています。
 やっぱり凄い人だ。

 

 

いぬたさん

寿限無との違いだけ書きます。

【寿限無】
1巡で、玉に12香を取らせて、香を渡す。

【寿限無2】
1巡目では、14歩、同銀、32香成、23銀左として成香を作っておく。
2巡目で、22成香、同歩として、香を渡す。

なるほど、これで2倍になるのですね。意外と簡単な方法でびっく
りしました。寿限無3もあるんですよね? 楽しみです。

解答はこれでよろしいでしょうか? 手抜きしすぎ?


ところで、寿限無と寿限無2の棋譜ファイルを作ろうとしたんです
が、「もしかしたら、既に存在するんじゃないかなぁ」と思ってや
めてしまいました。もし存在しているのなら、ファイルをダウンロー
ドできるようにしてもらえれば、すごくありがたいのですが。

☆解けていることが分かれば解答はどんな形式でも正解です。
 今回「寿限無2」の棋譜ファイルは用意しました。楽しんで下さい。
 「寿限無」の方の棋譜のことは忘れてました。また後で用意します。

 

安川 朝哉さん

やりました!解けました!

苦節10年、やっと超ロイヤルゴールデンスペシャル級の詰将棋が解けました!

ヤッター!! カンドーってヤツですか。

解くのより、手数計算の方に時間がかかりました。

☆おめでとうございます。やっぱり感動しますよね、この作品。
 これを機会に、フェアリーに大いにはまって下さい。

 

☆これだけの大作をこのホームページで紹介できるとは、管理人としても非常に嬉し
 いことです。解答者がいなかったらどうしよう、なんて心配もありましたが、皆さ
 んのお陰で杞憂に終わりました。次回からはまた短編主体の出題に戻りますが、引
 き続きご愛顧をお願いします。

 

(1999.5.24 七郎)



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