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裏技#02 「すかし詰有効の作を検討する」

 

1. フェアリーでのすかし詰

現在、「ばか系」「ば自系」ルールでは一般的に「無駄合」の概念はありません。
しかし、フェアリー草創期から1980年代の初めまでは、詰上りに限って「無駄合」の概念が認められ、「すかし詰」で詰上がる作品も作られてきました。
「ばか系」「ば自系」ルールから「無駄合」概念が廃止されたのは、カピタン30号(1982/12)以降のことです。

fmでは「ばか詰」に限って「すかし詰」を詰上りとする作品を検討することができ、それは「将ばか詰」というルール名でサポートされています。(fm拡張セットの中の fmsv.exe が必要です。記号は%shou。)
従って、すかし詰もOKな古典的なばか詰を検討する場合には、fmを使うことができるわけです。

 

2. ばか詰以外のすかし詰作品の検討

fmでは、ばか詰以外に「すかし詰」のサポートをしているルールはありません。これを性能変化系のルールと組み合わせたり、「ばか自殺詰」に適用することはできないのです。

では、ばか詰以外のすかし詰作品のfmでの検討は諦めるしかないのでしょうか?

実はそうではありません。
多少手間は掛かりますが、方法はあるのです。それは、

「2手増やして検討する」

という方法です。

これは当サイトの掲示板で神無太郎さんが示した方法ですが、一般化すると次のようになります。

 
  1. 作意通りのn手で不詰であることを確認する。
  2. n+2手でfmに解かせる。ただし、手順確認機能を使ってn+1手目打合、n+2手目同取を指定する。
  3. n+1手目の合駒の種類を無視して手順を整理する。
  4. 最後のn+1手目、n+2手目を除いて、最終手に合駒禁止とみなしたn手詰で不詰の解を除く。
  5. これで作意解のみが残れば完全。

文章だけでは分かりにくいと思いますので、実例を見ていただきましょう。

「カピタン13号 出口信男作 」 天竺ばか詰 35玉73角75角, 31飛33玉48飛 #3 

作意は 42角 同飛成 55角生 まで 3手。
初手は成・不成非限定です。2手目と3手目は成・不成が限定されていて、もし根本的な余詰がなければ、上記の方法で2解が残るはずです。

では、この作で上記の手順1.を実行しましょう。
図面を入力し、3手では詰まないことを確認するのは、通常のfmの使い方なので説明は要りませんね。

次は手順2.です。
手順を5手にして、4手目打合、5手目同 を指定します。

上で、“|”以降に記述されたのが指定の手順です。指定手順が、

* * * *打 同*

であり、これをfmが解釈した結果が、「指定手順:」の行に表示された

??○ ??○ ??○ ??○打 同○ まで

です。

“?”が任意の数字1文字に対応し、“○”が駒文字1文字に対応しているので、思った通りの手順指定ができているようですね。(もし失敗していたら“|-”と入力して指定を取り消し、再度指定しなおします。)

さて、これで出力ファイル名を適当に指定して解析を開始すれば良いのですが、結果を見やすくするため少し工夫をしましょう。次のオプションを指定します。

/L99 /B

これは、検出解数の上限を99に、出力は簡略にという指定です。
この指定でファイルに出力すると、次のような結果が得られます。

「カピタン13号 出口信男作 」 天竺ばか詰 35王73角75角, 31飛33玉48飛|
??○ ??○ ??○ ??○打 同○ #5
42角生 同飛成 55角生 44角 同角 まで 5手 駒余り 角
42角生 同飛成 55角生 44金 同角 まで 5手 駒余り 金
42角生 同飛成 55角生 44銀 同角 まで 5手 駒余り 銀
42角生 同飛成 55角生 44桂 同角 まで 5手 駒余り 桂
42角生 同飛成 55角生 44香 同角 まで 5手 駒余り 香
42角生 同飛成 55角生 44歩 同角 まで 5手 駒余り 歩
42角成 同飛成 55角生 44角 同角 まで 5手 駒余り 角
42角成 同飛成 55角生 44金 同角 まで 5手 駒余り 金
42角成 同飛成 55角生 44銀 同角 まで 5手 駒余り 銀
42角成 同飛成 55角生 44桂 同角 まで 5手 駒余り 桂
42角成 同飛成 55角生 44香 同角 まで 5手 駒余り 香
42角成 同飛成 55角生 44歩 同角 まで 5手 駒余り 歩
51角生 42飛生 66角 44金 同角 まで 5手 駒余り 金
51角生 42飛生 66角 44銀 同角 まで 5手 駒余り 銀
51角生 42飛生 66角 44桂 同角 まで 5手 駒余り 桂
51角生 42飛生 66角 44香 同角 まで 5手 駒余り 香
51角生 42飛生 66角 44歩 同角 まで 5手 駒余り 歩
51角生 42飛成 66角 44金 同角 まで 5手 駒余り 金
51角生 42飛成 66角 44銀 同角 まで 5手 駒余り 銀
51角生 42飛成 66角 44桂 同角 まで 5手 駒余り 桂
51角生 42飛成 66角 44香 同角 まで 5手 駒余り 香
51角生 42飛成 66角 44歩 同角 まで 5手 駒余り 歩
51角成 42飛生 66角 44金 同角 まで 5手 駒余り 金
51角成 42飛生 66角 44銀 同角 まで 5手 駒余り 銀
51角成 42飛生 66角 44桂 同角 まで 5手 駒余り 桂
51角成 42飛生 66角 44香 同角 まで 5手 駒余り 香
51角成 42飛生 66角 44歩 同角 まで 5手 駒余り 歩
51角成 42飛成 66角 44金 同角 まで 5手 駒余り 金
51角成 42飛成 66角 44銀 同角 まで 5手 駒余り 銀
51角成 42飛成 66角 44桂 同角 まで 5手 駒余り 桂
51角成 42飛成 66角 44香 同角 まで 5手 駒余り 香
51角成 42飛成 66角 44歩 同角 まで 5手 駒余り 歩

手順3.に進み、合駒の種類を無視して整理すると、以下の6パターンに絞られます。

42角生 同飛成 55角生 44合 同角 まで 5手 駒余り
42角成 同飛成 55角生 44合 同角 まで 5手 駒余り
51角生 42飛生 66角 44合 同角 まで 5手 駒余り
51角生 42飛成 66角 44合 同角 まで 5手 駒余り
51角成 42飛生 66角 44合 同角 まで 5手 駒余り
51角成 42飛成 66角 44合 同角 まで 5手 駒余り

手順4.に進み、ここから最終2手の合駒を除いて3手詰にしてみましょう。

42角生 同飛成 55角生 まで 3手
42角成 同飛成 55角生 まで 3手
51角生 42飛生 66角 まで 3手
51角生 42飛成 66角 まで 3手
51角成 42飛生 66角 まで 3手
51角成 42飛成 66角 まで 3手

このうち後半4つは、最終手に合駒ができないとしても、最終手「66同玉」で逃れています。
ですからこの4つの解も除きましょう。
もし、ルールに不慣れで逃れ手順に自信がない(フェアリーではこういうことも結構あり得ます)なら、最終局面を持駒制限下の1手詰でfmに解かせても良いでしょう。図によっては移動合が絡んでくることに注意すれば確実です。

42角生 同飛成 55角生 まで 3手
42角成 同飛成 55角生 まで 3手

ついに、2解が残りました。成・不成の非限定がありますが、これは作意通りですね。
これで、この作品には作意外の余詰がないことが確認できました。

 

注意

「間接両王手」や「間接開き王手」の詰上りは「すかし詰」でしょうか?
fmの「将ばか詰」でもそれらは「すかし詰」と認識されます。
ただし、それが本当に詰将棋用語として正しいのかどうかは、異論があるでしょう。
合駒を取るのが王手を掛けている駒の場合のみ「すかし詰」と呼び、別の駒が合駒を取る「間接両王手」や「間接開き王手」と区別する使い方もあるからです。
明確な用語定義がない現状では、「間接両王手」や「間接開き王手」の問題を「すかし詰」として出題する場合は、その条件を明示して出題することをお勧めします。
なお、多段の「間接両王手」や「間接開き王手」及びその組み合わせはfmの「将ばか詰」では「不詰」となります。

 

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